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第四話
しおりを挟むそれから、リリーさんとライオット様の間でどんな話があったのか、私は知りません。
何の音沙汰もないままさらに二月が経った頃、私のもとに一通の手紙が届きました。リリーさんとパンサーさんの結婚式の、招待状でした。
出席することにしたのは、ことの顛末を知りたかったからか、当てつけめいたリリーさんの招待に文句を言ってやりたいからか、はたまたライオット様への未練か。最後は違うと思いますが、ほかの人から見たら、きっとそう思われることでしょう。
そう思うと、会場までの足取りは重く、ため息に満ちたものとなりました。
会場は思いのほか大きかった。
とはいっても、ライオット様との結婚式のために準備してきた会場に比べれば幾分か小さいですが。
リリーさんの姿は簡単に見つかりました。
来場者のほとんどは彼女の友人のようで、ひとりひとりと楽しそうに会話しています。
なんだか場違いな感じでいると、向こうがこちらに気づき、近づいてきました。
「ユリアさん!来てくれてありがとう!」
「え、あの、私......」
「大丈夫。あいつにはちゃんと、話しといたから。......まぁ、納得はしてないだろうけど」
リリーさんがちらっと見た方向を見て、私は驚愕した。
なんとそこには、ライオット様が苦虫をかみつぶしたような顔で立っていたからだ。
「よ、呼んだんですか!?」
「私とあいつの件はもう決着がついた。でも、あんたは違うだろ。顔見せて、がつんと言いたいこと言ってやんな」
そ、そんなことを言われても。
促されるまま、ライオット様の方へ近づいていきます。そうはいっても、心の準備ができていない。かける言葉なんて、わからない。
そうこうしている間に、向こうのほうが私に気づき、驚いた顔で近づいてきました。
「ユリア!?お前、どうしてここにいる!?」
「私が呼んだんだよ。あんた、この人に何か言うことがあるんじゃないの?」
ライオット様は私とリリーさんの顔を何度も見比べ、合点したように笑い出した。
「そうか、お前ら知り合いだったんだな!二人して、馬鹿な俺をだまして笑ってたわけだ!」
いやいや、どうしてそうなるのですか。
もはやこの方は、現実を見られなくなっています。
「まったく、ふざけるな!俺を誰だと思ってる!?グリン家のライオットといえば、この国で知らぬ者はいないほどの名だぞ!」
ああ、彼は周りまで見られなくなっています。普段の彼は、これほどまでに馬鹿ではないと思うのですが.......。いや、とんでもない勘違いをしていましたし、案外そうとも言い切れませんが。
とにかく、彼の言う通り、彼の名はこの国中に轟いています。それなのにそんなことを言ったら、いまここで騒然としながら事態を見守っている人々に、この醜態を晒しているのがライオット様だとバレてしまうじゃありませんか。
遅かれ早かれ、このことは国中が知ることになります。それだけでグリン家がどうこう、ということにはならないでしょうが、有力貴族との婚姻は難しくなり、将来的な勢力低下は間違いありません。
つまり、私がここで気兼ねする必要なんて、まるでないということです。
「......今、どんな気持ちですか?」
私は、ゆっくりと、ライオット様に話しかけました。
「愛する人に裏切られて、悔しいですか?私も、あなたに婚約破棄を告げられた時、とても悔しかった。今のあなたと、同じ気持ちです」
口から、すらすらと言葉が出てきた。
同時に目からは、涙もあふれ出した。
「でも、私とあなたは違う。あなたは結局、私に何も言わなかった。でも、リリーさんはずっとメッセージを送り続けていた。あなたは裏切られたわけでも、勘違いしたわけでもない。ただの現実逃避よ」
「......お前、誰に向かって」
「その驕り、いい加減に捨てたらいかがですか?あなたは家柄はいいかもしれませんが、でも......私やリリーさんの方が、人間的にはよっぽど優れています」
無心だった。言いたいことを、全部ぶちまけて、気づけば。
私は、無数の拍手に包まれていた。
fin.
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