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「……なぜ笑う。何がおかしい」
「いえいえ。ただちょっと反省しているのです。わたくしは知ろうとする努力を、全くしてこなかったなって。……案外似ている所もあったのですね、わたくし達」
十年程度、婚約者だったはずなのに、わたくしはレオナールがかなりのファザコン(まあ……あの様子見てたらね。そういうことですよね……)だなんて、全く知らなかった。
もしわたくしがレオナールにもっと興味関心を持っていて、彼のことに少しでも何か気がつけていたのなら……何かが少しずつ、変わっていたかもしれない。
でもまあ、それも今だから言えることなのかな。
過ぎた過去は戻らない。日陰で俯いていた頃のわたくしだって、愚かで無力でも懸命だった。今更やり直しも、なかったことにもできない。
これはきっと、罪悪感の清算という奴だ。わたくしが顔を上げ、胸を張って日向を歩いて行くための。
さて、座ってたら多少はましになったかな……ここにこのままいてもいいんですけど、隠れられそうな樽の所に移動しようかと腰を上げる。
「お邪魔しました、わたくしもうこれにて失礼いたしますので」
わたくしは立ち上がって体が動かせることを確認すると、そそくさその場を離れようとする。
というのも今更すぎるのですが、レオナールの解放劇、わたくし的には自滅フラグなのでは? ということに気がついてしまったのですよね。
わたくしは現在、侯爵閣下に追われている身だ。
そしてレオナールはファザコンであり、父君のためならなんでもします系男子と見た。
となるとまあ……これ、わたくしを引っ捕らえて突き出すのが、レオナール的には超自然な流れになっちゃうわけじゃないですか。
愛する父上に褒めていただけるかもしれないし、ワンチャンこの地下牢から出るお許しもいただけるかもしれない。いいことしかないね!
しまったな、体の疲れもだけど、頭も相当来てる。こんな当然すぎる利害関係ぐらい、先に思いついておけばよかった。ノリと勢いだけで恩赦プレイに興じようとするのヨクナイ。
仕方ない、今から「やっぱりなしで」と鍵を閉じるわけにもいかないし、レオナールにわたくしを取り押さえた方が都合いいな? ってバレる前に距離を取ろう。
一回地上に戻ってみようか。
牢にわたくし以外の誰かが下りてくる気配はなし、となれば目論見通り別の場所を捜索しに行ってくれていて、正門の様子を見に行くチャンスかもしれないですし……。
「お、おい……シャリーアンナ!」
がしっと手をつかまれる感触。やっばい。まごまごしていたレオナールがついに牢から出てきてしまった。
けれどわたくしがビクウッ! と跳ね上がったせいだろうか、レオナールは一瞬で手を離し、気まずそうに目を逸らす。
「お、お前……」
「は、はい。なんでございましょうか」
「…………。その。こんな所にまで迷い込んできたということは……困ってるんだよな……?」
どうしよう。これ何が正解なの。「いいえ、困ってませんが」って振り払うべきなんですか。「そうです、助けてください」って素直に……言って、「よしきた」って閣下に突き出されたら目も当てられないね!
わたくしが逡巡していると、レオナールは無言ですっと手を上げて、わたくしの方に向ける。
あっ、そうですか、そうですよね、わかりました覚悟は決めます。もともと地下に続く階段を下りるなんて無謀極まりなかったのです、まあ恩を仇で返された感はなきにしもですが、それもわたくし個人の見解であるからして……。
……神妙にとらえられる準備をしていると、背後から何やらごごごごごと物々しい音が。
振り返れば、今まで壁だった所に、なんと道ができているようではありませんか!
え? これ、どゆこと? レオナールは確かに土人形《ゴーレム》を作り出せるほどの土魔法の使い手。頑張ればこんな風に、壁の中に新たな通路を作ることも可能ではありましょう。
ですが、なぜ今この瞬間そんなことを?
わたくしが目を丸くしていると、レオナールは手を下ろし、大きく息を吐き出します。
「……早く、行け。屋敷の外に繋げた」
「いえいえ。ただちょっと反省しているのです。わたくしは知ろうとする努力を、全くしてこなかったなって。……案外似ている所もあったのですね、わたくし達」
十年程度、婚約者だったはずなのに、わたくしはレオナールがかなりのファザコン(まあ……あの様子見てたらね。そういうことですよね……)だなんて、全く知らなかった。
もしわたくしがレオナールにもっと興味関心を持っていて、彼のことに少しでも何か気がつけていたのなら……何かが少しずつ、変わっていたかもしれない。
でもまあ、それも今だから言えることなのかな。
過ぎた過去は戻らない。日陰で俯いていた頃のわたくしだって、愚かで無力でも懸命だった。今更やり直しも、なかったことにもできない。
これはきっと、罪悪感の清算という奴だ。わたくしが顔を上げ、胸を張って日向を歩いて行くための。
さて、座ってたら多少はましになったかな……ここにこのままいてもいいんですけど、隠れられそうな樽の所に移動しようかと腰を上げる。
「お邪魔しました、わたくしもうこれにて失礼いたしますので」
わたくしは立ち上がって体が動かせることを確認すると、そそくさその場を離れようとする。
というのも今更すぎるのですが、レオナールの解放劇、わたくし的には自滅フラグなのでは? ということに気がついてしまったのですよね。
わたくしは現在、侯爵閣下に追われている身だ。
そしてレオナールはファザコンであり、父君のためならなんでもします系男子と見た。
となるとまあ……これ、わたくしを引っ捕らえて突き出すのが、レオナール的には超自然な流れになっちゃうわけじゃないですか。
愛する父上に褒めていただけるかもしれないし、ワンチャンこの地下牢から出るお許しもいただけるかもしれない。いいことしかないね!
しまったな、体の疲れもだけど、頭も相当来てる。こんな当然すぎる利害関係ぐらい、先に思いついておけばよかった。ノリと勢いだけで恩赦プレイに興じようとするのヨクナイ。
仕方ない、今から「やっぱりなしで」と鍵を閉じるわけにもいかないし、レオナールにわたくしを取り押さえた方が都合いいな? ってバレる前に距離を取ろう。
一回地上に戻ってみようか。
牢にわたくし以外の誰かが下りてくる気配はなし、となれば目論見通り別の場所を捜索しに行ってくれていて、正門の様子を見に行くチャンスかもしれないですし……。
「お、おい……シャリーアンナ!」
がしっと手をつかまれる感触。やっばい。まごまごしていたレオナールがついに牢から出てきてしまった。
けれどわたくしがビクウッ! と跳ね上がったせいだろうか、レオナールは一瞬で手を離し、気まずそうに目を逸らす。
「お、お前……」
「は、はい。なんでございましょうか」
「…………。その。こんな所にまで迷い込んできたということは……困ってるんだよな……?」
どうしよう。これ何が正解なの。「いいえ、困ってませんが」って振り払うべきなんですか。「そうです、助けてください」って素直に……言って、「よしきた」って閣下に突き出されたら目も当てられないね!
わたくしが逡巡していると、レオナールは無言ですっと手を上げて、わたくしの方に向ける。
あっ、そうですか、そうですよね、わかりました覚悟は決めます。もともと地下に続く階段を下りるなんて無謀極まりなかったのです、まあ恩を仇で返された感はなきにしもですが、それもわたくし個人の見解であるからして……。
……神妙にとらえられる準備をしていると、背後から何やらごごごごごと物々しい音が。
振り返れば、今まで壁だった所に、なんと道ができているようではありませんか!
え? これ、どゆこと? レオナールは確かに土人形《ゴーレム》を作り出せるほどの土魔法の使い手。頑張ればこんな風に、壁の中に新たな通路を作ることも可能ではありましょう。
ですが、なぜ今この瞬間そんなことを?
わたくしが目を丸くしていると、レオナールは手を下ろし、大きく息を吐き出します。
「……早く、行け。屋敷の外に繋げた」
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