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10.聖女様の過去

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「『ヘラクレス』、お前に伝えなければいけないことがある」

「はい、なんでしょうか、司祭様」



 いつも通り、聖歌を歌い、祈りをささげた後、『俺』は当時の司祭に呼びつけられた。



「実は……昨今の女子不足により、お前が『聖女候補』の1人になることになってしまった、よって、これからお前は『女として』過ごしてほしい」

「せ、聖女候補……ですが、俺は男ですよ?」

「わかっている、私も反対したのだが、教会の上層部が決めたことだ……本当に申し訳ないが、引き受けてはくれないか?」

「そ、そんな……突然そんなことを言われても……」



 俺は困惑してしまった。

 小さい頃から自分は男だと思って過ごしてきたのに、突然聖女候補なので女として過ごせと言われても、どうすればいいのか分からなかった。



「頼む……この通りだ……私の事は恨んでもいい……だが、教会だけは……」



 ……親代わりであった当時の司祭が、土下座をした。

 いつも厳しい彼がこんな態度になるほど追い詰められていたのかと、当時子どもながら感じ取った。

 ……そしてその時、考えた、これは教会に恩返しができるチャンスではないかと。

 司祭様は常に仰っていた「いつか誰かのためになるような逸材になりなさい」と、今日が恐らく……その日だと。

 俺は司祭様に近づき、腰を下ろした。



「……司祭様、顔を上げてください」

「……ヘラクレス」

「……俺はこんな日が来るのを待っていました、親代わりになってくださった司祭様、そして教会のために働くことができるのを……」

「……」



 司祭様の顔は、涙で汚れていた。

 俺はそんな様子を見て、もらい泣きしてしまった。



「教会の為に聖女になれというのならば……このヘラクレス、謹んでお受けいたします!」

「ヘラクレス……」



 ……その日から、『私』は、女になった。







 女性として過ごすようになってからは、大変だった。

 まず、女性は「上品な話し方をし、『俺』などという下品な一人称は使わない」と。

 教会本部で女性に囲まれた生活をし、私は困難を極めた。



「『ディナステス』! 歩き方が男性的です! 今すぐ直しなさい!!」

「は、はい!」



 私は『ヘラクレス』という名を捨て、『ディナステス』という名が与えられた。

 そして、女性の格好を身に纏い、女性としての振舞い方も教わった。
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