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ロビンの仕事

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 ロビンたちが戦場に戻るとダーペントがテオに向かって猛突進する真っ最中だった。

「先手必勝!! テオ・スラッシャー!!」

 景気よく剣を振り下ろすが、

「……あれ!? 衝撃波が出ない」

 チャージタイムが短かった。焦りで溜めを見誤ってしまった。
 依然ダーペントがテオに向かっている。敵意と殺意を持って口を開き飲み込もうとしていた。

「爆散しろ! ファイアボール!!」

 マチルドは速度重視で詠唱を略して攻撃魔法を放った。
 杖の先から射出されたダチョウの卵ほどの火の球がダーペントの口の中で爆発する。
 
「どうよ!? 小さいからって見くびらないでよ!」

 顔から真正面に直撃した。マチルドは手ごたえを感じていたが、

「ダアアアアアア!!」

 黒い爆炎から鳴き声、そして無傷の顔が姿を現す。

「えええ!? 威力が足りないの!?」

 咄嗟のファイアボールは動きを鈍らすことしかできなかった。

「ておおおおお!!」

 ロビンが叫びながら駆けていた。

「ロビン!? 今から駆け出しても間に合わないわよ!?」

 マチルドの言葉はまるで聞こえていなかった。
 なにがなんでも助けようと無我夢中だった。

(間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え)

 間に合う算段なんてない。自覚はしていても身体が動いていた。

「一か八か、もっと高火力の魔法を放つか?」
「待って、マチルド。私がやる」

 ビクトリアの身体が白いオーラに包まれる。そして必要最低限の短い詠唱。

「クイック」

 途端ロビンの身体がビクトリアと同様に白いオーラに包まれた。そして彼の動きは何倍にも加速した。

「はあ?! 一文詠唱であんなに効果が!?」

 異変に驚いていたのはマチルドのみ。

「うおおおおおおおおまにあええええええ」

 ロビンはバフをかけられたことにも気づかず、テオに一心不乱に走った。

「ダアアアアアアアアアアン!!」

 ダーペントの口は閉ざされる。岩を噛み、それを容易く粉々に砕いた。
 テオはというと、

「師匠!! 足はえええ!!」

 すんでのところでロビンの救出が間に合い、彼の腕に抱かれて目を輝かせていた。

「ど……どう、だ……本気を……出したら、これ、くら、ごほっおうぇ!」

 ヒーローは格好つけたがったが呼吸困難に陥りまるで格好がつかなかった。

「ダアアアアアアアア!!」

 ダーペントはすでに次の攻撃に移っていた。

「師匠! また来るぞ!」
「や、やば、まだこきゅうが、ととのって」

 今度こそ万事休すか。

「熱よ根を張れ、炎よ華を開け、原始の万象ここにあり……ファイアボール!!」

 太陽の日差しをたっぷり浴びて肥大化したカボチャサイズまで膨らんだ火の玉がダーペントの横っ腹に当たる。

 ドオオオオオン!!

 ダンジョン内のマナ濃度も有り、大爆発が起きる。

「だあああああああ!」

 ダーペントは怯んで攻撃を中断し地面を這いまわる。

「見たか、あたしの魔法!」

 マチルドはふふんと得意げに誇る一方で、

「今の大爆発でテオたちが巻き込まれてなければいいんだけど」

 ビクトリアはただただ冷静につっこむ。

「……あ」
「……その様子だとそこまで考えが行き届いてなかったようね」

 結果を言うと二人は無事だった。

「こおらあ! マチルド! 俺たちを殺すつもりか!」

 ロビンがテオをおんぶして合流する。

「あんまり調子乗ってると紳士の俺でも本気で切れるぞ!? 女相手にもよぉ!」
「ごめんごめん。あとで頬にキッスしてあげるから許して」
「よし許す!!」

 自分せいよくに忠実なロビンの判断は迅速。

「テオ! 勝手に突っ走んないの!」

 ビクトリアはビクトリアでテオに対して説教を始めていた。

「だってよぉ~」
「もう、だってじゃないの! ほんとあんたってばいっつもそう!」

 こちらの弾糾は長引きそうだった。

「ビクトリアさん。気持ちは痛いほどわかりますが説教は今しばらく我慢してくださりますか?」
「なに!? ロビンはテオの肩を持つの!?」
「そうじゃなくてあっちあっち」

 指をさすほうには、

「ダアアアアアア!!」

 ファイアボールを受けてもピンピンしているダーペントがかかってこいと言わんばかりに吠えていた。

「……はあ。私も子供じゃないわ。優先すべきことをわかってるつもりよ」
「話が早くて助かります」

 なし崩しではあったが戦闘が始まった。
 普段はバラバラだが、この瞬間は全員の心が一つになっていた。
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