腐男子が男しかいない異世界へ行ったら色々と大変でした

沼木ヒロ

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第七十話

腐男子、新しい家に住む

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 それから、あっという間に日は過ぎていき、俺の恋人達全員と会う木曜になった。
 キールとエバン君と一緒に、九時に迎えに来てくれたロタとディルトさんの馬車に乗り、王城で待つシリウスの元へと行った。

 そして、一時間半程で無事に王都へと着いた。
 道中、御者ぎょしゃ席にいたディルトさん以外の三人が、誰が次に俺を抱っこするかとか、誰が俺を膝枕してあげるとかの言い争い? 取り合い? になって若干疲れたけど……

 馬車はいつもの騎士団本部の駐車場ではなく、王城の方へそのまま進んで行った。
 門兵達にディルトさんが何かを伝えると門が開き、中へと通された。
 広すぎる庭園を馬車でしばらく進むと、大きな噴水の前でシリウスが執事と使用人らしき人達に囲まれて白いベンチに座っているのが見えた。
 ディルトさんは噴水近くの広いスペースに馬車を止め、全員降りてシリウスの方へと歩いて行った。

「ヤマト、よく来たな。今日ヤマトに会えるのを指折り数えて待ってたぞ!
 それにしても、お前の後ろの四人は何だ、まさか恋人達か?
 俺が聞いた時は三人だったぞ、一人また増えているじゃないか」

 思わずギクリとした。
 前にシリウスと会った時は、恋人が他にも三人いるって話をして、お仕置きという名のセックスを三回もしたんだった。
 今回は恋人が前回より一人増え、更に言うと今日は全員で今後の事を話すってシリウスには伝えていなかったので慌てて事情を伝えた。
 シリウスは少し驚いたが、俺達の今後の事を話し合うならと談話室へと案内してくれた。

 談話室はとてつもない広さで、部屋の壁伝いに等間隔で高価そうな調度品が並べてあり、壁にもこれまた高価そうな絵画や剥製等が飾られてある。
 シリウスは、部屋の中央に置いてある縦長のテーブルと双方にズラッと並べられてある椅子の方へと進み、皆適当に座ってくれ、と言った。
 適当に真ん中の方の席に座ると、馬車の時みたいに誰が俺の隣に座るか揉め出し、最終的にジャンケンで決めたようで、俺の両隣がシリウスとエバン君、向かい側の席にキール、ディルトさん、ロタが座った。

 シリウスは執事と使用人の人達を部屋の外へと出し、俺達五人だけになった。

「さてヤマト、これで俺達だけだ。
 まずは自己紹介からやっておくか?
 俺の名はシリウス。王都セイルーンここの王子だ。さ、次の奴」

 物凄く簡潔な自己紹介をしたシリウスは、ロタの方を指差したのでロタが反射的に返事をして席を立ち、次いで皆はどんどんと自己紹介をしていった。

「俺はロタ。王都セイルーン第二騎士団の副長やらせてもらってます」

「私はディルト。ロタと同じく王都セイルーン第二騎士団の団長をしている」

「俺の名前は……キール。ヤマトと同じ本屋に勤めている……」

「僕はエバンといいます、本の取次店で働いてまして、ヤマトさんが勤めている本屋や王都の本屋に新刊と予約や注文分の本を届けたりしています」

「……ふむ、ヤマト、これで恋人は全員なんだな?」
「うん、そうだよ」

 シリウスがテーブルに肘をつき、俺の方を見ながら続けて言葉を口にした。

「それで……ヤマトは今後どうしていきたいんだ?」

 シリウスの言葉を聞いて、他の皆からも一気に視線を浴びる。

「……俺としては、今、皆住んでる所がバラバラじゃない?
 だから皆と一緒に暮らしていきたいなと思ってるんだけど……住む場所と家をどうしたらいいかなと思って」

 するとディルトさんとロタが顔を見合わせて二人で何かを話した後、ロタがこちらを向いて話し出した。

「それならヤマト君、本屋の前に街道があるじゃん? 丁度、本屋と王都の中間地点位の街道沿いに大きい空き家があるんだけど……
 そこを借りるなり買うなりして、皆で住めばいいんじゃない?」

「……もしかしてあの塀と庭木に囲まれた平屋の大きな家?」

「そうそう。そんで馬車もいくつか購入してさ、俺とディルトさんは宿舎を退居してその家から騎士団本部へ通う。ヤマト君と金髪君とエバン君もその家から本屋や取次店へ通う。殿下は……」

「俺は愛するヤマトと恋人として一緒に暮らせるのなら、どんな家でも大丈夫だ。
 食事をしたり寝る場所が変わるだけだからな。
 いずれヤマトと結婚したらその時は城へ戻る事になるかもしれないが……
 それまでは朝と晩は皆と一緒に新しい家で過ごそう。
 そうと決まれば、あの空き家をどうしたら手に入れられるか、アルフ達に聞いてくる。ちょっと待っていろ」

 シリウスは急ぎ足で部屋から出て行った。

 この後、執事のアルフさんがあの空き家を管理している不動産屋と交渉をし、シリウスが王子の力を駆使し空き家を現金一括購入したのだった。
 家のお金を皆で出し合う話もしていたのだが、シリウスが自分が出すからと意見を曲げてくれず、結局甘えさせてもらう形となった。

 そして前回、皆で王城で集まって今後の話をした日から一ヶ月経った今日、無事入居日を迎えた。
 今日が木曜で本屋が定休日な事もあり、朝から俺とキール、あとたまたま休みになったエバン君の三人で屋敷の中へと入った。
 と言っても今日初めて中へ入った訳ではなく、入居日までに色々荷物を運んだり、掃除をしたりしていたから家の構図等は大体把握済みだ。
 この家は一階建ての平屋で、とにかく広かった。
 広い玄関に、漢字の凹の字状に長い廊下が続いていて、その廊下に沿って部屋のドアが並んでいる。

 部屋数は寝室だけで8部屋あり、他は応接室に書斎、書庫、倉庫室、使用人の人達の部屋……あとは食堂に厨房室、浴室、トイレなどなど。
 俺達五人が暮らしていくには充分な大きさだった。
 前は金持ちの夫婦が住んでいたそうだが、年老いて広すぎるのが逆に暮らしにくくなり、他の場所に小さい家を建ててそっちへ移り住んでいるそうだ。

 キールは持ってきた食材を冷蔵庫へ入れる為厨房室の方へと行ったので、俺は自分が掃除していない部屋やまだ話だけ聞いて見ていない部屋があるので、探検がてら部屋を見て回る事にした。
 
 自分達が住む家に書庫があるなんて、本好きの俺にはたまらない。
 前に書庫をチラッと覗いた時は沢山の本や雑誌が、あと食堂にも食器などが棚に多数残されたままになっていた。
 シリウスが、前の家主さんからはこの家に置いてある物は全て不要なものなので好きに使ってくれていいと聞いたそうなので、ありがたく使わせて貰う事にした。
 書庫や書斎に俺の知らないBL本なんかもあったらいいな。

 あと他にも面白そうな部屋があるかもしれない。
 ワクワクしながら廊下を歩きながら部屋を覗いて歩いていると

「ヤマトさん、コッチ」

 後ろからエバン君に手を引っ張られてどこかの部屋へと引きずり込まれた。
 部屋の中は少し狭く机と椅子が中央にドンと置いてあり、天井まである備え付けの本棚には本がビッシリと詰まっていて、机が両サイドの本棚に挟まれる形になっている。

「ここは……書斎かな?」
「そうです、さすがヤマトさんですね…………よいしょ、ちょっと失礼します」

 エバン君はそう言いながら俺の腰に手を回して軽々持ち上げ、机の上に俺を座らせた。うん、やっぱ人間ヒューマンとは違って力があるんだな……って、何で机の上?

「えっ、ちょっ、何で机の上に」
「ハァ……ヤマトさんと二人きり……少しだけ独占させて下さい」

 エバン君はそう言いながら俺の口にキスをし、そのまま押し倒してきた。
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