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39.針の筵
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好きになってはいけない雲の上の存在を好きになった。それだけで平民は職を失い、居場所を取り上げられ、皇宮の追放処分だ。理不尽だと少し思いながらも、それは仕方のない事。私が皇子をたぶらかしたも同然なのだから。
悄然と事務室から出て、今日はもう帰れと言われてロッカールームへやってくると、同僚達がこちらを好奇な目で見ながらヒソヒソと何かを話していた。もう職場内で噂が広まっているらしい。
「いい気なものよねー。婚約者がいる人を寝取りとか、真面目なフリしてやることやってんだ」
一様に蔑んだ眼差しがこちらに突き刺さる。不真面目と評判な御局達が私に絡んできた。
「ほんと、マジありえないよねー婚約者の令嬢カワイソー」
「しかもよりにもよってアラン様を誘惑するなんて」
「帝都中の女を敵に回したも同然よね」
令嬢をカワイソーだなんて微塵も思ってなさそうだ。アラン殿下を好きな女子からすれば、ただ皇子と噂になった私がすこぶる気に食わないだけ。
ただでさえ令嬢との婚約ですら納得していないファン達は、抜け駆け同然の行為をした人畜無害そうに見えた私にここぞとばかりに詰ってくる。
私は相手をしてはダメだと目線を合わせず、そのまま帰ろうと外履きを取り出して何気なく履くと、
「うっ……!」
眉間にシワが寄るほどの激痛が足裏に走った。何事かと靴を脱いで確かめてみると、鋭くて大きな釘が自分の足裏に刺さっていたのだ。鮮血が滴り、靴下や床を赤く染める。こりゃひどい。
「あららーカイワソー。誰かしらこんな凶器仕掛けたの~クスクス」
わざとらしくて白々しいほどの言い方に、これ仕掛けたのは彼女達だろうなと察する。
「幼稚な嫌がらせだね」
「エーあたし知らないし~。だってそれ結構太いじゃん~。女の子がそんな太くて物騒なの持たないモーン。アハハ」
しらばっくれる彼女達に呆れるが、証拠がないので何も言えない。まあ、元はと言えば私が悪いのだけれど。
私がいろんな意味で悲しいやら呆れやらで薄ら笑いを浮かべると、頬にぴしゃりと痛みが走った。
「笑ってんじゃないわよ!!」
「アラン様があんたみたいなブスに振り向くはずないんだよ!」
もう一度御局のリーダー格が手を振り上げようとすると、
「こらあっ!カーリィに何してんのよあんた達!!」
ロッカールームにアンが入ってきた。
「あんたは引っ込んでなさいよ。この女、真面目な顔してアラン様を誘惑したのよ」
「知ってるわよ!だからってこんなイジメしてガキと一緒じゃない!ガキからやり直したら?」
「…るさいわねっ!!あんたも寝取り女の味方すんの?引っ込んでろって言ってんの!」
イラついた一人がアンを思いっきり突き飛ばした。
「いった」
「アン!」
固い壁に激突したアンは頭を強く打ったのか血が流れていた。それに罪悪感を感じずに追い討ちをかけようとする彼女達。
さすがに見ていられず、何かを言おうとしたろころで、
「あなた達静かにしなさい!外にまで声が響いていますよ!!女がはしたないっ!」
通りかかった主任が扉を開けて怒声をあげる。さすがに御局連中も主任には逆らえずに押し黙った。問題を起こせばそれだけ給料が減らされるし、下手をすればクビにされる恐れもあるので、そのまま恨みがましい顔をこちらに向けて出て行った。
「ばれちゃったんだね……アラン様との関係が……」
「……うん」
女子寮の自室に引き上げて、ノア君との関係が令嬢にバレた事と、そのせいで仕事がクビになって数日以内にここを出て行かなければならない事も話した。アンは寂しそうに「そっか」と口にした。
悄然と事務室から出て、今日はもう帰れと言われてロッカールームへやってくると、同僚達がこちらを好奇な目で見ながらヒソヒソと何かを話していた。もう職場内で噂が広まっているらしい。
「いい気なものよねー。婚約者がいる人を寝取りとか、真面目なフリしてやることやってんだ」
一様に蔑んだ眼差しがこちらに突き刺さる。不真面目と評判な御局達が私に絡んできた。
「ほんと、マジありえないよねー婚約者の令嬢カワイソー」
「しかもよりにもよってアラン様を誘惑するなんて」
「帝都中の女を敵に回したも同然よね」
令嬢をカワイソーだなんて微塵も思ってなさそうだ。アラン殿下を好きな女子からすれば、ただ皇子と噂になった私がすこぶる気に食わないだけ。
ただでさえ令嬢との婚約ですら納得していないファン達は、抜け駆け同然の行為をした人畜無害そうに見えた私にここぞとばかりに詰ってくる。
私は相手をしてはダメだと目線を合わせず、そのまま帰ろうと外履きを取り出して何気なく履くと、
「うっ……!」
眉間にシワが寄るほどの激痛が足裏に走った。何事かと靴を脱いで確かめてみると、鋭くて大きな釘が自分の足裏に刺さっていたのだ。鮮血が滴り、靴下や床を赤く染める。こりゃひどい。
「あららーカイワソー。誰かしらこんな凶器仕掛けたの~クスクス」
わざとらしくて白々しいほどの言い方に、これ仕掛けたのは彼女達だろうなと察する。
「幼稚な嫌がらせだね」
「エーあたし知らないし~。だってそれ結構太いじゃん~。女の子がそんな太くて物騒なの持たないモーン。アハハ」
しらばっくれる彼女達に呆れるが、証拠がないので何も言えない。まあ、元はと言えば私が悪いのだけれど。
私がいろんな意味で悲しいやら呆れやらで薄ら笑いを浮かべると、頬にぴしゃりと痛みが走った。
「笑ってんじゃないわよ!!」
「アラン様があんたみたいなブスに振り向くはずないんだよ!」
もう一度御局のリーダー格が手を振り上げようとすると、
「こらあっ!カーリィに何してんのよあんた達!!」
ロッカールームにアンが入ってきた。
「あんたは引っ込んでなさいよ。この女、真面目な顔してアラン様を誘惑したのよ」
「知ってるわよ!だからってこんなイジメしてガキと一緒じゃない!ガキからやり直したら?」
「…るさいわねっ!!あんたも寝取り女の味方すんの?引っ込んでろって言ってんの!」
イラついた一人がアンを思いっきり突き飛ばした。
「いった」
「アン!」
固い壁に激突したアンは頭を強く打ったのか血が流れていた。それに罪悪感を感じずに追い討ちをかけようとする彼女達。
さすがに見ていられず、何かを言おうとしたろころで、
「あなた達静かにしなさい!外にまで声が響いていますよ!!女がはしたないっ!」
通りかかった主任が扉を開けて怒声をあげる。さすがに御局連中も主任には逆らえずに押し黙った。問題を起こせばそれだけ給料が減らされるし、下手をすればクビにされる恐れもあるので、そのまま恨みがましい顔をこちらに向けて出て行った。
「ばれちゃったんだね……アラン様との関係が……」
「……うん」
女子寮の自室に引き上げて、ノア君との関係が令嬢にバレた事と、そのせいで仕事がクビになって数日以内にここを出て行かなければならない事も話した。アンは寂しそうに「そっか」と口にした。
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