上 下
412 / 424
最終章 全員で一つの探索隊

第350話 玉座の女

しおりを挟む
「……いくよ? 1,2の……3!」

 私たちは……扉を開け、中に入った。
 扉を開けると部屋があった……その部屋は、まるでダンスホールの様に広かった。

「おお……」

 私はつい、そんな声が漏れてしまった。
 私が感心している中……私の服の袖を引っ張る感触がした。

「おい、瑠璃……あれ……」

 ……クロムが指を差した先……そこには、巨大な玉座があった。
 その玉座は……床から天井までの高さがあった。

「あそこに……親玉が……」
「……行こう、ルリルリ」
「……」

 私は息を飲み、威風堂々と歩き始めた。
 私の後を追うように、みんなも歩き始めた。
 私たちのけたたましい足音は……部屋の中に響き渡った。
 玉座に近づいていくと……そこに、女性が座っているのが見えた。
 女性は耳からヒレが生え……頭に輝く王冠を被っていた。
 女性は足を組み、何かを待っているかのような態度だった。

 ……私たちが近づいてくることに気が付くと……彼女は足を緩め、立ち上がった。
 
「……お前たちか……日本でダンジョンを消している探索者というのは……」

 女性は立ち上がるや否や……私たちに近づいてきた。
 その声はとても威厳があり……圧倒されそうになったが、私はゆっくりと口を開いた。

「……貴方は?」
「……私はラブカルド皇帝……アルゴだ……初めましてだな、猪飼瑠璃」
「……どうして私の名前を?」
「お前たちの事は既に調べがついている……ファンスウィン人のリン、サンルート人のサキュバス、ラピス、同じくドワーフのゴルド……モーファサ人のキセノンに……裏切り者のキマイラ……」
「おい! 俺の事はクロムって呼べよ!」

 ……どうやら、私たちの素性はお見通しのようだ。

「まぁ、今はそんなことはどうでもいい……お前たちをここまで呼び込んだのは他でもない……取引の為だ」
「……取引?」
「あぁ、別にお前たちに不利はない……むしろ、利益しかないかもな」

 ラブカルド皇帝を名乗るそいつは……私たちに近づきながら、「取引内容」とやらを話し始めた。

「もう既に……我々ラブカルドはこの世界を支配するほどの力がある……一斉にダンジョンを発生させ、行政、司法、経済……その他を麻痺させることなど容易だ……この世界の奴らは愚かにも他国のわずかながらの資源を狙い……異世界からやってきた民を迫害し……醜くも消えていく運命……その中で、我々が支配するのも容易い……」
「……何が言いたいの?」
「あぁ……ただ支配するにしても、有能な人材を消すわけにもいかない……お前たちはそれに該当する……我が側近であったピクシスを……いとも簡単に倒して見せ、この対岸の街を解放寸前まで追い込んでいる……」

 ピクシス……あの少女の事か。

「お前たちには相応の席を用意してやる……守りたい家族がいるのならばそいつも一緒でもいい……キマイラの裏切りも無かったことにしてやろう……どうだ? 悪い話ではないだろう?」

 ……奴は、静かに……片手を私に差し伸べた。

「さぁ……我々が天下を取るのも近い……共にこの世界で優雅に生きようではないか?」

 ……なんだろうか、無性に腹が立ってきた……人類が醜く消える? 征服するのが容易いだって?

「……けるな」
「……なんだって?」
「……ふざけるな!!」

 私は……差し出した手を弾き返した。
 奴は片手を抑え……鋭い目つきで私たちを睨んだ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:174

お高い魔術師様は、今日も侍女に憎まれ口を叩く。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:120

伯爵令嬢は執事に狙われている

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,379pt お気に入り:457

【R18】爆乳ママは息子の友達たちに堕とされる

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:198pt お気に入り:206

処理中です...