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第五章「ゴーストタウン」
ナイトメア
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「見つけた、あれだ」
目的の小屋を数百メートル先に見つけザクは足を止める。森と川を挟んだ先にある小屋には人影がなくパッと見は誰もいなさそうだった。
「うっし、乗り込む...と言いたいがルトを一定距離離すと危険だし...これがいいな」
ザクは片膝をついて背中を目の前に出してきた。両手を後ろに回し、ちょいちょいと手招きしてくる。
「え」
え、この姿勢ってまさか・・・ええ?!おんぶ、おんぶするってこと?!
「っむ、むり!拒否する!」
「はよ乗れ」
「いやだ!」
「なんでだよ、姫抱っこはよくておんぶは嫌なのか~?」
「姫抱きもいやだし、おんぶも嫌だってー!わああっー聞けばかこのやろっ!!」
無理やり腕をひっぱられ奴の背中に転がり込む。
「わぶっ」
顔面を奴の背中にぶつけ悲鳴が途切れた。バランスを崩した俺はとっさに目の前の首に腕を回す。
グンッ
その瞬間足が地面を離れ、浮遊感が体を襲った。
「ほい、できた」
「!!!」
軽々とおんぶされた。その事実に衝撃を受ける。
「...」
「いや、なんでそんな犯されたみたいな被害者面してんだよ。おんぶぐらいで情けねえなあ」
「...~~っ早く行けバカっ!!」
「はいはい、わーったよ!」
自分的には全然納得できないがこれが一番なのは理解できるので何もいえない。
(くそっ・・・自分の無力さがむかつく!)
八つ当たりでザクの髪の毛を引っ張った。流石に毛根は頑丈にできていないらしく痛がっていた。
ッダ!!
ザクは小屋と森の間にあった川をジャンプで飛び越え一瞬で距離を詰めた。あまりの速さで目が追いつかない。小屋の前に音を立てて着地すると小屋から何かが出てくる。
=っくー!!てめえオレの夢でよくも!!=
「!!」
夢の中で見たさっきの派手な悪魔が飛び出してくる、かと思いきや...中から出てきたのは可愛らしい男の子だった。でもどこかあの男の面影があるし、声はそのままだった。体は子供だが声は大人。さっき本体を見ている分、かなり違和感がある。俺をおんぶしたままザクは少年(悪魔)に近づいていく。
=な!なんだ!やるってのか!?=
「うっせえな雑魚が」
ファイティングポースを取った少年にゲンコツをお見舞いする。ザクの拳なのでそれなりに痛いはず。少年の目がうるうると涙ぐんできた。
=いっでええ~~~~~!!!=
「おい、親玉はどこだ」
=!!=
「素直に言やあ、拳骨十回で済ましてやる」
=ひい!!=
「待て、ザク!親玉ってどういうことだよ!こいつらがゴーストタウンの犯人じゃないのか?」
「こいつらは使役されてるだけの下級悪魔。それなりに器用だが程度はしれてる。この土地にいるだけで体が縮んじまってるのがいい証拠だ」
確かに夢の中のときとは違いインキュバスの体が幼くなってる。(これが洗礼地の影響か?)改めて洗礼の力に感心してしまった。今度から少しは牧師たちの言葉に耳を傾けてみようかな、なんて思ったり。
「そもそもこの雑魚にゴーストタウンを作りあげる脳みそなんてねえだろうからな。悪知恵がきく主人が裏にいるはずだ」
ザクは自らの膝をぽかぽかと殴っている少年を見下ろし吐き捨てる。半泣きで攻撃されても全く怖くない。
=ちょっと、早速何やられてんの、だっさ=
「?!」
夢の中で聞いたもうひとつの声の主が小屋から顔を出す。やはり幼い少女の姿だったが、声は大人の女性のものでやはりちぐはぐだった。
=こいつらだよ!オレの夢をやぶったやつ!=
少年が泣き止み、少女の横に走っていく。
=へえ、結構イケメンじゃない=
少女が少女ならざる色っぽい動きでザクの足元に近づいてくる。そして上目遣いで見上げてきた。人によってはそそられる状況だろう。
(ざ、ザク・・・)
俺は一瞬ザクの守備範囲を恐れたが
「・・・」
ザクの横顔を見て安心した。どうやら幼女は範囲外のようだ。よかったよかった。
=やっぱダメね、オスなんてみんなそう。見る目がないただの獣なんだから=
少女が呆れている。俺としても「オスは獣だ」という言葉には大きく賛同したい気分だ。内心頷いているとチラリと少女が目を合わせてくる。
=女の子が一番よね=
「え、女なのに女が好きなのか」
=当たり前じゃない、あなたもでしょ=
「いや違うけど」
俺は別に男が好きなわけじゃない。男女問わず距離を置いてるが、言い寄ってくるのが男ばかりというだけだ。
=あっそ、オスなんてどうでもいいわ=
「...」
聞いといてそれはないだろう、と内心呟く。でもわかった気がする。なんで森に入った瞬間ゾンビが同性同士で絡み始めたのか。それは、淫夢を操っていたこいつらの影響だったんだ。詳しい理由はわからないが森の中に街の人間を誘い込むまでがこのインキュバス達の任務だったのだろう。で、それを終えた人間を使って彼女たちは自分らの好きなようにしていたと。
=女なんかうるさいだけだ!やっぱ男だろ!=
少年が割り込んでくる。こっちは男同士を推奨してるようだ。まあ、夢の中で嫌というほど思い知らされたけども。
「いや、それもおかしいから」
男同士でも女同士でも本人らがいいなら勝手にすればいい。だがそれを強要するのはおかしい。ため息を吐きながら俺は突っ込んだ。
=お前、その状況でその男の事嫌いなのかよ?=
少年の方がザクを指差してくる。俺は未だザクにおんぶされたままだ。確かにこの状況だけ見れば俺たちはとても仲が良さそうに見える。
=どうなんだよ!お前は奴のこと好きじゃねえのか!?=
ザクに大事そうにおんぶされてる俺を指差し問い詰めてきた。何を思ったのかザクまで目を輝かせて俺を見つめてくる。
「ルト、俺様のこと好きなのか?」
興味津々で答えを待つ悪魔三匹。かなり重要な質問をされたかのようなこの空気に呆れる。再度ため息をついて即答した。
「好きじゃないに決まってるだろ」
きっぱりと断言する。
「ええー!そりゃねえぜルト~~!泣」
=じゃあ俺は?タイプだったりする?=
「論外」
=むぎゃー!=
=ふふ!男どもがいい気味ね~=
それぞれ反応する悪魔三匹。俺は「もういいだろ」と無理やりこの話題を終わらせて夢悪魔二人に向き直った。
「で、インキュバスだっけ。お前らなんでこんなことしたんだよ」
少女と少年はお互い目を合わせ答えを探してる。お互いが言い出しにくそうにごねていた。しびれを切らしたザクが俺の方を見て言う。
「なあ。めんどいし、こいつら消しちまおうぜ、。そうすりゃゴーストタウン現象はなくなるしさ。背後に何がいようが関係なくなるだろ?」
=えっ=
=はあ?!=
夢悪魔二匹はザクの言葉にうろたえる。そこで俺はザクの言いたいことをなんとなく察し頷くことにした。
「確かに、それもいいな」
=ええっ=
=嘘でしょ!=
「このまま放っておいて街の被害を増やすよりはここで悪魔二匹を殺した方が安上がりだ」
なるべく低く感情を込めない声で言う。すると。
=ま、待てよお!!!!=
=わ、わかったわ!!言うわよ!=
焦って悪魔たちは口を開いた。
(よしよし)
思ったとおり、少し脅しただけで口を開く気になってくれたようだ。乗せられたと気づかずに悪魔はしぶしぶ話しだす。少年と目を合わせたあと、少女が薄桃色の唇を震わせた。
=実は・・・=
「こら、サキ。知らない奴に依頼のことを話しちゃダメだろう?」
突然、ゆったりとした男の声が響いた。その声を聞いた瞬間、悪魔二匹がありえないほど震えだす。
=ああああっ=
=えッ…あ、ああ…まっ...マスター!!=
少女の方が震えながら何かを呟いた。
「マスター?」
「くるぞ!!ルト!」
ザクが身構えた。それを合図にして一つの影が小屋の後ろから出てきた。
「やあ、ルト。ここまで来ちゃうなんて思わなかったよ」
「!!!!」
小屋の後ろから出てきた影が月明かりに照らされ、次第に、見たことのある姿へと変えていく。すらりとしたスタイルに甘い笑み。腰には黒いエプロンをつけたその姿は・・・
「レイン…?!」
「こんばんは、ルト」
ニコっといつものように甘いマスクで笑いかけてくる、レインだった。
=マスター!=
=マスター!=
レインの傍に悪魔二匹が駆け寄った。レインは二匹を当たり前のように後ろに従え、腕を組む。その仕草は店の中で何度も見たレインの仕草で・・・俺は信じられない気持ちでレインを見つめた。
「どうしてここにレインがっ、まさか…」
「ああ。そうだぜ。あいつがゴーストタウンを企てた犯人だ、ルト」
ザクが身構えたまま、呟く。茶化さず淡々と事実を述べるザクの姿からは、張り詰めた緊張感がありありと伝わってきた。
(でも、目の前にいるのはいつものレインだ)
蕩けるような甘い笑みを浮かべるイケメン。その点以外はただの人間にしか見えなかった。ザクが警戒する意味がわからない。悪魔たちを従えている意味がわからない。
(だって、レインはレインだろ?)
恩人の店を任された心優しいただのバーテンのはず。
「おい何か言ってくれ…レインっ!」
すっ
「ルトごめん。ちょっと待っててくれるかな」
「!?」
言葉の続きを手で制される。いつもの癖で、思わず言葉を止めてしまった。俺の反応に満足したレインは悪魔二匹に向き直りにこっと笑う。それを見た悪魔が震え上がった。
「俺、ちゃんと言ったよね、仕事の話は他の人間にしない事って・・・なんで守れなかったの?」
=っひ=
=ご、ごめんなさい!=
怯えた様子で謝る二匹。別に今のレインはそれほど怒ってないように見えるのに、悪魔二匹はまるで化け物を前にしたかのように震え上がっている。
「躾直さないとね」
そういうとレインはおもむろにポケットから黒いムチを取り出しパシンと地面に叩きつけた。悪魔がひいい!と悲鳴を上げて逃げ出す。しかし、そのまま逃げれる訳もなく、二匹は簡単に捕らえられた。
=い、いやだー!=
=ごっごめんなさい!=
そうしてレインは、虫も殺せなさそうな優しい笑顔のまま...悪魔達に鞭をふるいだした。
(嘘だ、)
俺に料理をだしたときもそんな顔をして笑っていた。俺を助けてくれた時もこうやって笑っていた。悪魔に鞭を振るうレインも、俺が見てきたレインも全く同じ顔をしている。あの時俺といたレインは…一体何を考えていたのだろう。
(・・・怖い)
ぞくりと、レインに恐怖を覚えた。
「いやールトでよかったわ」
ザクは哀れむように悪魔二匹を見つめる。時々俺が落ちないように抱えなおしていた。それからしばらくしてのこと。
「で?どうしたらいいんだっけ?」
レインが子供を諭すように優しく尋ねる。けれど鞭を振るう手は止めないままだ。
=ひいいいいーーー!言いません!もう言いません!!=
=もう絶対知らない人には言わないですーー!!=
泣き叫ぶ悪魔二匹。
「うん、よろしい」
にこっと笑い、顔面を涙と鼻水で濡らす二匹の頭を撫でる。ムチをしまい、こっちに振り返った。俺とザクはとっさに身構えてしまう。
「はは、そんなに硬くならないで」
「...」
「でも、驚いたな。まさかルトの彼氏が悪魔だったなんて」
洗礼地でも人型を保っていたから悪魔と思わなかったよ、と無害そうな笑みを浮かべて言う。俺は真顔を崩さず首を振った。
「こいつは彼氏じゃない」
「っはは、悪魔だってのは否定しないんだ」
「...」
一人笑っているレイン。俺とザクは動きを止め緊張に体を強張らせたままレインを睨みつけていた。
「まあいいや。どうせここまで侵入されちゃ隠しようがないし。教えてあげる」
「?!」
「俺はこの馬鹿使い魔二匹を使って、この辺りの村を襲うように依頼されてたんだ。行方不明の40人の住人については心配いらない、今も生きてるから」
「!!!」
よかった、生きてるのか。レインの言葉を信じるわけじゃないが今のレインの言葉にホッとしている自分がいた。
(あの時みたいな…村が全滅するなんて事態にならなくてよかった…)
ふと、忌々しい記憶しかないあの村を思い出した。牧師になるために訪れた小さな村。俺が今回この街の人たちを助けようとしたのは、本当はこれが理由だったのかもしれない。俺が初めて悪魔に出会ったあの事件。皆死んでしまった・・・いや俺の愚かな行動で殺してしまった、あの事件の村とどこか雰囲気が似ていて他人事と思えなかったのかもしれない。
「レイン!教えてくれ!村人は、40人は、どこにいるんだ!」
「教えてもいいけど、代わりに俺を見逃してほしいな」
「…っだめだ」
「ま、そうか。ルトは牧師って立場だもんね」
その飄々とした態度に俺は戸惑いを隠せずにいた。
(どうしてそんなに余裕でいられるんだ・・・?)
使い魔二匹の夢はザクには効かない。それにここまで近づいたザクにただの人間であるレインが何か対抗できるとは思えない。
「・・・ルト」
ザクが小さく俺にだけ聞こえるように呟いた。
「噂で聞いたことがある。最近、ナイトメアと呼ばれる悪魔集団が各地で暴れてるらしい」
「ナイトメア・・・悪夢って意味だよな。どういう集団なんだ」
「簡単に言やあテロリストだな。目的は不明、ただ悪魔の能力を使った事件ばかり起こすってのはわかってる。それってこいつらのことじゃねーのか?」
「!!」
前を向き、レインを見る。バーテンダーの時と何ら変わった様子のないレイン。俺の視線を受け、ひらひらと手を振ってくる。
「じゃあ実力行使といこうか、時間もないことだし」
レインはただ笑って、その手をまっすぐ空へと向けた。
ゴゴゴゴゴゴ...
途端、森が蠢き始める。
「!?!」
何事かと辺りを見渡せば、森に散らばっていた淫夢に囚われてる住人たちがこっちに向かってきていた。まだ目が覚めていないらしく、うつろな目だ。
(この人たちを助けるには悪魔を倒すか、レイン自身を倒す必要があるってことなのか?)
「夢の力はこんなことにも使えるんだから便利だよね」
レインがそう言って手をおろすと、半ゾンビ化した住人たちが狂ったように一斉に襲い掛かってきた。まだ睡魔の音の影響がなくなったかわからないので、ザクは俺を離すこともできない。
「くそっ」
ザクは舌打ちをして地面を蹴ってゾンビ達の攻撃をかわしていく。流石のザクも両手が使えないままでは動きにくそうだった。
がぶっ!!
ザクの体にゾンビたちが噛み付いてくる。
「ザク!」
「うっせえ、かすり傷だ!問題ねえ!」
ザクはゾンビたちを蹴り上げて後方へ飛び退る。傷はすぐ塞がれ血も止まったが、やはり多勢に無勢。この量でこられては俺たちが圧倒的に不利だった。何より人間相手で加減しながら戦わないといけないのだから二倍以上の労力がいる。ザクの額に汗が浮いていた。
「ったく、キリがねえっ」
「ザク!俺をおろせ!」
「お前俺様からはなれたら眠っちまうだろうが!」
「いいから早く!このままじゃ共倒れだ!」
「だがっ」
「俺に考えがある!」
「ああもーっ!わかったよ!!あとから文句言うなよ!!」
俺の勢いにおされ、言うことを聞いてくれた。俺は久しぶりの大地に降り立ち、一瞬ふらついたがすぐに体勢を整える。そして走り出した。
「おい!どこ行く!ルト!」
「レインを説得する!」
「なあっ?!」
「お前は好きに動いていいからゾンビたちを引き付けてくれ!ただし、誰も殺すなよ!」
「無茶言うな!どんだけいると思ってんだ…って聞け―!」
背中に聞こえてくる声を無視して、小屋の前に立つレインに向かい走っていく。俺が走ってくるのを見たレインは、何を思ったのか自分から近づいてきた。
「やあ、ルト」
「はあ、はあっ…レイン!」
「彼強いね」
つられて森の方を見ると、ザクが暴れまわっているのが見えた。
(ザク・・・)
体を血で真っ赤に染めてる。それが奴のなのかゾンビのものなのか、どちらにしろ血で染まる姿は悪魔そのものだった。
「はあ、俺もあれくらい強い悪魔が欲しいな」
まるでペットの話をするかのように気楽な調子で言う。こんな地獄みたいな状況でよく笑えると思う。
「レイン、今すぐ住人を開放しろ!関係ないやつを巻き込むな!」
「ルトが俺を見逃してくれれば解放するって」
「それは無理だ。お前は今回の犯人として教会本部につき出す」
「はは、それは嫌だなあ」
「レイン。あんたの事信じてたのに…どうしてなんだ」
レインの変わりように、やるせなさがこみ上げてきた。自然と言葉が溢れてくる。今までのレインの優しさを思い出し、唇は震えていた。
「最初から俺を騙していたのか?あの店の話、マスターのことも嘘だったのかよ…」
「・・・」
一瞬、レインの顔から笑みが消える。すぐにまた元に戻ったが、ほんの一瞬レインの瞳に動揺の色が見えたのは確かだ。
「レイン…?」
「どうかな。でもこれが終わったらこの街は出て行くよ。依頼は終わったし」
ドガアアン!!
「!!!?」
「ほら、これで全て完了だ」
森よりもさらに奥。俺たちが来た方向(あっちは街の方だ)から何かの爆発音が聞こえてくる。それからすぐ黒い煙があがってきた。
「まさかっ・・・」
「俺は陽動。住人を連れ出し計画の邪魔になりそうな奴を街から連れ出す・・・これが今回の依頼内容だ」
計画に邪魔になりそうな奴?まさか俺らのことか?!
(じゃあ、俺に接触してきたのも、全部全部、仕事のためだった・・・?)
レインはただの優しいバーテンじゃなかった。あの笑みも、言葉も嘘で。犯罪者、いや、俺たちの敵だったんだ。ショックを受けていると
「さて、飽きてきたし少し遊ぼうか」
レインが怪しい笑みを浮かべる。急に背後から手が伸びてきた。
「!!」
=恨むなよ、牧師=
二匹のインキュバスたちだった。俺がその腕を引き剥がそうとしたその時――レインに顎を掴まれた。
「!!?」
「俺、基本人間に興味はないんだけどね。それが誰かの“もの”だと思うと、興味が出てくるんだ」
「は?んっ…くっ!」
言葉の意味を聞こうと口を開けたら、何かの瓶を口に押し当てられた。
「!!」
冷たい液体が流れ込んでくる。液体は冷たいのに、液体と触れた部分は熱くなった。とっさにこれは飲んではいけないと判断して吐き出そうとするが
「~~っ、うっんん!」
口を塞がれついでに鼻も塞がれてしまい息ができなくなる。
「飲めば楽になる」
そう言ってレインは瓶のすべてを流し込み、笑いかけてきた。魚料理を出してくれたあの時と同じ人の良さそうな笑顔で。しかしやっと気づけた。瞳だ。
(冷たい、目…)
俺はその氷のように冷たい瞳を見つめながら
ゴクリ
瓶の中身を飲み干した。
目的の小屋を数百メートル先に見つけザクは足を止める。森と川を挟んだ先にある小屋には人影がなくパッと見は誰もいなさそうだった。
「うっし、乗り込む...と言いたいがルトを一定距離離すと危険だし...これがいいな」
ザクは片膝をついて背中を目の前に出してきた。両手を後ろに回し、ちょいちょいと手招きしてくる。
「え」
え、この姿勢ってまさか・・・ええ?!おんぶ、おんぶするってこと?!
「っむ、むり!拒否する!」
「はよ乗れ」
「いやだ!」
「なんでだよ、姫抱っこはよくておんぶは嫌なのか~?」
「姫抱きもいやだし、おんぶも嫌だってー!わああっー聞けばかこのやろっ!!」
無理やり腕をひっぱられ奴の背中に転がり込む。
「わぶっ」
顔面を奴の背中にぶつけ悲鳴が途切れた。バランスを崩した俺はとっさに目の前の首に腕を回す。
グンッ
その瞬間足が地面を離れ、浮遊感が体を襲った。
「ほい、できた」
「!!!」
軽々とおんぶされた。その事実に衝撃を受ける。
「...」
「いや、なんでそんな犯されたみたいな被害者面してんだよ。おんぶぐらいで情けねえなあ」
「...~~っ早く行けバカっ!!」
「はいはい、わーったよ!」
自分的には全然納得できないがこれが一番なのは理解できるので何もいえない。
(くそっ・・・自分の無力さがむかつく!)
八つ当たりでザクの髪の毛を引っ張った。流石に毛根は頑丈にできていないらしく痛がっていた。
ッダ!!
ザクは小屋と森の間にあった川をジャンプで飛び越え一瞬で距離を詰めた。あまりの速さで目が追いつかない。小屋の前に音を立てて着地すると小屋から何かが出てくる。
=っくー!!てめえオレの夢でよくも!!=
「!!」
夢の中で見たさっきの派手な悪魔が飛び出してくる、かと思いきや...中から出てきたのは可愛らしい男の子だった。でもどこかあの男の面影があるし、声はそのままだった。体は子供だが声は大人。さっき本体を見ている分、かなり違和感がある。俺をおんぶしたままザクは少年(悪魔)に近づいていく。
=な!なんだ!やるってのか!?=
「うっせえな雑魚が」
ファイティングポースを取った少年にゲンコツをお見舞いする。ザクの拳なのでそれなりに痛いはず。少年の目がうるうると涙ぐんできた。
=いっでええ~~~~~!!!=
「おい、親玉はどこだ」
=!!=
「素直に言やあ、拳骨十回で済ましてやる」
=ひい!!=
「待て、ザク!親玉ってどういうことだよ!こいつらがゴーストタウンの犯人じゃないのか?」
「こいつらは使役されてるだけの下級悪魔。それなりに器用だが程度はしれてる。この土地にいるだけで体が縮んじまってるのがいい証拠だ」
確かに夢の中のときとは違いインキュバスの体が幼くなってる。(これが洗礼地の影響か?)改めて洗礼の力に感心してしまった。今度から少しは牧師たちの言葉に耳を傾けてみようかな、なんて思ったり。
「そもそもこの雑魚にゴーストタウンを作りあげる脳みそなんてねえだろうからな。悪知恵がきく主人が裏にいるはずだ」
ザクは自らの膝をぽかぽかと殴っている少年を見下ろし吐き捨てる。半泣きで攻撃されても全く怖くない。
=ちょっと、早速何やられてんの、だっさ=
「?!」
夢の中で聞いたもうひとつの声の主が小屋から顔を出す。やはり幼い少女の姿だったが、声は大人の女性のものでやはりちぐはぐだった。
=こいつらだよ!オレの夢をやぶったやつ!=
少年が泣き止み、少女の横に走っていく。
=へえ、結構イケメンじゃない=
少女が少女ならざる色っぽい動きでザクの足元に近づいてくる。そして上目遣いで見上げてきた。人によってはそそられる状況だろう。
(ざ、ザク・・・)
俺は一瞬ザクの守備範囲を恐れたが
「・・・」
ザクの横顔を見て安心した。どうやら幼女は範囲外のようだ。よかったよかった。
=やっぱダメね、オスなんてみんなそう。見る目がないただの獣なんだから=
少女が呆れている。俺としても「オスは獣だ」という言葉には大きく賛同したい気分だ。内心頷いているとチラリと少女が目を合わせてくる。
=女の子が一番よね=
「え、女なのに女が好きなのか」
=当たり前じゃない、あなたもでしょ=
「いや違うけど」
俺は別に男が好きなわけじゃない。男女問わず距離を置いてるが、言い寄ってくるのが男ばかりというだけだ。
=あっそ、オスなんてどうでもいいわ=
「...」
聞いといてそれはないだろう、と内心呟く。でもわかった気がする。なんで森に入った瞬間ゾンビが同性同士で絡み始めたのか。それは、淫夢を操っていたこいつらの影響だったんだ。詳しい理由はわからないが森の中に街の人間を誘い込むまでがこのインキュバス達の任務だったのだろう。で、それを終えた人間を使って彼女たちは自分らの好きなようにしていたと。
=女なんかうるさいだけだ!やっぱ男だろ!=
少年が割り込んでくる。こっちは男同士を推奨してるようだ。まあ、夢の中で嫌というほど思い知らされたけども。
「いや、それもおかしいから」
男同士でも女同士でも本人らがいいなら勝手にすればいい。だがそれを強要するのはおかしい。ため息を吐きながら俺は突っ込んだ。
=お前、その状況でその男の事嫌いなのかよ?=
少年の方がザクを指差してくる。俺は未だザクにおんぶされたままだ。確かにこの状況だけ見れば俺たちはとても仲が良さそうに見える。
=どうなんだよ!お前は奴のこと好きじゃねえのか!?=
ザクに大事そうにおんぶされてる俺を指差し問い詰めてきた。何を思ったのかザクまで目を輝かせて俺を見つめてくる。
「ルト、俺様のこと好きなのか?」
興味津々で答えを待つ悪魔三匹。かなり重要な質問をされたかのようなこの空気に呆れる。再度ため息をついて即答した。
「好きじゃないに決まってるだろ」
きっぱりと断言する。
「ええー!そりゃねえぜルト~~!泣」
=じゃあ俺は?タイプだったりする?=
「論外」
=むぎゃー!=
=ふふ!男どもがいい気味ね~=
それぞれ反応する悪魔三匹。俺は「もういいだろ」と無理やりこの話題を終わらせて夢悪魔二人に向き直った。
「で、インキュバスだっけ。お前らなんでこんなことしたんだよ」
少女と少年はお互い目を合わせ答えを探してる。お互いが言い出しにくそうにごねていた。しびれを切らしたザクが俺の方を見て言う。
「なあ。めんどいし、こいつら消しちまおうぜ、。そうすりゃゴーストタウン現象はなくなるしさ。背後に何がいようが関係なくなるだろ?」
=えっ=
=はあ?!=
夢悪魔二匹はザクの言葉にうろたえる。そこで俺はザクの言いたいことをなんとなく察し頷くことにした。
「確かに、それもいいな」
=ええっ=
=嘘でしょ!=
「このまま放っておいて街の被害を増やすよりはここで悪魔二匹を殺した方が安上がりだ」
なるべく低く感情を込めない声で言う。すると。
=ま、待てよお!!!!=
=わ、わかったわ!!言うわよ!=
焦って悪魔たちは口を開いた。
(よしよし)
思ったとおり、少し脅しただけで口を開く気になってくれたようだ。乗せられたと気づかずに悪魔はしぶしぶ話しだす。少年と目を合わせたあと、少女が薄桃色の唇を震わせた。
=実は・・・=
「こら、サキ。知らない奴に依頼のことを話しちゃダメだろう?」
突然、ゆったりとした男の声が響いた。その声を聞いた瞬間、悪魔二匹がありえないほど震えだす。
=ああああっ=
=えッ…あ、ああ…まっ...マスター!!=
少女の方が震えながら何かを呟いた。
「マスター?」
「くるぞ!!ルト!」
ザクが身構えた。それを合図にして一つの影が小屋の後ろから出てきた。
「やあ、ルト。ここまで来ちゃうなんて思わなかったよ」
「!!!!」
小屋の後ろから出てきた影が月明かりに照らされ、次第に、見たことのある姿へと変えていく。すらりとしたスタイルに甘い笑み。腰には黒いエプロンをつけたその姿は・・・
「レイン…?!」
「こんばんは、ルト」
ニコっといつものように甘いマスクで笑いかけてくる、レインだった。
=マスター!=
=マスター!=
レインの傍に悪魔二匹が駆け寄った。レインは二匹を当たり前のように後ろに従え、腕を組む。その仕草は店の中で何度も見たレインの仕草で・・・俺は信じられない気持ちでレインを見つめた。
「どうしてここにレインがっ、まさか…」
「ああ。そうだぜ。あいつがゴーストタウンを企てた犯人だ、ルト」
ザクが身構えたまま、呟く。茶化さず淡々と事実を述べるザクの姿からは、張り詰めた緊張感がありありと伝わってきた。
(でも、目の前にいるのはいつものレインだ)
蕩けるような甘い笑みを浮かべるイケメン。その点以外はただの人間にしか見えなかった。ザクが警戒する意味がわからない。悪魔たちを従えている意味がわからない。
(だって、レインはレインだろ?)
恩人の店を任された心優しいただのバーテンのはず。
「おい何か言ってくれ…レインっ!」
すっ
「ルトごめん。ちょっと待っててくれるかな」
「!?」
言葉の続きを手で制される。いつもの癖で、思わず言葉を止めてしまった。俺の反応に満足したレインは悪魔二匹に向き直りにこっと笑う。それを見た悪魔が震え上がった。
「俺、ちゃんと言ったよね、仕事の話は他の人間にしない事って・・・なんで守れなかったの?」
=っひ=
=ご、ごめんなさい!=
怯えた様子で謝る二匹。別に今のレインはそれほど怒ってないように見えるのに、悪魔二匹はまるで化け物を前にしたかのように震え上がっている。
「躾直さないとね」
そういうとレインはおもむろにポケットから黒いムチを取り出しパシンと地面に叩きつけた。悪魔がひいい!と悲鳴を上げて逃げ出す。しかし、そのまま逃げれる訳もなく、二匹は簡単に捕らえられた。
=い、いやだー!=
=ごっごめんなさい!=
そうしてレインは、虫も殺せなさそうな優しい笑顔のまま...悪魔達に鞭をふるいだした。
(嘘だ、)
俺に料理をだしたときもそんな顔をして笑っていた。俺を助けてくれた時もこうやって笑っていた。悪魔に鞭を振るうレインも、俺が見てきたレインも全く同じ顔をしている。あの時俺といたレインは…一体何を考えていたのだろう。
(・・・怖い)
ぞくりと、レインに恐怖を覚えた。
「いやールトでよかったわ」
ザクは哀れむように悪魔二匹を見つめる。時々俺が落ちないように抱えなおしていた。それからしばらくしてのこと。
「で?どうしたらいいんだっけ?」
レインが子供を諭すように優しく尋ねる。けれど鞭を振るう手は止めないままだ。
=ひいいいいーーー!言いません!もう言いません!!=
=もう絶対知らない人には言わないですーー!!=
泣き叫ぶ悪魔二匹。
「うん、よろしい」
にこっと笑い、顔面を涙と鼻水で濡らす二匹の頭を撫でる。ムチをしまい、こっちに振り返った。俺とザクはとっさに身構えてしまう。
「はは、そんなに硬くならないで」
「...」
「でも、驚いたな。まさかルトの彼氏が悪魔だったなんて」
洗礼地でも人型を保っていたから悪魔と思わなかったよ、と無害そうな笑みを浮かべて言う。俺は真顔を崩さず首を振った。
「こいつは彼氏じゃない」
「っはは、悪魔だってのは否定しないんだ」
「...」
一人笑っているレイン。俺とザクは動きを止め緊張に体を強張らせたままレインを睨みつけていた。
「まあいいや。どうせここまで侵入されちゃ隠しようがないし。教えてあげる」
「?!」
「俺はこの馬鹿使い魔二匹を使って、この辺りの村を襲うように依頼されてたんだ。行方不明の40人の住人については心配いらない、今も生きてるから」
「!!!」
よかった、生きてるのか。レインの言葉を信じるわけじゃないが今のレインの言葉にホッとしている自分がいた。
(あの時みたいな…村が全滅するなんて事態にならなくてよかった…)
ふと、忌々しい記憶しかないあの村を思い出した。牧師になるために訪れた小さな村。俺が今回この街の人たちを助けようとしたのは、本当はこれが理由だったのかもしれない。俺が初めて悪魔に出会ったあの事件。皆死んでしまった・・・いや俺の愚かな行動で殺してしまった、あの事件の村とどこか雰囲気が似ていて他人事と思えなかったのかもしれない。
「レイン!教えてくれ!村人は、40人は、どこにいるんだ!」
「教えてもいいけど、代わりに俺を見逃してほしいな」
「…っだめだ」
「ま、そうか。ルトは牧師って立場だもんね」
その飄々とした態度に俺は戸惑いを隠せずにいた。
(どうしてそんなに余裕でいられるんだ・・・?)
使い魔二匹の夢はザクには効かない。それにここまで近づいたザクにただの人間であるレインが何か対抗できるとは思えない。
「・・・ルト」
ザクが小さく俺にだけ聞こえるように呟いた。
「噂で聞いたことがある。最近、ナイトメアと呼ばれる悪魔集団が各地で暴れてるらしい」
「ナイトメア・・・悪夢って意味だよな。どういう集団なんだ」
「簡単に言やあテロリストだな。目的は不明、ただ悪魔の能力を使った事件ばかり起こすってのはわかってる。それってこいつらのことじゃねーのか?」
「!!」
前を向き、レインを見る。バーテンダーの時と何ら変わった様子のないレイン。俺の視線を受け、ひらひらと手を振ってくる。
「じゃあ実力行使といこうか、時間もないことだし」
レインはただ笑って、その手をまっすぐ空へと向けた。
ゴゴゴゴゴゴ...
途端、森が蠢き始める。
「!?!」
何事かと辺りを見渡せば、森に散らばっていた淫夢に囚われてる住人たちがこっちに向かってきていた。まだ目が覚めていないらしく、うつろな目だ。
(この人たちを助けるには悪魔を倒すか、レイン自身を倒す必要があるってことなのか?)
「夢の力はこんなことにも使えるんだから便利だよね」
レインがそう言って手をおろすと、半ゾンビ化した住人たちが狂ったように一斉に襲い掛かってきた。まだ睡魔の音の影響がなくなったかわからないので、ザクは俺を離すこともできない。
「くそっ」
ザクは舌打ちをして地面を蹴ってゾンビ達の攻撃をかわしていく。流石のザクも両手が使えないままでは動きにくそうだった。
がぶっ!!
ザクの体にゾンビたちが噛み付いてくる。
「ザク!」
「うっせえ、かすり傷だ!問題ねえ!」
ザクはゾンビたちを蹴り上げて後方へ飛び退る。傷はすぐ塞がれ血も止まったが、やはり多勢に無勢。この量でこられては俺たちが圧倒的に不利だった。何より人間相手で加減しながら戦わないといけないのだから二倍以上の労力がいる。ザクの額に汗が浮いていた。
「ったく、キリがねえっ」
「ザク!俺をおろせ!」
「お前俺様からはなれたら眠っちまうだろうが!」
「いいから早く!このままじゃ共倒れだ!」
「だがっ」
「俺に考えがある!」
「ああもーっ!わかったよ!!あとから文句言うなよ!!」
俺の勢いにおされ、言うことを聞いてくれた。俺は久しぶりの大地に降り立ち、一瞬ふらついたがすぐに体勢を整える。そして走り出した。
「おい!どこ行く!ルト!」
「レインを説得する!」
「なあっ?!」
「お前は好きに動いていいからゾンビたちを引き付けてくれ!ただし、誰も殺すなよ!」
「無茶言うな!どんだけいると思ってんだ…って聞け―!」
背中に聞こえてくる声を無視して、小屋の前に立つレインに向かい走っていく。俺が走ってくるのを見たレインは、何を思ったのか自分から近づいてきた。
「やあ、ルト」
「はあ、はあっ…レイン!」
「彼強いね」
つられて森の方を見ると、ザクが暴れまわっているのが見えた。
(ザク・・・)
体を血で真っ赤に染めてる。それが奴のなのかゾンビのものなのか、どちらにしろ血で染まる姿は悪魔そのものだった。
「はあ、俺もあれくらい強い悪魔が欲しいな」
まるでペットの話をするかのように気楽な調子で言う。こんな地獄みたいな状況でよく笑えると思う。
「レイン、今すぐ住人を開放しろ!関係ないやつを巻き込むな!」
「ルトが俺を見逃してくれれば解放するって」
「それは無理だ。お前は今回の犯人として教会本部につき出す」
「はは、それは嫌だなあ」
「レイン。あんたの事信じてたのに…どうしてなんだ」
レインの変わりように、やるせなさがこみ上げてきた。自然と言葉が溢れてくる。今までのレインの優しさを思い出し、唇は震えていた。
「最初から俺を騙していたのか?あの店の話、マスターのことも嘘だったのかよ…」
「・・・」
一瞬、レインの顔から笑みが消える。すぐにまた元に戻ったが、ほんの一瞬レインの瞳に動揺の色が見えたのは確かだ。
「レイン…?」
「どうかな。でもこれが終わったらこの街は出て行くよ。依頼は終わったし」
ドガアアン!!
「!!!?」
「ほら、これで全て完了だ」
森よりもさらに奥。俺たちが来た方向(あっちは街の方だ)から何かの爆発音が聞こえてくる。それからすぐ黒い煙があがってきた。
「まさかっ・・・」
「俺は陽動。住人を連れ出し計画の邪魔になりそうな奴を街から連れ出す・・・これが今回の依頼内容だ」
計画に邪魔になりそうな奴?まさか俺らのことか?!
(じゃあ、俺に接触してきたのも、全部全部、仕事のためだった・・・?)
レインはただの優しいバーテンじゃなかった。あの笑みも、言葉も嘘で。犯罪者、いや、俺たちの敵だったんだ。ショックを受けていると
「さて、飽きてきたし少し遊ぼうか」
レインが怪しい笑みを浮かべる。急に背後から手が伸びてきた。
「!!」
=恨むなよ、牧師=
二匹のインキュバスたちだった。俺がその腕を引き剥がそうとしたその時――レインに顎を掴まれた。
「!!?」
「俺、基本人間に興味はないんだけどね。それが誰かの“もの”だと思うと、興味が出てくるんだ」
「は?んっ…くっ!」
言葉の意味を聞こうと口を開けたら、何かの瓶を口に押し当てられた。
「!!」
冷たい液体が流れ込んでくる。液体は冷たいのに、液体と触れた部分は熱くなった。とっさにこれは飲んではいけないと判断して吐き出そうとするが
「~~っ、うっんん!」
口を塞がれついでに鼻も塞がれてしまい息ができなくなる。
「飲めば楽になる」
そう言ってレインは瓶のすべてを流し込み、笑いかけてきた。魚料理を出してくれたあの時と同じ人の良さそうな笑顔で。しかしやっと気づけた。瞳だ。
(冷たい、目…)
俺はその氷のように冷たい瞳を見つめながら
ゴクリ
瓶の中身を飲み干した。
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