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11.ここから直視点
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この世に生まれてすぐ、オレは前世の事を思い出した。
生まれる前に死ぬほど愛する人がいて、駆け落ち同然に逃げた末に命を絶ったことを。
膨大な記憶の量が赤ん坊の時に一気によみがえってきて、数日はその影響のせいで肺炎で死にかけたが、復活してからは見事に前世の名残か知らないが体が頑丈になった。
そして、幼いながらもすぐにでもその愛する人を探しに行こうと行動を開始したが、意外にもその人はすぐ近くに存在していた。
オレの前世での命より大切な最愛を。偶然にも隣の家に住んでいた。
今生での甲斐はオレの事を覚えていないようだった。オレは一目見てすぐにわかったのに。まあ、前世の記憶を持っている事自体が奇跡のようなモノだから、甲斐が覚えていなくても仕方がないっちゃ仕方がないのだが、少し寂しい。
でも嬉しい。甲斐とまた巡り合えた事が。
今度こそ前世で死ぬ間際に交した約束を果たす。幸せにするって事。甲斐がオレの事を忘れていても、また惚れさせるから。
しかし、唯一残念なのが甲斐が俺より年上だった事か。
あまり歳の差なんて関係ないと思うけれど、4つも下なせいか甲斐からは弟のように思われてしまっている。子供扱いまでされる始末で悔しい。前世の記憶がある分、こちらのほうが精神年齢は確実に上なのに。
だからはやく成長して大人になって、甲斐をいろんな意味で守れる男になって、確実に惚れさせてやると意気込んだ。
また今生ではオレにはしっかりした両親がいる事に驚いた。家族って温かいものだと知った。
前世では最低な父親と愛人みたいな義母がいて、家族なんてよくわからなかったけれど、優しくて厳しくてオレをちゃんと心配してくれるいい両親に恵まれて、前世がいかにクソな家族だったんだなと思い知った。
その一方で、甲斐の方は家族に恵まれなかった。
両親が妹贔屓を繰り返す毒両親で、妹は男癖の悪いぶりっ子性悪女だった。
毎日妹にお気に入りの物を取られていたり、甲斐が毒両親に理不尽に怒鳴られていたりするのを見ているのが辛かった。
時々、甲斐を助けてあげたり、糞妹と糞両親をあの手この手で黙らせたりしているのだが、奴らは全く懲りないどころか逆に甲斐に対してもの当たりがひどくなる一方だった。
オレの両親にも言って児童相談所にも何度か相談してもらったが、奴らは言い逃れする事に関しては一丁前で、あの手この手と使ってごまかす。
相談員も所詮はお役所仕事の一環で、糞一家の言い分を鵜呑みにしてなんの対策もしない。面倒事にはできる限り首を突っ込みたくないのが見え見え。大人達はやはり前世と同じで事なかれ主義ばかりだ。
そもそも、オレがまだ小さいから。子供だと侮られて一蹴されてしまうからだ。
甲斐を守りたいのに、ただの子供じゃうまく立ち回れなくて何もできない。
地位も権力もない一般人に生まれた事は嬉しいのに、甲斐を守れない事にイライラする。
もう奴らに何を言っても無駄。甲斐を妹の引き立て役の道具にしか思ってない。八つ当たりするのが生きがいなんだろう。厚かましい最低な下衆な奴らだ。
ならば、自分で権力と地位を築きあげて黙らせるしかないか。
前世での御曹司としての知識をフル活用させて、甲斐とオレの幸せな世界を誰にも邪魔されないよう自分でその柱を作ってやる。外堀を埋めながら。
それからオレは甲斐との幸せな未来のために、五歳くらいから勉強を始めた。前世の知識と記憶を持つオレからすれば勉強などいらないようなものだが、経験と周りへの見せしめが必要だったので、仕方なく大人顔負けの実力を見せつけた。
小学校に入学する前からお坊ちゃま校への推薦がかなり来ていたが、まだ目立つには早すぎると普通の公立小を選んだ。
「直くぅ~ん!」
「……チッ、うぜぇのがきた」
生まれる前に死ぬほど愛する人がいて、駆け落ち同然に逃げた末に命を絶ったことを。
膨大な記憶の量が赤ん坊の時に一気によみがえってきて、数日はその影響のせいで肺炎で死にかけたが、復活してからは見事に前世の名残か知らないが体が頑丈になった。
そして、幼いながらもすぐにでもその愛する人を探しに行こうと行動を開始したが、意外にもその人はすぐ近くに存在していた。
オレの前世での命より大切な最愛を。偶然にも隣の家に住んでいた。
今生での甲斐はオレの事を覚えていないようだった。オレは一目見てすぐにわかったのに。まあ、前世の記憶を持っている事自体が奇跡のようなモノだから、甲斐が覚えていなくても仕方がないっちゃ仕方がないのだが、少し寂しい。
でも嬉しい。甲斐とまた巡り合えた事が。
今度こそ前世で死ぬ間際に交した約束を果たす。幸せにするって事。甲斐がオレの事を忘れていても、また惚れさせるから。
しかし、唯一残念なのが甲斐が俺より年上だった事か。
あまり歳の差なんて関係ないと思うけれど、4つも下なせいか甲斐からは弟のように思われてしまっている。子供扱いまでされる始末で悔しい。前世の記憶がある分、こちらのほうが精神年齢は確実に上なのに。
だからはやく成長して大人になって、甲斐をいろんな意味で守れる男になって、確実に惚れさせてやると意気込んだ。
また今生ではオレにはしっかりした両親がいる事に驚いた。家族って温かいものだと知った。
前世では最低な父親と愛人みたいな義母がいて、家族なんてよくわからなかったけれど、優しくて厳しくてオレをちゃんと心配してくれるいい両親に恵まれて、前世がいかにクソな家族だったんだなと思い知った。
その一方で、甲斐の方は家族に恵まれなかった。
両親が妹贔屓を繰り返す毒両親で、妹は男癖の悪いぶりっ子性悪女だった。
毎日妹にお気に入りの物を取られていたり、甲斐が毒両親に理不尽に怒鳴られていたりするのを見ているのが辛かった。
時々、甲斐を助けてあげたり、糞妹と糞両親をあの手この手で黙らせたりしているのだが、奴らは全く懲りないどころか逆に甲斐に対してもの当たりがひどくなる一方だった。
オレの両親にも言って児童相談所にも何度か相談してもらったが、奴らは言い逃れする事に関しては一丁前で、あの手この手と使ってごまかす。
相談員も所詮はお役所仕事の一環で、糞一家の言い分を鵜呑みにしてなんの対策もしない。面倒事にはできる限り首を突っ込みたくないのが見え見え。大人達はやはり前世と同じで事なかれ主義ばかりだ。
そもそも、オレがまだ小さいから。子供だと侮られて一蹴されてしまうからだ。
甲斐を守りたいのに、ただの子供じゃうまく立ち回れなくて何もできない。
地位も権力もない一般人に生まれた事は嬉しいのに、甲斐を守れない事にイライラする。
もう奴らに何を言っても無駄。甲斐を妹の引き立て役の道具にしか思ってない。八つ当たりするのが生きがいなんだろう。厚かましい最低な下衆な奴らだ。
ならば、自分で権力と地位を築きあげて黙らせるしかないか。
前世での御曹司としての知識をフル活用させて、甲斐とオレの幸せな世界を誰にも邪魔されないよう自分でその柱を作ってやる。外堀を埋めながら。
それからオレは甲斐との幸せな未来のために、五歳くらいから勉強を始めた。前世の知識と記憶を持つオレからすれば勉強などいらないようなものだが、経験と周りへの見せしめが必要だったので、仕方なく大人顔負けの実力を見せつけた。
小学校に入学する前からお坊ちゃま校への推薦がかなり来ていたが、まだ目立つには早すぎると普通の公立小を選んだ。
「直くぅ~ん!」
「……チッ、うぜぇのがきた」
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