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第八十二話
腐男子、久しぶりに再会する
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月曜日、いつも通りキールと出勤して朝の掃除を終え掃除道具を片付けていると、肩幅位の段ボールを抱えたノインさんがヨロヨロしながらこちらへとやって来た。
「ごめんヤマト君、今日は王都の騎士団本部までお使い頼める?
この段ボールに入ってる本、全て注文分でね、今日中に届けて欲しいんだけど……」
「分かりました、今から行ってきますね」
肩からずり落ちたままだったエプロンの紐を直し、ノインさんから馬車の代金と段ボールを受け取って店を出た。
すると、今日発売の新刊や注文分の本を持ってきたエバン君とキールが店の横で話をしていた。
「あっ、ヤマ……」
「ヤマトさん、おはようございます!」
二人がこっちに気付き、同時に叫んだ。
「おはよう、エバン君。今日も元気だね~。
キール、今から王都の騎士団へ注文分の本持って行ってくるから後は頼むね。
昼食もついでに王都で食べるから……夕方位までには戻るよ」
「分かった。ヤマト、気を付けてね」
「王都へ行くんですか? それなら一緒に行きましょうよ。丁度僕もこれから王都の本屋へ本を持って行くんです」
「ホント? 助かるよ、じゃあ乗せてってくれる?」
エバン君は笑顔で頷いて俺の手から段ボールを取り、馬車の方へと歩いて行ったので後に続いて行った。
エバン君は俺の分の段ボールを後ろの荷台へと乗せ、御者席へと座ったのでその隣へと座った。
「それじゃ、行きましょうか」
エバン君はそう言うと手綱を振るい、王都方面へと馬車を進ませた。
* * * * *
「そういえばエバン君、告白してきたっていう取引先の人とはどうなったの?」
他愛もない本や仕事の話をした後、ふと以前エバン君が話していた取引先の人との事が気になったので、何となく軽い気持ちで聞いてみた。
エバン君は少し間を置いてから真っ直ぐ前を向いたまま口を開いた。
「……少しだけお付き合いしましたが……先日別れました」
「えっ!? そ、そうなんだ。
なんか……ゴメン、変な事聞いちゃって」
途端に空気が重くなってしまった。しまった、聞くんじゃなかった。
「いえ、大丈夫です…………ヤマトさん、やっぱりお優しいですね」
エバン君はニコッと笑いながら手綱を操作して、馬車を街道横から少し外れた場所にある廃屋の横へと走らせて停車させた。
「馬車を走らせて三十分経ったので、少し休憩しましょうか」
「ん、分かった」
俺は馬車から降りて腕を上げて大きく伸びをした。
エバン君も馬車を降り、バケツに水を入れて馬車馬に与え、エバン君自身も鞄から取り出した水を飲んでいた。そういえば自分用の水、持ってくるの忘れてた。
今日はカラッと晴れてはいるが、気温が高くて暑い。エプロンを脱いで上は半袖ブラウス一枚だけだが、額から汗が滴り落ちていく。それをハンカチで拭いながら、エバン君に水を分けて貰えないか尋ねた。
「お水なら荷台に予備がまだあります、取ってきますね」
エバン君は小走りで荷台の方へ行き、しばらくしてから水が入ったボトルを持ってきてくれた。
「ハイどうぞ、ヤマトさん」
「ありがとう、助かるよ」
エバン君からボトルを受け取って三、四口飲んだ。
「…………?」
水にしては何か変な味がした。人だけではなく、物も鑑定出来る事がこの一年で改めて分かった俺は、まさかと思って手にしているボトルを凝視し鑑定してみた。
【名称】水入りボトル
【素材】水+シビレ草、合成樹脂(プラスチック系物質)+添加剤
【詳細】山の湧き水にシビレ草の絞り汁を入れて出来た液体。体内に入ると口内、手足の痺れ等の症状が出る。
(……何この中身……!!)
これを俺に飲ませて何をする気だったのか、エバン君は。
背筋がゾッとして、それ以上飲むのはやめた。
「……アレ? ヤマトさん、もう飲まないんですか?」
何食わぬ顔をしてエバン君が近付いて来た。怖い、怖いよエバン君。
「あー……いや、何か少し変な味がして…………暑さで水が少し傷んでるのかも……」
俺がそう誤魔化して言うと、つまらなさそうな顔をして再び馬車へと行き、荷台で別の水入りのボトルを探して持って来てくれた。
「これならどうですかね?」
俺はエバン君が新たに持ってきた水入りのボトルを鑑定してみた。
【名称】水入りボトル
【素材】水、合成樹脂(プラスチック系物質)+添加剤
【詳細】山の湧き水。飲むと喉の渇きが癒える。
ホッ、良かった、こっちは本当の水だ。
エバン君がジーッとこっちを見ていたので、一口飲んで確かめるフリをしてゴクゴクと飲んだ。
「んー、この水は大丈夫、美味しかったー。ありがとう、エバン君」
空になったボトルをエバン君が受け取りながら、ニィッと微笑んだ。
水を飲んで十分位経ってから、エバン君がそろそろ出発しましょうと話しかけてきたので、廃屋の壁にもたれて座っていた俺は心の中でよっこいしょと呟き、立ちあがった……が、足の感覚が無く力が入らずによろけ、エバン君に支えてもらった。
「アレ? 力が入らなひ……んはっ?」
足どころか、口の中もピリピリと痺れだし、ろれつが回らない。
「……少量でも効果ありましたね…………ヤマトさん……可愛い。
俺、やっぱりヤマトさんが好きです。ヤマトさんの体が忘れられない……
……シリウス様から聞いてましたが、ヤマトさん、妊娠できる体ですよね。
既成事実……作らせてもらいます」
「は……あ……!!」
エバン君は地面へ俺をゆっくり倒し、痺れて口が開きっぱなしの俺の口にキスをし、ズルッと舌を入れてきた。
「ごめんヤマト君、今日は王都の騎士団本部までお使い頼める?
この段ボールに入ってる本、全て注文分でね、今日中に届けて欲しいんだけど……」
「分かりました、今から行ってきますね」
肩からずり落ちたままだったエプロンの紐を直し、ノインさんから馬車の代金と段ボールを受け取って店を出た。
すると、今日発売の新刊や注文分の本を持ってきたエバン君とキールが店の横で話をしていた。
「あっ、ヤマ……」
「ヤマトさん、おはようございます!」
二人がこっちに気付き、同時に叫んだ。
「おはよう、エバン君。今日も元気だね~。
キール、今から王都の騎士団へ注文分の本持って行ってくるから後は頼むね。
昼食もついでに王都で食べるから……夕方位までには戻るよ」
「分かった。ヤマト、気を付けてね」
「王都へ行くんですか? それなら一緒に行きましょうよ。丁度僕もこれから王都の本屋へ本を持って行くんです」
「ホント? 助かるよ、じゃあ乗せてってくれる?」
エバン君は笑顔で頷いて俺の手から段ボールを取り、馬車の方へと歩いて行ったので後に続いて行った。
エバン君は俺の分の段ボールを後ろの荷台へと乗せ、御者席へと座ったのでその隣へと座った。
「それじゃ、行きましょうか」
エバン君はそう言うと手綱を振るい、王都方面へと馬車を進ませた。
* * * * *
「そういえばエバン君、告白してきたっていう取引先の人とはどうなったの?」
他愛もない本や仕事の話をした後、ふと以前エバン君が話していた取引先の人との事が気になったので、何となく軽い気持ちで聞いてみた。
エバン君は少し間を置いてから真っ直ぐ前を向いたまま口を開いた。
「……少しだけお付き合いしましたが……先日別れました」
「えっ!? そ、そうなんだ。
なんか……ゴメン、変な事聞いちゃって」
途端に空気が重くなってしまった。しまった、聞くんじゃなかった。
「いえ、大丈夫です…………ヤマトさん、やっぱりお優しいですね」
エバン君はニコッと笑いながら手綱を操作して、馬車を街道横から少し外れた場所にある廃屋の横へと走らせて停車させた。
「馬車を走らせて三十分経ったので、少し休憩しましょうか」
「ん、分かった」
俺は馬車から降りて腕を上げて大きく伸びをした。
エバン君も馬車を降り、バケツに水を入れて馬車馬に与え、エバン君自身も鞄から取り出した水を飲んでいた。そういえば自分用の水、持ってくるの忘れてた。
今日はカラッと晴れてはいるが、気温が高くて暑い。エプロンを脱いで上は半袖ブラウス一枚だけだが、額から汗が滴り落ちていく。それをハンカチで拭いながら、エバン君に水を分けて貰えないか尋ねた。
「お水なら荷台に予備がまだあります、取ってきますね」
エバン君は小走りで荷台の方へ行き、しばらくしてから水が入ったボトルを持ってきてくれた。
「ハイどうぞ、ヤマトさん」
「ありがとう、助かるよ」
エバン君からボトルを受け取って三、四口飲んだ。
「…………?」
水にしては何か変な味がした。人だけではなく、物も鑑定出来る事がこの一年で改めて分かった俺は、まさかと思って手にしているボトルを凝視し鑑定してみた。
【名称】水入りボトル
【素材】水+シビレ草、合成樹脂(プラスチック系物質)+添加剤
【詳細】山の湧き水にシビレ草の絞り汁を入れて出来た液体。体内に入ると口内、手足の痺れ等の症状が出る。
(……何この中身……!!)
これを俺に飲ませて何をする気だったのか、エバン君は。
背筋がゾッとして、それ以上飲むのはやめた。
「……アレ? ヤマトさん、もう飲まないんですか?」
何食わぬ顔をしてエバン君が近付いて来た。怖い、怖いよエバン君。
「あー……いや、何か少し変な味がして…………暑さで水が少し傷んでるのかも……」
俺がそう誤魔化して言うと、つまらなさそうな顔をして再び馬車へと行き、荷台で別の水入りのボトルを探して持って来てくれた。
「これならどうですかね?」
俺はエバン君が新たに持ってきた水入りのボトルを鑑定してみた。
【名称】水入りボトル
【素材】水、合成樹脂(プラスチック系物質)+添加剤
【詳細】山の湧き水。飲むと喉の渇きが癒える。
ホッ、良かった、こっちは本当の水だ。
エバン君がジーッとこっちを見ていたので、一口飲んで確かめるフリをしてゴクゴクと飲んだ。
「んー、この水は大丈夫、美味しかったー。ありがとう、エバン君」
空になったボトルをエバン君が受け取りながら、ニィッと微笑んだ。
水を飲んで十分位経ってから、エバン君がそろそろ出発しましょうと話しかけてきたので、廃屋の壁にもたれて座っていた俺は心の中でよっこいしょと呟き、立ちあがった……が、足の感覚が無く力が入らずによろけ、エバン君に支えてもらった。
「アレ? 力が入らなひ……んはっ?」
足どころか、口の中もピリピリと痺れだし、ろれつが回らない。
「……少量でも効果ありましたね…………ヤマトさん……可愛い。
俺、やっぱりヤマトさんが好きです。ヤマトさんの体が忘れられない……
……シリウス様から聞いてましたが、ヤマトさん、妊娠できる体ですよね。
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