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三章 落ちないΩ
113 そっとしておいてもらえない
そんな僕の心の中はともかくとして、話を元に戻そう。
「無関係のΩに絡むなんて、あちらはお行儀が悪いみたいだねぇ。αならがっつかず、余裕を見せてナンボだよ」
おじいさんがお茶をズズッとしながら、絡んだ相手に手厳しいコメントをする。
「あ~あ、せっかく美味しいものを食べてご機嫌なはずだったのになぁ」
機嫌がいい香坂は夜に特別可愛くて、すんごくエロくなる。ランチデートを譲った僕へのご褒美はソレだったのに、本当になにしてくれているんだって話じゃない? まあ、そんな香坂を慰める時間もそれなりに好きだけどさ。
でもやっぱり、セックスはお互いにハッピーでやるのが一番キモチイイよね?
僕の中で怒りが再燃して、フェロモンがまたモゾモゾし出したのを落ち着ける。香坂からのお土産と土産話、どっちも楽しみだ。そうそう、楽しいことを考えておこう。
こんな風に僕が必死に深呼吸をしていると。
「その子は、美味しいものが好きなのかい?」
僕の言い方が単なる食いしん坊キャラに聞こえたみたいで、おじいさんがそんな風に聞いてきた。
「それもありますけど。料理人見習いで、今度調理師免許試験を受けるんですよ。頑張り屋だし、服のセンスいいし。今度デートついでに、僕のスーツ選びに付き合ってもらうんで、それで――」
「ついでの話が長い!」
だんだん語りに熱が入ってきた僕に、先輩が割り込んでストップをかけた。
「前島に『運命』クンについて語らせたら、長くなりますんでお気を付けください」
「ほぅ、相手は『運命』なのかい」
先輩からの忠告に、おじいさんが興味津々な顔になるけれど。
「う~ん、まあ」
僕はこれになんとも言えない表情をしてしまう。僕と香坂は全部「運命」がきっかけだったのは事実だけれど、そこだけを切り抜かれるのは微妙だなぁ。「運命」だから恋人になったわけじゃあない。僕にとって香坂怜が最高に可愛い人ってことなんだ。
「彼が大事なんです」
「ふむふむ」
だからそうとだけ告げる僕に、おじいさんは面白そうにしている。いやいや、興味を持たなくていいから。僕らをそっとしておいてくれるとありがたいんですけれど。
そう思っている僕に、先輩が言う。
「なんにせよ、お前のΩが魅力的な男なのは事実だ。その絡んだ相手がもしΩ探し中のαだったら、拗れるかもしれんぞ」
「えぇ~?」
香坂がモテる男なのは高校時代からだけどさぁ。前に戸山も言っていたけれど、妙な輩の支配欲や征服欲を刺激してしまうのは困りものだ。
救いは、香坂のフェロモンを匂えるのは僕だけってことかな。
バイト先でそんな会話をしてから帰宅すると、香坂はもう一階の店に降りていた。
僕はちょっと講義の課題をこなしてから、夕飯を食べに店に顔を出すと、店はちょうど賑わっている頃合いだ。店員は皆忙しくしていて、僕はひっそりといつものカウンター席の隅に座る。こう忙しそうなら、普段なら部屋で適当に食べるところだけれど、今日は香坂の様子を見たいしな。
「よ、前島クン」
料理を注文しようと店員を探したら、従兄さんが寄ってきた。
「怜がお前さんの飯を作っているから、顔見せるだろうぜ」
従兄さんはからかい顔で言ってくるけれど、僕が店に入ったのを香坂は見ていたのか。注文する前にもう作っているっていうことは、どうやら今夜は香坂作の賄い飯を食べることになるみたいだ。なにが出るのかお楽しみか。けど忙しいなら普通のメニューでよかったのに。いや、そういう飯きっかけがないと、忙しい中で抜けられない香坂の真面目さかもね。
あ、そうだ、この隙に従兄さんに聞こう。
「香坂の様子はどうですか? 出かけた先で変なαに絡まれたって、電話で聞きましたけど」
「あれ、そうなのか?」
僕がそう切り出すと、逆に従兄さんは初耳だったみたいで、驚いている。
「う~ん、別にいつも通りに見えたけどなぁ」
「そうですか」
なら、そう大事が起きたわけではないのかもしれない。けど本人から話を聞かないと、なんとも言えないか。
「無関係のΩに絡むなんて、あちらはお行儀が悪いみたいだねぇ。αならがっつかず、余裕を見せてナンボだよ」
おじいさんがお茶をズズッとしながら、絡んだ相手に手厳しいコメントをする。
「あ~あ、せっかく美味しいものを食べてご機嫌なはずだったのになぁ」
機嫌がいい香坂は夜に特別可愛くて、すんごくエロくなる。ランチデートを譲った僕へのご褒美はソレだったのに、本当になにしてくれているんだって話じゃない? まあ、そんな香坂を慰める時間もそれなりに好きだけどさ。
でもやっぱり、セックスはお互いにハッピーでやるのが一番キモチイイよね?
僕の中で怒りが再燃して、フェロモンがまたモゾモゾし出したのを落ち着ける。香坂からのお土産と土産話、どっちも楽しみだ。そうそう、楽しいことを考えておこう。
こんな風に僕が必死に深呼吸をしていると。
「その子は、美味しいものが好きなのかい?」
僕の言い方が単なる食いしん坊キャラに聞こえたみたいで、おじいさんがそんな風に聞いてきた。
「それもありますけど。料理人見習いで、今度調理師免許試験を受けるんですよ。頑張り屋だし、服のセンスいいし。今度デートついでに、僕のスーツ選びに付き合ってもらうんで、それで――」
「ついでの話が長い!」
だんだん語りに熱が入ってきた僕に、先輩が割り込んでストップをかけた。
「前島に『運命』クンについて語らせたら、長くなりますんでお気を付けください」
「ほぅ、相手は『運命』なのかい」
先輩からの忠告に、おじいさんが興味津々な顔になるけれど。
「う~ん、まあ」
僕はこれになんとも言えない表情をしてしまう。僕と香坂は全部「運命」がきっかけだったのは事実だけれど、そこだけを切り抜かれるのは微妙だなぁ。「運命」だから恋人になったわけじゃあない。僕にとって香坂怜が最高に可愛い人ってことなんだ。
「彼が大事なんです」
「ふむふむ」
だからそうとだけ告げる僕に、おじいさんは面白そうにしている。いやいや、興味を持たなくていいから。僕らをそっとしておいてくれるとありがたいんですけれど。
そう思っている僕に、先輩が言う。
「なんにせよ、お前のΩが魅力的な男なのは事実だ。その絡んだ相手がもしΩ探し中のαだったら、拗れるかもしれんぞ」
「えぇ~?」
香坂がモテる男なのは高校時代からだけどさぁ。前に戸山も言っていたけれど、妙な輩の支配欲や征服欲を刺激してしまうのは困りものだ。
救いは、香坂のフェロモンを匂えるのは僕だけってことかな。
バイト先でそんな会話をしてから帰宅すると、香坂はもう一階の店に降りていた。
僕はちょっと講義の課題をこなしてから、夕飯を食べに店に顔を出すと、店はちょうど賑わっている頃合いだ。店員は皆忙しくしていて、僕はひっそりといつものカウンター席の隅に座る。こう忙しそうなら、普段なら部屋で適当に食べるところだけれど、今日は香坂の様子を見たいしな。
「よ、前島クン」
料理を注文しようと店員を探したら、従兄さんが寄ってきた。
「怜がお前さんの飯を作っているから、顔見せるだろうぜ」
従兄さんはからかい顔で言ってくるけれど、僕が店に入ったのを香坂は見ていたのか。注文する前にもう作っているっていうことは、どうやら今夜は香坂作の賄い飯を食べることになるみたいだ。なにが出るのかお楽しみか。けど忙しいなら普通のメニューでよかったのに。いや、そういう飯きっかけがないと、忙しい中で抜けられない香坂の真面目さかもね。
あ、そうだ、この隙に従兄さんに聞こう。
「香坂の様子はどうですか? 出かけた先で変なαに絡まれたって、電話で聞きましたけど」
「あれ、そうなのか?」
僕がそう切り出すと、逆に従兄さんは初耳だったみたいで、驚いている。
「う~ん、別にいつも通りに見えたけどなぁ」
「そうですか」
なら、そう大事が起きたわけではないのかもしれない。けど本人から話を聞かないと、なんとも言えないか。
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