竜宮島の乙姫と一匹の竜

田村ケンタッキー

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邪竜剣技お披露目

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「誰だおめえは! これからお楽しみだってのに邪魔してくれやがってよ! ただじゃおかねえぞ!」

 お預けを食らった禿げ頭は激昂する。

「おいおい、俺を忘れたのか……なんて言うが俺もお前の顔に覚えはねえな。あんときは真っ暗だったし、お互い様だもんな」
「まさか……あんときの河童か!?」
「河童!? 俺、河童扱いされてたのか!? 海なのに河童!? ちょっと待て、そもそも俺はお前と違って禿げてねえだろうが!」
「はあ!? 俺も禿げてねえが!?」

 子供のような言い合いになる裏で弓を構える者が現れると禿げ頭は止める。

「待て、弓はまずい。この向きだとこの後のご褒美に傷がついちまう」

 仲間同士の相打ちならともかく、乙姫は滅多にお目にかかれない美女。

「傷物にするなら槍で、だろ?」

 下腹部を叩きながらニタニタと下劣な笑いを浮かべる。仲間たちにもその笑いが移る。

「見るからに全身傷だらけの死にぞこないだ。弓を使うまでもねえ。たたきにする」

 海賊たちはぐるりと竜之助を囲む。
 ゲラゲラと禿げ頭は笑う。彼は取り囲みに加わらず、離れた場所から見物する。

「あの時は囲うにしても数も少ない、足場も不安定な不慣れな場所だったからな。今回はそうはいかんぞ」

 乙姫は叫ぶ。

「竜之助! 逃げろ! お前が、この島のために死ぬことはない!」

 竜之助はその場から動かなかった。

「……お姫さん、何か勘違いしてねえか? さっきも言っただろう。俺は自分がやりたいようにやるまでだぜ。俺はこいつらを切りたくて切りたくてうずうずしてるんだ。こいつら海坊主がいなけりゃ俺は変に疑われず、今頃島の人妻たちと良い仲になってたんだぜ」
「……えっと竜之助、お前は何を言ってるんだ?」

 竜之助は伸びてきた無精ひげをばりぼりと掻く。

「とにかくだ! 俺はやりたいようにやらせてもらいますよ! いいですね!」

 刀を構えると目つきが変わる。一瞬で雰囲気が変わる。
 海賊たちの目には先程まで芋侍がでしゃばってきたように映ったが今は違う。海賊たちも日夜戦場を駆る身。生き死を乗り越えてきたかこそ肌でわかる。

「こいつ、一瞬で人が変わった……」

 怯む海賊たち。汗ばんだ手で刀を握りなおす。

「見せてやる……俺の、邪竜剣技を」

 海賊たちが刀をぎゅっと握る。
 次の瞬間、竜之助は上を見上げる。

「なんだあ、お月様、俺に喧嘩売ってるのか!? 受けて立とうじゃあねえか!」

 突如として剣を振り回してその場でぴょいんぴょいんと兎のように高く飛び跳ねる。
 呆気にとられる海賊たち。

「おい! 降りてこい! そんな高いところから見下ろしやがって卑怯だぞ!」

 なおも続ける竜之助。
 真剣そのもの切羽詰まる表情に次第に海賊たちは、

「……ぷ」

 緊張の糸がほぐれ、

「ぶははははは!」

 思わず笑ってはならない場面で失笑してしまう。

「な、なんだこいつは! 酒でも浴びてきたのか!」
「ははは! こりゃ傑作だ!」

 一度解れた糸は戻すのに手間取るもの。
 誰もが竜之助が真剣を握っていることを忘れてしまう。

「ほーれ、ぴょんぴょーん!」

 竜之助は裏声を上げながら笑いを取りながら、間合いを詰める。

「ははっはっは……は?」

 気付いてからはもう遅い。

「──まずは一人」

 竜之助は一振りで一人の首をねた。
 まな板から落ちた大根のようにごろりと、砂浜の上を一瞬前まで笑っていた男の首が転がる。白く美しい砂浜が人血で赤く染まる。

「あ」

 隣にいた男は足元に転がる首を目で追う。
 次の瞬間には同じ目線の高さ。

「──二人」

 包囲に二人分の穴ができる。
 竜之助はそこから突破し、次に向かうのは離れた場所に立つ弓兵三人。

「早く! 早く矢をつがえろ!」

 油断は弓兵にまで伝わっていた。
 慌てて放つが瞬間タイミングはバラバラで照準も定まっていない。
 何より放つのが早すぎた。

「だめだぜ、矢を当てるにゃちゃんと引きつけなきゃ」

 竜之助は飛んでくる矢を難なく躱し、次の矢を番えようとした弓兵の手を刎ねる。

「よくもおおお!!」

 弓兵のうちの一人は手練れであり、外したとわかると早々に弓を捨てて短刀を抜いていた。仲間を守ろうと真正面から切りかかる。

「うむ、こんな時だというのにタンが絡んできた。かーぺっ」

 口から吹き出す汚物。

「うわぁきたな!?」

 助けに入った弓兵の顔に直撃し視界を奪う。

「うわぁきたなが断末魔の叫びとなるのはちと可哀そうか」
「かっ!?」

 側頭部を刀の側面で平打ちし、気絶させる。
 落ちた弓は踏んで壊して使い物にならなくなった。

「さて弓兵最後の一人だが……」
「ひぃ!! おねがいだ、切らないでくれ!! この通り!!」

 自ら矢を捨てて弓を折る。弓以外の武装もしていなかった。

「……ちょうどいいな。生かしてやるよ。ほら、味方を手当てしてやんな」
「あ、ありがとう! ありがとう! 恩に着る!!」

 竜之助はあえて降参を受け入れ、

「見ただろう、海賊ども」

 見せびらかす。

「俺も鬼じゃねえ。武器を捨てて降参すりゃ受け入れてやるぜ。それとも首を刎ねられたいか? そこで転がってる首みてえによ」

 海賊たちにとっては魅力的な提案に見えて心が揺らぐ。
 竜之助の実力を目の当たりにさせ恐れさせてからこそ、初めて降参は意味を成す。
 彼の立ち回りがよっぽど衝撃的で刀を下ろす者も現れた。

(よおし、いいぞ、そのまま、そのまま)

 降参は竜之助にとっても悪い話ではなかった。むしろよっぽど好都合。

(……身体中が痛え……仙術で痛みを誤魔化さなきゃとっとと気を失ってるぜ……)

 体力の限界は近い。残る全員と立ち回れば間違いなく全滅させるまえに命を落とす。
 降参は賭けであった。最初にありったけの全力を見せ、恐怖を受け付けて戦意を削ぐ。馬鹿をやったうえで自分の命を守るにはこの方法しか考え付かなかった。

 しかし賭けは失敗に終わる。

「馬鹿か! 海賊が命乞いなどするものか! なあ、お前ら!」

 禿げ頭の言葉に大半の海賊が息を吹き返すが、残りの半分が戦意を失ったままだった。
 この結果を竜之助は前向きに考える。

(俺の不幸体質にしちゃあ……上出来じゃねえかな)

 あと何人斬れば完全に戦意を喪失させるか計算してる時のことだった。

「ぎゃああ!」

 背後から、生かしておいた弓兵の断末魔の叫び。

「どうして、どうして、俺は手当して」

 降参し手当に当たっていた弓兵の首が飛ぶ。
 切ったのは、

「……今更何しに来た、浦島さんよぉ」

 浦島桐生。どこからともなく現れて突如として戦意を失った者の首を刎ねる、無益な殺生に走った。
 竜之助は驚かない。驚きはしないが落胆はする。

「穏便に済ませてやろうって俺の温かい気遣いわからない? どういうつもりだ、てめえ」
「……」

 浦島は何も言わない。何も言わず、剣を振った。

 キン!

 刀と刀が交じり合い火花が舞う。

「……ああ、そうかい。つまり、?」

 竜之助は眉間に迫る刀よりもその先、浦島の顔を見る。

「ようやく正体を現したな、真の裏切り者が」

 浦島は竜之助に切りかかっていた。
 頭から真っ二つにしようと刀に力を込めて振り下ろそうとしている。
 彼女の狙いはそれだけではない。

「何をぼさっとしている! 抑えているうちに切りかかれ!」
「へい、大将! 野郎ども取り囲め!」

 偉そうにしていた年長者の禿げ頭が従順に従う。

「ぐぬぬぬ……!」

 跳ね返しきれず竜之助の足は沈んでいく。

「どうした、あの時みたいに押し返してみたらどうだ? できるならばな!」

 浦島はより一層力を強める。

「やめろ、浦島……!」
「いまさら命乞いか? 僕が聞くとでも!?」
「違ぇよ。忠告だよ、二度目のな!」

 竜之助は誘い込んでいた。
 下りてくる剣を跳ね返さずに受け流す。同時に浦島の身体の下に潜り込む。

「せえの!」

 腹を蹴り上げて浦島を飛ばす。

「なあ!? 大将がこっちに飛んできた!?」

 浦島の身体は加勢に加わろうとしていた禿げ頭に落ちていき、

「フン」

 浦島は空中で体勢を整え、

「あだぁ!?」

 禿げ頭を踏み台にする。

「まるで猫みてえだな……」

 海賊たちは人離れした芸当に感心してしまう。

「……何をぼさっとしている。切られたいのか」

 浦島は刀をちらつかせる。

「戦わぬ臆病者はいらない。生きる価値もない。真っ先に僕が始末してあげよう」

 ──賭けは失敗に終わった。
 浦島の登場で計算は大いに狂った。
 戦意を失った者も強制的に戦いに駆り出されてしまった。

「……へっ、案山子をいくら集めたところで案山子だぜ」
「その強がりがいつまで続くか、見物みものだな」
「おう、よく見ておけ、ここからが邪竜剣技の神髄よ」
「邪竜剣技……ふん、実に下らない。要は姑息なその場しのぎだろう。二束三文の芝居を打って油断を誘う。扇情的に脅して戦意を奪う。衰弱した身体をひた隠しにして強がる……邪竜ではなく三流と改めるべきだね」

 浦島の推察はずばり図星。

(いかんなあ、なんとか言い負かさないと……)

 邪竜剣技は名前が仰々しいだけの見せかけに過ぎない。
 とにかく何でもやる。不意打ち、だまし討ち、闇討ち、ありとあらゆる卑怯な手を使ってでも生き残る術。一皮むいてしまえばこんなものである。
 弱者と見下されよう。小物と笑われよう。
 それでも生き残るのであれば敵を前にして背を向けるのも良しとする。
 しかし此度の戦いは違う。

「……不意打ちばっかの卑怯者がそれを言うか?」

 逃げ道などない。そも逃亡など許されない。
 相手を必要以上に激昂させようと弱みを見せてはいけない。

「手下なんて使わずに真っ先にお前が来いよ。なんだ、怖いのか?」

 浦島の眉がぴくりと引きつる。しかしすぐに深呼吸をし、平静さを保つ。

「もう君とは刃を交わることはないだろう」

 一歩引き、禿げ頭の肩を叩く。

「後は頼むぞ。あいつを一番に殺した者が乙姫の処女を奪えることにした」

 禿げ頭はにたりと笑う。

「大将……男を乗せるのが上手いですねえ」

 肩をぐるぐると回して気合いを入れる。

「聞いたな、お前たち! 早い者勝ちだ! 囲め囲め!」

 囲めと指示が出るが性欲に走る男にそんな言葉が耳に届くはずがない。
 陣形を無視して我先にと襲い掛かる。

「……これだから男は馬鹿なのだ」

 浦島は呆れつつもその場を動かない。
 竜之助はというと、

「俺も男だ。大勢を相手取るからって滅多に背は向けはしないさ。だがな、お師匠様の言葉にはこうある。勝てないとわかれば逃げても良い」

 滅多に向けない背をあっさりと向け、

「お師匠様の言葉とあっちゃ従わないとな! 嗚呼本当は背を向けたくないんだがな! お師匠様の教えだからな!」

 シャカシャカと砂を蹴って走る。
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