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一章 再会
40 とりあえず、今は幸せ
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「一人じゃなけりゃあ妙なのも絡んでこないから、俺はできるだけ一緒にいたのな」
「なるほどねぇ、確かに戸山とニコイチみたいなイメージはある」
高校時代の香坂のことを思い出して僕が大いに納得していると、「それだよねぇ」と従兄さんが口を挟む。
「そういう人間関係がウザいっていうのがあるんだろうな。前島クンと再会するまでの怜は、ほぼ店と部屋との上がり下がりだけの生活だったのよ。ちょいお外恐怖症気味なワケ」
「ですね、たまに俺ん家にフラッと来るくらいか。だから外にデート行くって聞いて『マジでか!?』ってビビったし」
従兄さんの話に戸山がウンウンとしている。
「……外出嫌いって?」
僕としてはこっちの方が驚きだ。けど僕は学生だから昼型だし、香坂は飲み屋仕事だから夜型だから、わざわざ時間を合わせて顔を見せないとすれ違うんだな。まあ僕らの場合、主にセックスをする時間を捻出しているわけだけれども。そんな日々を思い返しても、確かに香坂って店にいるか家にいるかのどっちかで、居所を探した覚えがない。うろついても、だいたい店回りのどこかにいる。そうか、香坂って軽く引きこもっていたのか。
「けどこれで、野村がこの辺りに湧かないといいけどなぁ。ぜってぇ面倒くせぇことになるぞ」
「せっかく怜の行動が外向きになっているところに、妙な水を差されたくないね」
戸山のボヤキに、従兄さんが心配そうに眉間に皺を寄せている。
「うぅん……これはちょっと考えないと」
僕も色々と考えながら、スマホを睨みつけた。
戸山とそんな話をした後しばらくして、香坂が店に降りてきた。「戸山が店にいるよ」ってメッセ送ったら、暇があるなら下で戸山と三人一緒にご飯を食べようってことになったんだよ。
「おっす、お疲れ」
手を上げて戸山に挨拶する香坂は、だいぶん機嫌が直ったみたいだ。戸山が軽トラで来ているから酒が飲めないってことで、香坂だけ軽い酒を頼んでいた。
「山はキレーだったんか?」
運ばれてきた料理をつまみながら、戸山がトラブったことには触れずにそう尋ねる。
「ああ、なかなかだったぜ」
「ちょうど見頃で、もうちょいしたら散っちゃいそう」
「あ~、行くなら早めにかぁ。ウチのヤツどうだったかなぁ?」
僕らがそれぞれに教えると、戸山は自分の恋人のスケジュールを調べ出した。恋人の彼女さんは看護師らしいよ、農作業中にやらかして骨折した時に知り合ったんだってさ。あと、デートするなら家には今日も乗ってきた軽トラしかないから、車を借りないといけないってさ。軽トラでも気にしないならいいんだろうけれど、長時間乗るのは腰に辛いかもね。
「かぁ~っ! 軽でいいから車欲しい、けどマイカーへの道は遠い!」
戸山が心からの叫びを上げるのに、僕は「ははは」と乾いた笑いを上げるしかできない。
「まあがんばれや、俺らみたいな仕事ってローンも厳しいぞ」
香坂が冷たく現実を突きつけるのが、なんとも世知辛い。
「はっは、デートは格好つけてナンボだぞぉ!」
「わぁってますよ!」
余所の席の常連客の男性に茶々を入れられて、戸山がキレ気味に返した。
そんな風にひと騒ぎしてから、改めてデートの内容に話が戻る。
「しっかし香坂、お前マメだったんだな。手作り弁当とか」
「……うっせ」
香坂がすごいしかめ面だけれど、昼食をどこで食べたのかのリサーチに「現地で弁当」と答えたところから、弁当持参したことが従兄さんからバラされたわけだ。恥ずかしがることないじゃん、美味しかったよ?
「けどさ、あの辺にいい感じのレストランとかなさそうだったよ? ちょっと離れないとかな」
香坂がおにぎりをあげたあの幼児も、それがわかっているから「お腹空いた!」アピールをしていたんだろうし。
「弁当かぁ、コンビニのじゃあ風情がないし、しおりんは仕事が忙しいし。弁当は母ちゃんに相談かな?」
「いいだろ男飯で、握り飯くらい自分で握れや」
悩む戸山に香坂が口を出す。
「俺はお前みたいにセンスがないの、しおりんに喜ばれたいの! ソレのせいでフラれたらどうするんだよ!?」
戸山の再びの心の叫びに、僕は「まあまあ」と取り成すのだった。
「なるほどねぇ、確かに戸山とニコイチみたいなイメージはある」
高校時代の香坂のことを思い出して僕が大いに納得していると、「それだよねぇ」と従兄さんが口を挟む。
「そういう人間関係がウザいっていうのがあるんだろうな。前島クンと再会するまでの怜は、ほぼ店と部屋との上がり下がりだけの生活だったのよ。ちょいお外恐怖症気味なワケ」
「ですね、たまに俺ん家にフラッと来るくらいか。だから外にデート行くって聞いて『マジでか!?』ってビビったし」
従兄さんの話に戸山がウンウンとしている。
「……外出嫌いって?」
僕としてはこっちの方が驚きだ。けど僕は学生だから昼型だし、香坂は飲み屋仕事だから夜型だから、わざわざ時間を合わせて顔を見せないとすれ違うんだな。まあ僕らの場合、主にセックスをする時間を捻出しているわけだけれども。そんな日々を思い返しても、確かに香坂って店にいるか家にいるかのどっちかで、居所を探した覚えがない。うろついても、だいたい店回りのどこかにいる。そうか、香坂って軽く引きこもっていたのか。
「けどこれで、野村がこの辺りに湧かないといいけどなぁ。ぜってぇ面倒くせぇことになるぞ」
「せっかく怜の行動が外向きになっているところに、妙な水を差されたくないね」
戸山のボヤキに、従兄さんが心配そうに眉間に皺を寄せている。
「うぅん……これはちょっと考えないと」
僕も色々と考えながら、スマホを睨みつけた。
戸山とそんな話をした後しばらくして、香坂が店に降りてきた。「戸山が店にいるよ」ってメッセ送ったら、暇があるなら下で戸山と三人一緒にご飯を食べようってことになったんだよ。
「おっす、お疲れ」
手を上げて戸山に挨拶する香坂は、だいぶん機嫌が直ったみたいだ。戸山が軽トラで来ているから酒が飲めないってことで、香坂だけ軽い酒を頼んでいた。
「山はキレーだったんか?」
運ばれてきた料理をつまみながら、戸山がトラブったことには触れずにそう尋ねる。
「ああ、なかなかだったぜ」
「ちょうど見頃で、もうちょいしたら散っちゃいそう」
「あ~、行くなら早めにかぁ。ウチのヤツどうだったかなぁ?」
僕らがそれぞれに教えると、戸山は自分の恋人のスケジュールを調べ出した。恋人の彼女さんは看護師らしいよ、農作業中にやらかして骨折した時に知り合ったんだってさ。あと、デートするなら家には今日も乗ってきた軽トラしかないから、車を借りないといけないってさ。軽トラでも気にしないならいいんだろうけれど、長時間乗るのは腰に辛いかもね。
「かぁ~っ! 軽でいいから車欲しい、けどマイカーへの道は遠い!」
戸山が心からの叫びを上げるのに、僕は「ははは」と乾いた笑いを上げるしかできない。
「まあがんばれや、俺らみたいな仕事ってローンも厳しいぞ」
香坂が冷たく現実を突きつけるのが、なんとも世知辛い。
「はっは、デートは格好つけてナンボだぞぉ!」
「わぁってますよ!」
余所の席の常連客の男性に茶々を入れられて、戸山がキレ気味に返した。
そんな風にひと騒ぎしてから、改めてデートの内容に話が戻る。
「しっかし香坂、お前マメだったんだな。手作り弁当とか」
「……うっせ」
香坂がすごいしかめ面だけれど、昼食をどこで食べたのかのリサーチに「現地で弁当」と答えたところから、弁当持参したことが従兄さんからバラされたわけだ。恥ずかしがることないじゃん、美味しかったよ?
「けどさ、あの辺にいい感じのレストランとかなさそうだったよ? ちょっと離れないとかな」
香坂がおにぎりをあげたあの幼児も、それがわかっているから「お腹空いた!」アピールをしていたんだろうし。
「弁当かぁ、コンビニのじゃあ風情がないし、しおりんは仕事が忙しいし。弁当は母ちゃんに相談かな?」
「いいだろ男飯で、握り飯くらい自分で握れや」
悩む戸山に香坂が口を出す。
「俺はお前みたいにセンスがないの、しおりんに喜ばれたいの! ソレのせいでフラれたらどうするんだよ!?」
戸山の再びの心の叫びに、僕は「まあまあ」と取り成すのだった。
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