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山走万奈の場合
山走万奈の無体(6)
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「先生いるか!? いるよな!? 返事しろよ!!」
「ええ、いますよ、ここに」
深夜の女子トイレがにわかにうるさくなる。
大量に流れる水道。バシャバシャと水しぶきが飛ぶ。
「サイアクサイアクサイアクサイアク……!」
山走万奈は年甲斐もない情けない姿を見られ、その後始末に追われる間も羞恥がこみあげてくる。八つ当たりとばかりに洗い物に余計な力が入る。
「大丈夫ですか? そんなに力強く洗ったら伸びたりしませんか?」
足立康太郎は女子トイレの前にいた。
粗相をした後、彼の対処は迅速かつ紳士的であった。ハンカチで足を、濡れ雑巾で床を拭いた。
汚れた衣類の洗濯は山走万奈が自ら率先してやろうとしたが問題が発生する。洗濯できる場所は女子トイレしかない。時刻は深夜。また停電が起きて真っ暗闇になる恐れもある。そして何より……不気味で怖く、心細い。
ということで彼はここまで同伴していた。していたのだが、
「聞き耳立てるな、変態!! どっか行け!!!」
大失態を犯した彼女はいつにも増して取り扱いが難しい。
「……わかりました。何かあったら大声で呼んでください。すぐに駆けつけますので」
生徒の意見を第一に尊重し、なんでも言うことを聞く彼はその場から離れようとするが、
「本当にどっか行くやつがあるか!! いい感じに耳を塞いでろ馬鹿ー!!」
「この年頃の女性は難しいですね……」
とことん噛み合わない二人。一方は思ったことを正直に口走り、一方はその言うことを正直に遵守する。相性が壊滅的に悪い。結果、時間も手間もかかる。
しばらくして女子トイレから彼女は出てくる。
「……」
礼も言わずにすたすたと歩いていく。
彼女の向かう方向に教室がある。
会話がなくともなんとなしに意志が伝わる。
「なるほど。あくまで諦める気はないつもりですね。怖い目にあっても諦めないその意志、立派です」
感心していると勇猛だった彼女の足はぴたりと止まる。
「はやくこいよ!! 夜の学校で女を一人にするつもりか!?」
しかしやはり怖いものは怖いようだった。
「すみません、気が回りませんでした。すぐに行きます」
足立康太郎はニコニコと笑いながら牛歩の彼女を追いかけた。
「ええ、いますよ、ここに」
深夜の女子トイレがにわかにうるさくなる。
大量に流れる水道。バシャバシャと水しぶきが飛ぶ。
「サイアクサイアクサイアクサイアク……!」
山走万奈は年甲斐もない情けない姿を見られ、その後始末に追われる間も羞恥がこみあげてくる。八つ当たりとばかりに洗い物に余計な力が入る。
「大丈夫ですか? そんなに力強く洗ったら伸びたりしませんか?」
足立康太郎は女子トイレの前にいた。
粗相をした後、彼の対処は迅速かつ紳士的であった。ハンカチで足を、濡れ雑巾で床を拭いた。
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ということで彼はここまで同伴していた。していたのだが、
「聞き耳立てるな、変態!! どっか行け!!!」
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「……わかりました。何かあったら大声で呼んでください。すぐに駆けつけますので」
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「本当にどっか行くやつがあるか!! いい感じに耳を塞いでろ馬鹿ー!!」
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しばらくして女子トイレから彼女は出てくる。
「……」
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