腐男子が男しかいない異世界へ行ったら色々と大変でした

沼木ヒロ

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第三十八話

腐男子、王子にキスされる

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 次の日の夕方、店の外へゴミを出していると、近くに止まっていた騎士団の馬車から、シリウス王子とディルトさん、ロタの三人が馬車から降りて俺の方に近寄って来た。

「ヤマト、出迎えてくれたのか? 今日もお前に会いに来たぞ」
 王子は腕組みをしながらニヤッと笑った。
 いえ、ただのゴミ出しです、と王子に言葉を返していると、

「やぁ、ヤマト君。今日も頑張っているね」

 王子の後ろから歩いてきたディルトさんは、いつもの様に爽やかな笑顔で話し掛けてきた。
 更に後ろからロタがついて歩いて来た。
 ロタは下を向いていて、気のせいだろうか、元気が無い感じだった。

(ロタ、体調でも悪いのかな……)

 気になってロタの方を見ていると、白マント姿の王子が俺の腰に手を回し

「ヤマト、俺のお世話をする覚悟はできたか?」

 などと言い放った。
 覚悟も何も、俺は本屋を辞める気は無いんだけど……
 そもそも、王子のお世話をするって何をするんだ?
 ふと疑問に思って聞いてみた。

「あの、シリウス様のお世話って、具体的にどういう事をするんですか?」

 王子は腰に回していないもう片方の手で、俺のあごをクイッとした。イケメンに近距離で顎クイされ、思わず顔が赤くなる。

「洋服や食事の世話は使用人達がやってくれているからなぁ。
 とりあえず日中はずっと俺の傍にいろ。
 夜は俺の前で股を開け」
「はっ!?」

 王子はそう言うや否や、俺の腰を更に引き寄せ口に突然キスをした。

「「「!!」」」

 その場にいた王子以外の三人共、目を見開いて固まった。
 ディルトさんは「シリウス様、お辞め下さい!」と叫び、ロタは「ヤマト君……!」と悲鳴にも似た様な声で俺の名前を呼んでいた。

 二人の声を他所よそに、王子の舌が俺の口の中にグリグリと入ってきた。

「ぅあ……や、やめ……んんっ、ぅ……!」

 俺はうめく様な声を漏らしながら、横目で周りを見た。ディルトさんとロタが、ワナワナしながら凝視している。
 更に通りすがりの人達にも見られてて見世物状態だ。恥ずかしすぎる……!

 俺は何とか離れようと抵抗したが腰をホールドされ、もう片方の手で顎下を抑えられ、王子に口の中を脳内が熱くなるほど舌でガンガンに攻められた。
 い、息が出来ない……段々と呼吸も乱れてきて、頭が酸欠状態になっているせいか、だんだんボーッとしてきた。

 王子は俺の口の中を散々堪能して満足したのか、ゆっくり唇を離した。

「ん……お前の唇、柔らかくて美味しいな。興奮した」
「……っはぁ、っ、はっ、は……」

 く、苦しかった……
 顔が熱い。目も涙目になっていた。口端からはよだれも垂れている気がする。
 膝もガクガクして、王子に支えられて立っているのがやっとだった。

「っと……ヤマト、どうした? 俺のキスがそんなに良かったのか?」
「っ……はぁっ、はっ……ち、ちが……」

 息苦しさから解放されて、呼吸を整えている俺の顔を王子は覗き込むと、何故か王子の頬も段々と赤く染まっていった。

「……お前……何て可愛いんだ……」

 何かがツボにハマったのか、王子は再び強引に口付けをしてきた。
 再びズルッと入ってきた舌で口の中を舐められ、何か段々と変な気分になってきた……
 だ、誰か、見てないで助けて……

「シリウス様、もうお辞め下さい、皆の注目の的になっております」

 ディルトさん達がやっと助けに来てくれ、王子と俺を引き剥がしてくれた。助かった……

「何だ、ディルト……せっかく良い所だったのに」
「申し訳ありません、しかし屋外でその様な行為は……」
「まぁいい。ヤマト、ちょっとコッチに来い。二人だけで話がしたい」
「えっ」

 王子は俺の手を握り、ディルトさんとロタから離れた位置にある街路樹まで強引に俺を引っ張って行った。

「ま、待って下さい、俺まだ仕事中で……」

 王子は俺の手を握ったまま、渋い顔をして話し出した。

「……実は俺、昔からアソコが全然立たないんだ」

……ん? 何の話だ? 王子からの突然のシモの話で俺は固まった。

「色んな医者に見せたけど原因不明だと。
 そのせいで今まで恋人と呼べる者と付き合った事が無い。
 色んな奴を夜伽に来させたが全て駄目で、俺は自信をなくして本の世界へと逃げた。
 ところがだ……」

 王子はそう言うと、握っていた俺の手を王子の股間へと当てた。思わずギョッとする。
 た、勃ってる……

「昨日ヤマトに初めて会った時、下半身が熱をもってうずいたんだ。
 城へ帰ってからも、ヤマトの顔やヤマトがいやらしく乱れる姿を想像するだけで勃つようになった。
 今もホラ、お前とキスしただけで完勃ち状態だ」

 高そうな黒パンツの、俺が触れている部分にははち切れんばかりの膨らみがあった。

「ヤマト……お前は俺の希望の光だ。
 俺に沢山の素晴らしい本を教えてくれたし、顔も髪も背格好も何もかも俺のタイプで一目惚れした。
 さっきも、俺のキスで腰砕けになっているお前の姿を見て心を射抜かれた。
 俺はお前の全てを手に入れたい。
 俺と共に、一緒に来てくれないか」

 手の甲にキスをされ、情熱的な愛の告白をされてしまった。
 困った。非常に困った。もし王子について行ってしまったら、今の生活とはオサラバって事だろ?
 どう返答したら良いか悩んでいると、王子が恐ろしい事を言い出した。

「……まぁ、お前に拒否権などないがな。
 嫌だと言っても最終的には無理矢理にでも連れて行くぞ。
 俺が欲しいと思ったものは全て手に入れてきたからな。
 従わないのなら……そうだな……連れ去った後監禁し、媚薬を大量に飲ませて、俺無しじゃ生きられない体にしてやろうか」

 王子は片方の口端を上げ、悪そうな顔をしてニヤリと笑った。
 
(ヒィィィッ!! 何だこの王子はっ!!)

 身の危険を感じ、王子の手を振り払って逃げようとすると、ディルトさんとロタが丁度こっちへ向かってやって来た。

「シリウス様、そろそろお帰りにならないとまた怒られますよ。
 また日を改めて参りましょう」

 ディルトさんにそう言われると、王子は不機嫌そうな顔をして「わかったよ」と返事をした。

「ヤマト、また来るからな。覚悟しておけよ」

 王子は俺を指差しながら、ディルトさんと一緒に馬車に乗り込んだ。

(やっと帰ってくれる……)

 俺がホッとしながら馬車を見つめていると、ロタが俺の側に来て小声で

「ヤマト君、コレ……後で読んで」

 と、折り畳んだ紙を手に握らされた。
 何だろう、手紙?

 俺はその紙を隠す様握りしめ、王子達の馬車を見送ったのだった。
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