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殿下はにこやかに返したが、「何言ってんだこいつ」という目を向けられている。いきなり愛称で来いは攻めの姿勢ですからね。そうこの殿下、見た目はどう見ても受け身系だけど、基本戦法がガンガン行こうぜなお方なのです。
ロジェ=ギルマンの目がこちらを向く。
この流れはわたくしも自己紹介しないといけないのか……そっと頭を下げた。
「初めまして。シャリーアンナ=リュシー=ラグランジュと申します。最近殿下の案内人というか世話人というかに任じられまして……以後お見知りおきを」
「……で? なんであんたら、ここにいるんだよ」
「ぼくが王国の食事を堪能したいって言ったから――」
「いや、皇子サマはまあ、わかるけど。そっちのあんた、“沈黙のシャリーアンナ”だろ。いつものダサ眼鏡がないけど」
ダサ眼鏡ってなんですか。結構気に入ってたんですけど、あれ。
しかし、殿下はともかく、わたくしのことを元から知っていたらしいことには驚いた。
噂話とか興味なかったので片っ端から聞き流していましたが、わたくし、そんな風に言われてたんですね……ちょっと恥ずかしい。
「あんた自身というか、ミーニャ=ベルメールが有名人だから。次々男に声をかけて、ついに侯爵令息までたらしこんだ。でもあんた、それでこの前、派手にやり合ったんだって? で、今は皇子サマと一緒にいる? ……なんだこれ、ベルメールへの意趣返しって奴か?」
いぶかしげな目を向けられ、わたくしは思わず真顔で返してしまった。
「わたくしがそんな人間に見えますか? ミーニャに対抗して殿下を籠絡できる女だと?」
「えっ……いや、どうだろう。あんた眼鏡取ったら案外美人だし――いや目力強いな、こっわ! やめろよにらむなよ!」
「これはただの真顔です」
「マジで!?」
ロジェはガタッと椅子を引く。
ううむ、やっぱりわたくしの目つきは苦学生が引くぐらい極悪なのか……眼鏡、必要なのかなあ。
「シャンナはとても魅力的な人だから、ぼくが積極的に声をかけているだけだよ、ロジェ。それにシャンナの目は怖くないよ。ちょっとつり目で翡翠色が鮮やかだから、印象に残りやすいだけさ」
「いや……それ言えるの皇子サマだけだと思うけど……」
やっぱり殿下、わたくしのことを過剰評価していません?
わたくしには特別な所など何一つないのに――少なくとも表向きには。
「ところでロジェ。きみはいつも、あんな風に嫌がらせを受けているの?」
「そのネタ蒸し返すのかよ……わかるだろ、見れば」
殿下が話の矛先を振ると、赤髪の苦学生ロジェは嫌そうな顔をした。
「でも、きみのその左胸のバッジは特待生の証。つまり優秀な学生だ。将来有望なのに、なぜあんなことが起きるんだい?」
「自分より貧乏で貧相な奴が、自分よりテストで良い点取ったら腹が立つんだろ? 知らねーけど。俺、あいつと同郷だけど、元からそりが合わねーんだよ」
ロジェはつまらなそうに言う。
なるほど、彼はいわゆる、優秀すぎて意図せず出る杭になってしまった人間らしい。
杭として陥没していて誰からも相手にされないわたくしとは正反対の人間だ。
ふむふむ、と大人しく話を聞いていた殿下の目がきらりと光る。
ロジェ=ギルマンの目がこちらを向く。
この流れはわたくしも自己紹介しないといけないのか……そっと頭を下げた。
「初めまして。シャリーアンナ=リュシー=ラグランジュと申します。最近殿下の案内人というか世話人というかに任じられまして……以後お見知りおきを」
「……で? なんであんたら、ここにいるんだよ」
「ぼくが王国の食事を堪能したいって言ったから――」
「いや、皇子サマはまあ、わかるけど。そっちのあんた、“沈黙のシャリーアンナ”だろ。いつものダサ眼鏡がないけど」
ダサ眼鏡ってなんですか。結構気に入ってたんですけど、あれ。
しかし、殿下はともかく、わたくしのことを元から知っていたらしいことには驚いた。
噂話とか興味なかったので片っ端から聞き流していましたが、わたくし、そんな風に言われてたんですね……ちょっと恥ずかしい。
「あんた自身というか、ミーニャ=ベルメールが有名人だから。次々男に声をかけて、ついに侯爵令息までたらしこんだ。でもあんた、それでこの前、派手にやり合ったんだって? で、今は皇子サマと一緒にいる? ……なんだこれ、ベルメールへの意趣返しって奴か?」
いぶかしげな目を向けられ、わたくしは思わず真顔で返してしまった。
「わたくしがそんな人間に見えますか? ミーニャに対抗して殿下を籠絡できる女だと?」
「えっ……いや、どうだろう。あんた眼鏡取ったら案外美人だし――いや目力強いな、こっわ! やめろよにらむなよ!」
「これはただの真顔です」
「マジで!?」
ロジェはガタッと椅子を引く。
ううむ、やっぱりわたくしの目つきは苦学生が引くぐらい極悪なのか……眼鏡、必要なのかなあ。
「シャンナはとても魅力的な人だから、ぼくが積極的に声をかけているだけだよ、ロジェ。それにシャンナの目は怖くないよ。ちょっとつり目で翡翠色が鮮やかだから、印象に残りやすいだけさ」
「いや……それ言えるの皇子サマだけだと思うけど……」
やっぱり殿下、わたくしのことを過剰評価していません?
わたくしには特別な所など何一つないのに――少なくとも表向きには。
「ところでロジェ。きみはいつも、あんな風に嫌がらせを受けているの?」
「そのネタ蒸し返すのかよ……わかるだろ、見れば」
殿下が話の矛先を振ると、赤髪の苦学生ロジェは嫌そうな顔をした。
「でも、きみのその左胸のバッジは特待生の証。つまり優秀な学生だ。将来有望なのに、なぜあんなことが起きるんだい?」
「自分より貧乏で貧相な奴が、自分よりテストで良い点取ったら腹が立つんだろ? 知らねーけど。俺、あいつと同郷だけど、元からそりが合わねーんだよ」
ロジェはつまらなそうに言う。
なるほど、彼はいわゆる、優秀すぎて意図せず出る杭になってしまった人間らしい。
杭として陥没していて誰からも相手にされないわたくしとは正反対の人間だ。
ふむふむ、と大人しく話を聞いていた殿下の目がきらりと光る。
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