短編

リナ

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不死鳥シリーズ

射的の景品(不死鳥組)

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 ※十話読了推奨
 ※十話「浴衣マジック」の射的後のシーン
 ※ほのぼの




「あんたタチ、景品は一つにしなさいネ」

 射的を終えた三人にグレイが釘を刺す。本来であれば落とした分だけ景品をもらうのが普通だが、フィンはともかく、ソルとユウキは的を当てすぎているので全て回収したら屋台が潰れてしまう。狐ヶ崎組という圧で重りを外させてるから余計に店主が哀れだ。

「はーい」
「わかった」
「おう」

 三人共景品にそこまで執着はしてなかったのかグレイの言葉に素直に頷く。それを見た店主は酷くホッとした顔をするのだった。

「特賞も避けて程ほどの奴を選びなさい。わかったワネー」
「はーい」
「ふむ」
「程ほどって難しい事言いやがるぜ」

 三人はそれぞれの反応をしつつ、店主の元に行き景品を選び始めた。俺とグレイはそれを少し離れた場所でのんびりと眺める。

「あの子達ったら、屋台の景品相手にえらく悩んじゃって…ふふ、あーしてるとまだまだ子供ネ。可愛いんだから」
「かわ……下半身は可愛くねえけど(性欲で暴走するし)、まあ、微笑ましいってのは同意」
「ふふ…」

 やけに含みのある笑い方に「なんだよ」と睨み付ければグレイは煙草の煙を吐きながら茶化してくる。

「ライは全員分のを見ちゃってるから説得力あるわ~って思ってただけヨ(ニヤニヤ)」
「いや、ちがっ…下半身って比喩な???」
「えー?そうなノ?ライが珍しくあたしに下ネタ振ってくれたと思ったのに。じゃあ、あたしが振ってあげる。誰のが一番スキ?」
「……フィン以外ねえだろ、その流れで」
「あはは」

「何の話してるのー?」

 下世話な話題に半目になっていると、ユウキが俺とグレイの間に現れ興味津々といった感じで聞いてくる。

「あら、ユウキくん。ただのフランクフルトの話ヨ。それより三人共決まったのカシラ?」

 俺が慌てる横でグレイはなんでもないように話題を戻した(てかフランクフルトって…)。ソルとフィンもユウキの後ろにいる。

「ちゃんと店主さんに迷惑かけないの選んだでしょうネ?」
「はい!大丈夫です!店長さん!」
「ああ」
「程々の奴選んだぜぇ」

 グレイの問いかけに力強く頷く三人。ユウキは手を後ろにやっていて手元が見えないが、ソルはビニール袋に何かをごっそり入れていた。フィンは三十センチぐらいの細長い紙箱を持っている。どうやら全員違うものを選んだようだ…が、何故か三人共俺に近づいてきた。

「え、何、」
「ふふふ、俺の景品はね、ライにあげる為に選んだんだ!はい!ライ、手を出して!」
「???」

 ユウキに腕を掴まれ、両手首を束ねられた瞬間嫌な予感がした。

「おい、ユウキ…」

 カチャ…

 ユウキの手から何かがはまる音がする。慌てて視線を落とすと俺の両手首に手錠がはまっていた。軽いし脆そうな素材をしているがただの子供用(?)の玩具にしては作りがしっかりしている。

「これすごくない?鍵もつけられるんだよ」

 じゃじゃーんと満面の笑みで鍵を人差し指でくるくると回すユウキ。

「ユウキ…これを俺にって相変わらずどんなメンタルしてんだお前は…」
「えへへ(照れ)」
「褒めてねえ!」

 怒りのまま足首を蹴りつければ、いたぁい!とぴょんと跳ねて痛がる。その姿に少し溜飲が下がったが、肩にのしっと重いものが乗ってきてまたぶり返していく。馴れ馴れしく組まれたソルの腕である。見れば、ニヤニヤと俺の手元を見て笑っていた。

「おい、マジでつけたのかよ。ならこのまま参拝させてみるか」
「あはは、どんなプレイですかそれ~」
「手を合わせるだけならできるだろ?その瞬間すげえ注目浴びるだろーけどな」
「羞恥プレイだ~でも慌てるライは見てみたいか…」


 ガキンッ!!


 悪巧み組がケラケラと笑うのをBGMに、俺は両手を思いっきり外側に引っ張り手錠(※子供の玩具)を破壊した。

「「?!!」」

 もらって早々プレゼントを破壊するのはどうかと思ったが、プレゼントセンスが破壊的だったしマナー的にはお互い様だろう。

「なっ…」
「おいおい…」

 ユウキとソルは破壊されたまま俺の手首にかけられる手錠の残骸をみて顔を青ざめた。さっきまでのニヤニヤ面が消え…良い様である。

「…で、羞恥プレイがなんだって?」

 煽るように言い、フンっと鼻を鳴らせば二人は顔を青ざめてヒソヒソと話し出した。

「や、やべぇよアイツ…、手錠つけられて全然慌てねえ上に破壊して無効化するとかほんとにネコか?可愛げってのがわかってねえよ…」
「いやーネコ関係なく、ライって力強いし無茶するし…可愛げはあんまないですよ(そこが可愛いんだけど)」
「そういう所ゴリラだからな…、こりゃマジで縛りてえ時はどうすっかねぇ…」
「俺的オススメは~ー」

 アイツラ全然懲りてないし…と呆れていると、後ろから腕が伸びてきた。

「フィン?」
「外すからジッとしててくれ」

 そういって俺の手首に残った手錠を優しく外していく。流石に子供用なので少し捻れば鍵も外せた。自由になった手首を回しながら確認してるとフィンが心配するように見てくる。

「ライ、手首は傷つけてないか?」
「ん、大丈夫だ。こんなの玩具だしな」
「そうか」

 ホッとしたようにフィンは微笑み、俺の掌を裏返して…

 スッ

 例の細長い紙箱をのせてきた。

「ライ、奴の真似をしたわけじゃないが…屋台で過ごすライが暑そうだったから…よければ使ってくれ」
「!」

 ハンディファンだった。子供向け玩具のクオリティでそんなに長くは使えなさそうだが、今日使う分には問題ないだろうし、屋台作業中はとても暑かったから助かった。何気に首からかけられるのが便利である(最近の子供向け玩具ってすごいな…)。

「ありがと、すげえ助かる」

 ユウキのとんでもないプレゼントとは違いあまりにもマトモなものがもらえてとても嬉しかった。心からのお礼を言うと

「…喜んでもらえて何よりだ」

 にこりと優しい微笑みが返ってくる。それに見惚れてると「んじゃオレも」と肩を叩かれた。

「なんだよ…あんたも手錠じゃないだろうな」
「ちげーよ、ほれ、口開けろ」
「…??…あー」

 不審に思いつつ、あーと口を開けると、ゴロッと錠剤サイズのモノを放り込まれた。探るように舌で味わってると甘い味がしてすぐに察する。

「駄菓子のラムネ…?」
「正解」

 自分もガリガリと噛み砕きながらソルはとニヤリと笑った。「もっと食うか?」と差し出されたので、遠慮なくもらい…少し懐かしい感じのするラムネ味を楽しむ。

「久しぶりに食べると美味いな、ありがとう」

 素直に礼を言うとソルは犬歯を見せて笑った。ついでに「これもやるよ」と芋けんぴみたいな駄菓子ももらった。こちらも普通に嬉しい。

「なるほど、あんたのその袋はお菓子が大量に入ってるってわけか」
「くくっ、そーだぜ。フルーツガムにきなこぼうに蒲焼き、うまいぼう…あとチロルもあるぜ」
「すげえ量…」
「んもう!あんたってば!そんなにお菓子もらってきて、店主さん脅してないでしょうネ!」
「してねえっつの!単価安いからって色々くれたんだよ!」

 ガサガサとビニール袋を揺らしながら憤慨するソル。グレイは「ならいいけど…」と呆れつつ腰に手をやった。

「くれぐれも参拝中は食べちゃダメヨ!」
「わーってるよ。ラムネはあけちまったから…着く前に食っちまうか。ほれ、てめえらにもやるよ。ありがたく食え愚民共」

 ソルが全員にラムネを配っていく。グレイだけは「これが終わったらいただくわ~」と掌にキープした。

「ソルジさーんあざーす。ん~おいし~」
「…甘いな」
「甘いけど、ラムネの味って癖になるんだよな。ソル、もう一個食っていい?」
「くくっ、珍しく欲しがるじゃねえの…ほら何個でも食え」
「俺も俺も~」
「ああ?ほらよ。やっぱてめえも甘い物好きじゃねえか。さっきは絡みやがってよぉ。クレープの一口もやたらでけえし」
「えへへ、ごめんなさい★」
「ったく…よし、この流れでてめえにもおかわり食わせてやるぜ不死身野郎」
「私はもういい」
「そーか、じゃあ食え(入れ物ごと渡す)」
「…言葉が通じてるか?そして私をゴミ箱にするな(突っ返す)」

 わいわい話しながら仲良くラムネを頬張る四人を、グレイは少し後ろから微笑ましそうに見つめ、煙草の煙を吐く。

「まったく、揃いも揃ってライにあげちゃって」

 可愛いんだからと手の中のラムネを転がした。



 end
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