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第2章 少年期 邂逅編
第三十一話「前哨戦」
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半日歩き続けて、ようやく森に到着。
しかし着いた時にはもう日は落ちていたため、野宿をすることにした。
テントは既に張り終わり、後は寝るだけである。
今は、エリーゼと二人でテントの中で横になっているところだ。
「ラニカ村から転移して、もう一週間くらい経ったわね」
「もうそんなに経ちますか」
一週間と少し前までは、俺達はまだラニカ村で平和な暮らしをしていたのか。
そう思うと、今こうして異国の地にいることが信じられない。
一週間前の俺に、「お前はもう少ししたら天大陸で冒険者をやりことになるんだぞ」なんて伝えたら、どんな顔をするだろうか。
ここは異世界なんだから、タイムマシンとかあってもおかしくはないような気がする。
いや、流石にないか。
「……お父さんとお母さん、無事でいるかしらね」
「そう信じて祈るしかできませんからね」
「……嘘でもいいから、『きっと無事だ』って言いなさいよ」
「その時は安心できるかもですけど、もし無事じゃなかった時のダメージが大きいですから。
もちろん、二人は絶対に生きてますよ」
「――」
「……あの二人に限って、簡単に死ぬわけないじゃないですか」
「…………そうよね。ありがと」
ロトアとルドルフは、きっと無事だ。
その他の村の住民、そしてアヴァンの住民はどうなっただろうか。
あの隕石は、確実にアヴァンの街に衝突した。
広がっていった光は、あっという間に俺達の村も飲み込んだ。
言わずとも、もう分かる。
グレイス王国は、滅亡しているだろう。
「――あたしの家族も、きっと無事よね」
「――」
――そうだった。
王国が滅びたということは、エリーゼの家族も世界のどこかに転移したと考えられる。
探さなければならないのは、ルドルフとロトアだけではない。
この子の家族も、見つけなければならないのだ。
「先に、謝っておくわ」
「何をですか?」
「……急に、ごめんなさい」
エリーゼはそう言うと、突然俺の胸に顔をうずめてきた。
そして、俺の胸が熱くなるのを感じた。
これは、慣用句的な意味合いではない。
「エリーゼ……」
エリーゼは、俺の胸の中で泣いていた。
声を押し殺して、肩を震わせてなくエリーゼの肩を、俺は恐る恐る抱いた。
家族の安否が分からないというのは、とても不安だろう。
俺も、エリーゼの家族には優しくしてもらった。
テペウスには本を買ってもらったし、パーヴェルとジェラルドとも仲良くなった。
買ってもらった本のおかげで、俺は魔人語をマスターすることができた。
グレイス家の皆も、心配だ。
そして、俺達と一緒の方向に逃げていたリベラとアリス。
エリーゼの師匠と俺の妹も、どうなってしまったのだろうか。
リベラがちゃんと、アリスを守ってくれるはずだ。
絶対、皆どこかで無事に生きている。
そう、信じるしかない。
「大丈夫ですよ、エリーゼ。
あなたは僕が絶対に守ります」
「うん……ありがと」
俺は再びエリーゼを抱きしめる。
「痛い痛い痛い! 何で急に?!」
「いつまで抱いてるつもりよ!」
「理不尽すぎませんか!?」
いい感じの雰囲気だったのに、頬をグーで押された。
俺は何の下心もなく慰めていただけなのに。
とにかく、この子だけは命を懸けて守らなければならない。
ランスロットとシャルロッテに守られてばかりではなく、俺も彼女を守る側になるのだ。
明日から始まるボスミノタウロスの討伐任務も、必ず成功させる。
---
「よし、行くわよ!」
昨晩の涙がまるで嘘であったかのように、エリーゼは元気を取り戻した。
「……」
一方、俺は寝不足である。
ただでさえ狭いテントの中で、寝相の悪いエリーゼと寝たのだ。
ほぼ30分ごとに目を覚ますくらい、寝付けなかった。
おかげでいつもの半分くらいしか目が開かない。
当の本人は全く悪びれている様子もなく。
まあ、そんなに責めるほどのことでもないからいいけど。
「ベル、大丈夫か?」
「歩いているうちに目は覚めると思うので、大丈夫です」
「無理はしないでくださいね。
死なれても困るので」
「そう簡単には死にませんよ」
「油断はいけません。
ボスミノタウロスは、天大陸に存在する魔物の中でも上位に入るくらい強いので。
舐めてかかってしまえば、秒殺されますよ」
そんなに強いのか。
何か怖くなってきた。
ミノタウロス自体、普通に手強い魔物だ。
ランスロットのおかげで難なく勝てているが、一人で戦うとなると不安だ。
今回もランスロットがいるし、聖級魔術師のシャルロッテもいるから、負けないとは思うが……
ボスミノタウロスの肉も美味いのだろうか。
ここ数日ぶっ倒れていたせいであまり満足に食事ができなかったから、
この任務をこなしてご馳走を食べたい。
報酬は確か翡翠銭10枚だったはずだし、割といいものが食えるんじゃなかろうか。
木々が生い茂る森の中を、どんどん進んでいく。
不気味なくらいに魔物が出てこない。
おかしいな。
ランスロットの話だと、この森は強い魔物がたくさん潜んでいるとのことだったが。
道中で体力を使い果たしてボス戦の分の体力が残っていない、なんてことになるよりはマシか。
「二人とも、ボスミノタウロスと戦った経験はあるんですか?」
「俺は一度だけある。
だが、もう何十年も前の話だ。
もうほとんど覚えていない」
「私はないです。
本で読んだことがあるだけなので」
となると、全員初見攻略みたいなものか。
熟知している相手と戦うのは、リスクはないが面白みもない。
強敵と戦う時は、やはり相手の攻撃パターンを覚えることが重要である。
これはアクションゲームと同じ道理だ。
最初は守りに徹し、ある程度パターン化してから攻撃を仕掛けるのが一番いいとは思うが、
うちには敵を見ると止まらなくなってしまう暴走機関車がいるからな……。
まあ、最悪撤退するという選択肢もある。
命よりも大事なものはないからな。
一度任務に失敗しただけで降格するなんてことはまずないだろうし、「戦略的撤退」という名目で逃げるという手もありっちゃありだ。
「――魔物だ。気を付けろ」
「はい」
草の中を何かが動く音がする。
木も草もボーボーのこの森の中は、かなり視界が悪い。
そのため、各々が多方面を警戒することが大事だ。
音は、右からか。
先手必勝だ。
「『岩弾』!」
杖先から、岩の弾丸が一発。
ビンゴだ。
魔物の断末魔が、森に木霊する。
バカヤロ!
そんな声出したらもっと魔物が寄ってきちまうだろうが!
「……群れよ」
虎のような魔物の群れが、ゆっくりと俺達を囲むように歩いてきた。
数としては、八体くらいか。
「シャルロッテは、自分の身を守るのに専念しろ。
ここは俺達三人でやる」
「分かりました」
魔術師の欠点としては、狭いところや視界の悪いところでは魔術が使えないところだ。
特に俺は火魔術師、シャルロッテは雷魔術師。
俺達二人がこの中で魔術を使ってしまえば、大火事になるかもしれない。
水魔術で消火すればいいのだが、戦っている間に燃え広がりかねない。
一応、念のため控えたほうがいいだろう。
もし二人がやられるという非常事態が起こった時には、俺とシャルロッテも動く。
「黒炎!」
エリーゼの剣が、赤黒い炎を纏う。
襲い掛かろうと体勢を低くする虎よりも先にエリーゼは動き、洗練された動きで一気に二体の魔物を斬り捨てた。
……俺も負けていられない。
「風破!」
飛び掛かってきた虎を横っ飛びでかわし、風中級魔術である『ウィンドブレイク』を放つ。
風魔術は、あまり技によって形が変わる魔術ではない。
変わるのは単純な威力くらいだ。
俺の手から放たれた風は、虎を斬り刻む。
ここで、俺は地面を蹴って飛び出した。
俺が目指しているのは、前衛型の魔術師。
遠くから前衛をアシストするだけでは、後衛型も同然。
近接戦闘も覚えなければ、いつまで経っても強くはなれない。
「『風破』!」
もう一度、至近距離で虎に『ウィンドブレイク』をお見舞いする。
虎は叫び声を上げて、爆発するように散っていった。
これで、あと五体……。
「あれ?」
「終わった。進むぞ」
周りを見渡すと、もう虎の魔物はどこにもいなかった。
ランスロットが、全部やってしまったのか。
エリーゼが2体、俺が1体、そしてランスロットは5体……。
やっぱりレベルが違うな。
ランスロットって、どのくらい強いんだろうか。
世界的に見て、という意味だ。
世に知られている有名な戦士といえば、まず第一に『七神』が出てくる。
世界最強の七人と謳われる戦士たちの対角にいるのが、『九星執行官』の九人だ。
そんな人達と張り合えるくらいの強さがあるのだろうか。
まだ本気で戦っているところは見たことがないから、何とも言えないが。
もし仮にランスロットが『七神』レベルの強さを誇るなら『七神』に数えられているはずだ。
だから、流石にそこまでの強さはないんだろう。
それでも、かなりの実力者であることは確かだ。
「ベルもエリーゼも、そんなに小さいのにすごく強いですよね。
ご両親から鍛えられてきたんでしょう」
「あたしのお父さんはすっごいんだから!
なんたって、『剣神道場』で『剣神』から剣を教わって、『剣帝』の称号を授かるくらいなのよ!
あと小さいって何よ!」
エリーゼはぷんすか怒っている。
「あたしの」、か。
――相当ルドルフが好きなんだな。
二人は一度だけ激しめの喧嘩もしたが、それでもエリーゼはルドルフのことを心から尊敬している。
もちろん、俺も尊敬している。
戦士としても、一人の人間としても。
「さて、行きましょうか。
最奥までどのくらいあるか分かりませんが、頑張りましょう」
「期限は受注から二週間ですけど、過ぎてしまったら任務は失敗扱いになるんですか?」
「もちろんだ。まあ、そんなに時間はかからないはずだ。
丸一日歩けば辿り着く」
あれ、意外と……じゃねえよ。
丸一日歩き続けられるわけがない。
竜人族はタフすぎる。
「私とランスロットは大丈夫でしょうが、この子達は人族の子供です。
休みながら行った方がいいでしょう。
その方が、体力も温存出来ていいですし」
「あたしも別に大丈夫よ」
どうやら、このパーティに人族は俺だけらしい。
エリーゼは昔からタフな子なんだよな。
本当に俺と同じ人族なのだろうか。
とにかく、少しずつでも進み続けるしかない。
とっととボスを撃破して、たらふくご馳走を食べるんだ。
もう何日も、まともなもの食べてないし。
しかし着いた時にはもう日は落ちていたため、野宿をすることにした。
テントは既に張り終わり、後は寝るだけである。
今は、エリーゼと二人でテントの中で横になっているところだ。
「ラニカ村から転移して、もう一週間くらい経ったわね」
「もうそんなに経ちますか」
一週間と少し前までは、俺達はまだラニカ村で平和な暮らしをしていたのか。
そう思うと、今こうして異国の地にいることが信じられない。
一週間前の俺に、「お前はもう少ししたら天大陸で冒険者をやりことになるんだぞ」なんて伝えたら、どんな顔をするだろうか。
ここは異世界なんだから、タイムマシンとかあってもおかしくはないような気がする。
いや、流石にないか。
「……お父さんとお母さん、無事でいるかしらね」
「そう信じて祈るしかできませんからね」
「……嘘でもいいから、『きっと無事だ』って言いなさいよ」
「その時は安心できるかもですけど、もし無事じゃなかった時のダメージが大きいですから。
もちろん、二人は絶対に生きてますよ」
「――」
「……あの二人に限って、簡単に死ぬわけないじゃないですか」
「…………そうよね。ありがと」
ロトアとルドルフは、きっと無事だ。
その他の村の住民、そしてアヴァンの住民はどうなっただろうか。
あの隕石は、確実にアヴァンの街に衝突した。
広がっていった光は、あっという間に俺達の村も飲み込んだ。
言わずとも、もう分かる。
グレイス王国は、滅亡しているだろう。
「――あたしの家族も、きっと無事よね」
「――」
――そうだった。
王国が滅びたということは、エリーゼの家族も世界のどこかに転移したと考えられる。
探さなければならないのは、ルドルフとロトアだけではない。
この子の家族も、見つけなければならないのだ。
「先に、謝っておくわ」
「何をですか?」
「……急に、ごめんなさい」
エリーゼはそう言うと、突然俺の胸に顔をうずめてきた。
そして、俺の胸が熱くなるのを感じた。
これは、慣用句的な意味合いではない。
「エリーゼ……」
エリーゼは、俺の胸の中で泣いていた。
声を押し殺して、肩を震わせてなくエリーゼの肩を、俺は恐る恐る抱いた。
家族の安否が分からないというのは、とても不安だろう。
俺も、エリーゼの家族には優しくしてもらった。
テペウスには本を買ってもらったし、パーヴェルとジェラルドとも仲良くなった。
買ってもらった本のおかげで、俺は魔人語をマスターすることができた。
グレイス家の皆も、心配だ。
そして、俺達と一緒の方向に逃げていたリベラとアリス。
エリーゼの師匠と俺の妹も、どうなってしまったのだろうか。
リベラがちゃんと、アリスを守ってくれるはずだ。
絶対、皆どこかで無事に生きている。
そう、信じるしかない。
「大丈夫ですよ、エリーゼ。
あなたは僕が絶対に守ります」
「うん……ありがと」
俺は再びエリーゼを抱きしめる。
「痛い痛い痛い! 何で急に?!」
「いつまで抱いてるつもりよ!」
「理不尽すぎませんか!?」
いい感じの雰囲気だったのに、頬をグーで押された。
俺は何の下心もなく慰めていただけなのに。
とにかく、この子だけは命を懸けて守らなければならない。
ランスロットとシャルロッテに守られてばかりではなく、俺も彼女を守る側になるのだ。
明日から始まるボスミノタウロスの討伐任務も、必ず成功させる。
---
「よし、行くわよ!」
昨晩の涙がまるで嘘であったかのように、エリーゼは元気を取り戻した。
「……」
一方、俺は寝不足である。
ただでさえ狭いテントの中で、寝相の悪いエリーゼと寝たのだ。
ほぼ30分ごとに目を覚ますくらい、寝付けなかった。
おかげでいつもの半分くらいしか目が開かない。
当の本人は全く悪びれている様子もなく。
まあ、そんなに責めるほどのことでもないからいいけど。
「ベル、大丈夫か?」
「歩いているうちに目は覚めると思うので、大丈夫です」
「無理はしないでくださいね。
死なれても困るので」
「そう簡単には死にませんよ」
「油断はいけません。
ボスミノタウロスは、天大陸に存在する魔物の中でも上位に入るくらい強いので。
舐めてかかってしまえば、秒殺されますよ」
そんなに強いのか。
何か怖くなってきた。
ミノタウロス自体、普通に手強い魔物だ。
ランスロットのおかげで難なく勝てているが、一人で戦うとなると不安だ。
今回もランスロットがいるし、聖級魔術師のシャルロッテもいるから、負けないとは思うが……
ボスミノタウロスの肉も美味いのだろうか。
ここ数日ぶっ倒れていたせいであまり満足に食事ができなかったから、
この任務をこなしてご馳走を食べたい。
報酬は確か翡翠銭10枚だったはずだし、割といいものが食えるんじゃなかろうか。
木々が生い茂る森の中を、どんどん進んでいく。
不気味なくらいに魔物が出てこない。
おかしいな。
ランスロットの話だと、この森は強い魔物がたくさん潜んでいるとのことだったが。
道中で体力を使い果たしてボス戦の分の体力が残っていない、なんてことになるよりはマシか。
「二人とも、ボスミノタウロスと戦った経験はあるんですか?」
「俺は一度だけある。
だが、もう何十年も前の話だ。
もうほとんど覚えていない」
「私はないです。
本で読んだことがあるだけなので」
となると、全員初見攻略みたいなものか。
熟知している相手と戦うのは、リスクはないが面白みもない。
強敵と戦う時は、やはり相手の攻撃パターンを覚えることが重要である。
これはアクションゲームと同じ道理だ。
最初は守りに徹し、ある程度パターン化してから攻撃を仕掛けるのが一番いいとは思うが、
うちには敵を見ると止まらなくなってしまう暴走機関車がいるからな……。
まあ、最悪撤退するという選択肢もある。
命よりも大事なものはないからな。
一度任務に失敗しただけで降格するなんてことはまずないだろうし、「戦略的撤退」という名目で逃げるという手もありっちゃありだ。
「――魔物だ。気を付けろ」
「はい」
草の中を何かが動く音がする。
木も草もボーボーのこの森の中は、かなり視界が悪い。
そのため、各々が多方面を警戒することが大事だ。
音は、右からか。
先手必勝だ。
「『岩弾』!」
杖先から、岩の弾丸が一発。
ビンゴだ。
魔物の断末魔が、森に木霊する。
バカヤロ!
そんな声出したらもっと魔物が寄ってきちまうだろうが!
「……群れよ」
虎のような魔物の群れが、ゆっくりと俺達を囲むように歩いてきた。
数としては、八体くらいか。
「シャルロッテは、自分の身を守るのに専念しろ。
ここは俺達三人でやる」
「分かりました」
魔術師の欠点としては、狭いところや視界の悪いところでは魔術が使えないところだ。
特に俺は火魔術師、シャルロッテは雷魔術師。
俺達二人がこの中で魔術を使ってしまえば、大火事になるかもしれない。
水魔術で消火すればいいのだが、戦っている間に燃え広がりかねない。
一応、念のため控えたほうがいいだろう。
もし二人がやられるという非常事態が起こった時には、俺とシャルロッテも動く。
「黒炎!」
エリーゼの剣が、赤黒い炎を纏う。
襲い掛かろうと体勢を低くする虎よりも先にエリーゼは動き、洗練された動きで一気に二体の魔物を斬り捨てた。
……俺も負けていられない。
「風破!」
飛び掛かってきた虎を横っ飛びでかわし、風中級魔術である『ウィンドブレイク』を放つ。
風魔術は、あまり技によって形が変わる魔術ではない。
変わるのは単純な威力くらいだ。
俺の手から放たれた風は、虎を斬り刻む。
ここで、俺は地面を蹴って飛び出した。
俺が目指しているのは、前衛型の魔術師。
遠くから前衛をアシストするだけでは、後衛型も同然。
近接戦闘も覚えなければ、いつまで経っても強くはなれない。
「『風破』!」
もう一度、至近距離で虎に『ウィンドブレイク』をお見舞いする。
虎は叫び声を上げて、爆発するように散っていった。
これで、あと五体……。
「あれ?」
「終わった。進むぞ」
周りを見渡すと、もう虎の魔物はどこにもいなかった。
ランスロットが、全部やってしまったのか。
エリーゼが2体、俺が1体、そしてランスロットは5体……。
やっぱりレベルが違うな。
ランスロットって、どのくらい強いんだろうか。
世界的に見て、という意味だ。
世に知られている有名な戦士といえば、まず第一に『七神』が出てくる。
世界最強の七人と謳われる戦士たちの対角にいるのが、『九星執行官』の九人だ。
そんな人達と張り合えるくらいの強さがあるのだろうか。
まだ本気で戦っているところは見たことがないから、何とも言えないが。
もし仮にランスロットが『七神』レベルの強さを誇るなら『七神』に数えられているはずだ。
だから、流石にそこまでの強さはないんだろう。
それでも、かなりの実力者であることは確かだ。
「ベルもエリーゼも、そんなに小さいのにすごく強いですよね。
ご両親から鍛えられてきたんでしょう」
「あたしのお父さんはすっごいんだから!
なんたって、『剣神道場』で『剣神』から剣を教わって、『剣帝』の称号を授かるくらいなのよ!
あと小さいって何よ!」
エリーゼはぷんすか怒っている。
「あたしの」、か。
――相当ルドルフが好きなんだな。
二人は一度だけ激しめの喧嘩もしたが、それでもエリーゼはルドルフのことを心から尊敬している。
もちろん、俺も尊敬している。
戦士としても、一人の人間としても。
「さて、行きましょうか。
最奥までどのくらいあるか分かりませんが、頑張りましょう」
「期限は受注から二週間ですけど、過ぎてしまったら任務は失敗扱いになるんですか?」
「もちろんだ。まあ、そんなに時間はかからないはずだ。
丸一日歩けば辿り着く」
あれ、意外と……じゃねえよ。
丸一日歩き続けられるわけがない。
竜人族はタフすぎる。
「私とランスロットは大丈夫でしょうが、この子達は人族の子供です。
休みながら行った方がいいでしょう。
その方が、体力も温存出来ていいですし」
「あたしも別に大丈夫よ」
どうやら、このパーティに人族は俺だけらしい。
エリーゼは昔からタフな子なんだよな。
本当に俺と同じ人族なのだろうか。
とにかく、少しずつでも進み続けるしかない。
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