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第八十四話
腐男子、二人に助けられる
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「ヤマトさんが……ヤマトさんがいけないんです……」
何やらブツブツと独り言を言っているエバン君が、お尻の穴に宛てがっているモノに体重をかけてきた。
後ろの穴に圧力を感じ、一気に血の気が引いていった。
終わった、今度こそ終わった。
叫ぶ事も抵抗する事も出来ず、時間停止能力も使えず、なすがまま犯されてしまうんだ。
顔を横に逸らし、目をギュッと閉じ、身構えた。
すると次の瞬間、尻の圧迫感が無くなりエバン君の姿が消えていた。
(あれ? 何で? 何が起きた……?)
首だけを動かして辺りを見回すと、少し離れた場所でここの備品であろうくたびれて汚れたロープで体をグルグル巻きにされ、うつ伏せで倒れているエバン君を見つけた。
更にそのエバン君の横には、ハァハァと息を切らしている黒ローブ姿の男がこちらに背を向けて立っていた。
誰だ? あの男が助けてくれたのか?
呆気にとられてその男を見ていると、誰かが頭と背中を支えて後ろから体を起こしてくれた。
「…………大丈夫かい、ヤマト君」
聞き慣れた低音の優しい声の方をゆっくり向いた。そこにはしゃがみこんで白い騎士団服のジャケットを脱いでいるディルトさんがいて、俺の丸出しになっている下半身にそのジャケットをかけてくれた。
ディルトさんが助けに来てくれた。嬉しくて思わず涙目になる。
とするとあっちは誰だ? そう思いながら目を向けると、男は頭に被っていたフードを取り、振り返って黒い髪をかきあげた。以前王城で俺を鑑定したミツアキさんだった。
ミツアキさんは額の汗を手で拭いながら、
「ヤマト君がピンチみたいだったから、俺の時間停止能力、使わせてもらったよ。
人をロープで縛るの、結構疲れるね」
と、エバン君を見下ろしながら喋った。
ディルトさんはミツアキさんが時間停止能力が使える事を知っているのか、全く動じている様子は無く、俺の顔を心配そうに覗き込んだ。
「ヤマト君、一体何があったんだい? 何故エバン君と二人でここに……」
「あ……うぅ……」
手をそっと握ってくれているディルトさんの方を向き、事の顛末を喋りたかったがまだ口に痺れが残っていた。
口を上手く動かせず、だらしなく涎を垂らしながら涙目でディルトさんの目に訴えかけた。
すると俺の異変に気付いたのか、ディルトさんがミツアキさんに「ヤマト君の様子がおかしい、調べて欲しい」と伝えると、ミツアキさんが中指で眼鏡のフレームをグイッと上げながらこちらへと歩み寄った。
ミツアキさんはディルトさんの横へ座り、俺のもう片方の手を握り目を閉じた。握られた手元がじんわりと温かく感じ熱を持ってきた。
「……ん、体内にシビレ草の成分を確認……そこのエバン君とかいう子に飲まされて、無理矢理犯されそうになった、そんな感じかな」
「う…………」
コクコク、と頭を縦に振るとディルトさんは俺の頭を優しく撫でた後、エバン君の側へと歩いて行き、伏せている顔の辺りで跪いた。
「エバン君、君のやった事は未遂と言えど犯罪行為だ。分かるな?」
「ハイ……」
「もう二度とヤマト君にこんな事はするんじゃない」
「…………ハイ……」
「今から騎士団本部まで一緒に来てもらって話を聞く。エバン君は私とヤマト君と一緒に騎士団の馬車へ乗ってもらう。
エバン君の馬車はミツアキさんに乗ってもらって王都まで向かう。分かったね」
地面に顔をつけ、憔悴しきっているエバン君をディルトさんは肩に担ぎ上げ、外へと出て行った。
ミツアキさんも一旦外に出て、数分後に革製のショルダーバッグを手に、鞄の中を弄りながら帰ってきた。
「あったあった。これ飲んでみてよ、麻痺を治す薬。
もしもの時用に携帯してた錠剤だけど、手足や口の痺れにも効くと思うから。
俺が飲ませてあげるよ」
ミツアキさんはガラスの小瓶から錠剤を一つ手に出して握り、水入りのボトルのキャップをあけた。
「どうする? 俺が口移しで飲ませてあげようか?」
「……う……」
首を横に振ると、遠慮しなくていいのに、と言いながら俺の舌の上に薬を乗せ、ボトルを口に付けて飲ませてくれた。
薬を飲んで十五分位経過した頃から、徐々に口と手足の感覚が蘇ってきた。
口をパクパク動かして手をニギニギ握っていると、ミツアキさんが俺の側にしゃがみ込んだ。
「どう? そろそろ感覚戻ってきたんじゃない?」
「あ……ハイ、喋れるし、手足も動きます……ありがとうございます」
座ったままペコッと頭を下げた。
でも、助けてもらったはいいけど、二人はどうして一緒にいてここに俺達がいる事に気付いたんだろうか。疑問に思っていた事を聞いてみた。
「あの、それにしても二人は何でここに」
「あぁ、俺達は隣国の花嫁候補何人かの鑑定……妊娠出来るか、の鑑定ね。それに行って来た帰り。ディルトさんは俺の護衛兼付き添いとしてついて来てくれたってわけ。
ディルトさんが会議まで帰りたいとかで今朝、日の出前に隣国を出発したんだよ」
「……そうだったんですか」
「俺はウトウトして半分寝てたんだけど、ディルトさんがここの異変に気付いて。
廃屋横に真新しい見た事のある馬車が止まっているから胸騒ぎがする、見てくる、ってね。それで二人でそこの窓から室内を見たら、あの猫耳の子に襲われてるヤマト君を発見したんだよ」
ディルトさん……
俺、またディルトさんに助けてもらったんだ。胸がじんわりと熱くなった。
「ヤマト君、何か今にも挿れられそうになってたから、ディルトさんに時間停止能力を使ってあの猫耳の子を縛ってきますって伝えて……そんな感じかな。
じゃ、そろそろ王都へ向かおうか」
ミツアキさんはフードを被り、俺も服に付いていた埃や土をはらい、ドアを開けて二人で外へと出て行った。
何やらブツブツと独り言を言っているエバン君が、お尻の穴に宛てがっているモノに体重をかけてきた。
後ろの穴に圧力を感じ、一気に血の気が引いていった。
終わった、今度こそ終わった。
叫ぶ事も抵抗する事も出来ず、時間停止能力も使えず、なすがまま犯されてしまうんだ。
顔を横に逸らし、目をギュッと閉じ、身構えた。
すると次の瞬間、尻の圧迫感が無くなりエバン君の姿が消えていた。
(あれ? 何で? 何が起きた……?)
首だけを動かして辺りを見回すと、少し離れた場所でここの備品であろうくたびれて汚れたロープで体をグルグル巻きにされ、うつ伏せで倒れているエバン君を見つけた。
更にそのエバン君の横には、ハァハァと息を切らしている黒ローブ姿の男がこちらに背を向けて立っていた。
誰だ? あの男が助けてくれたのか?
呆気にとられてその男を見ていると、誰かが頭と背中を支えて後ろから体を起こしてくれた。
「…………大丈夫かい、ヤマト君」
聞き慣れた低音の優しい声の方をゆっくり向いた。そこにはしゃがみこんで白い騎士団服のジャケットを脱いでいるディルトさんがいて、俺の丸出しになっている下半身にそのジャケットをかけてくれた。
ディルトさんが助けに来てくれた。嬉しくて思わず涙目になる。
とするとあっちは誰だ? そう思いながら目を向けると、男は頭に被っていたフードを取り、振り返って黒い髪をかきあげた。以前王城で俺を鑑定したミツアキさんだった。
ミツアキさんは額の汗を手で拭いながら、
「ヤマト君がピンチみたいだったから、俺の時間停止能力、使わせてもらったよ。
人をロープで縛るの、結構疲れるね」
と、エバン君を見下ろしながら喋った。
ディルトさんはミツアキさんが時間停止能力が使える事を知っているのか、全く動じている様子は無く、俺の顔を心配そうに覗き込んだ。
「ヤマト君、一体何があったんだい? 何故エバン君と二人でここに……」
「あ……うぅ……」
手をそっと握ってくれているディルトさんの方を向き、事の顛末を喋りたかったがまだ口に痺れが残っていた。
口を上手く動かせず、だらしなく涎を垂らしながら涙目でディルトさんの目に訴えかけた。
すると俺の異変に気付いたのか、ディルトさんがミツアキさんに「ヤマト君の様子がおかしい、調べて欲しい」と伝えると、ミツアキさんが中指で眼鏡のフレームをグイッと上げながらこちらへと歩み寄った。
ミツアキさんはディルトさんの横へ座り、俺のもう片方の手を握り目を閉じた。握られた手元がじんわりと温かく感じ熱を持ってきた。
「……ん、体内にシビレ草の成分を確認……そこのエバン君とかいう子に飲まされて、無理矢理犯されそうになった、そんな感じかな」
「う…………」
コクコク、と頭を縦に振るとディルトさんは俺の頭を優しく撫でた後、エバン君の側へと歩いて行き、伏せている顔の辺りで跪いた。
「エバン君、君のやった事は未遂と言えど犯罪行為だ。分かるな?」
「ハイ……」
「もう二度とヤマト君にこんな事はするんじゃない」
「…………ハイ……」
「今から騎士団本部まで一緒に来てもらって話を聞く。エバン君は私とヤマト君と一緒に騎士団の馬車へ乗ってもらう。
エバン君の馬車はミツアキさんに乗ってもらって王都まで向かう。分かったね」
地面に顔をつけ、憔悴しきっているエバン君をディルトさんは肩に担ぎ上げ、外へと出て行った。
ミツアキさんも一旦外に出て、数分後に革製のショルダーバッグを手に、鞄の中を弄りながら帰ってきた。
「あったあった。これ飲んでみてよ、麻痺を治す薬。
もしもの時用に携帯してた錠剤だけど、手足や口の痺れにも効くと思うから。
俺が飲ませてあげるよ」
ミツアキさんはガラスの小瓶から錠剤を一つ手に出して握り、水入りのボトルのキャップをあけた。
「どうする? 俺が口移しで飲ませてあげようか?」
「……う……」
首を横に振ると、遠慮しなくていいのに、と言いながら俺の舌の上に薬を乗せ、ボトルを口に付けて飲ませてくれた。
薬を飲んで十五分位経過した頃から、徐々に口と手足の感覚が蘇ってきた。
口をパクパク動かして手をニギニギ握っていると、ミツアキさんが俺の側にしゃがみ込んだ。
「どう? そろそろ感覚戻ってきたんじゃない?」
「あ……ハイ、喋れるし、手足も動きます……ありがとうございます」
座ったままペコッと頭を下げた。
でも、助けてもらったはいいけど、二人はどうして一緒にいてここに俺達がいる事に気付いたんだろうか。疑問に思っていた事を聞いてみた。
「あの、それにしても二人は何でここに」
「あぁ、俺達は隣国の花嫁候補何人かの鑑定……妊娠出来るか、の鑑定ね。それに行って来た帰り。ディルトさんは俺の護衛兼付き添いとしてついて来てくれたってわけ。
ディルトさんが会議まで帰りたいとかで今朝、日の出前に隣国を出発したんだよ」
「……そうだったんですか」
「俺はウトウトして半分寝てたんだけど、ディルトさんがここの異変に気付いて。
廃屋横に真新しい見た事のある馬車が止まっているから胸騒ぎがする、見てくる、ってね。それで二人でそこの窓から室内を見たら、あの猫耳の子に襲われてるヤマト君を発見したんだよ」
ディルトさん……
俺、またディルトさんに助けてもらったんだ。胸がじんわりと熱くなった。
「ヤマト君、何か今にも挿れられそうになってたから、ディルトさんに時間停止能力を使ってあの猫耳の子を縛ってきますって伝えて……そんな感じかな。
じゃ、そろそろ王都へ向かおうか」
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