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【第4章】ロデオに吹く情熱の風 フラメンコも愛も踏み込みが肝心

策士策に溺れるアレクシス嬢

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 城内を逃げ惑うアレクシス。突き当りの廊下に差し掛かり、曲がるためにも減速する。

「しかし減速をしますと……」

 首元を掠める二発の弾丸。
 アレクシスの拳でもびくともしなかった光る壁にヒビが入った。

「まあ! こんなの一発でも当たったらひとたまりもないですわ!!」

 ヒビはしばらくすると自己修復機能が発動し塞がり始める。

「ヒビを開けてもらってぶん殴る……だめですわ、時間が足りない……何度もヒビを開けさせて城の魔力のリソースが切れるのを待つ……これもいけません、日が暮れてしまいます」

 忘れてはならない。アレクシスはここでの事件を解決したら即座に王都へ向かわないといけない。
 今はまだ昼前。結婚式までには時間がある。

「となると彼女の魔法を攻略するのが一番手っ取り早いですわね……できればのお話ですが」

 新たな情報を得ようと観察をしようにも彼女の姿を見た瞬間に弾丸が正確に急所を狙ってくる。

「思い出しなさい、淑女の中の淑女アレクシス……! 彼女の魔法の特徴を……!」

 走りながら頭に指を立てて回す。

「……そういえばなんで昨晩は逃げ出したのでしょう?」

 あれは夜の出来事。分が悪い勝負はしないと逃げ出した。
 彼女の魔法であればその場で手から拳銃と弾丸を取り出して撃つことができたはず。
 偶然用意していなかった……?
 いいや、彼女の性格ならどんな時であれば常備するはず。
 それではあの場あの時は不可能だった……?

「あれは……夜……影……あ、わかりましたわよ!!」

 カルメンは言っていた自分の影から弾丸を取り出す。
 つまり彼女の影がはっきりとしてなくてはいけない。
 夜のような暗闇に包まれると境界が曖昧になり発動できなくなる。

「だったら、こっちにも考えがありますわよ!」

 アレクシスは探す。城であれば、人が集まる場所であれば、必ず存在する空間。

「ありましたわ!」

 その空間はご丁寧にも入り口に看板が置いてあった。
 食材貯蔵庫。この際食材だろうと酒だろうと関係はない。
 暗所が必要だった。

「とう! 安全地帯に避難ですわ!」

 食材貯蔵庫は幸いロウソクが一本も立てられていないほどに暗かった。

「おーっほっほっほ! 現影魔法破れたりですわ! さあカルメン! おいでまし! 暗闇の中で私を正確に狙えるかしら!? 私は耳が効きますので暗闇の中でもそれなりに有利に戦えますわよ!!」

 安全地帯に逃げ込んで心が大きくなるアレクシスだったが、あれほど執着して離れなかったカルメンがいくら経っても姿を現さない。

「……どうしたのでしょう? 分が悪いから暗闇の中では戦わないつもり……?」

 ふとアレクシスは気づく。

「この食材貯蔵庫、やけに匂いますわね……腐った卵の匂い……いや、これはまさか!!!???」

 彼女が感じ取っていたのは硫黄の香りだった。
 アレクシスはまんまと罠にひっかかった。
 安全地帯と思い込んでいた食材貯蔵庫には大量の火薬が積み込まれていた。



 カルメンは離れた安全の場所にいた。

「何度も言わすな、ここは拙の領域テリトリーだ。貴様に勝ち目はない」

 簡単な火の魔法で着火する。


 ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!!!


 爆発音はロデオの城下にも響き渡った。
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