僕のΩは案外可愛い?

らんね

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二章 前島稔はαである

91 おかしいのは僕だったかもしれない

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 けれど裕也さん本人は、驚愕している僕のことをサラッとスルーだ。

「俺にはなおさら話がわからん。異変がないわけがないんだよ、『運命』の相性っていうのは」

裕也さんから睨むみたいにして言われたけれど、異変かぁ。香坂と初めて会った時の感覚って、本当に自信がないんだよね。けどだんまりは許さないっていう裕也さんの圧を感じた僕は、ビビりながらもあの時の状況を話す。

「ちょっと変だなとは思いましたよ、妙にフェロモンが暴れそうになるから。けどそういうので病院にかかるのも気恥ずかしくて、いつも飲んでいる抑制剤で誤魔化したんです」

これを聞いた裕也さんが、すごいお馬鹿さんを見ちゃったみたいな顔になった。

「おいおい、アレが『ちょっと変』くらいで済むわけがないだろう!? 理性が飛んでその場で押し倒して突っ込みたくなるもんだろうが、おかしいぞお前!」

そう詰め寄られてもさ、本当にそんな感じだったんだから仕方ないじゃん?

「『運命』レベルじゃなくても、相性がよかったら動悸が激しくなるもんよ?」
「……でも、本当にそんな感じだったし」

従兄さんにまで言われてしまって、落ち込みが過ぎてふてくされる僕に、裕也さんと従兄さんが呆れている。

「フェロモンコントロールが上手いっていうより、我慢し過ぎていっそ鈍くなったんじゃねぇか?」
「要するに、怜が変わり種Ωだっただけじゃなくて、前島クンも変わり種αだったのかぁ。いっそ倒れて病院に担ぎ込まれたら、すぐに『運命』に近付いたんだって教えてもらえたんだろうにね」

なんかすごい言われようなのはわかる。え、僕そんなに? けど、いつもフェロモンがおかしくなるわけじゃあなかった。今にして思えば、香坂がヒートになるタイミングで影響があったんだろうな。

「けれど今後は、フェロモンを抑え過ぎない方がいい」
「そうだねぇ、今回の件はそのせいでの悪影響みたいだし」

なんか二人して謎の納得の仕方をしているんだけれど、なんですそれ? 疑問顔の僕に、教えてくれたのは裕也さんだった。

「αもΩも、フェロモンのコントロールが上手い奴ほど理性が飛んだ時にヤバいんだから、テメェは特に気ぃ付けとけ」

そうなの? 初耳な情報に驚く僕に、従兄さんが解説してくれる。

「普通に日常を過ごしていれば、そこまで振り切れないもんね。こういう界隈だから知れている話だよ」

なるほど、「飲み屋街あるある」な話なのか。にしても、やっぱり僕が悪いんじゃん。あぁ、なおさらへこむ――

「どうにもなぁ、前島クンには酒の失敗談では済まない問題だったのかぁ。これは、怜の方に期待か?」
「あっちは、どんな話になっているやらだ」

カウンターと一体化したくなっている僕の両脇で、従兄さんと裕也さんがボソボソとしゃべっているけれど、僕にはなんのことやらだ。

~~~ side 香坂

前島が急遽「αのお悩み相談会」をしていたその頃。俺はなにをしていたかっていうと、景さんにあっちの店まで引っ張られていた。
 なんかアニキが前島だけに話があるみたいで俺は店に入れなくなったから、暇をつぶしていたコンビニで景さんに遭遇したんだよ。

「聞いたぞ、なんかやらかしたって? 怜の彼氏」
「やらかしたって、別にそれ程のことじゃあねぇし」

景さんが俺の顔を見るなりそう言ってきたけれど、あの件については前島はすげぇ気にしているらしいし、俺は誤魔化すように言葉を濁す。けれど、景さんは俺がなんと答えようと関係ないらしい。

「まあまあ、これからウチの店においでよ!」
「は? いや、もうちょいしたら仕事だし、って景さん!」

俺を体当たりする勢いで強引に連れていく景さんに、俺も怪我をさせるわけにはいかないんで本気で抵抗していいものかと困っていると、開店前のバーに来てしまった。

「お、来たな」

すると何故かバーのボックス席に、Ω警官の高瀬さんが私服姿で座っていた。

「これからΩ会をするんで、ユウさんは追い出しておいたからね!」
「不満タラタラだったけどな」

ニコニコ笑顔の景さんと、苦笑する高瀬さんとの差がすげぇ。店長なのに追い出されたのかよユウさんは。ってか、Ω会ってナンだ? 謎しかない俺は高瀬さんの正面に座らされ、三人分のコーヒーを持ってきた景さんが退路を塞ぐように俺の隣に座った。
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