短編

リナ

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不死鳥シリーズ

ドライヤー(スナック組)

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 ※六話まで読了推奨
 ※スナック組がドライヤーをかけるだけ



 ブオオオオ…

 グレイが洗面台の所で髪を乾かしていた。すでに水気はなくサラサラに仕上がっていた。それを冷風で整えていたのだが

 ガチャ

「!」
「!」

 ソルがシャワー室から出てくる。お互いに「あ」という顔で見合いそれから何事もなかったかのように自分の動きに戻った。ソルはびしょ濡れの体をタオルで拭いて、グレイはブラシで髪を梳いていく。この二人は同居歴が長い為居合わせた所で何とも思わないのである。

「あ、ちょっと」

 びしょびしょの髪をそのままに廊下へ出ようとしたソルに声をかける。ソルは半目のまま「ああ?」と喧嘩腰で振り返った。

「乾かさないと髪痛むわヨ」
「はあ?髪ぃ?…んなのどうでもいいわ」

 そんな事で呼び止めんなと言いたげに不機嫌に返すソル。グレイはコードを伸ばしてドライヤーの風をソルの顔面に当てた。

「ぶっ?!テメゴラァ!!」
「ふふ、前髪がオールバックになっちゃたワネ~このまま自然乾燥にしたら変な癖がついちゃうワヨ~」
「…チッ!ドライヤー貸せぇ!」
「どーぞ」

 グレイから受け取り、不満たらたらにドライヤーの風をあてていく。前髪だけ指で解して整えて乾かし、あとは面倒くさくて一方向からしか当てなかった。おかげで風の当たってない面はびしょ濡れのままだった。

「こっちびしょびしょヨー」

 グレイが廊下でくすくすと笑って見守っている。ソルはそれを鏡越しに睨みつけた。

「てめえ…さっきから絡むんじゃねえよ!徹夜でもしたのかあ??」

 グレイもソルも朝はテンションが低い。今日も互いに起きたばかりで本来なら無視し合って過ごしていてもおかしくないのだが、グレイはやけにソルに絡んでいた。

「別に深夜テンションじゃないワ。ふと思ったのヨ、あんた達ってドライヤーしてるのかしら?って。あんたはこの通り自然乾燥派ヨネ」

 ブルブルと頭を振って余計な水気をとる姿を見つめ、苦笑いを浮かべるグレイ。

「ああ?男はこんなもんだろ。てめえが髪にも顔にも時間かけすぎなんだよ」
「最近の子はこれくらいの美意識は普通ヨ」

 そう言ってグレイがソルのはねていた後ろ髪を指ですいてやる。すぐさまソルが顔をしかめ「触んな」と言いながら廊下に出た。まだ水気の残る髪のままソルはキッチンの方へと姿を消す。

「行っちゃったワ。ふふ、残りの二人も見てみまショ❤」


 ***


 ガチャ

「わっ?!」

 シャワー室を出てすぐ、グレイが仁王立ちで待ち構えていて、ライが裸のまま固まる。

「え、っと…何してんだ…?」

 他二人なら警戒する所だがグレイなので何かトラブルでもあったのか?ぐらいのテンションで尋ねた。グレイもいつも通りの笑顔でうんうんと頷いている。

「人間観察してるノ」
「へえ…って、それ俺しかいなくね…?」

 人間はこの店にライ一人である。人間観察とはつまりライ観察になる。グレイは「あら、そういえばそうネ」と笑い言い直した。

「生き物観察してるノ、だからあたしの事は気にしないで」
「いや…余計…意味わかんねえんだけど…」
「イイからイイから」

 横目で見つつシャワー室の棚からタオルをとる。なんとなく後ろを向いて体を拭いているとグレイが洗面台からドライヤーを取り出して見えやすい場所に置いた。ほぼ同時でライは下着を身に着けた。グレイは邪魔にならないように廊下に移動してライの様子を眺めている。

「マジで何やってんだ…?」

 仕事終わりのシャワーで何故出待ちされてるのだろう、と不思議に思うライ。(仕事の内容なら出てきてすぐ話すだろうし…)。さっさとTシャツを着て、ズボンは暑いのでまだ穿かずにいるとやけに視線を感じグレイの方を見た。

「うふふ、その恰好とってもセクシーネー❤」
「…あんた酔ってんのか?」
「酔ってないワ❤さあ、早く次の動作に移ってチョーダイ❤」
「…??」

 終始動揺を隠せぬまま洗面台に向かい、髪をタオルで拭いた。ドライヤーが置かれているのを一瞥し…なんとなく素直にとるのが怖くて(今日は自然乾燥でいいか…)そのまま廊下に出ようとすると

「ライも自然乾燥派なのカシラ?」

 グレイが壁ドンをするようにして通せんぼする。ライは「やっぱ絡まれるのか…」と顔をしかめコクリと頷いた。

「時間ある時はドライヤーするけど、基本自然乾燥だな。短いからすぐ乾くし」
「風邪引いちゃうし、髪も痛むワヨ」
「俺の髪が痛んでても誰も困らないだろ」

 逆にツヤツヤサラサラ髪でも得しないしな、と付け足す。

「えーあたしはライの髪がサラサラだと嬉しいわヨー?眺めたり撫でる時楽しいし」
「あんたに撫でられる予定はねぇ、ってこら、言ってるそばから!」
「はいはい、せっかくだからあたしが乾かしてあげるワ。洗面台の方に向いて?」

 疑問符をつけてるがほとんどライには拒否権が与えられず無理やり洗面台の前に立たせられた。ため息の後、ライは観念した顔で「勝手にしろよ」と目を瞑って待つのだった。

 ブオオオオ…

 髪を乾かしながら時々手櫛で髪をほぐし、頭を撫でてやるとライはくすぐったそうにする。

「ふふ、ライの髪は太めで綺麗なストレートよネ。海外だとこの髪質って珍しいのヨ。痛みも少ないし羨ましいワ。もしかして髪を染めた事ないのカシラ?」
「ないな。染めたいと思ったことねえし、何より維持費が高え」
「ふふ、確かにソウネ。でもライ、結構似合うと思うワヨ?ブラウンもベージュも、ブロンドでフィンとお揃いにするのも良いんジャナイ?」
「ねえよ。フィンと同じ色にしたら笑い者になるだけだ」

 あんな自然なブロンドは黒髪人間には無縁の代物である。揃えたところで喧嘩っ早いヤンキーか売れないホストにしか見えない。ライが首を振ってるのに対しグレイは「えー」と不満をこぼした。

「物は試しヨー?うちは髪色指定してないし試してみたラ?」
「いいってば。どうせ俺をちんちくりんにして笑いたいだけだろ」
「そんな事ないワヨ~あんたスタイルも顔も良いんだからもっと遊ばないと~」
「この年で髪色で遊ぶかよ。てか、自然乾燥で髪の痛みを気にするわりに髪染めの痛みは気にしないの変じゃね?」
「あーら、ナマイキー」
「うわっやめっ」

 Tシャツの下に隠れてた尻をむぎゅっと揉んで驚かしてやるとライは飛び上がって洗面台の横に逃げた。

「セクハラ!いやパワハラ!」
「あんたがそんな格好してるのが悪いんデショー可愛いお尻を見せられて…触ってくださいって言われてるようなもんジャナイー」
「俺のせいかよ?!あんたが変に絡むから着るタイミング逃したんだからな!」
「他責思考はよくないワ~~」
「じゃあドライヤー止めろよ!!ズボン穿くから!!」
「あはは~や~ヨ~」

 グレイは笑いながらライの持っていたズボンを抜き取り、廊下の外に放り投げてしまう。

「あ!おい!」
「まだ冷風で仕上げてないからじっとしてテ~」

 取りに行こうとしたライを片腕だけで封じ、丁寧に冷風もあてていく。

「もーいいって!乾いてる!」
「だーめ。冷風で仕上げるとキューティクルが閉じるから大事なのヨ」
「また尻揉まれるかもって恐怖で震えながらキューティクル整えたくねえわ!ズボン返しやがれ!」
「コワクナーイコワクナーイ」

「何の騒ぎだ?」

 キッチンの方からフィンが顔を出した。外の見回りを終え帰ってきたらしい。グレイは寸前に尻を揉んでいた事などおくびにも出さず「おかえり」と平然と言ってのける。それに白い目を向けるライ。フィンはグレイを疑うことなく笑みを浮かべたまま二人に近付いた。

「グレイ、ライにドライヤーをしていたのか?」
「そうヨー。ライってば自然乾燥で終わらそうとしてたから暇潰しにやってあげてたのヨ。ほら見てサラサラデショ?」
「本当だ。流石だな、グレイ」
「うふふ、イイのヨ~」
 
 和やかな会話を繰り広げる二人。そしてそれに挟まれてしかめっ面で待機するライ。二人はしばらくライの髪を撫でたり褒めたりして楽しんだ後(ライは悟り顔)、フィンがシャワーの方を見た。

「私もシャワーを使っていいのだろうか?」
「ええ、もちろん。あたしは仕事残ってるし、お先にどーぞ❤」
「ありがとう、ではお言葉に甘えて」

 フィンはさっさと服を脱ぎ、シャワー室に消えた。それを見守っていた二人は顔を見合わせ、片方は笑みを浮かべ片方はため息を吐くのだった。

「ったく…玩具にしやがって。仕事残ってんじゃねえか」
「うふふ、生き物観察がしたかった気分なのヨ」
「どんな気分だ。あー無駄に疲れた。俺はもう行くからな…」
「ズボン忘れちゃダメヨ~」
「はっ!!」

 ライは慌てて廊下に捨てられたズボンを拾いにいく。首だけで振り返り、グレイを睨みつけたあと「おやすみ!!!」と捨て台詞のように言って早歩きで去っていった。

「あは、カーワイイ」

 背中を見守りグレイはくすりと笑う。

 ガチャリ

 いつもの事ながらフィンは速攻シャワーを済ませ、出てきた。

「あら、もう出てきたノ?」

 グレイは片付けようとしてたドライヤーを片手に裸のフィンと見つめ合う。フィンの鍛えられた体を上から下に眺め、

「うーん、イイ体ネ❤」
「ありがとう」

 互いに性欲が噛み合わない相手の為、純粋に褒めて終わる。平和な空間である。フィンは黙々とタオルで拭き、服を身に付けた。それからグレイのもつドライヤーを一瞥する。

「それ…」
「フィンも使うカシラ?」
「いや、私はいい」
「あらフィンも自然乾燥派?もー皆ガサツなんだから~」

 グレイの台詞に、フィンは悪戯っぽく笑った。濡れた髪を一度タオルで拭き整えてから、フウと息を吐く。

 パチチッ

 静電気のように火花が散り、瞬間的にフィンの髪から水気が飛んだ。

「!!!」
「私は自分で乾かせるから問題ない」
「わーお…」

 ポカーンとしてるグレイに「おやすみ」と囁きフィンは去っていく。

「フェニックスはドライヤー要らずって訳ネ…」

 こうしてグレイの生き物観察(ドライヤー編)は終了したのである。







「あ」
「あ」

 飲み物を取りに来たソルと、自室に戻ろうとしたライが廊下で出くわす。互いにいつもより髪がサラサラツヤツヤな為「グレイに絡まれたんだな…」と半目で見合い、労う。

「んじゃ…おやすみ」

 ライが部屋に戻ろうとすると、ソルはその後ろを通り

 むぎゅ

「うわっ!」

 尻を揉むのだった。




 end
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