1 / 3
第一話
しおりを挟む「エレン。僕は本当は、君のことなんて全然好きじゃないんだ。だから、婚約を解消したい」
この方は、何を今更言っているのでしょう。
私の婚約者、アーサー様の発言に、私は唖然とするしかありませんでした。
そもそも、私だって、あなたのことなんて好きでも何でもありません。
私が愛しているのは、マイス様。故郷の町で帽子職人をしている、気弱ですが一生懸命な青年です。
ですが、貴族の娘というのは、思うように伴侶を選べないのが定め。両親に言い出せないでいるうちに、遠方の辺境伯の長男、つまりアーサー様との縁談があれよあれよとまとまり、私とマイス様は涙の別れをしたのです。
この縁談は、アーサー様が望んだというお話でした。ですが、私はアーサー様を恨むことはせず、むしろ選んでくれてありがたいと、そう思うようにして今まで彼に尽くしてきました。
それがどうでしょう。
「実はあのとき、別の縁談の話があったんだ。でもそこの娘さんが、どうもいかつくて好みじゃなくて。でもそんなわがまま、お父様に言いたくないし.....。そんなとき、パーティで君を見かけて。まだ結婚してないっていうんで、あの女よりはましか、と」
ああ、こんな理由で、私とマイス様は引き裂かれたのですか。
はらわたが煮えくりそうな気持ちで、私はアーサー様の話を聞いていました。
「でも、僕は本当の愛を見つけたんだ。紹介するよ、メリィだ」
彼がそう言うと、奥の方からやけに堂々とした態度の女性が現れました。
その服装は派手ではありますが安っぽく、とても高貴な出には見えません。
「はじめまして、エレンさん。私はメリィよ。このふもとの街で、ハウス・スタッフをしていますの」
ハウス・スタッフ......それってつまり、家政婦のことですか。
「僕はメリィと結婚するんだ。お父様も、僕がちゃんと説得する。時間はかかるかもしれないけど、きっと大丈夫。いざとなれば、僕はこの家を出て行って、彼女の仕事をサポートしてもいいとまで思ってる」
自信満々に言うアーサー様。
いいでしょう。そこまで言うなら、私は身を引いてもかまいません。
堂々と不貞を告白されて、しかも婚約破棄まで持ちかけられて、腹が立つには立ちますが、もしかしたら一度は諦めていたマイス様との結婚のチャンスが、再び生まれるかもしれませんしね。
ですが、アーサー様の方は......。
そううまくいくものですかね。私には、すぐに破綻してしまうような気がしてならないのですが。
114
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されましたが、今さら後悔されても困ります
有賀冬馬
恋愛
復讐なんて興味ありません。でも、因果応報って本当にあるんですね。あなたのおかげで、私の幸せが始まりました。
・・・
政略結婚の駒として扱われ、冷酷非道な婚約者クラウスに一方的に婚約破棄を突きつけられた令嬢エマ・セルディ。
名誉も財産も地に堕とされ、愛も希望も奪われたはずの彼女だったが、その胸には消せない復讐と誇りが燃えていた。
そんな折、誠実で正義感あふれる高位貴族ディーン・グラスフィットと運命的に出会い、新たな愛と絆を育む。
ディーンの支えを受け、エマはクラウスの汚職の証拠を暴き、公の場で彼を徹底的に追い詰める──。
平手打ちされたので、婚約破棄宣言に拳でお答えしました
Megumi
恋愛
婚約破棄を告げられ、婚約者に平手打ちされた——その瞬間。
伯爵令嬢イヴの拳が炸裂した。
理不尽に耐える淑女の時代は、もう終わり。
これは“我慢しない令嬢”が、これまでの常識を覆す話。
婚約者に忘れられた上に捨てられた私は…そのおかげで、幸せを手にする事が出来ました!
coco
恋愛
婚約者の突然の記憶喪失により、婚約破棄を告げられた私。
私と別れた後、彼にはある考えがあるようで…?
召喚されてすぐ婚約破棄と追放を受けた私は、女神としてクズ共ごと国を封印することにします。
coco
恋愛
異世界に召喚されたら、すぐ王子に婚約破棄されました。
出会って10秒の出来事です。
しかもおまけのはずの妹が王子の相手に選らばれ、私は追放が決定しました。
もういわ、私を必要としないあなたなんてこっちから願い下げです。
私はすぐにその場を去ると、女神としてその国をクズ共ごと封印することにした─。
お礼を言うのはこちらですわ!~婚約者も財産も、すべてを奪われた悪役?令嬢の華麗なる反撃
水無月 星璃
恋愛
【悪役?令嬢シリーズ1作目】
一話完結。
婚約者も財産も、すべてを奪われ、ついには家を追い出されたイザベラ・フォン・リースフェルト。
けれど彼女は泣き寝入りなどしない。
――奪わせてあげますわ。その代わり……。
上品に、華麗に「ざまぁ」する悪役?令嬢のひとり語り。
★続編『謝罪するのはこちらですわ!~すべてを奪ってしまった悪役?令嬢の優雅なる防衛』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/947398225/744007806
婚約破棄を申し込まれたので快諾したら、信じられないとばかりに逆ギレされました。
香取鞠里
恋愛
婚約者のマークと結婚を前提に一緒に住み始めたクレアだが、マークにより嫌がらせのような扱いを受け、結婚前からうんざりしていた。
このまま結婚して、永遠にこの生活が続くようになるのかと悲観していたある日、マークから婚約破棄の書面を突きつけられる。
内心嬉々としてサインするクレアだが、そんなクレアにマークは逆ギレしてきて!?
あなたが言ったから私はここにサインしたんですよ?
熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください。私は、堅実に生きさせてもらいますので。
木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるアルネアには、婚約者がいた。
しかし、ある日その彼から婚約破棄を告げられてしまう。なんでも、アルネアの妹と婚約したいらしいのだ。
「熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください」
身勝手な恋愛をする二人に対して、アルネアは呆れていた。
堅実に生きたい彼女にとって、二人の行いは信じられないものだったのである。
数日後、アルネアの元にある知らせが届いた。
妹と元婚約者の間で、何か事件が起こったらしいのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる