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第二十一話
腐男子、憂鬱な気分になる
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ディルトさんに手を引っ張られ、本屋から少し離れた、街道沿いの大きな街路樹がある場所でディルトさんは立ち止まった。
「ヤマト君、あれから体調は大丈夫かい?」
「あ、ハイ、事件があった次の日に熱が出ましたけど……すぐに治ったし、大丈夫です」
「そうか。大丈夫そうなら良かった。それと敬語じゃなくて良いよ。友人と接する様にしてくれて良い」
うーん、ディルトさん年上で騎士団長だし、この容姿に制服姿で威圧感もあるから、どうしても敬語になってしまう。
「あはは……すみません、ディルトさんが相手だと、どうしても敬語になってしまって」
俺が照れながらそう言うと、ディルトさんは少し笑った後、すぐ真顔に戻り話し出した。
「あのカミユという殺人犯は、数日後に裁判にかけられる予定だ。恐らく極刑は免れないだろう。
ヤマト君が教えてくれた、ヤツが潜伏していた山小屋にいた男も我々が探していた犯罪者だった。すぐに捕まえて連行したよ。
キミのお陰だ、貴重な情報をありがとう、ヤマト君」
やっぱりあの熊男も犯罪者だったんだな。
ディルトさんに伝えて良かった。
ホッとしていると、ディルトさんが近寄って来て、俺の深緑のエプロンの胸元を触ってきた。
「……これは本屋の制服のエプロンかい? 素敵だね、よく似合っているよ」
「? あ、ありがとうございます……」
急に犯罪者の話から俺のエプロンの話になり、戸惑った。
ディルトさんは俺のエプロンを触りながら話を続けた。
「これは……仕事とは関係ない、全く個人的な事なんだが……あの金髪の彼はキミの恋人なのかな?」
……えっ? 何を言い出すんだこの人は。
「いえ、違いますよ。彼は同じ本屋で働く同僚で、この前は買い物に付き合ってもらっただけです」
キールに好きだと告白されたが、恋人ではないので嘘ではない。
「そうか……良かった」
ん? 何が良かったの? まさかこの展開は……
「実は、恥ずかしながら……キミに一目惚れしたみたいでね……あの日から君の事ばかり考えてしまって、仕事も手につかないんだ」
うあぁぁぁぁーー! アンタもかーー!!
仕事しろ仕事!!
「どうしてもヤマト君の顔が見たくなって、仕事に託けて会いに来てしまった。
そうしたらヤマト君のエプロン姿が可愛くて……二人きりになりたくてつい、外に連れ出してしまった。許してくれ」
……あーもうどうしよう。
ディルトさんならもっと素敵な人がいると思うんですが……ナゼよりにもよって俺……
「ヤマト君、もし今お付き合いしている人がいなければ……結婚を前提に私とお付き合いしてくれないか。大切にする」
ディルトさんは俺の右手を持ち、片膝を地面につけてまさかの告白をしてきた。
さすが性的嗜好【純愛】と【正常性愛】。
まるでお姫様の様な扱いだ。
でも問題なのは、その告白を俺が望んでいない訳で……
「あの、ごめんなさい、俺今は誰かと付き合うとか考えてなくて……その……」
俺はオブラートに包みやんわりお断りした。結婚を前提に、とか俺には早すぎるし重たすぎる。
今は本屋の仕事とBL本漁りの方が楽しいし。
分かって貰えたかな、と立ち上がったディルトさんの方をチラリと見ると、俺は肩を掴まれ抱き寄せられた。え!?
「分かった、これから少しずつ、お互いの事を知っていこうじゃないか。
まずは私の部屋でお茶でも嗜もうか。
確か木曜が定休日だったね、木曜の何時がいいかな? 馬車で迎えにくるよ」
何が分かった、だよ! 俺お断りしたんですけど! 何で次のデートの話をしてるんだよ!
俺がディルトさんに抱かれたまま困惑していると、ディルトさんの後ろの方から間の抜けた声がした。
「ディルトさーーん、まだですかぁ? 俺暇で超死にそーなんですけどー」
俺とディルトさんは声のする方を向いた。
ディルトさんと同じ白の制服を着た、赤髪のミディアムヘアーを無造作にオールバックにしている人が、馬車の前席から降りこっちに向かって歩いて来た。
「ロタ……もう少しで終わるから、大人しく待っていてくれ」
「この後まだ仕事が詰まってるんだから、早くして下さいねぇー…………んお!?」
赤髪のロタって人は、顎に手を当て、俺に近付いてきて顔をジーーッと見てきた。
「ヘェー、キミがヤマト君?
超ー可愛い顔してるじゃん。
ディルトさんが惚れるのも分かるわ~。
あ、俺は王都第二騎士団副長のロタ。
呼び捨てでいいから。
よろしくね、ヤマト君」
ディルトさんと比べて凄く砕けた喋り方をするロタは、右手をスッと前に出し、握手を求めてきた。
「はぁ……よろしくお願いしま……うわっ!!」
ロタと握手をした途端、手を引っ張られ今度はロタに抱きしめられた。いや、どういう事!?
「ディルトさんの恋の応援をする予定だったけどー、やっぱやーめた。
俺もヤマト君に一目惚れしちゃったから~アタックする事にしまーす。
別に構わないですよねぇ?」
そう言ってロタはニヤニヤしながら、俺のおでこににキスしてきた。うぉぉぉぉ!!
「ロタ!! オマエェェェ!!」
ディルトさんが怒りに満ちた表情で、腰の剣のグリップを握り、鞘から抜こうとしている。
や、やめて! 本屋の前でそういう血飛沫が飛ぶ様な争い事はやめてくれ!
「ディルトさん、別に俺、ヤマト君独占したい訳じゃないッスよ~。
俺とヤマト君が結ばれても、ディルトさんさえ良ければ3Pとか大歓迎ですから~。
ねーヤマト君、皆で気持ち良くなりたいよねぇ?」
そう言ってロタは、俺の頬をベロンとひと舐めした。ギャアァァァッ!!
3Pだなんて冗談じゃない、俺は青ざめ、首を横に振った。
ディルトさん、ロタ斬って! 斬ってもいいから!
でもディルトさんの方を見ると、なぜか頬を赤く染め
「3P……ヤ、ヤマト君がそれを望むのなら、私も全力で答えねばなるまい」
なんて事を言ってるんだこの人は!
アンタの性的嗜好【純愛】と【正常性愛】は何処いった!?
早くこの場から逃げないと……そう思ってロタから離れようとすると、ロタが俺のお尻をグニグニ揉み出した。
ゾワゾワと全身に鳥肌が立つ。
「ヤマト君のお尻柔らかくて気持ちイイねぇ~。
ヤマト君は~入れたい方? 入れられたい方?
俺はヤマト君にブチ込んで~中出しして掻き混ぜたいかな~」
…………思わず絶句した。ロタヤバイ。
騎士団副長とか言ってたけど、性の事に関しては犯罪者のカミユとあまり変わらないじゃないか。
「ディルトさん、ヤマト君このまま王都へお持ち帰りするんですかぁ?
エプロン姿そそるわぁ~。裸にエプロンで3Pとか、俺何十回でもイケそー」
ロタはニヤニヤしながら俺を軽々と肩に担ぐと、馬車の方へ向かい歩き出した。
「まっ、ままま待って下さい!
俺まだ仕事中だしっ……!」
ロタに担がれた状態で、ジタバタ足掻いて抵抗した。
するとディルトさんが近寄ってきて
「大丈夫だ、ヤマト君。私が店主さんにヤマト君を少し借りていくと説明しておくから。
先にロタと馬車に乗っていなさい」
などと涼しげな顔をして言った。
何が大丈夫!? 俺が全然大丈夫じゃないんだけど!!
話が全然通じないので、俺は仕方なく時間停止能力を使い、ロタから降りた。
そして猛ダッシュで本屋に戻り、二階の倉庫に身を潜めた。
(ハァ……なんか面倒な事になってきたなぁ……)
憂鬱な気分のまま、俺はディルトさん達が帰っていくのを倉庫の中でひたすら耐え、待っていたのだった。
「ヤマト君、あれから体調は大丈夫かい?」
「あ、ハイ、事件があった次の日に熱が出ましたけど……すぐに治ったし、大丈夫です」
「そうか。大丈夫そうなら良かった。それと敬語じゃなくて良いよ。友人と接する様にしてくれて良い」
うーん、ディルトさん年上で騎士団長だし、この容姿に制服姿で威圧感もあるから、どうしても敬語になってしまう。
「あはは……すみません、ディルトさんが相手だと、どうしても敬語になってしまって」
俺が照れながらそう言うと、ディルトさんは少し笑った後、すぐ真顔に戻り話し出した。
「あのカミユという殺人犯は、数日後に裁判にかけられる予定だ。恐らく極刑は免れないだろう。
ヤマト君が教えてくれた、ヤツが潜伏していた山小屋にいた男も我々が探していた犯罪者だった。すぐに捕まえて連行したよ。
キミのお陰だ、貴重な情報をありがとう、ヤマト君」
やっぱりあの熊男も犯罪者だったんだな。
ディルトさんに伝えて良かった。
ホッとしていると、ディルトさんが近寄って来て、俺の深緑のエプロンの胸元を触ってきた。
「……これは本屋の制服のエプロンかい? 素敵だね、よく似合っているよ」
「? あ、ありがとうございます……」
急に犯罪者の話から俺のエプロンの話になり、戸惑った。
ディルトさんは俺のエプロンを触りながら話を続けた。
「これは……仕事とは関係ない、全く個人的な事なんだが……あの金髪の彼はキミの恋人なのかな?」
……えっ? 何を言い出すんだこの人は。
「いえ、違いますよ。彼は同じ本屋で働く同僚で、この前は買い物に付き合ってもらっただけです」
キールに好きだと告白されたが、恋人ではないので嘘ではない。
「そうか……良かった」
ん? 何が良かったの? まさかこの展開は……
「実は、恥ずかしながら……キミに一目惚れしたみたいでね……あの日から君の事ばかり考えてしまって、仕事も手につかないんだ」
うあぁぁぁぁーー! アンタもかーー!!
仕事しろ仕事!!
「どうしてもヤマト君の顔が見たくなって、仕事に託けて会いに来てしまった。
そうしたらヤマト君のエプロン姿が可愛くて……二人きりになりたくてつい、外に連れ出してしまった。許してくれ」
……あーもうどうしよう。
ディルトさんならもっと素敵な人がいると思うんですが……ナゼよりにもよって俺……
「ヤマト君、もし今お付き合いしている人がいなければ……結婚を前提に私とお付き合いしてくれないか。大切にする」
ディルトさんは俺の右手を持ち、片膝を地面につけてまさかの告白をしてきた。
さすが性的嗜好【純愛】と【正常性愛】。
まるでお姫様の様な扱いだ。
でも問題なのは、その告白を俺が望んでいない訳で……
「あの、ごめんなさい、俺今は誰かと付き合うとか考えてなくて……その……」
俺はオブラートに包みやんわりお断りした。結婚を前提に、とか俺には早すぎるし重たすぎる。
今は本屋の仕事とBL本漁りの方が楽しいし。
分かって貰えたかな、と立ち上がったディルトさんの方をチラリと見ると、俺は肩を掴まれ抱き寄せられた。え!?
「分かった、これから少しずつ、お互いの事を知っていこうじゃないか。
まずは私の部屋でお茶でも嗜もうか。
確か木曜が定休日だったね、木曜の何時がいいかな? 馬車で迎えにくるよ」
何が分かった、だよ! 俺お断りしたんですけど! 何で次のデートの話をしてるんだよ!
俺がディルトさんに抱かれたまま困惑していると、ディルトさんの後ろの方から間の抜けた声がした。
「ディルトさーーん、まだですかぁ? 俺暇で超死にそーなんですけどー」
俺とディルトさんは声のする方を向いた。
ディルトさんと同じ白の制服を着た、赤髪のミディアムヘアーを無造作にオールバックにしている人が、馬車の前席から降りこっちに向かって歩いて来た。
「ロタ……もう少しで終わるから、大人しく待っていてくれ」
「この後まだ仕事が詰まってるんだから、早くして下さいねぇー…………んお!?」
赤髪のロタって人は、顎に手を当て、俺に近付いてきて顔をジーーッと見てきた。
「ヘェー、キミがヤマト君?
超ー可愛い顔してるじゃん。
ディルトさんが惚れるのも分かるわ~。
あ、俺は王都第二騎士団副長のロタ。
呼び捨てでいいから。
よろしくね、ヤマト君」
ディルトさんと比べて凄く砕けた喋り方をするロタは、右手をスッと前に出し、握手を求めてきた。
「はぁ……よろしくお願いしま……うわっ!!」
ロタと握手をした途端、手を引っ張られ今度はロタに抱きしめられた。いや、どういう事!?
「ディルトさんの恋の応援をする予定だったけどー、やっぱやーめた。
俺もヤマト君に一目惚れしちゃったから~アタックする事にしまーす。
別に構わないですよねぇ?」
そう言ってロタはニヤニヤしながら、俺のおでこににキスしてきた。うぉぉぉぉ!!
「ロタ!! オマエェェェ!!」
ディルトさんが怒りに満ちた表情で、腰の剣のグリップを握り、鞘から抜こうとしている。
や、やめて! 本屋の前でそういう血飛沫が飛ぶ様な争い事はやめてくれ!
「ディルトさん、別に俺、ヤマト君独占したい訳じゃないッスよ~。
俺とヤマト君が結ばれても、ディルトさんさえ良ければ3Pとか大歓迎ですから~。
ねーヤマト君、皆で気持ち良くなりたいよねぇ?」
そう言ってロタは、俺の頬をベロンとひと舐めした。ギャアァァァッ!!
3Pだなんて冗談じゃない、俺は青ざめ、首を横に振った。
ディルトさん、ロタ斬って! 斬ってもいいから!
でもディルトさんの方を見ると、なぜか頬を赤く染め
「3P……ヤ、ヤマト君がそれを望むのなら、私も全力で答えねばなるまい」
なんて事を言ってるんだこの人は!
アンタの性的嗜好【純愛】と【正常性愛】は何処いった!?
早くこの場から逃げないと……そう思ってロタから離れようとすると、ロタが俺のお尻をグニグニ揉み出した。
ゾワゾワと全身に鳥肌が立つ。
「ヤマト君のお尻柔らかくて気持ちイイねぇ~。
ヤマト君は~入れたい方? 入れられたい方?
俺はヤマト君にブチ込んで~中出しして掻き混ぜたいかな~」
…………思わず絶句した。ロタヤバイ。
騎士団副長とか言ってたけど、性の事に関しては犯罪者のカミユとあまり変わらないじゃないか。
「ディルトさん、ヤマト君このまま王都へお持ち帰りするんですかぁ?
エプロン姿そそるわぁ~。裸にエプロンで3Pとか、俺何十回でもイケそー」
ロタはニヤニヤしながら俺を軽々と肩に担ぐと、馬車の方へ向かい歩き出した。
「まっ、ままま待って下さい!
俺まだ仕事中だしっ……!」
ロタに担がれた状態で、ジタバタ足掻いて抵抗した。
するとディルトさんが近寄ってきて
「大丈夫だ、ヤマト君。私が店主さんにヤマト君を少し借りていくと説明しておくから。
先にロタと馬車に乗っていなさい」
などと涼しげな顔をして言った。
何が大丈夫!? 俺が全然大丈夫じゃないんだけど!!
話が全然通じないので、俺は仕方なく時間停止能力を使い、ロタから降りた。
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