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後
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……ああ。暗くて、じめっとしていて、そわそわする。まるで永遠に続く底なしの道に迷い込んでしまったみたい。何度か引き返したい衝動がこみ上げるが、首絞め若作り閣下を思い出すと、先に進む方に意思が傾く。
だって対峙したら、最低でも窒息プレイ確定なのでしょう。ぞっとしない。首絞めって苦しい方と一瞬で気絶する方あるってちらっと聞いたことあるんですけど、彼は一体どっちのつもりなんですかね。いたぶりコースかなあ、やっぱり。
嫌だなあ。じわじわなぶられたりしたら、わたくしきっと泣き叫んじゃう。一般人メンタルだから、痛いのも苦しいのもヤダ。
でもわかりますよ、きっとそういうのってね、「嘘はいけないよ、本当は気持ちいいんだろう?」とか言われてエスカレートする奴です。
ああ、伝説の悪女マノンよ……本当、恨みますよ。察するにあの人、あなたが適当に粉かけてから捨てた元恋人の一人なのでしょう。どうしてああなるまで放っておいてしまったのですか。あとハードプレイにはNGを出しておいてくださいよ、これだから誰とでも寝る女は……。
頭の中で母への文句を連ねるが、怒りは恐怖を紛らわせてもくれる。
マノンのバカヤロー! 侯爵閣下のあほんだらー! わたくし本人が何をしたっていうのよ! 何もしてないのに、なんで殴られたり閉じ込められたり追いかけ回されたりしないといけないんです!?
……正直、こんな風に考えでもしなければ、とっくにへたりこんでわんわん泣いているような気がする。十七の小娘にはちとヘヴィすぎるのよ、色々と。
幸か不幸か、わたくし以外の足音は聞こえない。孤独に一人、暗闇の中を徘徊中。この時空間の感覚を失いそうな状況、なんだかそのうち幻覚とか見出しそうなのが怖いんですよね。
ああ殿下。わたくし普段は怠惰の使途ですが、今日は朝から今に至るまで、相当頑張っていると思うのです。ちゃんとお約束通りあなたの所に帰りますから、そうしたら褒めて……頭撫でたりとか、ご褒美に望むのは図々しいのでしょうか。
幻覚でいいから今すぐ隣に出てくれないかな、手を握って「大丈夫だよ」って言ってくれないかなって、今ちょっと思い始めている……。
う、わ! びっくりした。下りるつもりで踏み出した足が、思っていたより高い位置にあった床を踏む。
踊り場? それか、ついに階段の一番下にまで辿り着いた?
もう少し床を探ってみるけど……うん、やっぱりこれ以上は下がらないみたい。ここが終点のようだ。
階段は本当に人一人が通れるぐらいのスペースしかなかったけれど、ここはもう少し広いみたい。どこかに照明みたいなものが……ひえ、何か冷たいものが手に。思わず引っ込めるけど、少ししたら勇気を出して再チャレンジ。あ、もしかして、これ……。
なけなしの魔力を指先に込めると、頼りなくも光が宿る。
よかった、思った通り、手燭式の照明でした! 誰か置き忘れたか、それとも暗いからここに置いて使っているのかな。
なんだろう、明かりが手元にあると思うだけで安心するから人間って不思議ですよね。
辺りを照らしてみると……無機質な石の空間が続いている。
これは……樽が並んでいるのかな。地下の貯蔵庫? いや、もっと奥は……。
「だれだ……?」
危うくせっかく手に入れた明かりを落とす所だった。なんとか手燭を手放さずには済んだけど、ああどうしよう、明かりの消し方がわからない! 相手にこちらの存在がわかってしまう!
でも、今度こそここで終わりか、と覚悟した割に、近づいてくる気配がない。
わたくしがいぶかしげに暗がりに目を向けると、もう一度声が聞こえる。
「……とうさん?」
この声……聞き覚えがある。というか、今日ついさっき聞いたばかりでは。
まさか。いや、そんな。
わたくしは無言のまま、音のした方に歩いて行く。
薄暗い石廊下を進んでいった先には、鉄格子が並ぶ。ちらっと見えた白い物の正体なんて、確かめたくもない。とにかく人の気配のありそうな所を探して、近づく。一番奥、一際狭そうな牢の前で、ようやく足を止めた。
「レオナール……?」
わたくしが呼びかけると、地下牢の中の何者かは身じろぎし……そして唸るような声を上げた。
「なんで、お前がここにいるんだ」
だって対峙したら、最低でも窒息プレイ確定なのでしょう。ぞっとしない。首絞めって苦しい方と一瞬で気絶する方あるってちらっと聞いたことあるんですけど、彼は一体どっちのつもりなんですかね。いたぶりコースかなあ、やっぱり。
嫌だなあ。じわじわなぶられたりしたら、わたくしきっと泣き叫んじゃう。一般人メンタルだから、痛いのも苦しいのもヤダ。
でもわかりますよ、きっとそういうのってね、「嘘はいけないよ、本当は気持ちいいんだろう?」とか言われてエスカレートする奴です。
ああ、伝説の悪女マノンよ……本当、恨みますよ。察するにあの人、あなたが適当に粉かけてから捨てた元恋人の一人なのでしょう。どうしてああなるまで放っておいてしまったのですか。あとハードプレイにはNGを出しておいてくださいよ、これだから誰とでも寝る女は……。
頭の中で母への文句を連ねるが、怒りは恐怖を紛らわせてもくれる。
マノンのバカヤロー! 侯爵閣下のあほんだらー! わたくし本人が何をしたっていうのよ! 何もしてないのに、なんで殴られたり閉じ込められたり追いかけ回されたりしないといけないんです!?
……正直、こんな風に考えでもしなければ、とっくにへたりこんでわんわん泣いているような気がする。十七の小娘にはちとヘヴィすぎるのよ、色々と。
幸か不幸か、わたくし以外の足音は聞こえない。孤独に一人、暗闇の中を徘徊中。この時空間の感覚を失いそうな状況、なんだかそのうち幻覚とか見出しそうなのが怖いんですよね。
ああ殿下。わたくし普段は怠惰の使途ですが、今日は朝から今に至るまで、相当頑張っていると思うのです。ちゃんとお約束通りあなたの所に帰りますから、そうしたら褒めて……頭撫でたりとか、ご褒美に望むのは図々しいのでしょうか。
幻覚でいいから今すぐ隣に出てくれないかな、手を握って「大丈夫だよ」って言ってくれないかなって、今ちょっと思い始めている……。
う、わ! びっくりした。下りるつもりで踏み出した足が、思っていたより高い位置にあった床を踏む。
踊り場? それか、ついに階段の一番下にまで辿り着いた?
もう少し床を探ってみるけど……うん、やっぱりこれ以上は下がらないみたい。ここが終点のようだ。
階段は本当に人一人が通れるぐらいのスペースしかなかったけれど、ここはもう少し広いみたい。どこかに照明みたいなものが……ひえ、何か冷たいものが手に。思わず引っ込めるけど、少ししたら勇気を出して再チャレンジ。あ、もしかして、これ……。
なけなしの魔力を指先に込めると、頼りなくも光が宿る。
よかった、思った通り、手燭式の照明でした! 誰か置き忘れたか、それとも暗いからここに置いて使っているのかな。
なんだろう、明かりが手元にあると思うだけで安心するから人間って不思議ですよね。
辺りを照らしてみると……無機質な石の空間が続いている。
これは……樽が並んでいるのかな。地下の貯蔵庫? いや、もっと奥は……。
「だれだ……?」
危うくせっかく手に入れた明かりを落とす所だった。なんとか手燭を手放さずには済んだけど、ああどうしよう、明かりの消し方がわからない! 相手にこちらの存在がわかってしまう!
でも、今度こそここで終わりか、と覚悟した割に、近づいてくる気配がない。
わたくしがいぶかしげに暗がりに目を向けると、もう一度声が聞こえる。
「……とうさん?」
この声……聞き覚えがある。というか、今日ついさっき聞いたばかりでは。
まさか。いや、そんな。
わたくしは無言のまま、音のした方に歩いて行く。
薄暗い石廊下を進んでいった先には、鉄格子が並ぶ。ちらっと見えた白い物の正体なんて、確かめたくもない。とにかく人の気配のありそうな所を探して、近づく。一番奥、一際狭そうな牢の前で、ようやく足を止めた。
「レオナール……?」
わたくしが呼びかけると、地下牢の中の何者かは身じろぎし……そして唸るような声を上げた。
「なんで、お前がここにいるんだ」
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