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第4章 Open Your Eyes For The Elf's Past

閑話 エルフの過去 その5 ~吸血鬼との出会い~

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 もう……何もかもが嫌になった。
 エルフなんて……もう沢山だ。
 くだらない過去に捕らわれて、くだらない事で争って、殺して……。
 ……私は決めた、もうこんなところ出て行ってやる。

 ……真夜中、私は髪型を変え、こっそり家を飛び出し、港へ急行した。
 まずは己の足で、様々な土地を歩いて行った。
 そして、3つほど都市を抜けたところで、荷馬車にこっそり乗り、荷物に隠れて移動した。
 ……潮の香りがしたところで、こっそりと降り、私は「外国の船」を探すことにした。
 そして、目に着いた外国船に、これまたこっそりと乗り込む。
 ……申し訳ないと思ったが、荷馬車から食べ物をいくつか持ってきていたので、これで次の港までは耐えれば大丈夫……そう考えていた時だった。

『……誰だ、貴様!!』

 出航して数時間、船員と思われる兎獣人に見つかってしまい、私は船長の元へと連れていかれてしまった。
 外国語で何を言っているのか分からなかったが、怒っているのは分かった。
 船長の目の前で跪き、両手を拘束される。
 船長は……その身長の小ささから、ドワーフの女性と見られた。
 傍目で見れば、8歳くらいの人間の女の子にしか見えないだろう。

『誰だ? まさかこの船の荷物を奪いに来たのか? おお?』

 女性は荒っぽい口調で、私に尋問する。
 「通訳の吸血鬼」がそれを翻訳し、私に伝えてきた。
 私はそれを聞き、咄嗟に首を横に振った。

「ち、違います! わ、私は……その……」

 理由は言い辛かった。
 家出をして、外国に逃げたい、そんなんで船に侵入するなんて……。
 すると……通訳の吸血鬼が、小さい声でこんなことを言ってきた。

「貴方……エルフ? ……氏族……争いから……亡命?」

 氏族争いから亡命……間違いではなかった。
 私は大きく頷き、そうであることを必死に伝えた。
 通訳の吸血鬼は、それを船長のドワーフに伝えると……船長は、納得した表情で頷き、何かを吸血鬼に伝え、去っていった。
 船長が去っていくのを確認すると、他の船員も散り散りになっていった。

「あ、あの……一体何が?」

 私が吸血鬼に不安そうにそんなことを言うと……吸血鬼は、笑顔でこう答えた。

「亡命……なら……乗せて……あげる……でも……船の……仕事……手伝えって……」
「……それって」
「うん……よかったね……」

 私は心の中で、ガッツポーズをした。

「私……名前……『キセノン』……貴方は?」

 吸血鬼は……キセノンと名乗った。
 私は……名前を名乗るのに躊躇した。
 何故あんな奴らから貰った名前を名乗らなきゃいけないのか……私はどうしても、名乗りたくなかった。

「もしかして……名前……ない?」
「あ、あるよ! あるけど……」
「……」

 吸血鬼……キセノンは、不思議そうな顔で、私を見ている。
 ……まぁ、そんな風にもなるよね。

「まぁ……名乗りたく……ないなら……大丈夫……早速……ついて……きて」
「う、うん!」
「じゃ……こっち……部屋……案内……する」

 私はキセノンの手を掴み、部屋へと案内された。
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