夜間勤務のメイド

灯埜

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お師匠様と暗殺者

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「いやー参った参った、まさか説教されるなんて」
俺を抱っこして呟きながら廊下を歩くお師匠様。
「反省してください」
「はーい」
絶対反省してないんだろうなと思いつつ、ため息をつく。

「それにしても涼しいね」
廊下はひんやりしてて過ごしやすい。
彼は「一応ね」と羽織っていた羽織を俺に巻いてくれた。

「ここは変わってないな」
廊下の壁に施されている装飾に手を伸ばして触れる。
「懐かしいですねぇ。昔のものが変わらず残っているというのは、いいですね」
前はここにねと俺に思い出話を話し始めた。

昔、お師匠様はここにすんでいたのだろうか…。城の中を知り尽くしているような気がする。

柱の少し上辺りに手を振れてクッと押すと、カコン!と音が鳴って触れた部分が四角く凹み、すぐ下に扉が現れた。
ガコン!とその扉を開けると階段が続いていた。真っ暗でその先は見えなかったが、お師匠様はちょっと見て閉め、「あ、ここ抜け道だから今度探検しようか。懐かしいなぁ」と俺に言っていた。四角くく凹んだ壁は、凹んだ部分を2回叩くとカコンと音を立ててもとに戻り、凹みも扉の跡も残らなかった。不思議な仕掛けだ。

「さて次はどこ行こうかなー♪」と彼はふんふん♪鼻唄を唄いながら歩く。何の唄か気になるが、どこかで聞いたことがあるような気がする。

渡り廊下を歩いて王族の居所に向かっている。
「そっちは王族の居所ですよ」
「うん、知ってるよ」
当たり前とでも言うようになんで聞くの?という顔をされた。
「何しに行くんですか?」
 
「みんなの寝顔を見に行くんだよー♪」
「本当に何しに行くんですか」
不敬にも程がある。スタスタと迷いなく王族の居所へ足が向かうお師匠様。
「お師匠様、不敬で捕まりますよ」
「大丈夫なのに(笑) 仕方ない、図書室行こうか」
「いいですね」
彼の提案に少しワクワクする。何か新しい発見と他の本を紹介してくれるかもしれないと期待が膨らんだ。

足取りは図書室へ。
王族の居所区域には入らず、そのまま右に曲がる。
曲がり廊下を渡っていると、カチと微かな音が鳴り、窓がゆっくり開いた。スッと黒い人影が入ってきて消えた。
消える直前に窓も閉められている。

「おや、手慣れてるね」
「言ってる場合ですか。降ろしてください」
早く降ろして!と彼を急かす。
「降りるの?乗ってていいのに」
彼はしゃがんで、俺を降ろしてくれた。
「何言ってるんですか。捕まえに行きますよ」
ダッ!と小さい足を動かして追うも、歩幅が小さくてあまり進んでないが気にしない。後ろでお師匠様が笑っていても、気にしない!

キョロキョロ目と顔を動かして暗殺者の気配を探す。

王族の居所に侵入している。

壁に3人、天井に2人、俺たちの背後に2人…。

「このっ、お師匠様!」
俺は避けようとして羽織を踏んでしまい、背後の暗殺者に後ろから抱え込まれ首に刃物を突きつけられてしまった。

「ん?なんだい?」
彼の方を見ると暗殺者に体術をかけていた。(現代で言うコブラツイスト)
「いでででで!」
黒装束の暗殺者はお師匠様の足をバシバシと叩いて抵抗している。
「いえ、なんでもないです…」
「そう?」
笑顔で体術かけているお師匠様と痛がっている黒装束の暗殺者の光景を見た時何も言えなくなった。

うん。そうだっだ。心配しなくてもお師匠様だもんね。
納得 (・-・ )

ゴキリ と鈍い音が暗殺者から聞こえた。折れた音。
彼は体術を解き、ドサッ!と暗殺者を床に放り投げた後、ふぅとため息をつく。余裕の顔。

「このガキがどうなってもいいのか?」
首に刃物が食い込む。
「……あ、そういえば。その羽織の左ポケットにおやつ入ってるよ」
そう言ったときの笑顔は変わらず。

「…………」
「………」
俺も暗殺者も唐突な答えに、は?ってなった。
なんて? おやつ? え? 今?? ???

(この状況で取り出せっての?どう見ても無理だろ)

彼が何を考えてそう言ったのかわからないが、なんとか手を伸ばして左のポケットを探り何か固形のものを掴んで引っ張って取り出した。首に刃物がより食い込んで、少し肉が切れ、切れたところが熱を持ち徐々に痛みが走り出す。
「ぅぐっ!」
「おい!動くな!」

無理して取り出したもの……

「マカ…ロン…?」
「ははははは!何かと思えば本当におやつとは、なんとこっグェッ!」
持っているマカロンから暗器が数本飛び出し、暗殺者の顔面に刺さった。

「うっ!痛い!いたい!痛い痛い痛い!!」
顔を押さえて倒れ込む暗殺者。倒れる時俺を抱えていた手を離し、両手で顔を押さえた。

「貴様!な、なにをしたっ!!」
お師匠様がにこにこしながら苦しむ暗殺者の側まできて、刺さった暗器の数を数えはじめた。

「6つ中5つか。君、運がいいね。6つ刺さってたらここにいなかったね」

笑顔で言う台詞ではない。
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