【完】初恋相手が皇子とか勘弁しておくれよ

いとこんドリア

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9.チャラ男公爵

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「何してんの~?」

 私が舞踏会の会場近くで掃除やら雑用などをこなしていると、軍服のような格好をした長身の男性が声をかけてきた。撫でつけられた金髪にワインレッドの瞳。とても整った顔の男だ。

 見かけからして爵位の高い貴族だろうが、三角頭巾をつけた汚れた作業着の私によく声をかけたものだと思う。先ほどまで小汚い下働きだと指をさされて貴族共に笑われていたのに。ちょっとムカついたけど。さっきまで厨房で油を運んだりして見た目はかなり汚いから笑われても仕方がないけどさ。

「掃除ですけど。まだやり残した場所がありまして」
「若い女の子がこんな日くらい遅くまで働く事ないっしょ。舞踏会に参加しないのー?」
「参加したくてもドレスがないもので」
「え、ドレス持ってないってマジ?」

 それが不思議だと言わんばかりな反応だ。金の心配しなくていい奴はお気楽でいいものである。

「本当ですよ。山育ちなもので」
「山育ち……へぇ……。この近辺の若い女の子宛全てに招待状送ったって聞いたけど、ドレスを持ってないそーゆー貧しい子もいるんだぁ。庶民の生活って大変そぉ」
「……まあ、はい」

 庶民がそう簡単にドレスを手に入れられる家そのものが珍しいんですど。

「そりゃあ来てほしいのに来てくれない事情もあるってわけか。なるほどー。貧しい農村に住んでる娘だと難しいよねー」

 金髪の人は頭をかきながら「哀れだなーアイツ」と呟いていた。何を言っているのかよくわからない。

「あの、どーゆーことで?」
「あー俺の親戚の奴がね~どうしても会いたい女の子がいるみたいでさ。なんとか来させようとはしてたんだけど、一向に現れてくれなくてヤキモキしてるって話」
「ふーん……そうなんですか。それなりに高価なドレスがないと参加できませんもんね」
「キミ宛にも招待状が届いたんじゃないの?」
「たしかに毎年届いてました。でも、私にはドレスがないし、帝都まで行く余裕もなかったです。それに好きな人がいるので男女の出会いには興味がなかったんすよ」
「へー好いた男がいんの。そりゃあ出会いを求める夜会なんて参加する気にならないよねー」
「そういう事です。ところであなたは……?」
「おっとゴメンゴメン!若い女の子相手に名乗りもせず失礼だったね。俺はフレッド。フレッド・アノーア・デューク」
「私はカーリィ・ヒューズです……って、デュークって公爵の方だったんですか!そ、そうとは知らずすんません!」

 上位クラスの貴族じゃないか。慌てて自分が無礼を働いたのではないかと不安になり頭を下げる。不敬を働いて仕事をクビになりたくないからな。

「別にいーよ。キミ、結構俺のタイプだし」
「へ……タイプ?」
「あーいやなんでもない。俺ね、平民だろうと貴族だろうと俺は差別しない方でさ、そんじゃそこらのステレオタイプのバカ貴族とちゃうし。じゃなかったら始めから声かけてねーもん。それに俺は人の見る目だけはある方だよ。キミは可愛い。ドレス姿じゃなくてもね。胸を張りなよ」
「は、はあ……ありがとうございます」

 可愛いだなんて言われた事がないので、言われて初めて嬉しいようなむず痒いような、なんだか変な気分だ。

 何にせよ、悲しくはなるがこんな自分が可愛いなんて到底思えないので、きっと社交辞令のようなものだろうと取っておく。地味でガサツで男勝りな自分なんか、世間からすれば魅力になんて映らない。卑屈な考えだけど、村に住んでいた時に散々近所の悪ガキ共に筋肉貧乳ブスだとか、嫁の貰い手いねーぞって言われていたので、本当にそうなんだとそれが染みついている。今更その考え方はなかなか覆らないのだ。

「えーとカーリィちゃん、だったね。自分にもっと自信を持ちなよ。キミは磨けば光るような可愛い顔してんだから」
「フレッドサマ、でも……磨ける機会がないといいますかね……私、磨くってよくわからなくて」
「んじゃ、俺が磨ける機会を与えてあげる!任せといて!」

 茶目っ気たっぷりにウインクをして見せるフレッドサマとやら。伸びてきた手をわけもわからず握られて引かれる。

「さあ、おいで。俺がキミを今から国一番のお姫様にしてあげる」
「あ、ちょ、ちょっと!私はまだ仕事の途中でして……」
「今から自分を磨きに行くのが仕事だよ。ほらほら行くよーん。あと、俺の事は様付けはなしにして。キミにはそう呼ばれたくないの」
「は、はぁ……ワカリマシタ。フレッドサン」

 フレッドさんという恐れ多くも公爵の方に連れてこられた場所は、どこかの広い衣装部屋だった。
 女性らしいピンク色の内装に豪勢な可愛いらしい鏡台。クローゼットというモノの中にはたくさんの色とりどりのドレスが並んでいる。

 うわああすごい豪華な部屋だなぁ。視界全部がキラキラしてて、女の子らしい可愛い部屋だ。この部屋全体にいい匂いもするし。こんな華やかな部屋見たことがない。

 茫然としている私を鏡台の前に座らせて、フレッドさんは自分専属の侍女に、

「この国一番のお姫様みたいにしてやって」なんて言っている。

 あわわ、いいんですか。本当にいいんですか。私そんな着付け代のお金持ってませんよなんて言えば、フレッドさんは爆笑して「曲がりなりにも公爵だから。金死ぬほどあるから。奢ってあげる」と言われた。

 それならいいのか?あとで請求してくんなよとオドオドしながらあれやこれやと着せかえされて、化粧も施されていった。

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