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第三話

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「おかしいな、とは思ってたんだよ。いくら幼馴染だからって、毎日高そうなプレゼント持って家に来たりはしないよな、普通」

ひとしきり笑った後、リリーさんは話し出しました。

「でも、ほら、あいつの家でけえじゃんか。だから、まぁ、私たち一般市民の常識とは感覚が違うのかなぁ、なんて納得してたんだが」
「えっと......あの、どこから」

どこから、ライオット様の勘違いなのか。
そう言いたくてどもってしまったのですが、リリーさんは質問の意図をくみ取って、答えてくれました。

「私が病気ってのは、ほんと。今も治ってないし、あいつも私も小さかった頃は、確かに家の中に缶詰め状態だった。あの時はつらかったよ」

リリーさんはにこやかな顔で続けます。

「でも、ちょうどライオットが勉強で忙しくなった頃かな。私の身体も成長してきて、今までとは別の、もっと新しい治療を受けられるようになったんだ。それから一年もしないうちに、普通の人とほぼ同じくらいには外に出られるようになったよ」
「あ......そうなんですね」
「そのころに出会ったのが、さっきまで一緒にいたあいつ......パンサーだ。愛想悪くてごめんな、夜になるとライオットが来るもんだから、あいつフラストレーション溜まってるんだよ」

私には、彼の気持ちが痛いほどよくわかりました。
自分の恋人が毎晩ほかの女のところに行くのと、自分の恋人のところに毎晩ほかの男が来るつらさは、おそらく同じくらいでしょう。

知らず知らず恨みがましい顔になっていたようで、リリーさんがたじろぎました。

「い、いや、私はパンサーのこともちゃんと話してるし、いい加減会う頻度を減らそうって提案もずっとしてるんだぜ?......あいつが私に気があるってことも、なんとなく気づいてるから。お前は仲のいい幼馴染で、恋愛対象としては見られないって、しつこいほど念入りに言ってるつもりなんだが.......」

あの人には、自分の都合のいいことしか聞こえませんから......。リリーさんも大変なお友達に苦労されているようで、どうも責める気にはなれませんでした。

「......っていうか、あんたライオットの婚約者なんだよな。頼むよ、あんたからもあいつの誤解、解いてやってくれよ」
「あー、いや.......」

そうして差し上げたいのはやまやまですが、ちょっとそれは難しいですかね。
理由を説明するために、今私が置かれている状況をかいつまんで話すと、流石にリリーさんの笑顔が引っ込みました。

「じゃあ、私のせいで、ユリアさんは」
「いや、そういうわけじゃ」
「そうだよ。私がもっと、しっかりしなきゃいけなかったんだ」

リリーさんは二、三度小さくうなずくと、何かを決意した表情で言いました。

「あんたにこんなこと言っちゃいけないかもしれないけど......私、今度パンサーと結婚するんだ。だからその前に、ちゃんとあいつに、けりをつけないといけない」


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