158 / 168
第十八章「奇跡の十字架」
気になる視線
しおりを挟む
それから俺様達は気を取り直して酒場に行った。比較的余所者に口が軽めのマスターと飲みながら情報収集をしていく。念のため、どこに敵が潜んでいるかわからないため、酒場で出されるものは全て俺様が先に口をつけて毒がないか確かめておいた。話の合間に出されたマスターからのおつまみにルトが手を伸ばしかけて、急いで俺様はその手を叩いた。
「いったっ」
「俺様が先だ」
「なんだよ…別にいいけどさ…」
むっとするルトを無視して、おつまみを口に入れた。よし、これも問題ないな。ルトの方に皿を戻してやった。ふと、そこで。
(…、またか)
また視線を感じた。
この街に来てからというもの、ずっと何かに見られているような、妙に粘っこい視線を感じるのだ。ルトは気付いてないようだが、俺様はこの酒場に来てそれが確信に変わった。なぜなら、俺たちに視線を送っている男が、さっき護衛と話していた男と同じ奴だったからだ。
(なるほど“護衛”は一人じゃねえってわけ)
俺様たちが逃げないよう、かつ変な事をしないよう、見張ってるのだ。前々から白服のする事は徹底されていた。これぐらいは予想の範囲。
(…だとしても、動きにくいな…)
ルトが狙われているのかわからない以上俺様も離れられない。つまり情報が限定的になるのだ。ルトやその“護衛"を見張るのに必死になっていて、いつの間にか詰めかける…なんて目も当てられない。どうにか突破口を見つけたいところだが、
「?」
ルトも視線に勘づいたのか、慌てたように店の中を見回し始めたので、すぐにその肩に腕を回してカウンターの方に向き直させる。
「気にすんなって今更」
「で、でもさ…」
「見せ付けてやればいいんだよ」
そうだ。
見せ付けてやればいいのだ。
俺様がついていればルトは無敵だということを証明してやればいい。そうすれば白服ももうルトを狙おうとしなくなるだろう。どんな奴が来ようと全て倒してしまえばいいのだ。
これなら今の俺様でもできる。
(見てろよ…白服!!)
***
俺様達は飲み終わった後、宿に戻ることにした。
ルトと一緒に入っていくと怪しまれるので、俺様は別ルートで入ることにする。しばらく外でぶらぶらしているとルトの気配のする部屋を見つけた。窓からそーっと忍び込む。部屋に入ってからふと、人型になろうとして、やっぱり止めた。
(人型になったらルトを襲っちまいそうだしな)
あらかじめルトに言われていたのだ。遠征中は抱いてはダメと。確かにこんな状況で体力を削ってる場合じゃないのはわかる。だから俺様は必死に物足りないのを堪えて室内のクッションに移動した。
=ふーん、なかなかいい部屋じぇねえの=
「うわあっ」
俺様の姿に気付いたルトが飛び上がるようにして驚いた。その驚き方が可愛くてもっと驚かせてやりたいといたずら心が擽られる。
(くっそ…!!二人きりなのに手を出せねえ…!きっつ………いや、今はそんなことをしてる場合じゃないもんな、俺様がルトをまもらねーと…いや、でも、むずむずする……すげえ触りたい、ああああ、触りたい、突っ込みたいぐちゃぐちゃにしてええ、ぐあああああ)
そんな煩悩と戦い、少しでも煩悩が減るよう目を閉じて視界からの情報をシャットアウトした。
それからぼちぼちルトと会話を交わしていると、疲れていたのかルトの方が寝落ちしてしまう。
「ふう…」
途端に人の姿となり、寝てしまったルトに毛布を持ってくる。ルトは気持ち良さそうに座椅子の上で膝を抱いて寝ていた。丸まってる姿は猫のようだ。
(ああ、かわいい)
ヨダレがでそうなぐらい可愛かった。これ眺めてるだけで十年ぐらい何もいらないってぐらい、可愛かった。
「へっくしゅん!」
「おっと」
(…い、いかんいかん)
部屋の中とはいってもカラドリオスと比べればかなり室温は低い。ぷるぷるとルトが震え始めた。急いで手に持っていた毛布をかけてやる。すると、うっすらとルトが目を開けた。
「ん、起きちまったか」
「ザク…」
「ほら、疲れてんだから寝ろ」
「…ん」
素直に目を閉じたルトが可愛すぎてついついキスしてしまった。
ちゅ
起こさないよう、優しく触れるだけのキス。
「ルト…」
安らかに眠るルトの寝顔をしばらく俺様は眺めていた。
***
翌日、俺様の嫌な時ほどよくあたる予感が的中した。
午前中、ルトは雪山の調査を始めた。俺様は猫の姿となって隠れながら遠くからルト達を見守る。調査自体は吹雪のせいであまり進んでないらしく、結局、午後になると天候が更に悪化し調査は一旦中止となった。
宿に戻った俺様は、散歩もかねて宿の中を歩いて回った。ルトは室内で持ってきた本を読んでいて邪魔をすると怒られそうだし、ルトと二人きりだとムラムラして襲ってしまいそうなので(だってルトが無防備に寝転がってたりするんだもんよ…)仕方なく、なんか情報が転がってないかなと宿を探索し始めたのだ。
=雪のせいで外にもでれねーし、ほんと雪国は気が滅入るぜ=
鼻歌交じりに廊下を進んでいくと、ふと、血の匂いがした。
=ん?=
何かあったのだろうか、と血の匂いがしてくる部屋を覗き込む。この部屋はこの宿に宿泊してる奴の部屋のはず。
(何か事件でもあったのか?)
一気に緊張が走る。まさか白服とかが誰かを消してたりして。そーっと気配を消して中を見てみた。
=?!=
するとそこには昨日のマント男がいて、腹にナイフを突き立てていた。
=んな?!=
「!!!」
俺様の声にマント男がこっちを向く。よくあの傷で動けるなと思ったが、そういえばこいつ人間じゃないんだった。見つかってしまっては隠れていても意味がない。俺様は奴の前に姿を現してやった。
=よう、愉快な趣味だな=
お腹刺して気持ちいいタイプなのかよ、といってやると、マント男は黙り込んで…それからゆっくりと顔を上げた。
「…また人が…死んだ」
=はあ?=
「俺が…告げて…死んでいった…」
=はあん??=
意味のわからないことをぼそぼそ言われて、余計意味がわからなくなる。
人が死んだ??
告げて???
何の話だよ。
=いや…まて待て、まさかお前、=
脳の片隅にあった情報を掘り出してくる。
=お前が告げて、人が死んだって言ったよな?=
それって宣告者レイスとやってることが同じような。噂でしか聞いたことないが、確かレイスも死期が迫ったものに死を宣告したりすると聞いた気がする。存在自体が都市伝説というか、悪魔の世界でもそれはそれは嫌われている存在。宣告は悪魔にも効くし、誰もが疫病神のように忌み嫌っているのだ。
(そんなものが人間界にいるわがない…が)
しかし…これはきちんと確かめる必要がある。
「いったっ」
「俺様が先だ」
「なんだよ…別にいいけどさ…」
むっとするルトを無視して、おつまみを口に入れた。よし、これも問題ないな。ルトの方に皿を戻してやった。ふと、そこで。
(…、またか)
また視線を感じた。
この街に来てからというもの、ずっと何かに見られているような、妙に粘っこい視線を感じるのだ。ルトは気付いてないようだが、俺様はこの酒場に来てそれが確信に変わった。なぜなら、俺たちに視線を送っている男が、さっき護衛と話していた男と同じ奴だったからだ。
(なるほど“護衛”は一人じゃねえってわけ)
俺様たちが逃げないよう、かつ変な事をしないよう、見張ってるのだ。前々から白服のする事は徹底されていた。これぐらいは予想の範囲。
(…だとしても、動きにくいな…)
ルトが狙われているのかわからない以上俺様も離れられない。つまり情報が限定的になるのだ。ルトやその“護衛"を見張るのに必死になっていて、いつの間にか詰めかける…なんて目も当てられない。どうにか突破口を見つけたいところだが、
「?」
ルトも視線に勘づいたのか、慌てたように店の中を見回し始めたので、すぐにその肩に腕を回してカウンターの方に向き直させる。
「気にすんなって今更」
「で、でもさ…」
「見せ付けてやればいいんだよ」
そうだ。
見せ付けてやればいいのだ。
俺様がついていればルトは無敵だということを証明してやればいい。そうすれば白服ももうルトを狙おうとしなくなるだろう。どんな奴が来ようと全て倒してしまえばいいのだ。
これなら今の俺様でもできる。
(見てろよ…白服!!)
***
俺様達は飲み終わった後、宿に戻ることにした。
ルトと一緒に入っていくと怪しまれるので、俺様は別ルートで入ることにする。しばらく外でぶらぶらしているとルトの気配のする部屋を見つけた。窓からそーっと忍び込む。部屋に入ってからふと、人型になろうとして、やっぱり止めた。
(人型になったらルトを襲っちまいそうだしな)
あらかじめルトに言われていたのだ。遠征中は抱いてはダメと。確かにこんな状況で体力を削ってる場合じゃないのはわかる。だから俺様は必死に物足りないのを堪えて室内のクッションに移動した。
=ふーん、なかなかいい部屋じぇねえの=
「うわあっ」
俺様の姿に気付いたルトが飛び上がるようにして驚いた。その驚き方が可愛くてもっと驚かせてやりたいといたずら心が擽られる。
(くっそ…!!二人きりなのに手を出せねえ…!きっつ………いや、今はそんなことをしてる場合じゃないもんな、俺様がルトをまもらねーと…いや、でも、むずむずする……すげえ触りたい、ああああ、触りたい、突っ込みたいぐちゃぐちゃにしてええ、ぐあああああ)
そんな煩悩と戦い、少しでも煩悩が減るよう目を閉じて視界からの情報をシャットアウトした。
それからぼちぼちルトと会話を交わしていると、疲れていたのかルトの方が寝落ちしてしまう。
「ふう…」
途端に人の姿となり、寝てしまったルトに毛布を持ってくる。ルトは気持ち良さそうに座椅子の上で膝を抱いて寝ていた。丸まってる姿は猫のようだ。
(ああ、かわいい)
ヨダレがでそうなぐらい可愛かった。これ眺めてるだけで十年ぐらい何もいらないってぐらい、可愛かった。
「へっくしゅん!」
「おっと」
(…い、いかんいかん)
部屋の中とはいってもカラドリオスと比べればかなり室温は低い。ぷるぷるとルトが震え始めた。急いで手に持っていた毛布をかけてやる。すると、うっすらとルトが目を開けた。
「ん、起きちまったか」
「ザク…」
「ほら、疲れてんだから寝ろ」
「…ん」
素直に目を閉じたルトが可愛すぎてついついキスしてしまった。
ちゅ
起こさないよう、優しく触れるだけのキス。
「ルト…」
安らかに眠るルトの寝顔をしばらく俺様は眺めていた。
***
翌日、俺様の嫌な時ほどよくあたる予感が的中した。
午前中、ルトは雪山の調査を始めた。俺様は猫の姿となって隠れながら遠くからルト達を見守る。調査自体は吹雪のせいであまり進んでないらしく、結局、午後になると天候が更に悪化し調査は一旦中止となった。
宿に戻った俺様は、散歩もかねて宿の中を歩いて回った。ルトは室内で持ってきた本を読んでいて邪魔をすると怒られそうだし、ルトと二人きりだとムラムラして襲ってしまいそうなので(だってルトが無防備に寝転がってたりするんだもんよ…)仕方なく、なんか情報が転がってないかなと宿を探索し始めたのだ。
=雪のせいで外にもでれねーし、ほんと雪国は気が滅入るぜ=
鼻歌交じりに廊下を進んでいくと、ふと、血の匂いがした。
=ん?=
何かあったのだろうか、と血の匂いがしてくる部屋を覗き込む。この部屋はこの宿に宿泊してる奴の部屋のはず。
(何か事件でもあったのか?)
一気に緊張が走る。まさか白服とかが誰かを消してたりして。そーっと気配を消して中を見てみた。
=?!=
するとそこには昨日のマント男がいて、腹にナイフを突き立てていた。
=んな?!=
「!!!」
俺様の声にマント男がこっちを向く。よくあの傷で動けるなと思ったが、そういえばこいつ人間じゃないんだった。見つかってしまっては隠れていても意味がない。俺様は奴の前に姿を現してやった。
=よう、愉快な趣味だな=
お腹刺して気持ちいいタイプなのかよ、といってやると、マント男は黙り込んで…それからゆっくりと顔を上げた。
「…また人が…死んだ」
=はあ?=
「俺が…告げて…死んでいった…」
=はあん??=
意味のわからないことをぼそぼそ言われて、余計意味がわからなくなる。
人が死んだ??
告げて???
何の話だよ。
=いや…まて待て、まさかお前、=
脳の片隅にあった情報を掘り出してくる。
=お前が告げて、人が死んだって言ったよな?=
それって宣告者レイスとやってることが同じような。噂でしか聞いたことないが、確かレイスも死期が迫ったものに死を宣告したりすると聞いた気がする。存在自体が都市伝説というか、悪魔の世界でもそれはそれは嫌われている存在。宣告は悪魔にも効くし、誰もが疫病神のように忌み嫌っているのだ。
(そんなものが人間界にいるわがない…が)
しかし…これはきちんと確かめる必要がある。
0
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
2025/09/12 ★1000 Thank_You!!
逃げる銀狐に追う白竜~いいなずけ竜のアレがあんなに大きいなんて聞いてません!~
結城星乃
BL
【執着年下攻め🐲×逃げる年上受け🦊】
愚者の森に住む銀狐の一族には、ある掟がある。
──群れの長となる者は必ず真竜を娶って子を成し、真竜の加護を得ること──
長となる証である紋様を持って生まれてきた皓(こう)は、成竜となった番(つがい)の真竜と、婚儀の相談の為に顔合わせをすることになった。
番の真竜とは、幼竜の時に幾度か会っている。丸い目が綺羅綺羅していて、とても愛らしい白竜だった。この子が将来自分のお嫁さんになるんだと、胸が高鳴ったことを思い出す。
どんな美人になっているんだろう。
だが相談の場に現れたのは、冷たい灰銀の目した、自分よりも体格の良い雄竜で……。
──あ、これ、俺が……抱かれる方だ。
──あんな体格いいやつのあれ、挿入したら絶対壊れる!
──ごめんみんな、俺逃げる!
逃げる銀狐の行く末は……。
そして逃げる銀狐に竜は……。
白竜×銀狐の和風系異世界ファンタジー。
偏食の吸血鬼は人狼の血を好む
琥狗ハヤテ
BL
人類が未曽有の大災害により絶滅に瀕したとき救済の手を差し伸べたのは、不老不死として人間の文明の影で生きていた吸血鬼の一族だった。その現筆頭である吸血鬼の真祖・レオニス。彼は生き残った人類と協力し、長い時間をかけて文明の再建を果たした。
そして新たな世界を築き上げた頃、レオニスにはひとつ大きな悩みが生まれていた。
【吸血鬼であるのに、人の血にアレルギー反応を引き起こすということ】
そんな彼の前に、とても「美味しそうな」男が現れて―――…?!
【孤独でニヒルな(絶滅一歩手前)の人狼×紳士でちょっと天然(?)な吸血鬼】
◆閲覧ありがとうございます。小説投稿は初めてですがのんびりと完結まで書いてゆけたらと思います。「pixiv」にも同時連載中。
◆ダブル主人公・人狼と吸血鬼の一人称視点で交互に物語が進んでゆきます。
◆年齢制限の話数には(R)がつきます。ご注意ください。
◆未来、部分的に挿絵や漫画で描けたらなと考えています☺
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる