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第六十七話
腐男子、病院へ行く
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次に目を開けた時は騎士団本部の駐車場に入り、馬車を止めたところだった。
前にディルトさんに馬車の中で襲われ、逃げだした場所だ。そしてその後……
ふと嫌な記憶が蘇り全身に鳥肌が立った。
頭を横に振りその記憶を消そうとしていると、ロタが馬車から降りてこっちへ歩いてきたので俺も扉を開けて降り、ロタの傍へ歩み寄った。
「ずっと座っててお尻痛くなかった? 抱っこしてあげよっか?」
ロタがニコニコしながらお姫様抱っこをする様な仕草を見せた。
「いや、横になって寝てたから大丈夫。っていうか、騎士団本部でお姫様抱っこは恥ずかしいからどっちみち駄目だって」
「えー? 俺は全然構わないけどなぁ。
むしろヤマト君に触れて嬉しい位。可愛いヤマト君を抱っこして、皆に見せびらかしたいよ」
ロタってば、平気でサラッとそんな事言うモンだから、顔が少し赤くなってしまった。
「……抱っこは別にいいから、早く行こうよ」
「あぁ、そうだね、ヤマト君とこの後病院に行かないといけないもんねぇ」
「俺は先にシャワー浴びてくっから。ロタも後で浴びるんだろ?
夜、楽しみにしてっからな」
ナックルが俺とロタの会話に割って入り、ロタの方を見てニヤニヤしながら先に歩いて行った。
「……なんか、凄く下衆い顔でロタの事見てたな……」
「そうだねー。でも大丈夫、今から上に報告してくるから。
昼か夕方には処分が決定すると思うから、夜は相手しなくて済むかな。
いざとなったらディルトさんに匿ってもらうよ」
ロタが溜め息をついた後、少し微笑みながらそう呟いた。
「それじゃ、行こうか」
ロタが俺の手を握り、本部へと続く入り口に向かって一緒に歩いて行った。
* * * * *
ロタがいくつか並んでいるドアのうちの一つの前で立ち止まった。
「これから報告してくるから、ヤマト君はここで少し待っててくれる?」
ロタはそう言うとノックをし、部屋の中へと入って行った。
俺はその部屋の前の廊下で壁にもたれて大人しく待った。
ロタが部屋に入って五分位経過した頃、廊下の遠くの方から聞き覚えのある声が響いてきた。
「ヤマト君! ヤマト君じゃないか、どうしてここに?」
あの蒼い髪に眼鏡の長身イケメン……間違いない、ディルトさんだ。
ディルトさんは早歩きで俺の傍に来て、腰に手を回し強く抱きしめてきた。
ディルトさんの厚い胸板に埋もれ苦しくて踠いていると、それに気付いたディルトさんが抱きしめている手の力を少し緩めてくれた。
「すまない、嬉しくてつい力が入ってしまった。で、どうしてここに?」
俺はディルトさんに、ナックルが深夜に本屋へ不法侵入してきた事、俺を殴って縛った上犯そうとしてきた事をロタが上の人に報告しに、そして俺は念の為この後病院へ行く事等を伝えた。
案の定、ディルトさんは激高し、ナックルを切り刻んでやると物騒な事を喚き散らし出したけど、何とか宥める事ができた。
ディルトさん、俺の為に本気で怒ってくれるなんて。ちょっと……いや、かなり嬉しかった。
そしてディルトさんが落ち着いたのを見計らって、今度の木曜、会って欲しい人達がいるんですが、とエバン君と同じ様に説明した。
ディルトさんも恋人の数には特に触れず、その日は夜からの仕事しか無いからいいよ、と返事をもらう事ができた。
よし、これで後はキールだけだな。本屋に帰ったら聞いてみよう。
その後ロタと一緒に部屋から出てきた人に被害に遭った状況を詳しく説明して、無事報告が終わった。
「よし、それじゃあヤマト君、一緒に病院行こうか。ここから歩いてすぐだから」
ロタが俺の手を握り、ディルトさんに一礼して正面玄関へと向かって歩き出した。
これから会議があるというディルトさんに手を振りながら、ロタに引っ張られて騎士団本部を後にした。
そして程なくして外壁が真っ白の、明らかに他の飲食店とは雰囲気が違う、無機質で巨大な四角い建物が見えてきた。
「着いた、ここだよ」
ロタは慣れた様子でドアを開け、正面にある受付カウンターの所へ俺を連れて行った。
受付の人が問診票の様な紙とペンを差し出し、記入する様言われたので待合室の椅子にロタと並んで座り、名前や住所、年齢、症状などを記入していった。
こういうシステムは元いた世界の病院とほぼ同じなんだなぁ。
記入が終わり受付の人に渡すと、順番がくるまで待つよう言われたので、ロタの横に座り大人しく待った。
心配していた保険証だが、どうやらこの世界には存在しないようだった。
待っている間、ロタが必要以上に俺に引っ付いて右手で指を絡ませ、左手は俺の腰に回してきた。
「……ロタ、くっつき過ぎだって」
思わず小声で突っ込んだが、ロタは
「だって~、せっかくヤマト君独占できてるんだもん、これ位させてよ、ね?」
と、今にも唇が触れそうな距離で囁かれた。
んー……人あまりいないし、まぁこれ位ならいいか……
しかし、ロタに指を弄 られながら待っていると、待合室は段々と人が増え、ごった返してきた。
咳をしている人、熱がありそうな人、足を挫いた人、色々な人がいる。
受付横の案内板に目をやると、色んな専門の科があり、どうやらここは総合病院のようだった。
受付を済ませてから三十分位経過した頃、やっと俺の名前が呼ばれた。
伝えられた番号の部屋にロタと一緒に入ると、白衣を着た銀髪の三、四十代位の医師が椅子に座ったままこちらを見た。
(……あれ? この人、見た事がある。どこで見たっけ……)
俺は先生の顔を見ながら、どこで会ったかを思い出しながら目の前の椅子へと座った。
前にディルトさんに馬車の中で襲われ、逃げだした場所だ。そしてその後……
ふと嫌な記憶が蘇り全身に鳥肌が立った。
頭を横に振りその記憶を消そうとしていると、ロタが馬車から降りてこっちへ歩いてきたので俺も扉を開けて降り、ロタの傍へ歩み寄った。
「ずっと座っててお尻痛くなかった? 抱っこしてあげよっか?」
ロタがニコニコしながらお姫様抱っこをする様な仕草を見せた。
「いや、横になって寝てたから大丈夫。っていうか、騎士団本部でお姫様抱っこは恥ずかしいからどっちみち駄目だって」
「えー? 俺は全然構わないけどなぁ。
むしろヤマト君に触れて嬉しい位。可愛いヤマト君を抱っこして、皆に見せびらかしたいよ」
ロタってば、平気でサラッとそんな事言うモンだから、顔が少し赤くなってしまった。
「……抱っこは別にいいから、早く行こうよ」
「あぁ、そうだね、ヤマト君とこの後病院に行かないといけないもんねぇ」
「俺は先にシャワー浴びてくっから。ロタも後で浴びるんだろ?
夜、楽しみにしてっからな」
ナックルが俺とロタの会話に割って入り、ロタの方を見てニヤニヤしながら先に歩いて行った。
「……なんか、凄く下衆い顔でロタの事見てたな……」
「そうだねー。でも大丈夫、今から上に報告してくるから。
昼か夕方には処分が決定すると思うから、夜は相手しなくて済むかな。
いざとなったらディルトさんに匿ってもらうよ」
ロタが溜め息をついた後、少し微笑みながらそう呟いた。
「それじゃ、行こうか」
ロタが俺の手を握り、本部へと続く入り口に向かって一緒に歩いて行った。
* * * * *
ロタがいくつか並んでいるドアのうちの一つの前で立ち止まった。
「これから報告してくるから、ヤマト君はここで少し待っててくれる?」
ロタはそう言うとノックをし、部屋の中へと入って行った。
俺はその部屋の前の廊下で壁にもたれて大人しく待った。
ロタが部屋に入って五分位経過した頃、廊下の遠くの方から聞き覚えのある声が響いてきた。
「ヤマト君! ヤマト君じゃないか、どうしてここに?」
あの蒼い髪に眼鏡の長身イケメン……間違いない、ディルトさんだ。
ディルトさんは早歩きで俺の傍に来て、腰に手を回し強く抱きしめてきた。
ディルトさんの厚い胸板に埋もれ苦しくて踠いていると、それに気付いたディルトさんが抱きしめている手の力を少し緩めてくれた。
「すまない、嬉しくてつい力が入ってしまった。で、どうしてここに?」
俺はディルトさんに、ナックルが深夜に本屋へ不法侵入してきた事、俺を殴って縛った上犯そうとしてきた事をロタが上の人に報告しに、そして俺は念の為この後病院へ行く事等を伝えた。
案の定、ディルトさんは激高し、ナックルを切り刻んでやると物騒な事を喚き散らし出したけど、何とか宥める事ができた。
ディルトさん、俺の為に本気で怒ってくれるなんて。ちょっと……いや、かなり嬉しかった。
そしてディルトさんが落ち着いたのを見計らって、今度の木曜、会って欲しい人達がいるんですが、とエバン君と同じ様に説明した。
ディルトさんも恋人の数には特に触れず、その日は夜からの仕事しか無いからいいよ、と返事をもらう事ができた。
よし、これで後はキールだけだな。本屋に帰ったら聞いてみよう。
その後ロタと一緒に部屋から出てきた人に被害に遭った状況を詳しく説明して、無事報告が終わった。
「よし、それじゃあヤマト君、一緒に病院行こうか。ここから歩いてすぐだから」
ロタが俺の手を握り、ディルトさんに一礼して正面玄関へと向かって歩き出した。
これから会議があるというディルトさんに手を振りながら、ロタに引っ張られて騎士団本部を後にした。
そして程なくして外壁が真っ白の、明らかに他の飲食店とは雰囲気が違う、無機質で巨大な四角い建物が見えてきた。
「着いた、ここだよ」
ロタは慣れた様子でドアを開け、正面にある受付カウンターの所へ俺を連れて行った。
受付の人が問診票の様な紙とペンを差し出し、記入する様言われたので待合室の椅子にロタと並んで座り、名前や住所、年齢、症状などを記入していった。
こういうシステムは元いた世界の病院とほぼ同じなんだなぁ。
記入が終わり受付の人に渡すと、順番がくるまで待つよう言われたので、ロタの横に座り大人しく待った。
心配していた保険証だが、どうやらこの世界には存在しないようだった。
待っている間、ロタが必要以上に俺に引っ付いて右手で指を絡ませ、左手は俺の腰に回してきた。
「……ロタ、くっつき過ぎだって」
思わず小声で突っ込んだが、ロタは
「だって~、せっかくヤマト君独占できてるんだもん、これ位させてよ、ね?」
と、今にも唇が触れそうな距離で囁かれた。
んー……人あまりいないし、まぁこれ位ならいいか……
しかし、ロタに指を弄 られながら待っていると、待合室は段々と人が増え、ごった返してきた。
咳をしている人、熱がありそうな人、足を挫いた人、色々な人がいる。
受付横の案内板に目をやると、色んな専門の科があり、どうやらここは総合病院のようだった。
受付を済ませてから三十分位経過した頃、やっと俺の名前が呼ばれた。
伝えられた番号の部屋にロタと一緒に入ると、白衣を着た銀髪の三、四十代位の医師が椅子に座ったままこちらを見た。
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