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Ⅲ from A to A
第32話 side Alpha
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アーロン:青年。
ソフィー:ハルモニア帝国皇帝の妹。本名はソフィア・リ・ハルモニア。
ウルフィリア・レインフォルス:水の都アクエリスの執政官を務めている。たまに夫婦で旅をしている。
ルーナ:姉妹でソフィーの親衛隊に所属している女性。
レオンハルト・ハイデルバッハ:帝国騎士団で隊長を務める青年。
ステラ:ルーナの妹。
エスカ:ウルフィリアの妻。
バーナード・メイザース:帝国騎士団団長を務める男性。アリアの父親。
ハミルトン・レイ:帝国騎士団隊長主席を務める男性。
アルトリウス・フォン・ハルモニア:ハルモニア帝国皇帝。
~モブ~
子ども①②:孤児院の子ども
騎士①②:優しそうな騎士
────────────
それから、いくつの世界を渡っただろうか。
両手の指を超えたあたりから数えるのはやめたが、おそらく数十では足りないだろう、ということはなんとなくわかる。
アルトリウス 「……アーロンさん、ボクは別にいつまでも付き合ってあげも良いんですけど、そろそろ終わりにしませんか?」
アーロン 「……ああ? いつまでも付き合ってくれるんだろ……? だったら付き合ってくれよ」
アルトリウス 「あはは、そんな辛そうな顔してるのに、よく言いますね」
アーロン 「ち……」
アルトリウス 「はあ、もう少し遊んであげようと思っていたんですが……」
(SE 指を鳴らす音)
(SE 世界が作り変えられる音)
◇
帝都、平民街、噴水広場。
(SE 噴水の音)
アーロン 「……帝都、か」
アルトリウス 「安心しましたか?」
アーロン 「今度は何を企んでる?」
アルトリウス 「いやいや、今回はここまで頑張ったアーロンさんへのご褒美と思いまして」
アーロン 「は?」
アルトリウス 「あはは、そのうちおわかりい頂けるかと思いますよ」
アーロン 「……?」
───────────
子ども① 「あ、騎士のおじさん! こんにちは! ほら」
子ども② 「こ、こんにちは……」
騎士① 「おー、元気そうだな! 今日はどうしたんだ?」
子ども① 「レオお兄ちゃんを迎えにきたの!」
騎士① 「レオンハルト隊長か……。そろそろ帰ってくると思うぞ」
子ども① 「ほんと?」
騎士① 「こんなことでウソつかないって」
子ども② 「でもこの前、遊ぶ約束、破った……」
子ども① 「あ、そーだよ! おじさんウソついたことあるじゃん!」
騎士① 「うぐ……、そのときは仕事があって……、お前たちにもちゃんと伝えただろう?」
子ども①② 「じー……」
騎士① 「わあーったって! じゃあ、あそこのお菓子、買ってあげるから! おじさんを許してくれよ~」
子ども①② 「やったー!!」
騎士① 「とほほ……」
しばらくして。
騎士② 「先輩~!」
騎士① 「おう!」
子ども①② 「こんにちは!」
レオンハルト 「2人とも、なんだか機嫌が良いね」
子ども①② 「あ、レオお兄ちゃん!」
騎士① 「さっき、お菓子を食べたからなー」
子ども①② 「おじさんが買ってくれたんだよ!」
騎士② 「さすが先輩、面倒見いいっすね~」
レオンハルト 「わあ、すみません、あとでお金を……」
騎士① 「いいですって、たまに会うおじさんを少し立ててあげると思って、カッコつけさせてください」
レオンハルト 「ありがとうございます」
騎士② 「あ、じゃあ先輩、今日ごはん連れてってくださいよー」
騎士① 「ったく、しょうがないな~」
騎士② 「……ちょろい」
騎士① 「ちょっと? 今なんて言ったー?」
一同 「あはははっ!」
────────────
アーロン 「…………」
アルトリウス 「はは、微笑ましい光景ですね」
アーロン 「…………」
アルトリウス 「ほら、またアーロンさんの知っている方が来ましたよ?」
────────────
ステラ 「殿下! こんなところにいたんですか!?」
ソフィー 「げっ、ステラちゃん……」
ルーナ 「げっ、ってなによ、げっ、て」
ソフィー 「ルーナさんまで……?」
ステラ 「殿下、急に城を抜け出すのはやめてください、っていつも言ってるじゃないですか~」
ソフィー 「た、たまには息抜きだって必要だと……」
ルーナ 「い・き・ぬ・きぃ~?」
ステラ 「はぁ、始まったよ……」
ルーナ 「アンタね、たまの息抜きっつったって、いっっっっっつも息抜きしてるじゃない! 少しは仕事もしないと、アンタの銃、叩き斬ってやるからね!」
ソフィー 「わわわっ! それだけは勘弁してくださいぃ~!」
(SE ソフィーの襟首を掴む音)
ウルフィリア 「おぉ~、今日もやってるね~」
エスカ 「こんにちは~」
ステラ 「ウルフィリアさんとエスカさんじゃないですか、こんにちは」
ルーナ 「あら、おっさんじゃない。今日も奥さんとデートしてるの? 相変わらず暇そうね」
ウルフィリア 「ルーナちゃん、これでも俺、立場的にはキミより偉いんだけど~?」
ステラ 「そうだよ、お姉ちゃん、いくらウルフィリアさんが貴族らしくないからって……」
ウルフィリア 「うん、ステラちゃん、フォローしてるようで全然フォローしてないからね~」
ソフィー 「わーわー、そんなことより、助けてくださいよ~」
エスカ 「うわ、ルーナさん、親衛隊が殿下をこんな扱い……、凄いですね」
ソフィー 「そーですよ! こんなん不敬罪ですよ! 不敬罪!」
ルーナ 「はいはい、ちゃんと敬えるようなことをしてからそういうことは言いましょうね」
ソフィー 「ぶー」
ウルフィリア 「はっはっは、ソフィーちゃん、仕事をちゃんとしてから城を抜け出さないと、怒られるに決まっているだろう?」
エスカ 「ウルフィリア? ちょくちょく屋敷を抜け出すのは、どこの誰だったかしらね?」
ウルフィリア 「……さーて、そろそろ移動しようかー」
ステラ 「おじさんも、お姉ちゃんのお説教聞いていった方がよさそうですね」
エスカ 「あら、お願いしようかしら」
ウルフィリア 「美人の説教……ごくり」
エスカ 「ウルフィリア?」
ルーナ 「斬り落とされたいの?」
ウルフィリア 「ひっ……やっぱり遠慮しときます」
ソフィー (……今だっ!)
ルーナ 「ソフィー?」
ソフィー 「ひっ」
ルーナ 「逃げ出そうなんて、いい度胸じゃない。城に戻ったら、ね?」
ソフィー 「は、はひいいいい! すみません~!!」
────────────
アルトリウス 「ははは、ソフィアのサボり癖にも困ったものですね」
アーロン 「……」
アルトリウス 「さーてと、次はどなたが……」
アーロン 「……この世界は、なんなんだよ?」
アルトリウス 「はあ、だから、言ったでしょう? ここは、アーロンさんへのご褒美、いわば、ボーナスステージといったところでしょうか」
アーロン 「は……」
(SE 足音)
ハミルトン 「そこの御仁、このあたりで、錬金術師を見かけなかったか?」
アーロン 「……あんたは……」
ハミルトン 「失礼。私は、帝国騎士団隊長主席のハミルトン・レイ、そしてこちらが」
バーナード 「騎士団長のバーナード・メイザースだ」
アーロン 「……!!」
バーナード 「錬金術師のアリア・メイザースを捜しているのだが、店にいなかったのでな。街に出ているのだと思っていたが……」
アーロン 「アリアを……?」
バーナード 「ほう、アリアを知っているのか?」
アーロン 「バーナード、今度は何を企んでいるのか知らねえけど、アリアはあんたの道具じゃない」
バーナード 「…………」
ハミルトン 「お、お前、団長になんて無礼を!!」
バーナード 「よせ、ハミルトン」
ハミルトン 「しかし……」
バーナード 「いいんだ」
ハミルトン 「…………はっ」
アーロン 「……?」
バーナード 「どうやら、貴公は我が娘アリアと親しいようだな」
アーロン 「…………」
バーナード 「恥ずかしながら、アリアとはいわゆる親子喧嘩の最中でな、機嫌を取ろうと、アリアの気に入っていた酒を持ってきたのだが、店が留守だったんだ」
アーロン 「…………は?」
バーナード 「……よければ、アリアが行きそうなところでも知っていたら教えて貰えないだろうか?」
アーロン 「…………ふ、あっはははは!! あの騎士団長が娘と喧嘩? ありえねーだろ」
バーナード 「…………!!」
ハミルトン 「団長……!」
アーロン 「はあ、アリアなら、採取にでも行ってんじゃねえか? 湖にでも行ってみろよ」
バーナード 「……! そうか、協力、感謝する」
(SE バーナードが去る音)
ハミルトン 「だ、団長、待ってください!」
(SE ハミルトンが去る音)
アルトリウス 「はは、あの騎士団長もやはり、父親だったということですね」
アーロン 「アルトリウス……」
アルトリウス 「ようやく、わかっていただいたみたいですね」
アーロン 「……」
アルトリウス 「そう、この世界は、ボクが最初に作った『すべてがうまくいった世界』をより完璧にしてみたんです」
(SE アルトリウスがアーロンの隣に座る音)
アルトリウス 「どうです、この世界は? ここでは、元の世界で起きた不幸なんて起きなかった。掛け値なしの幸福が、ここにはあるんです」
アーロン 「……みたいだな。みんな、幸せそうだった」
アルトリウス 「ええ、アーロンさんが頑張らなくてもいい世界なんです」
アーロン 「…………!」
アルトリウス 「ソフィアも、ルーナさんも、フィリップさんも、レオンハルトさんも、もちろんアリアさんも、アーロンさんの力がなくても、幸せなんですよ」
アルトリウス 「アーロンさんは、これまで、誰かが危険に陥れば守ろうとし、誰かが困っていれば相談に乗ってあげていましたよね? もう、その必要はないんです」
アーロン 「……」
アルトリウス 「ですが、アーロンさんがこの世界に存在してしまうと、貴方はきっと、仲間のもとに行ってしまう。そうなってしまうと、アーロンさんの死神の力が影響して、この世界に綻びが生じてしまうんです」
アルトリウス 「アーロンさん、言うなれば、貴方は世界のバグなんですよ。貴方は生まれてくるべき人間ではなかった」
アーロン 「生まれてくるべきじゃなかった……?」
アルトリウス 「はい、アーロンさん、考えたことはなかったのですか? 巫の素養があった、あのエスカ・ロベールでさえ、死神の力は扱いきれなかった。それなのに、アーロンさんは使いこなして見せた」
アーロン 「それは、月の雫を飲んで魂の力を増幅させたからだろ?」
アルトリウス 「はは、あの霊薬は、魂の力を増幅させるのではなく、引き出すものなんですよ。つまり、もともと、アーロンさんには死神の力を御せる能力があった、ということです」
アーロン 「…………」
アルトリウス 「しかし、死神の力は、魂の力だけで御せるものではありません」
アーロン 「は?」
アルトリウス 「それは、アーロンさんの出生に関係があります」
アーロン 「……もったいぶるなよ」
アルトリウス 「死神の力は、皇族にしか扱えない、ということです」
アーロン 「…………!!」
アルトリウス 「はは、驚くのも無理はありません、捨てられた皇子アレン・ウィル・ハルモニアとただの酒場の青年であるアーロンさんが同一人物だったなんて、ボクもついぞ気づかなかったんですから」
アーロン 「……アレン・ウィル・ハルモニア……」
アルトリウス 「そうです、兄上。貴方には、世界を滅ぼす力を持っている。ボクとしても心苦しいんですよ、腹違いとはいえ、実の兄をこんな苦しいゲームに付き合わせてしまったんですから」
アーロン 「…………」
アルトリウス 「ですが、アーロンさんが存在していては、アーロンさんのお仲間まで苦しんでしまう。この掛け値なしの幸福が、終わってしまうんです」
アーロン 「は、そういう、ことかよ」
アルトリウス 「ボクではアーロンさんを殺せない。この意味、わかりますよね?」
アーロン 「………………」
アルトリウス 「さすがです」
(SE 指を鳴らす音)
(SE 金属など色々なものが落ちる音)
アルトリウス 「これは、ほんのプレゼントです。どうぞ、好きな死に方をお選びください」
アーロン 「は、いらねーよ」
アルトリウス 「……?」
アーロン 「自分の最期くらい、自分で決めるさ」
アルトリウス 「そうですか。それは無粋な真似をしてしまいましたね。どうぞ、あとはご自由に」
アーロン 「……ああ、そうさせてもらう」
つづく
ソフィー:ハルモニア帝国皇帝の妹。本名はソフィア・リ・ハルモニア。
ウルフィリア・レインフォルス:水の都アクエリスの執政官を務めている。たまに夫婦で旅をしている。
ルーナ:姉妹でソフィーの親衛隊に所属している女性。
レオンハルト・ハイデルバッハ:帝国騎士団で隊長を務める青年。
ステラ:ルーナの妹。
エスカ:ウルフィリアの妻。
バーナード・メイザース:帝国騎士団団長を務める男性。アリアの父親。
ハミルトン・レイ:帝国騎士団隊長主席を務める男性。
アルトリウス・フォン・ハルモニア:ハルモニア帝国皇帝。
~モブ~
子ども①②:孤児院の子ども
騎士①②:優しそうな騎士
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それから、いくつの世界を渡っただろうか。
両手の指を超えたあたりから数えるのはやめたが、おそらく数十では足りないだろう、ということはなんとなくわかる。
アルトリウス 「……アーロンさん、ボクは別にいつまでも付き合ってあげも良いんですけど、そろそろ終わりにしませんか?」
アーロン 「……ああ? いつまでも付き合ってくれるんだろ……? だったら付き合ってくれよ」
アルトリウス 「あはは、そんな辛そうな顔してるのに、よく言いますね」
アーロン 「ち……」
アルトリウス 「はあ、もう少し遊んであげようと思っていたんですが……」
(SE 指を鳴らす音)
(SE 世界が作り変えられる音)
◇
帝都、平民街、噴水広場。
(SE 噴水の音)
アーロン 「……帝都、か」
アルトリウス 「安心しましたか?」
アーロン 「今度は何を企んでる?」
アルトリウス 「いやいや、今回はここまで頑張ったアーロンさんへのご褒美と思いまして」
アーロン 「は?」
アルトリウス 「あはは、そのうちおわかりい頂けるかと思いますよ」
アーロン 「……?」
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子ども① 「あ、騎士のおじさん! こんにちは! ほら」
子ども② 「こ、こんにちは……」
騎士① 「おー、元気そうだな! 今日はどうしたんだ?」
子ども① 「レオお兄ちゃんを迎えにきたの!」
騎士① 「レオンハルト隊長か……。そろそろ帰ってくると思うぞ」
子ども① 「ほんと?」
騎士① 「こんなことでウソつかないって」
子ども② 「でもこの前、遊ぶ約束、破った……」
子ども① 「あ、そーだよ! おじさんウソついたことあるじゃん!」
騎士① 「うぐ……、そのときは仕事があって……、お前たちにもちゃんと伝えただろう?」
子ども①② 「じー……」
騎士① 「わあーったって! じゃあ、あそこのお菓子、買ってあげるから! おじさんを許してくれよ~」
子ども①② 「やったー!!」
騎士① 「とほほ……」
しばらくして。
騎士② 「先輩~!」
騎士① 「おう!」
子ども①② 「こんにちは!」
レオンハルト 「2人とも、なんだか機嫌が良いね」
子ども①② 「あ、レオお兄ちゃん!」
騎士① 「さっき、お菓子を食べたからなー」
子ども①② 「おじさんが買ってくれたんだよ!」
騎士② 「さすが先輩、面倒見いいっすね~」
レオンハルト 「わあ、すみません、あとでお金を……」
騎士① 「いいですって、たまに会うおじさんを少し立ててあげると思って、カッコつけさせてください」
レオンハルト 「ありがとうございます」
騎士② 「あ、じゃあ先輩、今日ごはん連れてってくださいよー」
騎士① 「ったく、しょうがないな~」
騎士② 「……ちょろい」
騎士① 「ちょっと? 今なんて言ったー?」
一同 「あはははっ!」
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アーロン 「…………」
アルトリウス 「はは、微笑ましい光景ですね」
アーロン 「…………」
アルトリウス 「ほら、またアーロンさんの知っている方が来ましたよ?」
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ステラ 「殿下! こんなところにいたんですか!?」
ソフィー 「げっ、ステラちゃん……」
ルーナ 「げっ、ってなによ、げっ、て」
ソフィー 「ルーナさんまで……?」
ステラ 「殿下、急に城を抜け出すのはやめてください、っていつも言ってるじゃないですか~」
ソフィー 「た、たまには息抜きだって必要だと……」
ルーナ 「い・き・ぬ・きぃ~?」
ステラ 「はぁ、始まったよ……」
ルーナ 「アンタね、たまの息抜きっつったって、いっっっっっつも息抜きしてるじゃない! 少しは仕事もしないと、アンタの銃、叩き斬ってやるからね!」
ソフィー 「わわわっ! それだけは勘弁してくださいぃ~!」
(SE ソフィーの襟首を掴む音)
ウルフィリア 「おぉ~、今日もやってるね~」
エスカ 「こんにちは~」
ステラ 「ウルフィリアさんとエスカさんじゃないですか、こんにちは」
ルーナ 「あら、おっさんじゃない。今日も奥さんとデートしてるの? 相変わらず暇そうね」
ウルフィリア 「ルーナちゃん、これでも俺、立場的にはキミより偉いんだけど~?」
ステラ 「そうだよ、お姉ちゃん、いくらウルフィリアさんが貴族らしくないからって……」
ウルフィリア 「うん、ステラちゃん、フォローしてるようで全然フォローしてないからね~」
ソフィー 「わーわー、そんなことより、助けてくださいよ~」
エスカ 「うわ、ルーナさん、親衛隊が殿下をこんな扱い……、凄いですね」
ソフィー 「そーですよ! こんなん不敬罪ですよ! 不敬罪!」
ルーナ 「はいはい、ちゃんと敬えるようなことをしてからそういうことは言いましょうね」
ソフィー 「ぶー」
ウルフィリア 「はっはっは、ソフィーちゃん、仕事をちゃんとしてから城を抜け出さないと、怒られるに決まっているだろう?」
エスカ 「ウルフィリア? ちょくちょく屋敷を抜け出すのは、どこの誰だったかしらね?」
ウルフィリア 「……さーて、そろそろ移動しようかー」
ステラ 「おじさんも、お姉ちゃんのお説教聞いていった方がよさそうですね」
エスカ 「あら、お願いしようかしら」
ウルフィリア 「美人の説教……ごくり」
エスカ 「ウルフィリア?」
ルーナ 「斬り落とされたいの?」
ウルフィリア 「ひっ……やっぱり遠慮しときます」
ソフィー (……今だっ!)
ルーナ 「ソフィー?」
ソフィー 「ひっ」
ルーナ 「逃げ出そうなんて、いい度胸じゃない。城に戻ったら、ね?」
ソフィー 「は、はひいいいい! すみません~!!」
────────────
アルトリウス 「ははは、ソフィアのサボり癖にも困ったものですね」
アーロン 「……」
アルトリウス 「さーてと、次はどなたが……」
アーロン 「……この世界は、なんなんだよ?」
アルトリウス 「はあ、だから、言ったでしょう? ここは、アーロンさんへのご褒美、いわば、ボーナスステージといったところでしょうか」
アーロン 「は……」
(SE 足音)
ハミルトン 「そこの御仁、このあたりで、錬金術師を見かけなかったか?」
アーロン 「……あんたは……」
ハミルトン 「失礼。私は、帝国騎士団隊長主席のハミルトン・レイ、そしてこちらが」
バーナード 「騎士団長のバーナード・メイザースだ」
アーロン 「……!!」
バーナード 「錬金術師のアリア・メイザースを捜しているのだが、店にいなかったのでな。街に出ているのだと思っていたが……」
アーロン 「アリアを……?」
バーナード 「ほう、アリアを知っているのか?」
アーロン 「バーナード、今度は何を企んでいるのか知らねえけど、アリアはあんたの道具じゃない」
バーナード 「…………」
ハミルトン 「お、お前、団長になんて無礼を!!」
バーナード 「よせ、ハミルトン」
ハミルトン 「しかし……」
バーナード 「いいんだ」
ハミルトン 「…………はっ」
アーロン 「……?」
バーナード 「どうやら、貴公は我が娘アリアと親しいようだな」
アーロン 「…………」
バーナード 「恥ずかしながら、アリアとはいわゆる親子喧嘩の最中でな、機嫌を取ろうと、アリアの気に入っていた酒を持ってきたのだが、店が留守だったんだ」
アーロン 「…………は?」
バーナード 「……よければ、アリアが行きそうなところでも知っていたら教えて貰えないだろうか?」
アーロン 「…………ふ、あっはははは!! あの騎士団長が娘と喧嘩? ありえねーだろ」
バーナード 「…………!!」
ハミルトン 「団長……!」
アーロン 「はあ、アリアなら、採取にでも行ってんじゃねえか? 湖にでも行ってみろよ」
バーナード 「……! そうか、協力、感謝する」
(SE バーナードが去る音)
ハミルトン 「だ、団長、待ってください!」
(SE ハミルトンが去る音)
アルトリウス 「はは、あの騎士団長もやはり、父親だったということですね」
アーロン 「アルトリウス……」
アルトリウス 「ようやく、わかっていただいたみたいですね」
アーロン 「……」
アルトリウス 「そう、この世界は、ボクが最初に作った『すべてがうまくいった世界』をより完璧にしてみたんです」
(SE アルトリウスがアーロンの隣に座る音)
アルトリウス 「どうです、この世界は? ここでは、元の世界で起きた不幸なんて起きなかった。掛け値なしの幸福が、ここにはあるんです」
アーロン 「……みたいだな。みんな、幸せそうだった」
アルトリウス 「ええ、アーロンさんが頑張らなくてもいい世界なんです」
アーロン 「…………!」
アルトリウス 「ソフィアも、ルーナさんも、フィリップさんも、レオンハルトさんも、もちろんアリアさんも、アーロンさんの力がなくても、幸せなんですよ」
アルトリウス 「アーロンさんは、これまで、誰かが危険に陥れば守ろうとし、誰かが困っていれば相談に乗ってあげていましたよね? もう、その必要はないんです」
アーロン 「……」
アルトリウス 「ですが、アーロンさんがこの世界に存在してしまうと、貴方はきっと、仲間のもとに行ってしまう。そうなってしまうと、アーロンさんの死神の力が影響して、この世界に綻びが生じてしまうんです」
アルトリウス 「アーロンさん、言うなれば、貴方は世界のバグなんですよ。貴方は生まれてくるべき人間ではなかった」
アーロン 「生まれてくるべきじゃなかった……?」
アルトリウス 「はい、アーロンさん、考えたことはなかったのですか? 巫の素養があった、あのエスカ・ロベールでさえ、死神の力は扱いきれなかった。それなのに、アーロンさんは使いこなして見せた」
アーロン 「それは、月の雫を飲んで魂の力を増幅させたからだろ?」
アルトリウス 「はは、あの霊薬は、魂の力を増幅させるのではなく、引き出すものなんですよ。つまり、もともと、アーロンさんには死神の力を御せる能力があった、ということです」
アーロン 「…………」
アルトリウス 「しかし、死神の力は、魂の力だけで御せるものではありません」
アーロン 「は?」
アルトリウス 「それは、アーロンさんの出生に関係があります」
アーロン 「……もったいぶるなよ」
アルトリウス 「死神の力は、皇族にしか扱えない、ということです」
アーロン 「…………!!」
アルトリウス 「はは、驚くのも無理はありません、捨てられた皇子アレン・ウィル・ハルモニアとただの酒場の青年であるアーロンさんが同一人物だったなんて、ボクもついぞ気づかなかったんですから」
アーロン 「……アレン・ウィル・ハルモニア……」
アルトリウス 「そうです、兄上。貴方には、世界を滅ぼす力を持っている。ボクとしても心苦しいんですよ、腹違いとはいえ、実の兄をこんな苦しいゲームに付き合わせてしまったんですから」
アーロン 「…………」
アルトリウス 「ですが、アーロンさんが存在していては、アーロンさんのお仲間まで苦しんでしまう。この掛け値なしの幸福が、終わってしまうんです」
アーロン 「は、そういう、ことかよ」
アルトリウス 「ボクではアーロンさんを殺せない。この意味、わかりますよね?」
アーロン 「………………」
アルトリウス 「さすがです」
(SE 指を鳴らす音)
(SE 金属など色々なものが落ちる音)
アルトリウス 「これは、ほんのプレゼントです。どうぞ、好きな死に方をお選びください」
アーロン 「は、いらねーよ」
アルトリウス 「……?」
アーロン 「自分の最期くらい、自分で決めるさ」
アルトリウス 「そうですか。それは無粋な真似をしてしまいましたね。どうぞ、あとはご自由に」
アーロン 「……ああ、そうさせてもらう」
つづく
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