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第十四章「海賊船と呪いの秘宝」
★さらわれた牧師サマ
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その日の夜
「なあなあルト~」
「くっつくな鬱陶しい」
夜ご飯を終え食器を片付けていたら後ろからザクが抱きついてきた。腰がぴったりくっついているので色々伝わってくる。
「今日さ~やってみたい事あるんだけどさ~」
「黙れ色魔」
「ひどっ」
手が塞がってるので口で反撃に出る。まあ、これぐらいで引くほど物分りのいい悪魔ではない。けけけといつものように笑って腰を抱く力を強くするザク。
「ルト~何怒ってるんだよー」
「…べつに」
「ま、いいけど俺様シャワー浴びてくるわ」
「ん」
泡のついた手を水で流しザクの方をちらっと見る。頭をかきながら廊下に消えていくザク。その後ろ姿に抱きつきたい衝動を押し込んで、ため息を水音でかき消した。
「…はあ」
洗い終わった皿を棚に置いていく。廊下からシャワーの音と下手なのか微妙な鼻歌が聞こえてきた。
カタン
「?」
ふと、窓の外から何か落ちるような音がした。窓に固いものがあたった音だろうか。
(戸締りはしてあるはず…)
「ってあれ?!なんで窓があいてるんだ?」
キッチンの窓が半分ぐらいあいていた。帰宅した時に一通り戸締りをしたのにどうして。変な感じがしつつ、
(ま、ザクが暑くて開けたのかもな)
特には気にせず窓を閉じようとした。
「お前が例の牧師だな?」
「え…?」
背後から男の声がしたと思ったら、次の瞬間、口を布のようなもので塞がれる。
(やばい!これ、薬品っぽい匂いが…っ!)
目眩がひどくなり吐き気がする。直に頭がぼやーっとして眠くなってきた。
(ダメだ、起きろ…!抵抗しないと!!)
「むぐぐっ?!んー!!」
「さあ、来てもらおうか、牧師サマ」
そんな声を聞きつつ俺の意識は薄れていった。
***
バシャアッ
「ほらほらお嬢ちゃん」
「いつまで寝てるんでチュか~」
「うっ…あ…?」
べっとりした何かを体にかけられた。
(これは…海水か?)
潮の香りとベタベタの感触。その刺激で意識が覚醒する。手が背中側で拘束されていて動きにくい。足は拘束されてなかった為なんとか自力で上半身を起こす。
「お、おきたおきた」
「あらあら起きちゃったか~寝てる姿も可愛かったのにな~」
目の前に男が二人たっていた。二人共ニヤニヤと下品な笑いを貼り付けて見下ろしてくる。気持ち悪い。嫌悪を込めて睨みつけた。
「お前ら誰だ」
「ガハハ!!誰でショーか??」
「まあ味方ではないでチュよ~お嬢ちゃ~ん」
「俺は男だ!」
「そりゃ知ってるさ」
「脱がしたの俺らだし?」
「え…うわ!」
下を見ると、自分の裸が目に入り一気に寒さを感じ始める。
(どうして俺裸に…??あ、そうだ。俺キッチンで誰かに襲われて気を失ったんだ)
焦りを抑えながら必死に頭を回した。周囲の木材の壁には窓がなく今が昼なのか夜なのか…ここがどこなのかもわからない。
(キッチンで倒れてからどれぐらい経ったんだ)
窓以外には情報を得られそうな物は部屋になかった。狭い空間に閉じ込められてるのだけはわかったが。出入り口は男たちの後ろに一つ、拘束も手だけだし、どこかに繋がれてるわけでもない。最悪の状況ではなさそうだ。
(こいつらをなんとかできれば脱出できる)
俺が黙ってるのを見て男達は感心するように口笛を吹いた。
「へえ、思ったより落ち着いてんなあ」
「危ないことには慣れっこなんだ?牧師業も大変でチュね~~」
「うるさい。ここはどこだ」
「どこだろう?俺らも知らないんだ~ガハハハ!」
「…」
「んなことより、どうせ裸になったんだしちょっと発散させてくれないか?」
男の一人が近づいてきた。
「やめろ…!」
とっさに体を引くが、男が距離を詰めるようにまた一歩近づいてくる。隣の男も便乗して近づいてきた。逃げようにもすぐに壁にあたって逃げ場はなくなる。こんな狭い部屋で逃げ回るのは不可能だ。
「く、くるな!」
「ガハハ!怖くない怖くない」
「ちょーっとだけ俺らの悩み?煩悩??牧師さんに解消してほしいだけだって~」
「なんで俺が…!勝手に苦しんでろ!」
ズボンの前を開けて男二人がこっちに手を伸ばしてくる。男たちのそれは弾けそうなぐらい大きくなっていて見てるだけで吐き気がした。
(や、やばい…!このままじゃ…!)
目を瞑り、深呼吸をする。
「…わかった」
「お?」
「ん~?」
壁から離れ膝立ちになる。ニコッと笑いかけ、片方の男の前に自分から近づいた。
「相手してやる」
「ほう??」
「ははは~乗り気じゃん!牧師のくせにエロエロなんでチュね~」
「…」
男が俺の頭を掴み引き寄せてきた。口の前に近づいてきたそれに、唇をツンツンとつつかれる。洗われてないのか鼻をつくような臭いがする。胃液がこみ上げてくるがなんとか飲み込んで…口を開けた。ぬるっと口内に入ってくる。
「歯立てんなよ」
「んぐっ…うっ…っ」
最初から乱暴だった。遠慮なく奥を突かれ息も吸えず、あまりの苦しさに涙が溜まる。俺のことなど何も気にしていない動きだった。今までザクのを舐めたことはあったがこんなに苦しいことはなかった。
(なんだかんだ無理やりっぽいようで…俺のこと気遣いながらやってくれてたんだな…)
無理やりな時点でアウトだけども。そんなどうでもいいことを考えながら必死に目の前の状況を考えないようにした。上から聞こえる気持ちよさげなハッハッという息。喉を突いてくる固い感覚。口の中に広がる匂い。少しでも気を抜けば吐いてしまいそうだ。
「ちょっとっ!ちょっと!俺は~?」
「ガハハッお前は外で見張ってろ。あーきもち」
「はあ?お前だけずりい!」
「この前おめーの賭け金払わされただろ!」
「っち!お嬢ちゃん、次は俺もお願いしまチュね~?」
片方の男が俺の体を撫でてくる。その感覚に鳥肌が立った。
「んん…っ」
手はすぐに離れ男は部屋から出ていった。鍵は特にかかってないようで、ただ前に押して扉を開けている。
(俺一人を監禁するのに鍵は必要ないって事か。完全に舐められてるな…)
口の中のにできるだけ舌をあてないようにしつつ笑いを抑えた。
(だけど、だからこそ、勝機がある)
「っ…は、そろそろ、イクぞっ」
「!!」
抜け!と目で訴えても意味はなく、腰を使って喉を強く突かれた。そのまま喉の奥でそれが大きくなり弾ける。
ドクッドクッッ
張り付くようなその粘りのある液体が喉にあたり、そして胃に流れていった。今すぐ吐き出したい。口の中を洗いたい。
(くそっ最悪だ…!死ね!)
内心呪いながら大人しく耐えていると、やっと男が腰を引いた。その瞬間床に倒れこみ咽せ込む。
「うえっ、っぐ、ゴホごほ!うっ、げほっ…はっ、はあ…」
「ガハハ!気持ちよかったぞお嬢ちゃん」
「ごほっ…ま、だだろ」
「え?ああ、そうだな?」
男は二ヤっと笑って俺の体を掴み、後ろに向かせてきた。
「ま、て…」
「ん?」
「あいつが、ゴホッ、このままだと、邪魔してくるかも…」
「あ?外で待機してるあいつか。確かにな、聞き耳立ててるだろーしなあ」
そう呟いて扉の方を見る男。口でしてやった事で俺への警戒心が減っている。いや、達したばかりでアホなだけか。俺は追い打ちをかけるように男の胸に寄りかかった。下を向いて甘えてるように呟く。
「俺はあんたとなら…してやってもいい…と思った。あいつは嫌だけど」
「ガハハ、可愛い牧師サマだなあ」
そう言って俺から手を離し立ち上がる男。俺に背を向けて扉に向かおうとする。
「わかったぜ、あいつを少しどこかに…」
(いまだっ!!)
ドン!!!
「どわあ!?」
無防備な男の背中に体当たりをする。体格差はあるが達したばかりのヘロヘロ相手には十分な威力だった。間抜けな声をあげて前のめりに倒れかけた男に足払いをして転ばせる。この動きは昼間イーグルがやっていたのだが、軽々と自分より体の大きい男を倒していたのを見て、これなら俺にもできるかもと思ったのだ。
(思ったとおり、うまくいった!)
「ぐえっ?!」
無様に地面に倒れこんだ男を踏みつけ、そのまま扉に走る。手は使えないから肘でノブを回し扉を開けた。
バタン!!
「ん?どうした、もう終わったのかよ?」
外の男は突然扉が開いて驚いている。俺だと思ってないらしい。怪しむ様子はない。俺はすぐには飛び出さず不審がった奴が扉の前に出るまで待つ。
「おい、返事ぐらい…あれ?!ぐふ!!」
そのムカつく顔に頭突きをかましてやって、俺は部屋を飛び出した。部屋を出ると左右の道があって、勘で右に行く。
たたたっ
両手が塞がれてるせいで全速力とは言えないができる限りの速さで走った。
「はあ、はあ…一体ここはどこなんだ??」
廊下のような通路は延々と続くかのように長い。扉が一定の間隔であるからここは大きな建物の中なのだろうか。すべて木材でできているのに何故かどこにも窓がない。
(地下なのか?)
――あっちだ!――
「?!」
後方からそんな声が聞こえた気がした。やばい、もう追っ手がきたのか。急いで地下から抜け出さないと。ここがどんな所であっても、奴らのエリアから抜けさえすれば逃げられるはず。
「あ!」
廊下がやっと終わり階段が見えた。それをのぼり、目の前に現れた木の扉を蹴り開ける。
(よし、これで外にいける!!)
ばんっ!!
扉があいた先に見えた世界は、信じられないものだった。
「なっ……うそ、だ」
まだ満月にはなりきれてない欠けた月。それだけが唯一の灯りで、その下には、暗く深い黒色の海が広がっていた。
「どうして…海…?!」
ヨロヨロと歩き海に近づく。といっても手すりのせいで海には飛び込めない。振り返って扉の方を見た。まだ人の影はいないが、じきにここにも奴らが来るだろう。
「ここは船の上だったのか…」
部屋や窓が木で出来ていて窓がなかったのはそのせいだったんだ。地下と思っていた先程の狭い部屋は船の中で、ここは甲板。逃げようにも夜の海に両手を縛られた状態で潜るのは自殺行為だ。
(こんなん、逃げようにも…)
そこでやっと理解した。だから拘束が少なかったのだと。舐められていたんじゃなくて、元々逃げ出せない環境だから必要なかったんだ。一気に絶望が広がる。
(どうしよう…ザク…!)
不安に押しつぶされそうになっていた時だった。
カツン
「やあ、ルト。元気だった?」
「!」
俺は耳を疑った。慌てて振り返る。後方に一人の男が立っていた。
「なんで…お前が、ここに…!」
俺は、信じられない気持ちでその男を見た。いつもの優しい笑顔に、シンプルだけどどこか品のある服。先程の絡んできた男二人とは雰囲気が全く違う。
「レイン…!」
俺が名前を呼ぶと、男は嬉しそうに頷いた。
「久しぶり、ルト」
そう言って一歩近づいてきた。俺は無意識に後退っていた。手すりのせいで逃げる事はできないが。
「そんな怯えないで。取って食ったりしないさ」
だからおいで、と手招かれる。優しくて心が温かくなる笑顔だった。まるで家族に向けるような、恋人に向けるような甘い笑顔。その顔を見ていると、今までやられた事が全て嘘だったんじゃないかと思えてしまう。
(レイン…)
バーで会って、助けてくれて、料理を食べさせてくれて…それからも悪魔とかのゴタゴタはなくて、レインはいい友人のままで。それで今回も俺を助けに来てくれたんじゃないかって。そう思ってしまいたくなるぐらい、レインには邪気を感じられなかった。それが悔しくて、期待する自分に鞭を打つように唇を噛んだ。
「ほら、上着きて」
「っ…!」
いつの間にか目の前にいたレインが上着を肩にかけてきた。そうだ。今裸だったんだ。今更恥ずかしくなってレインから目を背ける。
「なんで、レインが…。まさか、俺をここに連れてきたのって」
「俺じゃない」
「え?」
「俺は少し仕事で用があってここの船にいるだけだから」
「仕事…」
レインは悪魔を使って散々問題を起こしてきた。そのレインがいる船には一体何があるんだ。
(絶対やばい船がこれ…!!)
そもそも俺を拐ってあんなことまでしてくる奴らだし異常なのは確定してるが。
「そんな怖い顔しないで。ルトに危害を加える気はないから」
「嘘だ」
「はは、信用ないな」
レインは何故か楽しそうに笑っていた。それを睨みつけながら俺は口を開く。
「レインが俺をさらった犯人じゃないなら、ここから抜け出すのを手伝ってくれ」
「え、俺に頼むの?」
「ああ。レインは奴らと仲間じゃないんだろ」
「うん仲間じゃない。でも俺に任せたらもっと酷い場所に連れてかれるかもよ?」
「そんな事したら恨む」
「はは。冗談だよ。なんだかんだ俺を信じてくれて嬉しいよ」
「じゃあ…」
「かわいいルト。でもごめん」
よしよしと撫でてくる。
「その期待にはそえない」
「なっ…!」
「おーい、そこにいるのは誰だー?」
レインの背後、つまり甲板の唯一の扉から声が聞こえた。その扉から、見たことのある男が出てくる。月に照らされ薄く光る灰色の髪、着崩された服。そして内臓にまで響くような低い声。
「お、起きたか、ルト」
「あんたは…イーグル?!」
ようっと手を振ってイーグルは俺たちに歩み寄ってきた。まるで友人と合流したかのような気軽さだが、俺は聞き逃さなかった。
(起きたのか、って言ったよな)
ということはつまり。
「…イーグルが俺を拐ったのか」
「おーご名答」
にししと笑うイーグル。悪気のない悪い笑顔だった。
「といっても実際に拐ったのは俺じゃなくて下っ端だけどなー」
「なんでこんな事を…昼間は助けてくれたのに…!」
「そりゃ昼間のはルトを探るためにやった事だしなー」
「?!」
イーグルの後ろから見覚えのある船乗りが顔を出した。
「え…うそ、お前ら…!」
ぞろぞろと現れた男たちは包帯を巻いていた。屈強な筋肉をもつ男三人。昼間俺とアリスに絡んできた奴らだった。その顔を見た瞬間全てを理解する。
(くそっ全部嵌められたって事か…!)
昼間の出来事は全てここに俺を追い込むための作戦だったんだ。
「イーグル!騙してたのか…!」
「んー。騙したつもりはないぞ。見えてる都合のいい情報だけで判断したルトが悪い」
さらりと言い返されぐうの音も出ない。確かに言う通りだ。助けられたと勝手に判断していたが、イーグルの言動には怪しい点がいくつかあった。男三人も大人しく引き下がった事に違和感を抱くべきだった。何よりザクにこの出来事を伝えてないのが痛い。イーグルという存在を伝えておくべきだった。
「まあ、そんなわけだからもう少し一緒に船旅しようか」
レインが横で楽しそうに笑っていた。イーグルとレインに囲まれ、周りは海。この状況で逃げ出すのは不可能だ。そう、思い知らされるのだった。
「なあなあルト~」
「くっつくな鬱陶しい」
夜ご飯を終え食器を片付けていたら後ろからザクが抱きついてきた。腰がぴったりくっついているので色々伝わってくる。
「今日さ~やってみたい事あるんだけどさ~」
「黙れ色魔」
「ひどっ」
手が塞がってるので口で反撃に出る。まあ、これぐらいで引くほど物分りのいい悪魔ではない。けけけといつものように笑って腰を抱く力を強くするザク。
「ルト~何怒ってるんだよー」
「…べつに」
「ま、いいけど俺様シャワー浴びてくるわ」
「ん」
泡のついた手を水で流しザクの方をちらっと見る。頭をかきながら廊下に消えていくザク。その後ろ姿に抱きつきたい衝動を押し込んで、ため息を水音でかき消した。
「…はあ」
洗い終わった皿を棚に置いていく。廊下からシャワーの音と下手なのか微妙な鼻歌が聞こえてきた。
カタン
「?」
ふと、窓の外から何か落ちるような音がした。窓に固いものがあたった音だろうか。
(戸締りはしてあるはず…)
「ってあれ?!なんで窓があいてるんだ?」
キッチンの窓が半分ぐらいあいていた。帰宅した時に一通り戸締りをしたのにどうして。変な感じがしつつ、
(ま、ザクが暑くて開けたのかもな)
特には気にせず窓を閉じようとした。
「お前が例の牧師だな?」
「え…?」
背後から男の声がしたと思ったら、次の瞬間、口を布のようなもので塞がれる。
(やばい!これ、薬品っぽい匂いが…っ!)
目眩がひどくなり吐き気がする。直に頭がぼやーっとして眠くなってきた。
(ダメだ、起きろ…!抵抗しないと!!)
「むぐぐっ?!んー!!」
「さあ、来てもらおうか、牧師サマ」
そんな声を聞きつつ俺の意識は薄れていった。
***
バシャアッ
「ほらほらお嬢ちゃん」
「いつまで寝てるんでチュか~」
「うっ…あ…?」
べっとりした何かを体にかけられた。
(これは…海水か?)
潮の香りとベタベタの感触。その刺激で意識が覚醒する。手が背中側で拘束されていて動きにくい。足は拘束されてなかった為なんとか自力で上半身を起こす。
「お、おきたおきた」
「あらあら起きちゃったか~寝てる姿も可愛かったのにな~」
目の前に男が二人たっていた。二人共ニヤニヤと下品な笑いを貼り付けて見下ろしてくる。気持ち悪い。嫌悪を込めて睨みつけた。
「お前ら誰だ」
「ガハハ!!誰でショーか??」
「まあ味方ではないでチュよ~お嬢ちゃ~ん」
「俺は男だ!」
「そりゃ知ってるさ」
「脱がしたの俺らだし?」
「え…うわ!」
下を見ると、自分の裸が目に入り一気に寒さを感じ始める。
(どうして俺裸に…??あ、そうだ。俺キッチンで誰かに襲われて気を失ったんだ)
焦りを抑えながら必死に頭を回した。周囲の木材の壁には窓がなく今が昼なのか夜なのか…ここがどこなのかもわからない。
(キッチンで倒れてからどれぐらい経ったんだ)
窓以外には情報を得られそうな物は部屋になかった。狭い空間に閉じ込められてるのだけはわかったが。出入り口は男たちの後ろに一つ、拘束も手だけだし、どこかに繋がれてるわけでもない。最悪の状況ではなさそうだ。
(こいつらをなんとかできれば脱出できる)
俺が黙ってるのを見て男達は感心するように口笛を吹いた。
「へえ、思ったより落ち着いてんなあ」
「危ないことには慣れっこなんだ?牧師業も大変でチュね~~」
「うるさい。ここはどこだ」
「どこだろう?俺らも知らないんだ~ガハハハ!」
「…」
「んなことより、どうせ裸になったんだしちょっと発散させてくれないか?」
男の一人が近づいてきた。
「やめろ…!」
とっさに体を引くが、男が距離を詰めるようにまた一歩近づいてくる。隣の男も便乗して近づいてきた。逃げようにもすぐに壁にあたって逃げ場はなくなる。こんな狭い部屋で逃げ回るのは不可能だ。
「く、くるな!」
「ガハハ!怖くない怖くない」
「ちょーっとだけ俺らの悩み?煩悩??牧師さんに解消してほしいだけだって~」
「なんで俺が…!勝手に苦しんでろ!」
ズボンの前を開けて男二人がこっちに手を伸ばしてくる。男たちのそれは弾けそうなぐらい大きくなっていて見てるだけで吐き気がした。
(や、やばい…!このままじゃ…!)
目を瞑り、深呼吸をする。
「…わかった」
「お?」
「ん~?」
壁から離れ膝立ちになる。ニコッと笑いかけ、片方の男の前に自分から近づいた。
「相手してやる」
「ほう??」
「ははは~乗り気じゃん!牧師のくせにエロエロなんでチュね~」
「…」
男が俺の頭を掴み引き寄せてきた。口の前に近づいてきたそれに、唇をツンツンとつつかれる。洗われてないのか鼻をつくような臭いがする。胃液がこみ上げてくるがなんとか飲み込んで…口を開けた。ぬるっと口内に入ってくる。
「歯立てんなよ」
「んぐっ…うっ…っ」
最初から乱暴だった。遠慮なく奥を突かれ息も吸えず、あまりの苦しさに涙が溜まる。俺のことなど何も気にしていない動きだった。今までザクのを舐めたことはあったがこんなに苦しいことはなかった。
(なんだかんだ無理やりっぽいようで…俺のこと気遣いながらやってくれてたんだな…)
無理やりな時点でアウトだけども。そんなどうでもいいことを考えながら必死に目の前の状況を考えないようにした。上から聞こえる気持ちよさげなハッハッという息。喉を突いてくる固い感覚。口の中に広がる匂い。少しでも気を抜けば吐いてしまいそうだ。
「ちょっとっ!ちょっと!俺は~?」
「ガハハッお前は外で見張ってろ。あーきもち」
「はあ?お前だけずりい!」
「この前おめーの賭け金払わされただろ!」
「っち!お嬢ちゃん、次は俺もお願いしまチュね~?」
片方の男が俺の体を撫でてくる。その感覚に鳥肌が立った。
「んん…っ」
手はすぐに離れ男は部屋から出ていった。鍵は特にかかってないようで、ただ前に押して扉を開けている。
(俺一人を監禁するのに鍵は必要ないって事か。完全に舐められてるな…)
口の中のにできるだけ舌をあてないようにしつつ笑いを抑えた。
(だけど、だからこそ、勝機がある)
「っ…は、そろそろ、イクぞっ」
「!!」
抜け!と目で訴えても意味はなく、腰を使って喉を強く突かれた。そのまま喉の奥でそれが大きくなり弾ける。
ドクッドクッッ
張り付くようなその粘りのある液体が喉にあたり、そして胃に流れていった。今すぐ吐き出したい。口の中を洗いたい。
(くそっ最悪だ…!死ね!)
内心呪いながら大人しく耐えていると、やっと男が腰を引いた。その瞬間床に倒れこみ咽せ込む。
「うえっ、っぐ、ゴホごほ!うっ、げほっ…はっ、はあ…」
「ガハハ!気持ちよかったぞお嬢ちゃん」
「ごほっ…ま、だだろ」
「え?ああ、そうだな?」
男は二ヤっと笑って俺の体を掴み、後ろに向かせてきた。
「ま、て…」
「ん?」
「あいつが、ゴホッ、このままだと、邪魔してくるかも…」
「あ?外で待機してるあいつか。確かにな、聞き耳立ててるだろーしなあ」
そう呟いて扉の方を見る男。口でしてやった事で俺への警戒心が減っている。いや、達したばかりでアホなだけか。俺は追い打ちをかけるように男の胸に寄りかかった。下を向いて甘えてるように呟く。
「俺はあんたとなら…してやってもいい…と思った。あいつは嫌だけど」
「ガハハ、可愛い牧師サマだなあ」
そう言って俺から手を離し立ち上がる男。俺に背を向けて扉に向かおうとする。
「わかったぜ、あいつを少しどこかに…」
(いまだっ!!)
ドン!!!
「どわあ!?」
無防備な男の背中に体当たりをする。体格差はあるが達したばかりのヘロヘロ相手には十分な威力だった。間抜けな声をあげて前のめりに倒れかけた男に足払いをして転ばせる。この動きは昼間イーグルがやっていたのだが、軽々と自分より体の大きい男を倒していたのを見て、これなら俺にもできるかもと思ったのだ。
(思ったとおり、うまくいった!)
「ぐえっ?!」
無様に地面に倒れこんだ男を踏みつけ、そのまま扉に走る。手は使えないから肘でノブを回し扉を開けた。
バタン!!
「ん?どうした、もう終わったのかよ?」
外の男は突然扉が開いて驚いている。俺だと思ってないらしい。怪しむ様子はない。俺はすぐには飛び出さず不審がった奴が扉の前に出るまで待つ。
「おい、返事ぐらい…あれ?!ぐふ!!」
そのムカつく顔に頭突きをかましてやって、俺は部屋を飛び出した。部屋を出ると左右の道があって、勘で右に行く。
たたたっ
両手が塞がれてるせいで全速力とは言えないができる限りの速さで走った。
「はあ、はあ…一体ここはどこなんだ??」
廊下のような通路は延々と続くかのように長い。扉が一定の間隔であるからここは大きな建物の中なのだろうか。すべて木材でできているのに何故かどこにも窓がない。
(地下なのか?)
――あっちだ!――
「?!」
後方からそんな声が聞こえた気がした。やばい、もう追っ手がきたのか。急いで地下から抜け出さないと。ここがどんな所であっても、奴らのエリアから抜けさえすれば逃げられるはず。
「あ!」
廊下がやっと終わり階段が見えた。それをのぼり、目の前に現れた木の扉を蹴り開ける。
(よし、これで外にいける!!)
ばんっ!!
扉があいた先に見えた世界は、信じられないものだった。
「なっ……うそ、だ」
まだ満月にはなりきれてない欠けた月。それだけが唯一の灯りで、その下には、暗く深い黒色の海が広がっていた。
「どうして…海…?!」
ヨロヨロと歩き海に近づく。といっても手すりのせいで海には飛び込めない。振り返って扉の方を見た。まだ人の影はいないが、じきにここにも奴らが来るだろう。
「ここは船の上だったのか…」
部屋や窓が木で出来ていて窓がなかったのはそのせいだったんだ。地下と思っていた先程の狭い部屋は船の中で、ここは甲板。逃げようにも夜の海に両手を縛られた状態で潜るのは自殺行為だ。
(こんなん、逃げようにも…)
そこでやっと理解した。だから拘束が少なかったのだと。舐められていたんじゃなくて、元々逃げ出せない環境だから必要なかったんだ。一気に絶望が広がる。
(どうしよう…ザク…!)
不安に押しつぶされそうになっていた時だった。
カツン
「やあ、ルト。元気だった?」
「!」
俺は耳を疑った。慌てて振り返る。後方に一人の男が立っていた。
「なんで…お前が、ここに…!」
俺は、信じられない気持ちでその男を見た。いつもの優しい笑顔に、シンプルだけどどこか品のある服。先程の絡んできた男二人とは雰囲気が全く違う。
「レイン…!」
俺が名前を呼ぶと、男は嬉しそうに頷いた。
「久しぶり、ルト」
そう言って一歩近づいてきた。俺は無意識に後退っていた。手すりのせいで逃げる事はできないが。
「そんな怯えないで。取って食ったりしないさ」
だからおいで、と手招かれる。優しくて心が温かくなる笑顔だった。まるで家族に向けるような、恋人に向けるような甘い笑顔。その顔を見ていると、今までやられた事が全て嘘だったんじゃないかと思えてしまう。
(レイン…)
バーで会って、助けてくれて、料理を食べさせてくれて…それからも悪魔とかのゴタゴタはなくて、レインはいい友人のままで。それで今回も俺を助けに来てくれたんじゃないかって。そう思ってしまいたくなるぐらい、レインには邪気を感じられなかった。それが悔しくて、期待する自分に鞭を打つように唇を噛んだ。
「ほら、上着きて」
「っ…!」
いつの間にか目の前にいたレインが上着を肩にかけてきた。そうだ。今裸だったんだ。今更恥ずかしくなってレインから目を背ける。
「なんで、レインが…。まさか、俺をここに連れてきたのって」
「俺じゃない」
「え?」
「俺は少し仕事で用があってここの船にいるだけだから」
「仕事…」
レインは悪魔を使って散々問題を起こしてきた。そのレインがいる船には一体何があるんだ。
(絶対やばい船がこれ…!!)
そもそも俺を拐ってあんなことまでしてくる奴らだし異常なのは確定してるが。
「そんな怖い顔しないで。ルトに危害を加える気はないから」
「嘘だ」
「はは、信用ないな」
レインは何故か楽しそうに笑っていた。それを睨みつけながら俺は口を開く。
「レインが俺をさらった犯人じゃないなら、ここから抜け出すのを手伝ってくれ」
「え、俺に頼むの?」
「ああ。レインは奴らと仲間じゃないんだろ」
「うん仲間じゃない。でも俺に任せたらもっと酷い場所に連れてかれるかもよ?」
「そんな事したら恨む」
「はは。冗談だよ。なんだかんだ俺を信じてくれて嬉しいよ」
「じゃあ…」
「かわいいルト。でもごめん」
よしよしと撫でてくる。
「その期待にはそえない」
「なっ…!」
「おーい、そこにいるのは誰だー?」
レインの背後、つまり甲板の唯一の扉から声が聞こえた。その扉から、見たことのある男が出てくる。月に照らされ薄く光る灰色の髪、着崩された服。そして内臓にまで響くような低い声。
「お、起きたか、ルト」
「あんたは…イーグル?!」
ようっと手を振ってイーグルは俺たちに歩み寄ってきた。まるで友人と合流したかのような気軽さだが、俺は聞き逃さなかった。
(起きたのか、って言ったよな)
ということはつまり。
「…イーグルが俺を拐ったのか」
「おーご名答」
にししと笑うイーグル。悪気のない悪い笑顔だった。
「といっても実際に拐ったのは俺じゃなくて下っ端だけどなー」
「なんでこんな事を…昼間は助けてくれたのに…!」
「そりゃ昼間のはルトを探るためにやった事だしなー」
「?!」
イーグルの後ろから見覚えのある船乗りが顔を出した。
「え…うそ、お前ら…!」
ぞろぞろと現れた男たちは包帯を巻いていた。屈強な筋肉をもつ男三人。昼間俺とアリスに絡んできた奴らだった。その顔を見た瞬間全てを理解する。
(くそっ全部嵌められたって事か…!)
昼間の出来事は全てここに俺を追い込むための作戦だったんだ。
「イーグル!騙してたのか…!」
「んー。騙したつもりはないぞ。見えてる都合のいい情報だけで判断したルトが悪い」
さらりと言い返されぐうの音も出ない。確かに言う通りだ。助けられたと勝手に判断していたが、イーグルの言動には怪しい点がいくつかあった。男三人も大人しく引き下がった事に違和感を抱くべきだった。何よりザクにこの出来事を伝えてないのが痛い。イーグルという存在を伝えておくべきだった。
「まあ、そんなわけだからもう少し一緒に船旅しようか」
レインが横で楽しそうに笑っていた。イーグルとレインに囲まれ、周りは海。この状況で逃げ出すのは不可能だ。そう、思い知らされるのだった。
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あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
余命半年の俺を、手酷く振ったはずの元カレ二人が手を組んで逃がしてくれません
ユッキー
BL
半年以内に俺は一人寂しく死ぬ。そんな未来を視た。きっと誰も悲しむ人は居ないだろう。そう思っていたから何も怖くなかった。なのにそんな俺の元に過去手酷く振り、今では世界的スターとなった元カレ二人がやってきた。彼らは全てを知っていた。俺がどうして彼らを振ったのか、そして俺の余命も。
全てを諦めた主人公と、主人公を諦めきれないイケメンサッカー選手とシンガーソングライターの再会が導く未来は?
ばぶばぶ保育園 連載版
雫@不定期更新
BL
性癖全開注意で書いていたばぶばぶ保育園を連載で書くことにしました。内容としては子供から大人までが集まるばぶばぶ保育園。この園ではみんなが赤ちゃんになれる不思議な場所。赤ちゃん時代に戻ろう。
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