おまわりさんΩ、猛犬系ワンコに懐かれる

らんね

文字の大きさ
10 / 14

10 「スーパー」らしい

しおりを挟む
裕也くんがチョーカーを着けてくれて、首が守られている安心感と同時に、やはり慣れない感触が息苦しかった。慣れないチョーカーへの俺の不機嫌さを察知したのだろう、裕也君が提案してくれる。

「高瀬さん、帰る前に下でちょっと飲んでいく?」

その誘いに乗った俺は、一階の店の方に顔を出すことにした。

「あ~! えいちゃんいらっしゃい、元気そうじゃん!」

開店準備をしていた店のコ、景くんがぶんぶんと手を振ってくれる。

「聞いたよ、キミにも迷惑をかけた」
「いいって、ああいう時はお互い様!」

そう言ってケラケラ笑う景くんは、俺と同じΩだ。けれど家族仲が良くなくて自然と悪い仲間と夜の街を徘徊するようになったところを、シゲさんが保護して働くようになった。夜の街ではΩは性を売り物にする商売に身を染めてしまうことが多い中で、景くんはシゲさんに救われた形である。

「景、弱めのカクテル作ってやれ」
「おっけぃ!」

裕也くんに指示されて、景くんが張り切ってカクテルを用意する。様々な酒を混ぜて綺麗な色を出すカクテルが、景くんは子どもの頃の絵の具遊びみたいで楽しいらしく、熱心に研究していた。景くんのカクテル目当ての客もぼちぼちいるくらいだ。

「ど~ぞ、ほぼノンアルって言っていいくらいの酒だから」

景くんに招かれて、俺はカウンターの席に座る。

「ありがとう。赤からオレンジのグラデーションがきれいだな」
「だろ? 自信作!」

俺の感想に、景くんがニマッとした。
 それにしても休暇に入る前は夜勤だったので、飲酒は意図的に避けていたので、ほぼノンアルとはいえ久しぶりの酒の味だ。けど煽るようにして飲むようなものではないので、ちびちびと味わっていると、隣に裕也君が座った。
 俺と裕也くんをしばし見比べていた景くんが、ニシシと笑う。

「なんつーかさ、やっぱスーパーαのユウさんくらいじゃないと、えいちゃんは落とせなかったってことだな!」
「景、そのアホっぽい言い方やめろ」

嫌そうな顔をする裕也くんに、俺は思わずクスッと笑う。なんだそのスーパーαってと思うが、そう言いたくなるのもわかるかな。

「だって、この辺りに来るどんなαにも落ちなかったスーパーΩのえいちゃんだぜ? いやぁ、納得だね!」

いや、訂正。実際言われると恥ずかしいな、コレ。
 っていうか景くんの「落ちなかった」という言い方はどうなんだろう? 勤務中に出会う一般人と適切な距離を保つのは、警察官として当然の行動なのだが。それに夜の街にはもっと魅力的なΩがそこいらにいるのに、わざわざ警察官でゴツめな体格の俺に言い寄る奇特なαもいないだろうに。
 いや、奇特どころじゃないαがここにいたか。発情期Ωなんて面倒なものは、交番に捨てて行けばいいものを、わざわざ家に連れ込んでセックスにまで至ったα、裕也くんが。
 変わっている、本当に変わったαだ。そして俺はそんな変わったαである裕也くんを、馬鹿なαだと思えないし、自分が強引に犯された被害者だとも考えてすらいない。「運命」レベルの相性だとかは関係ない、この事実こそが俺の中の真実なんだろう。
 なんだろう、セックスの後よりも今の方が、すごく照れる――!
 自分の気持ちを知ってしまった俺は、きっと赤くなっているであろう顔を両手で隠すのだった。
 その後俺は、そのカクテル一杯だけで店を出る。
 寮まで送ってもらっている車の中は、無言だ。雰囲気悪くてゴメン、俺が色々いっぱいいっぱいで、今になってなにを話せばいいのかわからなくなったんだ。けど裕也くんはこっちをチラチラ見るものの、なにも言ってこない。
 そんな無言のドライブをして寮に着いてからの、別れ際。

「裕也くん」
「なに?」

俺がなけなしの勇気を振り絞って呼び掛けると、裕也くんがやわらかく応じてくれる。
 裕也くんからは「恋人になろう」と意志表示をされたけれど、俺からは匂わせなことは言えど、具体的な言葉ではなにも返してはいない。やっぱり、自分の気持ちに気付いてしまったのに、それは狡いだろう、年上の大人としては。

「キミのことをほどんど知らないのに。俺、キミを好きみたいだ」
「知ってる。けど言葉、嬉しい」

本当に嬉しそうにする裕也抱き寄せられてのキスが長くなって、なかなか車から降りられなかった。
 もう、寮の誰かに目撃されるのは、諦めよう。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

お世話したいαしか勝たん!

沙耶
BL
神崎斗真はオメガである。総合病院でオメガ科の医師として働くうちに、ヒートが悪化。次のヒートは抑制剤無しで迎えなさいと言われてしまった。 悩んでいるときに相談に乗ってくれたα、立花優翔が、「俺と一緒にヒートを過ごさない?」と言ってくれた…? 優しい彼に乗せられて一緒に過ごすことになったけど、彼はΩをお世話したい系αだった?! ※完結設定にしていますが、番外編を突如として投稿することがございます。ご了承ください。

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

【完結】出会いは悪夢、甘い蜜

琉海
BL
憧れを追って入学した学園にいたのは運命の番だった。 アルファがオメガをガブガブしてます。

隣の番は、俺だけを見ている

雪兎
BL
Ωである高校生の湊(みなと)は、幼いころから体が弱く、友人も少ない。そんな湊の隣に住んでいるのは、幼馴染で幼少期から湊に執着してきたαの律(りつ)。律は湊の護衛のように常にそばにいて、彼に近づく人間を片っ端から遠ざけてしまう。 ある日、湊は学校で軽い発情期の前触れに襲われ、助けてくれたのもやはり律だった。逃れられない幼馴染との関係に戸惑う湊だが、律は静かに囁く。「もう、俺からは逃げられない」――。 執着愛が静かに絡みつく、オメガバース・あまあま系BL。 【キャラクター設定】 ■主人公(受け) 名前:湊(みなと) 属性:Ω(オメガ) 年齢:17歳 性格:引っ込み思案でおとなしいが、内面は芯が強い。幼少期から体が弱く、他人に頼ることが多かったため、律に守られるのが当たり前になっている。 特徴:小柄で華奢。淡い茶髪で色白。表情はおだやかだが、感情が表に出やすい。 ■相手(攻め) 名前:律(りつ) 属性:α(アルファ) 年齢:18歳 性格:独占欲が非常に強く、湊に対してのみ甘く、他人には冷たい。基本的に無表情だが、湊のこととなると感情的になる。 特徴:長身で整った顔立ち。黒髪でクールな雰囲気。幼少期に湊を助けたことをきっかけに執着心が芽生え、彼を「俺の番」と心に決めている。

起きたらオメガバースの世界になっていました

さくら優
BL
眞野新はテレビのニュースを見て驚愕する。当たり前のように報道される同性同士の芸能人の結婚。飛び交うα、Ωといった言葉。どうして、なんで急にオメガバースの世界になってしまったのか。 しかもその夜、誘われていた合コンに行くと、そこにいたのは女の子ではなくイケメンαのグループで――。

酔った俺は、美味しく頂かれてました

雪紫
BL
片思いの相手に、酔ったフリして色々聞き出す筈が、何故かキスされて……? 両片思い(?)の男子大学生達の夜。 2話完結の短編です。 長いので2話にわけました。 他サイトにも掲載しています。

処理中です...