【完】初恋相手が皇子とか勘弁しておくれよ

いとこんドリア

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37.暗澹たる先行き

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 あれから激しく愛し愛されて、快楽の多幸感に理性が飛んでいたが、冷静に時計を見たらそろそろ夕暮れ時だった。

 そろそろ誰かが来るかもしれない。と、情事冷めやらぬ体だけど制服を着ようとしたらノア君の上着を羽織らされた。彼のにおいがしみついたシャツはなんだか嬉しい。嬉しいけど服を着たいんだけどなぁ。

 そんなノア君は私を膝に乗せて、抱き寄せながら頬や髪にキスを落とし続けている。鼻をすんすんとして、犬のように私の肌のにおいを嗅いでいる。

 普段は猫みたいに気まぐれなのに、二人きりになると大型犬のようだ。もちろん可愛いと思っちゃったけど。

「服、着ないと……」

 未だに全裸で肩にノア君のシャツを羽織っているだけで心もとない。あんなにすごい事をしておいて今更だけど、理性を取り戻すと恥ずかしさは湧き上がってくるのだ。

「まだ大丈夫だろ。カーリィを眺めて触っていたいし」
「ちょ、のあくんっ。ひゃ」

 そう言いながら、背後からノア君の手がふにふにと私の胸や乳首を揉みまわしてくる。全く助平な奴なんだから。

「感じやすいカラダだな」
「そうしたのはノア君のせいじゃんか」 
「そうだな。俺がそうした。そういえば薬飲んだ?」
「あとで飲むけど」

 ノア君とスルようになってから避妊薬を飲むようになった。妊娠しちゃったら大変な事になっちゃうし、皇太子の子供だなんてバレたら大騒ぎどころではなくなる。

 国中を巻き込んでの大混乱になるだろうし、皇位継承権争いに嫌でも巻き込まれる未来が手に取るように分かる。だから、働いているからこそ妊娠には気を付けている。あの初体験の後もすぐに飲んで事なきを得たけど、飲んでなければ今頃妊娠していただろう。だけど――……

 ノア君の赤ちゃんか。

 ほしいなとかちょっとだけ思っているのも事実だ。好きな人の子供だから。妊娠したくないけど、孕んでほしいとも願ってしまう私はいけない女だ。

「カーリィ?」
「な、なんでもないよ。妊娠したら大変だなって思って」
「俺は……したら嬉しいけど」
「ノア君」
「俺とカーリィの子供なら可愛いだろうからデキたら素直に嬉しいよ」
 
 ノア君はこう言ってくれている。皇太子と平民の間の子とか、跡目争いとか、そういうのを抜きにして、もしも子供が出来ても可愛がってくれるという事実が嬉しかった。

「でも、しばらくはカーリィを独り占めしたいから、今はいい。この時が幸せだから」
「っ、私も……幸せ」

 ぎゅっとノア君のたくましい胸にしなだれかかると、ノア君がぎゅっと抱きしめてくれる。好きなにおいと体温に包まれて、より幸福感に包まれる。
 
 考えたくないけれど、この幸せはいつまで続くのかな――……

 私は、いつまでノア君のそばにいられるのかな。いつか、離れちゃうことになるのだろうか。

 いつまでもただの皇太子と掃除婦という立場が変わらないはずがない。彼は次期皇帝陛下。皇位継承権第一位だ。彼が即位した時、彼の隣には私以外の令嬢がいるんだろうか。その時、私はどうなっているんだろうか――……。

 惨めに寂しく村娘してるのかな。それとも、ずっとここで奉公して独身を貫き通して生きていくのかな。

 やだな……大好きなノア君と離れ離れになっちゃうなんて……。


「ねえ……ノア君」
「ん……」
「この先の事なんだけど。私……」

 嫌でもやってくる未来への不安とこの先の事を吐露しておきたい。

「考えたくない」
「え」

 すぐ返ってきた即答に私は呆気にとられる。
 
「考えたくないって言ってんだ」
「それでもいつまでもこんな関係は」
「ずっとそばにいてくれるだけでいい」

 それだけでこれからも元気で生きていける糧となると、彼はそう切なそうに言った。

「俺……カーリィがずっとそばにいてくれるなら、他の女と見せかけだけの夫婦を演じて生きてもいい。契りを結ぶ女はお飾りに追いやるだけ。俺が愛するのはお前だけだよ」
「っそれ、その人が不憫な気がするよ……」
「カーリィは優しいね。でも、それがこの皇宮貴族社会じゃ当たり前なんだよ。好きでもない貴族女をお飾り妃にして、愛してる女を寵妃にして正妻扱いする。その逆もあったり、何人もの女を妾にして、妻を蔑ろにして日夜仕事もしないで乱交してる先代の王もいたくらいだ。皇宮では平民から見れば華やかな世界だと思われがちだけど、世間には公にできない汚い金と権力争いばかりだよ」
「そう……なんだ。上流階級ってそんな綺麗な世界ばかりだけじゃないんだね……」

 村や町で聞く皇宮の華やかさにみんなは憧れを抱いている。あんな綺麗なドレスを着て見たいだとか、侍女たちに何不自由なく世話されたいだとか、素敵な貴族の殿方に見始められたいだとか、それぞれ社交界にはいろんな綺麗な思いを抱いている。

 貴族ってだけで自分で稼いだこともない見栄っ張りな連中の集まりだと思っていたけど、ノア君の表情を見れば見せかけだけの綺麗な世界を装っているだけなんだと窺えた。

「じゃないと……俺とお前は現実的にずっと一緒にいられないだろう?」
「それ、は……そう、だけど……」

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