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三章 落ちないΩ
114 顔を合わせれば安心する
こうして僕が色々悶々と考えながらチビチビ水を飲んでいると、しばらくして香坂が厨房から出てきた。
「おら、食え」
僕の目の前に出されたのは丼器に盛られた海鮮丼だ。あと野菜たっぷりサラダね。お洒落なバーで和食の丼の器っていうのはすごいミスマッチだけれど、店員の賄い用の器なんだって。丼って食べやすいもんね。
「こういう海鮮って珍しいね」
「刺身で食える魚が入って、端切れを貰えたんだよ」
しげしげと海鮮丼を眺める僕に、香坂がそう説明する、っていうか、カウンターの離れた所に座っている客の視線が突き刺さるな。ごめんね? お得意さん用の特別メニューを食べちゃうなんてさ。
「美味しそうだけど、手間じゃなかった?」
僕が少しの申し訳なさを漏らすと、ぐい~っと香坂がもたれ掛かってきた。
「前もって仕込んでいたから、盛り付けの手間はそうでもねぇ。あと、おかえり」
香坂がそっけない感じで言ってくるけれどさ、ついでみたいになった挨拶のために厨房から出てきたんだろうに。ホントに、そういう所が可愛いんだよ。
「ん、ただいま」
僕もニコリと挨拶を返して、早速海鮮丼に箸をつける。お刺身とご飯を一緒に口に入れると、漬けにされているお刺身の塩味と旨味がイイ感じに美味しいや。
けど食べながらも、言わなきゃならないことは忘れない。
「あのさぁ、電話、心配したんですけど!」
僕がそう文句を言うと、香坂はちょっと口を尖らせるようにした。
「その話は部屋でするわ――なぁ、嫉妬したか?」
ボソッと聞いてくる香坂に、僕は海鮮丼を一旦置いてから膨れっ面になる。
「めっちゃしたに決まってるじゃん! だって相手が誰であれ、女性とデートだよ? それで先輩にウザがられた」
「ふん、そりゃあ誘いに乗った甲斐があったな」
文句を言う僕に、香坂は頬に触れるだけのキスをしてから、厨房に戻っていく。これは、佳澄さんとの出発時のキスへの反撃かな? それにしてもこのイケメンめ、僕を試すなんて悪い男だよキミは!
なんにせよ、香坂のメンタルが意外と平気そうで安心した。だから僕は忙しそうな店の邪魔にならないように、海鮮丼とサラダを食べてしまって、賄い飯用の金額を払って二階に戻る。
バイトから帰った時は気付かなかったけれど、キッチンに香坂のお土産だろう、ホテルのロゴ入り紙袋が置いてあった。中身はパイか。温め直して食べたら美味しいだろうコレは、きっと明日の朝食だな。
それから勉強部屋でしばらく黙々と課題の続きをやっていたら、香坂が仕事を上がってきたみたいで、玄関から物音がした。ノートパソコンの作業を保存してからリビングに顔を出せば、香坂がバーテン服を脱いでソファに放っているところだった。
「お疲れ、早かったね」
僕が声をかけながら冷蔵庫から麦茶を出してあげると、香坂はコップ二杯を一気飲みする。
「ぷはぁ! 客が早くに引いたんで、アニキが『もう上がれ』ってさ」
この香坂の言い分から想像するに、従兄さんに気遣われて話をする時間を貰ったんだろうな。
「ならお風呂の用意は出来ているから、お先にどうぞ」
「ん」
僕が勧めると早速とばかりに、香坂はこの場で残りの服を全部ポイポイっと脱いで下着一枚になってから、風呂場に向かう。普段の香坂なら脱いだ服は皺にならないように畳んでいく几帳面な男なのだけれど、今日は昼間に外出したし、疲れているんだろうな。代わりに僕が服を畳んでソファに置いておく。
それから僕も課題の続きをキリのいいところまで進めたら、香坂が腰にタオルを巻いただけの姿で風呂から上がってきた。
「風呂で寝ていないか、もう少しで見に行くところだったよ」
「逆に目が覚めたわ」
僕がからかいと本気の半々で言うのに、香坂はそんな強がりを返す。
それから香坂と入れ替わりで僕も風呂に入ったけれど、あまり時間をかけずに上がる。そして部屋着ズボンだけの姿で寝室に行けば、香坂はベッドの上でスマホをいじりながら待っていた。けど、やっぱりダルそうだな。
「疲れたなら、もう寝ちゃう? 話は明日でもいいけど」
ベッドに腰かけてから提案した僕を、香坂がギロッと睨む。
「馬鹿言うな、こっちはなぐさめられ待ちだ」
そう言って香坂が強引に引っ張ったものだから、僕はその勢いで香坂の上に倒れ込むと、唇を食べるようにキスをされる。
「っは、変なαに絡まれた俺って可哀想だろ?」
「ふはっ、自分で言っちゃうんだ?」
珍しくわかりやすい拗ね方をする香坂って、キュンとするな。
「おら、食え」
僕の目の前に出されたのは丼器に盛られた海鮮丼だ。あと野菜たっぷりサラダね。お洒落なバーで和食の丼の器っていうのはすごいミスマッチだけれど、店員の賄い用の器なんだって。丼って食べやすいもんね。
「こういう海鮮って珍しいね」
「刺身で食える魚が入って、端切れを貰えたんだよ」
しげしげと海鮮丼を眺める僕に、香坂がそう説明する、っていうか、カウンターの離れた所に座っている客の視線が突き刺さるな。ごめんね? お得意さん用の特別メニューを食べちゃうなんてさ。
「美味しそうだけど、手間じゃなかった?」
僕が少しの申し訳なさを漏らすと、ぐい~っと香坂がもたれ掛かってきた。
「前もって仕込んでいたから、盛り付けの手間はそうでもねぇ。あと、おかえり」
香坂がそっけない感じで言ってくるけれどさ、ついでみたいになった挨拶のために厨房から出てきたんだろうに。ホントに、そういう所が可愛いんだよ。
「ん、ただいま」
僕もニコリと挨拶を返して、早速海鮮丼に箸をつける。お刺身とご飯を一緒に口に入れると、漬けにされているお刺身の塩味と旨味がイイ感じに美味しいや。
けど食べながらも、言わなきゃならないことは忘れない。
「あのさぁ、電話、心配したんですけど!」
僕がそう文句を言うと、香坂はちょっと口を尖らせるようにした。
「その話は部屋でするわ――なぁ、嫉妬したか?」
ボソッと聞いてくる香坂に、僕は海鮮丼を一旦置いてから膨れっ面になる。
「めっちゃしたに決まってるじゃん! だって相手が誰であれ、女性とデートだよ? それで先輩にウザがられた」
「ふん、そりゃあ誘いに乗った甲斐があったな」
文句を言う僕に、香坂は頬に触れるだけのキスをしてから、厨房に戻っていく。これは、佳澄さんとの出発時のキスへの反撃かな? それにしてもこのイケメンめ、僕を試すなんて悪い男だよキミは!
なんにせよ、香坂のメンタルが意外と平気そうで安心した。だから僕は忙しそうな店の邪魔にならないように、海鮮丼とサラダを食べてしまって、賄い飯用の金額を払って二階に戻る。
バイトから帰った時は気付かなかったけれど、キッチンに香坂のお土産だろう、ホテルのロゴ入り紙袋が置いてあった。中身はパイか。温め直して食べたら美味しいだろうコレは、きっと明日の朝食だな。
それから勉強部屋でしばらく黙々と課題の続きをやっていたら、香坂が仕事を上がってきたみたいで、玄関から物音がした。ノートパソコンの作業を保存してからリビングに顔を出せば、香坂がバーテン服を脱いでソファに放っているところだった。
「お疲れ、早かったね」
僕が声をかけながら冷蔵庫から麦茶を出してあげると、香坂はコップ二杯を一気飲みする。
「ぷはぁ! 客が早くに引いたんで、アニキが『もう上がれ』ってさ」
この香坂の言い分から想像するに、従兄さんに気遣われて話をする時間を貰ったんだろうな。
「ならお風呂の用意は出来ているから、お先にどうぞ」
「ん」
僕が勧めると早速とばかりに、香坂はこの場で残りの服を全部ポイポイっと脱いで下着一枚になってから、風呂場に向かう。普段の香坂なら脱いだ服は皺にならないように畳んでいく几帳面な男なのだけれど、今日は昼間に外出したし、疲れているんだろうな。代わりに僕が服を畳んでソファに置いておく。
それから僕も課題の続きをキリのいいところまで進めたら、香坂が腰にタオルを巻いただけの姿で風呂から上がってきた。
「風呂で寝ていないか、もう少しで見に行くところだったよ」
「逆に目が覚めたわ」
僕がからかいと本気の半々で言うのに、香坂はそんな強がりを返す。
それから香坂と入れ替わりで僕も風呂に入ったけれど、あまり時間をかけずに上がる。そして部屋着ズボンだけの姿で寝室に行けば、香坂はベッドの上でスマホをいじりながら待っていた。けど、やっぱりダルそうだな。
「疲れたなら、もう寝ちゃう? 話は明日でもいいけど」
ベッドに腰かけてから提案した僕を、香坂がギロッと睨む。
「馬鹿言うな、こっちはなぐさめられ待ちだ」
そう言って香坂が強引に引っ張ったものだから、僕はその勢いで香坂の上に倒れ込むと、唇を食べるようにキスをされる。
「っは、変なαに絡まれた俺って可哀想だろ?」
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珍しくわかりやすい拗ね方をする香坂って、キュンとするな。
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