牧師に飼われた悪魔様

リナ

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第十八章「奇跡の十字架」

気になる視線

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 それから俺様達は気を取り直して酒場に行った。比較的余所者に口が軽めのマスターと飲みながら情報収集をしていく。念のため、どこに敵が潜んでいるかわからないため、酒場で出されるものは全て俺様が先に口をつけて毒がないか確かめておいた。話の合間に出されたマスターからのおつまみにルトが手を伸ばしかけて、急いで俺様はその手を叩いた。

「いったっ」
「俺様が先だ」
「なんだよ…別にいいけどさ…」

 むっとするルトを無視して、おつまみを口に入れた。よし、これも問題ないな。ルトの方に皿を戻してやった。ふと、そこで。

(…、またか)

 また視線を感じた。

 この街に来てからというもの、ずっと何かに見られているような、妙に粘っこい視線を感じるのだ。ルトは気付いてないようだが、俺様はこの酒場に来てそれが確信に変わった。なぜなら、俺たちに視線を送っている男が、さっき護衛と話していた男と同じ奴だったからだ。

(なるほど“護衛”は一人じゃねえってわけ)

 俺様たちが逃げないよう、かつ変な事をしないよう、見張ってるのだ。前々から白服のする事は徹底されていた。これぐらいは予想の範囲。

(…だとしても、動きにくいな…)

 ルトが狙われているのかわからない以上俺様も離れられない。つまり情報が限定的になるのだ。ルトやその“護衛"を見張るのに必死になっていて、いつの間にか詰めかける…なんて目も当てられない。どうにか突破口を見つけたいところだが、

「?」

 ルトも視線に勘づいたのか、慌てたように店の中を見回し始めたので、すぐにその肩に腕を回してカウンターの方に向き直させる。

「気にすんなって今更」
「で、でもさ…」
「見せ付けてやればいいんだよ」

 そうだ。

 見せ付けてやればいいのだ。

 俺様がついていればルトは無敵だということを証明してやればいい。そうすれば白服ももうルトを狙おうとしなくなるだろう。どんな奴が来ようと全て倒してしまえばいいのだ。

 これなら今の俺様でもできる。

(見てろよ…白服!!)


 ***


 俺様達は飲み終わった後、宿に戻ることにした。

 ルトと一緒に入っていくと怪しまれるので、俺様は別ルートで入ることにする。しばらく外でぶらぶらしているとルトの気配のする部屋を見つけた。窓からそーっと忍び込む。部屋に入ってからふと、人型になろうとして、やっぱり止めた。

(人型になったらルトを襲っちまいそうだしな)

 あらかじめルトに言われていたのだ。遠征中は抱いてはダメと。確かにこんな状況で体力を削ってる場合じゃないのはわかる。だから俺様は必死に物足りないのを堪えて室内のクッションに移動した。

 =ふーん、なかなかいい部屋じぇねえの=
「うわあっ」

 俺様の姿に気付いたルトが飛び上がるようにして驚いた。その驚き方が可愛くてもっと驚かせてやりたいといたずら心が擽られる。

(くっそ…!!二人きりなのに手を出せねえ…!きっつ………いや、今はそんなことをしてる場合じゃないもんな、俺様がルトをまもらねーと…いや、でも、むずむずする……すげえ触りたい、ああああ、触りたい、突っ込みたいぐちゃぐちゃにしてええ、ぐあああああ)

 そんな煩悩と戦い、少しでも煩悩が減るよう目を閉じて視界からの情報をシャットアウトした。


 それからぼちぼちルトと会話を交わしていると、疲れていたのかルトの方が寝落ちしてしまう。

「ふう…」

 途端に人の姿となり、寝てしまったルトに毛布を持ってくる。ルトは気持ち良さそうに座椅子の上で膝を抱いて寝ていた。丸まってる姿は猫のようだ。

(ああ、かわいい)

 ヨダレがでそうなぐらい可愛かった。これ眺めてるだけで十年ぐらい何もいらないってぐらい、可愛かった。

「へっくしゅん!」
「おっと」

(…い、いかんいかん)

 部屋の中とはいってもカラドリオスと比べればかなり室温は低い。ぷるぷるとルトが震え始めた。急いで手に持っていた毛布をかけてやる。すると、うっすらとルトが目を開けた。

「ん、起きちまったか」
「ザク…」
「ほら、疲れてんだから寝ろ」
「…ん」

 素直に目を閉じたルトが可愛すぎてついついキスしてしまった。

 ちゅ

 起こさないよう、優しく触れるだけのキス。

「ルト…」

 安らかに眠るルトの寝顔をしばらく俺様は眺めていた。


 ***


 翌日、俺様の嫌な時ほどよくあたる予感が的中した。

 午前中、ルトは雪山の調査を始めた。俺様は猫の姿となって隠れながら遠くからルト達を見守る。調査自体は吹雪のせいであまり進んでないらしく、結局、午後になると天候が更に悪化し調査は一旦中止となった。



 宿に戻った俺様は、散歩もかねて宿の中を歩いて回った。ルトは室内で持ってきた本を読んでいて邪魔をすると怒られそうだし、ルトと二人きりだとムラムラして襲ってしまいそうなので(だってルトが無防備に寝転がってたりするんだもんよ…)仕方なく、なんか情報が転がってないかなと宿を探索し始めたのだ。

 =雪のせいで外にもでれねーし、ほんと雪国は気が滅入るぜ=

 鼻歌交じりに廊下を進んでいくと、ふと、血の匂いがした。

 =ん?=

 何かあったのだろうか、と血の匂いがしてくる部屋を覗き込む。この部屋はこの宿に宿泊してる奴の部屋のはず。

(何か事件でもあったのか?)

 一気に緊張が走る。まさか白服とかが誰かを消してたりして。そーっと気配を消して中を見てみた。

 =?!=

 するとそこには昨日のマント男がいて、腹にナイフを突き立てていた。


 =んな?!=

「!!!」


 俺様の声にマント男がこっちを向く。よくあの傷で動けるなと思ったが、そういえばこいつ人間じゃないんだった。見つかってしまっては隠れていても意味がない。俺様は奴の前に姿を現してやった。

 =よう、愉快な趣味だな=

 お腹刺して気持ちいいタイプなのかよ、といってやると、マント男は黙り込んで…それからゆっくりと顔を上げた。

「…また人が…死んだ」
 =はあ?=
「俺が…告げて…死んでいった…」
 =はあん??=

 意味のわからないことをぼそぼそ言われて、余計意味がわからなくなる。

 人が死んだ??
 告げて???

 何の話だよ。

 =いや…まて待て、まさかお前、=

 脳の片隅にあった情報を掘り出してくる。

 =お前が告げて、人が死んだって言ったよな?=

 それって宣告者レイスとやってることが同じような。噂でしか聞いたことないが、確かレイスも死期が迫ったものに死を宣告したりすると聞いた気がする。存在自体が都市伝説というか、悪魔の世界でもそれはそれは嫌われている存在。宣告は悪魔にも効くし、誰もが疫病神のように忌み嫌っているのだ。

(そんなものが人間界にいるわがない…が)

 しかし…これはきちんと確かめる必要がある。
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