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第四話
しおりを挟む「ふざけないでよ!私はただ、本当のことをカイン様に伝えただけよ!こんな茶番、もううんざりだわ!」
慌てふためくナーラ。
父はそんなナーラを訝しげに見つめながら、手紙の続きを読み上げる。
「『ずっと昔から気づいていました。カインの話では、ナーラはカインと私が婚約してからではなく、カインの許嫁が私だと知ってから、態度を急変させたといいます。つまり彼女は、私に恨みを抱き、それを晴らすために、今までずっとカインを遠ざけてきたのです。理由はよくわかりませんが、彼女も普通クラスの中では成績は上の方だったらしいですから、嫉妬でもしたのでしょうかね』」
「......不愉快よ!出ましょう、カイン様!」
ナーラはそう言って俺の腕を掴んだが、俺は微動だにできなかった。
「『ナーラはカインの自分への恋心を知り、利用しようとしました。カインを焚きつけて私たちの仲を険悪にし、単に結婚の邪魔をする、程度の計画だったのでしょう。それが思わぬ形で、私をこれ以上ないほどに蹴落とす最高のチャンスがやってきた。それで慌てて、適当な嘘をでっち上げたのでしょう。その浅はかさに敬意を表して、この手紙を終わります。反論があればどうぞ』」
父が手紙を読み終えたころ、その場には異様な雰囲気が流れていた。
一通の文章で、空気をここまで変えられる。そのこと自体が、リナが本物の秀才であることを、何よりも強く示していた。
「ナーラ......ここに書いてあることは、本当なんだな?」
「カイン様!?」
「それじゃあ、お前はやはり......」
「ああ、あいつの言う通りだよ!クソ親父が勝手に婚約者決めちまうもんだから、全部ぶち壊してやろうと思ったんだ!まさか、この女の掌の上だったとは思わなかったがなぁ!」
「なんということを......。お前は、黙って私に従っていればよかったんだ!」
「ぜ、全部嘘っぱちよ!あの女が、リナ=サラマンダーが、私の人生をめちゃくちゃにしたのよ!」
そして、その場は、阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。
「リナ。手紙が届いてるよ」
「ありがとう、サイモン」
私は二歳下の侯爵に礼を言う。
この人の顔を見るのは、二日前が初めてだ。けれど、手紙のやり取りはずっと昔から続いていた。最初は、一時的な逃げ場の確保、くらいにしか考えていなかったけれど、彼と何度も連絡を交わして、氷の国の素晴らしい風景や、彼の面白い話を何度も耳にして、私の感情は徐々に徐々に、揺れ動いていった。
そして今は、はっきりと思う。
私は、ここでずっと暮らしたい。私の愚痴を疑いもせず聞いてくれて、励ましてくれ、そして救ってくれたこの人と一緒に、ずっと暮らしたい。
だから......。
「いいのかい?捨てちゃって」
「いいのよ。どうせろくでもない人たちからの、ろくでもない手紙なんだから」
二度と、故郷に戻る気はない。
私はここで、幸せに生きていくんだ。
fin.
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