空中転生 - 落ちこぼれニート、空の上でリスポーンしました -

蜂蜜

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第4章 少年期 アラキア編

第七十八話「招待状」

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 翌日。
 俺は、エリーゼとエルシアと共に、商業区にある武器屋へと向かった。
 そう、ついにエリーゼの剣を買うのだ。

 俺だけついて行っても、剣のことは何も分からない。
 だから、「聖剣道場」出身の超エリート剣士の目利きに頼ることにした。

「ここかな?」

 辿り着いたのは、これまた金色の建物。
 もしかして、武器も全部純金で出来てたりするのか。
 マイン〇ラフトなら、金の武器は木と同じ強さだから弱いぞ。

 中に入り、周りを見回す。
 流石に、純金の武器はないか。
 やっぱ弱いのかな。

 客は、俺たち以外に一人のみ。
 小さな子供だろうか。
 身長は俺と同じくらいで、少し太っている。 

「エリーゼが使ってた剣って、大剣って感じじゃなかったよね」
「そうね。エルシアの剣みたいな感じの剣じゃないわ」

 エルシアの『風龍剣』は、かなり大きい。
 『海王』と戦った時に一度あれで斬りかかったが、小さな体では一振りが限界だった。

 対して、エリーゼが使っていた剣。
 四年前にテペウスが買い与えた、エリーゼの宝物。
 あれはそこまで大きい剣ではないものの、普通に大人が使う剣と同じサイズのものだった。
 当時のエリーゼの体の大きさから考えても、よく使いこなせていたな。
 やっぱり、剣才に関しては非凡なものがあるのだろう。

「となると、前と同じくらいの大きさの剣がいいよね。
 うわぁ、前の剣を持ってくればよかったね」
「本当ですね」
「大丈夫よ。大体の大きさは覚えてるから」

 すごく、大事にしていたしな。
 戦う時は常に使っていたし、毎日剣の手入れは欠かさずやっていた。
 次に買う剣も、きっと大切にするだろう。
 俺のことも剣くらい大切に扱ってほしいものだ。

 エルシアとエリーゼは、俺には分からない剣のことについて色々話している。
 まるで違う言語を聞いているみたいな感覚だ。
 俺とシャルロッテが魔術の話をしている時も、エリーゼはこんな気持ちだったのだろうか。

 二人の会話をBGM程度に聞きながら、二人について行く。
 ……俺、来た意味あるのか?

「ねえ、エルシア」
「ん?」
「あたし、エルシアみたいに二刀流になろうかしら」
「――」

 聴いていたBGMが止まった。
 その言葉だけは、はっきりと聞き取れた。

「あの剣も、摩耗してるとはいえまだ使えないことはないでしょ。
 打ち直したり、焼き直しでもしてもらえば使えるわ」
「うーん、まあそれはそうなんだけど……」

 エルシアは少し悩むような素振りを見せる。
 何か渋る理由があるのか。

「わたしの場合はね、普通の風属性の剣術じゃないんだ。
 道場で『風龍剣』を譲り受けてから、あの剣の能力に合うように技を改変したの」

 え、そうだったのか。
 ずっと風剣術だと思っていた。
 まあ、剣を振り回すだけで風の斬撃が飛んでいたしな。

「だから、今までエリーゼが身に着けてきた剣術が水の泡になるかもしれないってこと」
「そう。ならいいわ」
「……え、いいの?」
「ええ。せっかくリベラとお父さんに教わった剣術が無駄になるくらいなら、普通に一本でいいわ」

 エリーゼ……。
 本当に、家族思いだな。

 テペウスから買ってもらった剣も頑なに手放そうとしなかったし、
 リベラやルドルフに教わったものも大切にしようとしている。
 このことをあの二人が聞いたら、きっと喜ぶぞ。

「なら、この剣とかいいんじゃないかな。
 この石の色、エリーゼにピッタリだし」

 そう言って、エルシアは一本の剣を手に取った。
 柄頭に、赤い宝石が埋め込まれている。
 これ、魔石か?

「いいわね、この剣! あたしも気に入ったわ!」
「ゲッ、値段が……」

 エルシアはそう言って、値段が書いてある札を見る。
 俺たちがランスロットにもらった金では、到底足りない。
 資金力があるなら、物価も安くしてくれよな。

「その剣が欲しいのかい?」
「そうなんですよぉ。何とか安くなりませんかねぇ?」

 エルシアは値切り交渉に入った。
 そんな舐めた態度で値下げなんてしてくれるわけないだろう。

「姉ちゃんたち可愛いから、半額にしてあげるよ」
「やったー!」
「ありがと、エルシア!」

 …………解せぬ。
 やっぱり世の中、美人は得するんだな。

 俺がやっても断るくせによ!
 


「ただいま」
「帰ったか」

 あの後少し商業エリアを観光し、宿に戻った。

 剣は、持っていた金で何とか足りた。
 半額にしてもらっても足りなかったが、微々たるものだったため、さらに安く売ってくれた。
 結構よさげな剣なのに、あんな売り方して大丈夫だったのか?
 目玉商品だと言われても頷けるほどに、この剣は目立っていたぞ。

「良い剣を買ったな。金は足りたのか?」
「うん、まあ、ギリギリだったけどね」
「そうか。それなら良かった」

 ランスロットは、宿の床で地図を広げている。
 きっと、大陸を渡った後のことについて考えていたのだろう。

「ベル。お前宛てに手紙が届いている」
「手紙?」
「ああ。隣国のゼルドニア王国の王子からだ」
「えっ!?」

 とんでもない人からの手紙だった。
 なんか、怖いな。

 俺は恐る恐る手紙を開いた。

『親愛なるベル・パノヴァ殿。このたび、アラキアに滞在しておられる貴殿のことを耳にしました。
 かねてより旅人の話を好む私にとって、異国より訪れた方と語らう機会は望外の喜びでございます。
 つきましては、ささやかではありますが、わが客間にて茶会を設けたいと存じます。
 他国の風習や旅の話をうかがえれば幸いです。
 ご同行の方々にはご不便をおかけいたしますが、
 本席はあくまで「個人的な懇談」として設けたものであり、
 ご足労はベル殿お一人にお願い申し上げます。
 ――ゼルドニア王国第二王子 セディウス・リヴェル・ゼルドニア』

 と、手紙にはそう書いてあった。
 ほう、俺の英雄譚に興味があるか。
 中々見る目のある王子様だな。

「ゼルドニア王国っていうと、ここから近いんじゃない?」
「そうだな。馬があれば、二日もあれば行けるだろう」

 王子から直々の招待か。
 これが王女様なら最高だったんだが。
 まあ、一国の王子様がわざわざ直筆で手紙を寄越してくれたのだ。
 断るわけにもいかないだろう。

 二日で行けるなら、定期便の出航にも十分間に合うし。

「俺が、護衛として同行しよう」
「え、でも、『お一人にご足労願います』って……」
「あくまで、王子に謁見するのに一人で来いという意味だろう。
 それに、ゼルドニア王国まで行く道中で何があるか分からんからな」

 それはそうだ。
 ランスロットが来てくれるなら安心だな。
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