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俺と王様
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皆食べたり飲んだり踊ったり、パーティーを楽しんでいる。
王妃様も王様も笑顔で話をしていた。王族も使用人も騎士も関係なく皆話をしている。とても貴重な空間であり時間だ。
俺も彼女も食べ物を取り、隅の席に移動、俺とラナンは食べ物を頬張る。
部屋を出てから何も口にしていないため、並べられた料理を見たらお腹がなってしまったのだ。恥ずかしさのあまりうずくまるようにして両手足を体に寄せているところに彼女に気付かれてしまい、" 私たちも食べよっか! "ってなった。
彼女は歌をやめて俺の食べる姿を見ながら一緒に食べている。
" ゆっくり食べなよ。口についてるよ "
口についたソースを拭いてもらって顔を赤くしているとラナンに笑われてしまったが、そんなことは些細なこと。
今はお腹いっぱい食べることだ。
" リスみたいね "
頬張る口とパンパンになった頬を見てクスクス笑う彼女。
「食べているかい?」
リード様が俺たちのいるテーブルに来て、笑顔で話しかけてきた。ラナンは俺の後ろに隠れる。
ニコッと笑顔で彼女も返す。
" 楽しいですよ " と紙に書いてリード様に見せている。
「よかった、あのね、お願いがあるんだけど、母上のために歌を歌ってくれないだろうか」
彼女は少し考えて、こくりと頷き、カリカリと紙に書いてリード様に見せる。
" 何の歌を歌いましょう? "
「うーん、そうだなぁ…母上も大好きな「愛しい我が子でお願いできるかな?」父上!?」
後ろから急に現れた王様はリード様の言葉に重ねてリクエストをしてきた。急に現れた王様にリード様はびっくりして体がちょっと跳んでいた。
" 愛しい我が子、承りました。心を込めて歌わせていただきます "
彼女は立ち上がり、左胸に手を当て、右手でスカートを少しつまみ上げ、足を交差させて王様に礼をする。彼女のその所作が美しいと思ったのは、何度目か。見とれていると王様が近くに来て俺の頭を撫でる。
「クロード君、随分小さくなったけど、どうしたのかな?」
「!!?」
小声で俺に話をかける。その内容にぎょっとして俺は王様を凝視してしまった。
なぜわかったのだろうか。
はっ!不敬にあたる!と思い、立とうとしてよろめいたところを王様に抱き抱えられてしまった。
あまりの事にカチンと固まった俺に王様は笑顔を向ける。
ラナンは椅子の上に移動して、テーブルクロスに身を寄せて隠れた。
「小さかった頃のリードを思い出すよ」と言って頭を撫でられる。俺はさらに固まり、石化。
王様は笑いをこらえている。
" 歌います "
耳飾りを指でトンと軽く叩いた彼女は、すぅ… と息を吸い込んで、歌い始めた。
優しくて、大切な、心のこもった歌。
お城中に響き渡る。あ、この声と歌は、と気付く人が多い中、誰も歌う彼女の場所を探す人はいなかった。
皆聞き入っていた。静かに泣く人もいた。
王妃様は彼女の方を振り向いて、「ありがとう」と笑顔で泣いていた。
王様が王妃様を見て、愛おしそうに眺めている。本当に愛しているんだなとわかるほどに。
王様を見ていてふと気付く。
王様の耳飾りと王妃様の耳飾り、彼女の耳飾りと同じものがつけられていた。
リード様のも同じだが、付与されている魔法が違うようだ。輝きが違う。
アルル様はまだ幼いため耳飾りはついておらず、代わりにブローチがリード様の耳飾りと同じ役割をしている。
(だから、歌っている彼女を見つけられたのか)
それにしても小さい体の俺をクロードと見抜いたのは王様が初めてだ。もしかして王妃様も言わないだけで、気付いているのかもしれない。
王様の方をじっと見ていると、視線に気付いたのか王様が俺の方に向き直り、にこっと笑ってくれた。
「クロード君、ヴィル殿は元気かい?」
「……………はい」
王様にお師匠様のことを聞かれて喋ろうかどうか迷って、返事をした。
「そうか。それにしても可愛らしい声をしているね」
「……すみません」
「謝らなくていい。ヴィル殿から君のことは聞いていたから、いつ姿を見られるか少し楽しみにしていたのだが、なかなか見られないからやきもきしていたところだよ。やっと見られて私は嬉しい」
お師匠様は何て言って話を通したのだろう。気になる。
おかしなこと言ってなければいいが…。
ぐるぐると考え事をしていると、下からリード様がシュークリームの乗ったお皿をこちらに差し出し、「父上、こちらのシュークリーム美味しいですよ!お一ついかがですか?」と元気よくすすめてきた。
「おぉ、そうか。では、一つもらおうかな」
王様は俺を片手で抱えたまま、リード様の皿からシュークリームを一つ摘まんでぱくりと食べた。
「どうぞ!君も!」
「………ありがとう、ございます」
俺は小声で言って、シュークリームを小さい手で一つもらった。俺の手の平よりも大きいシュークリーム。
「わ!父上!この子喋りましたよ!」
かわいいですね!💕とリード様は笑顔で俺の頭を撫でる。
くすぐったいが、複雑な気持ち。俺はどんな顔をしていたのかわからないが、王様はそれを見て笑いをこらえ、咳払いを小さくしていた。
顔を隠すために大きなシュークリームをひとくち口に入れて食べていると、彼女の歌以外に魔法の反応があった。
大食堂の真ん中に大きな魔方陣が現れ、光る。一瞬だった。
バシュン
王妃様も王様も笑顔で話をしていた。王族も使用人も騎士も関係なく皆話をしている。とても貴重な空間であり時間だ。
俺も彼女も食べ物を取り、隅の席に移動、俺とラナンは食べ物を頬張る。
部屋を出てから何も口にしていないため、並べられた料理を見たらお腹がなってしまったのだ。恥ずかしさのあまりうずくまるようにして両手足を体に寄せているところに彼女に気付かれてしまい、" 私たちも食べよっか! "ってなった。
彼女は歌をやめて俺の食べる姿を見ながら一緒に食べている。
" ゆっくり食べなよ。口についてるよ "
口についたソースを拭いてもらって顔を赤くしているとラナンに笑われてしまったが、そんなことは些細なこと。
今はお腹いっぱい食べることだ。
" リスみたいね "
頬張る口とパンパンになった頬を見てクスクス笑う彼女。
「食べているかい?」
リード様が俺たちのいるテーブルに来て、笑顔で話しかけてきた。ラナンは俺の後ろに隠れる。
ニコッと笑顔で彼女も返す。
" 楽しいですよ " と紙に書いてリード様に見せている。
「よかった、あのね、お願いがあるんだけど、母上のために歌を歌ってくれないだろうか」
彼女は少し考えて、こくりと頷き、カリカリと紙に書いてリード様に見せる。
" 何の歌を歌いましょう? "
「うーん、そうだなぁ…母上も大好きな「愛しい我が子でお願いできるかな?」父上!?」
後ろから急に現れた王様はリード様の言葉に重ねてリクエストをしてきた。急に現れた王様にリード様はびっくりして体がちょっと跳んでいた。
" 愛しい我が子、承りました。心を込めて歌わせていただきます "
彼女は立ち上がり、左胸に手を当て、右手でスカートを少しつまみ上げ、足を交差させて王様に礼をする。彼女のその所作が美しいと思ったのは、何度目か。見とれていると王様が近くに来て俺の頭を撫でる。
「クロード君、随分小さくなったけど、どうしたのかな?」
「!!?」
小声で俺に話をかける。その内容にぎょっとして俺は王様を凝視してしまった。
なぜわかったのだろうか。
はっ!不敬にあたる!と思い、立とうとしてよろめいたところを王様に抱き抱えられてしまった。
あまりの事にカチンと固まった俺に王様は笑顔を向ける。
ラナンは椅子の上に移動して、テーブルクロスに身を寄せて隠れた。
「小さかった頃のリードを思い出すよ」と言って頭を撫でられる。俺はさらに固まり、石化。
王様は笑いをこらえている。
" 歌います "
耳飾りを指でトンと軽く叩いた彼女は、すぅ… と息を吸い込んで、歌い始めた。
優しくて、大切な、心のこもった歌。
お城中に響き渡る。あ、この声と歌は、と気付く人が多い中、誰も歌う彼女の場所を探す人はいなかった。
皆聞き入っていた。静かに泣く人もいた。
王妃様は彼女の方を振り向いて、「ありがとう」と笑顔で泣いていた。
王様が王妃様を見て、愛おしそうに眺めている。本当に愛しているんだなとわかるほどに。
王様を見ていてふと気付く。
王様の耳飾りと王妃様の耳飾り、彼女の耳飾りと同じものがつけられていた。
リード様のも同じだが、付与されている魔法が違うようだ。輝きが違う。
アルル様はまだ幼いため耳飾りはついておらず、代わりにブローチがリード様の耳飾りと同じ役割をしている。
(だから、歌っている彼女を見つけられたのか)
それにしても小さい体の俺をクロードと見抜いたのは王様が初めてだ。もしかして王妃様も言わないだけで、気付いているのかもしれない。
王様の方をじっと見ていると、視線に気付いたのか王様が俺の方に向き直り、にこっと笑ってくれた。
「クロード君、ヴィル殿は元気かい?」
「……………はい」
王様にお師匠様のことを聞かれて喋ろうかどうか迷って、返事をした。
「そうか。それにしても可愛らしい声をしているね」
「……すみません」
「謝らなくていい。ヴィル殿から君のことは聞いていたから、いつ姿を見られるか少し楽しみにしていたのだが、なかなか見られないからやきもきしていたところだよ。やっと見られて私は嬉しい」
お師匠様は何て言って話を通したのだろう。気になる。
おかしなこと言ってなければいいが…。
ぐるぐると考え事をしていると、下からリード様がシュークリームの乗ったお皿をこちらに差し出し、「父上、こちらのシュークリーム美味しいですよ!お一ついかがですか?」と元気よくすすめてきた。
「おぉ、そうか。では、一つもらおうかな」
王様は俺を片手で抱えたまま、リード様の皿からシュークリームを一つ摘まんでぱくりと食べた。
「どうぞ!君も!」
「………ありがとう、ございます」
俺は小声で言って、シュークリームを小さい手で一つもらった。俺の手の平よりも大きいシュークリーム。
「わ!父上!この子喋りましたよ!」
かわいいですね!💕とリード様は笑顔で俺の頭を撫でる。
くすぐったいが、複雑な気持ち。俺はどんな顔をしていたのかわからないが、王様はそれを見て笑いをこらえ、咳払いを小さくしていた。
顔を隠すために大きなシュークリームをひとくち口に入れて食べていると、彼女の歌以外に魔法の反応があった。
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