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ともに
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今からだいぶ未来のお話、地球温暖化が進んで、地球上で陸地が激減し、人類は着実にその人口を減らしていた。
「またいなくなってしまったね」
「もう残っているのは私とお前だけ」
葬送儀礼を終えて語り合うふたり、一人は年老いて背も曲がった老婆、もう一人はまだ若い男性だ。そして、今見送ったのは老婆の娘で男性の母。
「私より先に逝ってしまうなんて、私もいなくなればひとりになるね」
「そうですね」
正直ぴんとこない物心ついた時から3人だけだったし、そう遠くない未来に僕は独りになる。
ずっと見上げていた、残された最後の地上に住むあの人のことを。
「どうにかしてここに迎えることはできないのかな、ここはいっぱい仲間もいるしなにより私がいるのに」
いつもの場所でいつもの独り言、いつもと違うところは返事があったこと。
「方法はあるよ、ただし代償がつくけど」
隣にいたのは呪いや薬に詳しい幼馴染だった。
「なになに、どんなこと」
「これを使うの、これはあの人を私たちと同じ人魚にするもの、これを口移しで飲んでもらうの…でもねそうすればあなたの生命は半分になる」
うつむいたその表情には戸惑いが浮かぶ、
「あの人はどうなるの」
「考え方としてはあなたの寿命を半分分け与える形になるから、貴方と同じだけしか生きない」
「ならそれでいい、だからそれをちょうだい」
友人とは正反対に、輝く瞳には迷いがない。
「でも、私たちと早く分かれてしまうのよ」
「あの人といっしょにいられれば後悔はしないから」
何か方法があるのならば、試したかった。2人で幸せになれるのならば、自分の時間が半分になってしまってもかまわない。
「わかった、では幸運を祈るわ」
水面に月のたゆたう夜、僕は僕しかいなくなった。浜辺でこれからに思いをはせる、この海に身を沈めるつもりで来た、もう誰もいないのならばここにいる理由もない。
ザブザブザブ…
そのうち足がつかなくなり、上も下もわからない、ただ目の前に得体のしれない何かが近づいていること以外は。
つっ
口づけから流し込まれる液体を海の水と一緒に飲み込んだ、しょっぱい感覚と急に息が楽になる感触が押し寄せて意識が途切れた。
「大丈夫ですか」
「ここはどこですか、これはいったい」
2本の脚は魚の形になっていて、目の前の人と同じ。
「ここは水底の都です、あなたは私と同じになったのです」
「そう」
まだどこか呆然としている、けれど一人ではなくなったのは正直嬉しいと感じる。
「これから、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
夢か現かおとぎ話、水の底にもきっと都はございます。
「またいなくなってしまったね」
「もう残っているのは私とお前だけ」
葬送儀礼を終えて語り合うふたり、一人は年老いて背も曲がった老婆、もう一人はまだ若い男性だ。そして、今見送ったのは老婆の娘で男性の母。
「私より先に逝ってしまうなんて、私もいなくなればひとりになるね」
「そうですね」
正直ぴんとこない物心ついた時から3人だけだったし、そう遠くない未来に僕は独りになる。
ずっと見上げていた、残された最後の地上に住むあの人のことを。
「どうにかしてここに迎えることはできないのかな、ここはいっぱい仲間もいるしなにより私がいるのに」
いつもの場所でいつもの独り言、いつもと違うところは返事があったこと。
「方法はあるよ、ただし代償がつくけど」
隣にいたのは呪いや薬に詳しい幼馴染だった。
「なになに、どんなこと」
「これを使うの、これはあの人を私たちと同じ人魚にするもの、これを口移しで飲んでもらうの…でもねそうすればあなたの生命は半分になる」
うつむいたその表情には戸惑いが浮かぶ、
「あの人はどうなるの」
「考え方としてはあなたの寿命を半分分け与える形になるから、貴方と同じだけしか生きない」
「ならそれでいい、だからそれをちょうだい」
友人とは正反対に、輝く瞳には迷いがない。
「でも、私たちと早く分かれてしまうのよ」
「あの人といっしょにいられれば後悔はしないから」
何か方法があるのならば、試したかった。2人で幸せになれるのならば、自分の時間が半分になってしまってもかまわない。
「わかった、では幸運を祈るわ」
水面に月のたゆたう夜、僕は僕しかいなくなった。浜辺でこれからに思いをはせる、この海に身を沈めるつもりで来た、もう誰もいないのならばここにいる理由もない。
ザブザブザブ…
そのうち足がつかなくなり、上も下もわからない、ただ目の前に得体のしれない何かが近づいていること以外は。
つっ
口づけから流し込まれる液体を海の水と一緒に飲み込んだ、しょっぱい感覚と急に息が楽になる感触が押し寄せて意識が途切れた。
「大丈夫ですか」
「ここはどこですか、これはいったい」
2本の脚は魚の形になっていて、目の前の人と同じ。
「ここは水底の都です、あなたは私と同じになったのです」
「そう」
まだどこか呆然としている、けれど一人ではなくなったのは正直嬉しいと感じる。
「これから、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
夢か現かおとぎ話、水の底にもきっと都はございます。
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