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【最終章】顔は愛、愛は顔 面食い淑女よ永遠に
仲間と合流するアレクシス嬢
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「泣き止んだのかい、アレクシス。もっと僕の胸で泣けばよかったのに」
「これ以上泣いてはいられませんわ、カルロス様のお顔が見れなくなりますもの。ただ……」
「ただ?」
「大司祭様はまだ涙が止まらないようですわ」
二人の世界に入っていたがすぐ側には大司祭がいて、滝のような涙を流していた。
「こういうの! 儂はこういうのが見たかったの!」
大司祭、70歳。趣味は恋愛小説の読書。特に純愛系を好む。涙を拭いて晴れ晴れとした笑顔を見せる。
「アレクシス様の活躍のおかげでこれにて一件落着ですな! さあ改めて結婚式を開きましょう! これまでの悲劇を払拭するほどの、それはもう盛大に祝いましょうぞ!」
「ちょっと大司祭様!? フラグみたいなことを言わないでくれます!?」
「よくもアレクシス……よくもやってくれましたわねえ」
黒焦げのマリアが動き出す。
「ほらぁ! 立ち上がっちゃいましたわぁ!? どうしてくれますの大司祭様ぁ!」
「儂のせい!?」
元の年齢の姿に戻ったマリアはふらふらになりながら立ち上がり、持っていた小瓶を叩きつける。叩き付けられた小瓶は粉々に砕け散る。
「大司祭、わかっているでしょうね……教会本部には多くの軍人が取り囲んでいることに」
「むむ、それは……」
「それは本当ですの!? 大司祭様!?」
アレクシスはカルロス救出に頭がいっぱいで教会についてまでは頭が回らなかった。脅迫されているとも知らなかった。
「今頃教会本部は火の海でしょうね? 実はあなたが裏切ろうと何もしなかろうと結婚式が終わるタイミングで攻撃するよう指示しておきましたの」
「なんだと!? 約束が違うぞ!?」
「教会の連中はあなた同様に耐性が強く私の催眠が効きませんので支配の邪魔なんですよ。あ、でも逆に末端の軍人にはあえて催眠魔法にをかけていませんの。蟻んこは女王からの命令を疑わず動いていくれますからね。扱いやすくて大助かりですわ、うふふふふふ」
「バカな……そんな……では今までの私の抵抗は……」
「無駄でしたね~? 耳をすませば聞こえるんじゃない? 信者たちの悲鳴が。お決まり文句の神よ、どうして見放されたのです~なんてさ~」
しかしどれだけ耳を澄ませようと爆発音は聞こえてこなかった。
「一体どうなってますの……まさかこの私の命令を無視して仕事を放棄したの」
そこへ新たな男の声。
「いーや、あいつらはきちんと仕事してるぜ。ただし城壁の外でな」
「ペペ兄様はほんと優秀だね。幻の軍勢で城内の兵をみんな引き付けちゃうんだから。イバン兄ちゃんにもったいないくらいだよ」
「アルフォンス様。拙も、拙もあれくらいはできますよ?」
それぞれの名前をアレクシスは大声で呼びあげる。
「イバン様!? それにアルフォンス様にカルメンまで!?」
「よっ、二日ぶりくらいか。また会えてうれしいぜ」
イバンはウィンクで茶目っ気に返す。
「三人とも、どうしてここに」
ずっと正気を失っていたカルロスは突然の再会に事情が分からず混乱する。
「なんだなんだ、招待状なしじゃあ結婚式に来れないように、ピンチでも呼ばれるまで助けに行っちゃダメな法律でもあるのか?」
「そうだよ! 僕たちは兄弟なんだから助け合うのは当然でしょう!」
「拙はアルフォンス様の護衛に来ただけだ。貴様を助けに来たつもりはない」
一人だけ空気を読めない発言。
「カルメン……お前ってやつはよ……」
「カルメン。だめだよ? ここは素直に助けに来たって言わないと」
「アルフォンス様、お言葉ですが常に護衛対象はあなた一人ですので……ただ、まあ、援護ぐらいはしてやりますが」
「あとでマムからも叱ってもらわないとね」
「あの方からの説教は勘弁であります……」
助けに来てくれた三人の姿を見て、アレクシスは止まった涙が溢れそうになる。
「いいえ、もう泣きませんわ……涙を見せびらかすのは淑女のすることではありませんわ。それにこのような場でふさわしいのは涙ではなく……」
イケメンだけでない、美しき友情を目の当たりにし立ち上がる体力すらなかったのにあっという間に回復して立ち上がるまでに。
「カルロス様との約束もありますし、いつものアレ、行きますわよ」
左手は腰に当て、右手は裏返して口元に添える。
「おーっほっほっほ!! 役者は揃いましたわ! マリアンヌ・フォンテーヌ! あなたの悪事はここまでですわ!」
太陽が分厚い雨雲に穴を開けた。
「これ以上泣いてはいられませんわ、カルロス様のお顔が見れなくなりますもの。ただ……」
「ただ?」
「大司祭様はまだ涙が止まらないようですわ」
二人の世界に入っていたがすぐ側には大司祭がいて、滝のような涙を流していた。
「こういうの! 儂はこういうのが見たかったの!」
大司祭、70歳。趣味は恋愛小説の読書。特に純愛系を好む。涙を拭いて晴れ晴れとした笑顔を見せる。
「アレクシス様の活躍のおかげでこれにて一件落着ですな! さあ改めて結婚式を開きましょう! これまでの悲劇を払拭するほどの、それはもう盛大に祝いましょうぞ!」
「ちょっと大司祭様!? フラグみたいなことを言わないでくれます!?」
「よくもアレクシス……よくもやってくれましたわねえ」
黒焦げのマリアが動き出す。
「ほらぁ! 立ち上がっちゃいましたわぁ!? どうしてくれますの大司祭様ぁ!」
「儂のせい!?」
元の年齢の姿に戻ったマリアはふらふらになりながら立ち上がり、持っていた小瓶を叩きつける。叩き付けられた小瓶は粉々に砕け散る。
「大司祭、わかっているでしょうね……教会本部には多くの軍人が取り囲んでいることに」
「むむ、それは……」
「それは本当ですの!? 大司祭様!?」
アレクシスはカルロス救出に頭がいっぱいで教会についてまでは頭が回らなかった。脅迫されているとも知らなかった。
「今頃教会本部は火の海でしょうね? 実はあなたが裏切ろうと何もしなかろうと結婚式が終わるタイミングで攻撃するよう指示しておきましたの」
「なんだと!? 約束が違うぞ!?」
「教会の連中はあなた同様に耐性が強く私の催眠が効きませんので支配の邪魔なんですよ。あ、でも逆に末端の軍人にはあえて催眠魔法にをかけていませんの。蟻んこは女王からの命令を疑わず動いていくれますからね。扱いやすくて大助かりですわ、うふふふふふ」
「バカな……そんな……では今までの私の抵抗は……」
「無駄でしたね~? 耳をすませば聞こえるんじゃない? 信者たちの悲鳴が。お決まり文句の神よ、どうして見放されたのです~なんてさ~」
しかしどれだけ耳を澄ませようと爆発音は聞こえてこなかった。
「一体どうなってますの……まさかこの私の命令を無視して仕事を放棄したの」
そこへ新たな男の声。
「いーや、あいつらはきちんと仕事してるぜ。ただし城壁の外でな」
「ペペ兄様はほんと優秀だね。幻の軍勢で城内の兵をみんな引き付けちゃうんだから。イバン兄ちゃんにもったいないくらいだよ」
「アルフォンス様。拙も、拙もあれくらいはできますよ?」
それぞれの名前をアレクシスは大声で呼びあげる。
「イバン様!? それにアルフォンス様にカルメンまで!?」
「よっ、二日ぶりくらいか。また会えてうれしいぜ」
イバンはウィンクで茶目っ気に返す。
「三人とも、どうしてここに」
ずっと正気を失っていたカルロスは突然の再会に事情が分からず混乱する。
「なんだなんだ、招待状なしじゃあ結婚式に来れないように、ピンチでも呼ばれるまで助けに行っちゃダメな法律でもあるのか?」
「そうだよ! 僕たちは兄弟なんだから助け合うのは当然でしょう!」
「拙はアルフォンス様の護衛に来ただけだ。貴様を助けに来たつもりはない」
一人だけ空気を読めない発言。
「カルメン……お前ってやつはよ……」
「カルメン。だめだよ? ここは素直に助けに来たって言わないと」
「アルフォンス様、お言葉ですが常に護衛対象はあなた一人ですので……ただ、まあ、援護ぐらいはしてやりますが」
「あとでマムからも叱ってもらわないとね」
「あの方からの説教は勘弁であります……」
助けに来てくれた三人の姿を見て、アレクシスは止まった涙が溢れそうになる。
「いいえ、もう泣きませんわ……涙を見せびらかすのは淑女のすることではありませんわ。それにこのような場でふさわしいのは涙ではなく……」
イケメンだけでない、美しき友情を目の当たりにし立ち上がる体力すらなかったのにあっという間に回復して立ち上がるまでに。
「カルロス様との約束もありますし、いつものアレ、行きますわよ」
左手は腰に当て、右手は裏返して口元に添える。
「おーっほっほっほ!! 役者は揃いましたわ! マリアンヌ・フォンテーヌ! あなたの悪事はここまでですわ!」
太陽が分厚い雨雲に穴を開けた。
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