腐男子が男しかいない異世界へ行ったら色々と大変でした

沼木ヒロ

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第三十話

腐男子、王都で食事をする

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 翌日、本屋の前で待っていると、約束の時間より少し早目にディルトさんが馬車で迎えに来てくれた。

「ヤマト君、おはよう。待ったかい?」

 俺は「いえ」と小声で返事をし首を横に振った。
 馬車はいつもの騎士団の白い馬車だ。
 私用で借りたのかな?
 ディルトさん自ら馬の手綱を持って、前の席に座っている。
 さすがに今日は制服姿ではなかった。白のブラウスにベージュのパンツをサラッと見事に着こなしていた。
 軽く整えてある蒼い髪と眼鏡が相まって、落ち着いた大人の男性という雰囲気をかもし出していた。
 土台が良いと何を着ても似合うといった感じか。

 それに比べて俺は、前に王都で服を買いそびれて結局そのままなので、服の数は増えていない。
 仕方なく、元の世界から着てきた高校の制服を久しぶりに着用した。
 左胸ポケットに校章のエンブレムが付いた、紺色の三つボタンブレザーに白ブラウス、寒色系のチェックのパンツと、同柄のチェックのネクタイ。
 最近仕舞いっぱなしだったので、どれも若干シワが寄っていた。

 ディルトさんは
「見た事の無い、素敵な洋服だね。よく似合っているよ」
 と笑顔で褒めてくれた。良い人だなぁ。

 ディルトさんが俺に手を差し伸べたのでその手を握り、馬車に乗ろうとするとディルトさんが俺の後ろに目をやった。
 釣られて俺も後ろを向くと、何故か私服姿のキールが立っていた。思わずギョッとする。

「キール、なんで……」
「おはよう、ヤマト。今日は昨日やり残した仕事をやろうと思って。
 ディルトさん、今日はヤマトと一緒にどちらに行かれるんですか?」

 キールが怖い位ニコニコしながらディルトさんに聞いた。

「やぁ、キール君もおはよう。今日は王都にある、私行きつけのお店にヤマト君を連れて行こうと思ってる。
 そこの鴨肉のローストが絶品でね」

 今日行くお店は王都にあるようだ。
 しかも鴨肉のローストとか、高そうなお店っぽい。
 ドレスコードとかあるんだろうか。俺、この制服姿で大丈夫なのかな。

 俺はディルトさんの隣へ腰掛け、キールに手を振りディルトさんと共に本屋を後にした。



* * * * *



 途中休憩も挟んで馬車に揺られる事二時間、無事に王都に着いた。
 道中はお互いの趣味の事とか、他愛も無い話を色々した。
 ディルトさんが時々護衛をしている王子の話もした。
 前に王子の為に俺がチョイスした小説本も凄く気に入って貰えたようで、また近々ディルトさんが追加で購入しに来るようだ。
 暇な時にまたどれがオススメかチェックしておこう。

 王都の門を抜け、馬車で南西方向に少し走った所にディルトさん行きつけのお店があった。
 外壁が白色の、フレンチっぽいお洒落で高そうなレストラン。
 今まで一度も足を運んだ事の無い部類のお店だ。テーブルマナーとか大丈夫だろうか。

 道端に馬車を止め、ディルトさんと一緒に店の中に入り、窓際のテーブル席へ案内された。
 窓の外でせわしなく行き交う人々を横目に、お店の人に引いてもらった椅子に腰掛けた。

「ヤマト君、今日は私のおごりだ。何でも注文するといい」

 ディルトさんはそう言ってメニュー表を渡してくれた。
……料理の値段、どれも一桁違うんじゃないかって位高い。そして、文字だけで料理の写真が無いのでどれが美味しいのか分からない。
 なので、俺はディルトさんオススメのコース料理を頼むことにした。

「すみません、俺こういうお店初めて来たのでよく分からなくて」

 俺はテーブルの上に置かれてあるナプキンの扱い方も分からずもたもたしていたら、ディルトさんがクスクス笑いながら立ち上がり、俺の側に来た。

「ヤマト君、キミは本当に可愛いね。
 別にかしこまらなくて大丈夫だよ、ここはそういうマナーにはうるさくないから。
 普段通りに食べたらいい」

 ディルトさんは穏やかな声色でナプキンを二つ折りにして、俺の膝の上へ乗せてくれた。
 さりげない優しさと気遣い。紳士だ……

 ディルトさんの言葉で緊張の糸がほぐれた俺は、普段通りに料理を美味しく頂いた。
 ディルトさんが美味しいと言っていた、鴨肉のローストは本当に絶品だった。
 柔らかくジューシーで、柑橘系のソースとよく合っていてあっという間に平らげた。

 食後のデザートも含め全て完食した俺は、ふとトイレに行きたくなり、ディルトさんにトイレへ行ってきますと告げ、店の奥へと向かった。
 店内の広さに対してトイレは狭く、便器が二つ、個室が一つしかなかった。

 用を足し、手を洗って足早に出ようとすると、突然後ろから口をふさがれ、俺は無理矢理個室の中へ引きずりこまれてしまった。
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