自分を取り戻した異世界にありがとう

すけきよ

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異世界?

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「おお!召喚されたぞ!」

野太い男性の声が聞こえた。
同じように、ガヤガヤと話し出す大人数の声。

突然明るくなった空間に、目をこすりながら起き上がる。

「...は?え?なに」

寝起きのボーッとした頭が、だんだん鮮明になるとともに驚きに変わる。
同じような白い洋風な装束を身にまとっている人間たちに囲まれている私。

皆、好奇な目で私を見る。
知らない人たちに、しかも同じような服に囲まれるって何?
宗教かなにか?
私の座っている床は、謎の模様が描かれており、天井は果てしなく高く、ステンドグラスが張り巡らされていた。

夢か?とも思ったけど、自覚できる夢って夢じゃないよねって冷静に判断する。

知らない人々に注目されて、知らない場所であり、無防備な私は怖くなり、謎の模様が描かれた床を見つめた。

必死に思考を巡らせる。
どういうこと?私、部屋にいたよね?ここどこ?なに?
何かされる?

コツコツコツ

近づく足音とともに、私の心臓の音はより一層速くなる。
周りの人々の話し声は止まり、静かな空間が広がった。

足音が止まり、私の目の前に差し出される男性の手。

「驚かせてしまい、すまない」

凜とした声が私の近くで鳴った。
恐る恐る顔を上げると、目の前には美しいとしか言えない男性。

整えられた銀色に輝く髪色は、天井から差す光でより輝きを増し、瞳は黄金色で吸い込まれそうなほどの美しい色だった。

初めて見る美しさの権化とも言える人に、動揺した。

「え、あっすみません」

差し出された手に申し訳なくなり、自身の手を置く。

パチン

頭の中で何か弾いた音がした。
だが不思議と痛みなどはなく、驚いて一瞬動きを止めてしまった。

「どうした?」

美しい男性が心配そうな顔で私を見つめる。

「大丈夫です、ありがとうございます...」

優しく私を支えてくれ、なんとか立つことが出来た。正直まだ腰を抜かしそうだが。

改めて、周りを見る。

建物の内装は、映画などに出てくる洋風な城と教会を足したようなもの。
建てられたばかりのように、古めかしさもなく傷や汚れの一つも無いようだった。
人々も白い洋風な装束の人ばかりではなく、鋼に包まれた明らかな騎士たち、豪華な装飾をされた杖を持った人もいた。
そして何より、建物の奥に玉座があり、重厚な雰囲気を醸し出す王と王女であろう人が座って、私たちを見据えていた。

一気に緊張感が増し、変な汗が出てくる。

「其方の名は?」

明らかに私の住んでいた世界と違う。
そんな異世界で私の本当の名を伝えても良いんだろうか?
味方が誰かもわからない、いないかもしれない世界で何かされるかもしれない。

「...柳瀬 セツです。」

考えた結果本当の名を隠し、偽名を名乗った。

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