輝きを見抜く令嬢は、偽りの愛にさよならを告げる

法華

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10話

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 栄光の絶頂にいるセレスティーナとは対照的に、ユーリウスは奈落の底で泥水をすするような日々を送っていた。日雇い労働で得られる僅かな賃金では、その日の食事にも事欠く始末。かつての婚約者の華々しい成功を伝える噂は、呪いのように彼の心を苛み、やがてその醜い憎悪は、理性のタガが外れた危険な領域へと達した。

(すべて、あの女のせいだ。あの女さえいなければ、僕がこんな惨めな思いをすることはなかった。あの女が僕からすべてを奪ったんだ。ならば、僕も奪い返してやるまでだ。あの女が持つすべてを!)

 すべてを失ったユーリウスは、正気を失った逆恨みから、セレスティーナを誘拐し、星霜石の利権を盾に王家を脅迫するという、途方もなく愚かで破滅的な計画を立てた。彼はなけなしの金で、王都の裏社会で生きるごろつきを数人雇い、セレスティーナの新しい邸宅の周辺を嗅ぎまわり始めた。

 しかし、彼の計画はあまりにも杜撰で、穴だらけだった。フォーサイス辺境伯領からセレスティーナを心から慕って王都に出てきた者たちや、彼女に恩義を感じる職人街の人々の目は、街の隅々にまで光の網のように行き届いている。ユーリウスたちの不審な動きは、即座にアシュトンと、彼と連携する王都の警備隊に筒抜けとなっていた。

 すべては、アシュトンたちの掌の上で静かに進んでいた。ユーリウスが計画を実行に移し、セレスティーナが工房から邸宅へ戻るために乗った馬車を路地裏で襲撃しようとした、まさにその瞬間。物陰から音もなく現れた警備隊によって、彼らはあっけなく包囲され、取り押さえられた。雇われたごろつきたちは蜘蛛の子を散らすように逃げ、主犯であるユーリウスだけが、呆然と立ち尽くす中、その場に残された。

 捕らえられたユーリウスの前に、アシュトンに守られながら、セレスティーナが静かに姿を現す。彼は鎖に繋がれながらも、現実を受け入れられず、見苦しくわめき散らした。

「セレスティーナ! なぜだ! お前は俺の婚約者だったはずだぞ! 僕が困っているなら、助けるのが当然だろうが!」

 その期に及んでもまだ、彼女が自分のものであるかのように振る舞う男の姿に、セレスティーナは深い憐れみを感じた。彼女は、静かに、しかし聞く者の心を射抜くようなはっきりとした声で彼に告げる。

「いいえ、ユーリウス様。わたくしたちは、もう何の関係もありません。そして、あなたには永遠にわからないのでしょうね」
「何がだ……! 僕に何がわからないと言うんだ!」
「真実の輝きは、石の中だけにあるのではありませんわ。人の心にも、日々の行いにも、誠実さの中にも宿るもの。あなたの瞳には、その本物の輝きが、永遠に見えることはないでしょう。……それが、あなたへの何よりの罰ですわ」

 その言葉は、どんな物理的な罰よりも、ユーリウスのひび割れたプライドを深く、そして決定的に切り裂いた。
 彼はセレスティーナ誘拐未遂、そして王家の重要人物への反逆罪という重罪により、フォーサイス辺境伯領の星霜石鉱山での無期限の強制労働という、最も重い判決を下された。
 かつて彼が「石ころ」と蔑んだ石を、来る日も来る日も、自らの手で掘り続ける。それは、彼の傲慢さと愚かさに、あまりにも相応しい末路だった。薄暗く湿った坑道の奥で、彼はセレスティーナの最後の言葉を繰り返し思い出し、生まれて初めて、自分が失ったものの本当の価値に気づき、誰にも聞こえないように静かに涙を流したという。
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