僕のΩは案外可愛い?

らんね

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一章 再会

52 怒られましょう!

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香坂が入っているのは個室だった。これは城崎さんの配慮もあるだろうし、ヒートの症状で運ばれたΩへの配慮もあるのだろう。

「香坂」

僕が声をかけながら病室に入れば、寝起きのボーッとした顔で香坂が振り向いた。病院着姿で点滴に繋がれているのが見慣れないせいで、僕はなんだか心がギュッとなる。

「おぉ、なんか知らんがすげぇ寝た」

それでもあくびをかみ殺している香坂はいつもの香坂で、そこはホッとした。点滴にヒートの抑制剤も含まれているので、まだ眠そうな目をしているけれど。

「おう、案外顔色良さそうじゃんか」
「……誰だ?」

僕の隣から話しかける城崎さんを、香坂は眉を寄せて見つめる。同じ学校の先輩だからひょっとして知っているかもと思ったけれど、やっぱり香坂は顔を見たことなかったか。

「こっちは城崎さん、僕の高校の部活の先輩な」
「あ? お前、なんか部活してたか?」

僕が紹介すると、香坂がそもそもの疑問を口にした。

「してたよ、落語愛好会」
「はぁん?」

香坂は「そんな部活あったのか?」っていう顔だね? いいよ、大抵の人がそういう反応だからさ。

「で、今回香坂を見付けるのに、すごく助けてもらっていて――」

警察に話したことを香坂にも改めて話すと、だんだんと香坂の目が座ってくる。

「……なんか、色々腑に落ちたわ」
「へへっ?」

深い溜息と共に話す香坂に、僕はとりあえず笑っておく。

「たまにお前がタイミング良すぎるのとか。それに最近、妙なタイミングでスマホいじってたもんな」
「あれね、香坂のフェロモン値注意のお知らせチェック」
「はぁん」

香坂の相槌の声が低くて怖い。要するに、僕は察し上手に見せかけてズルをしていたわけである。なんか、ホントごめんね?

「お前はフェロモン値がかなりブレる体質みたいだから、アプリの試用にはかなりためになったぞ? いやぁ、お前らに目をつけた俺は素晴らしい!」

けどそんな僕の隣で、城崎さんはこの治験がいかに助けになったかを語り出すけれど、城崎さん、その話は今だったでしょうか? この人っていい人ではあるんだけれど、多少唯我独尊なところがあるからなぁ。

「ヤバ、恥っず……」

そして治験がどういうものかを聞かされた香坂は、だんだんと顔を赤らめて俯いていく。フェロモン値とは性欲と直結しているものだから、つまりエロい気持ちがダダ漏れなデータでもあるもんね? ああ、このタイミングでセックスしたんだなっていうのとか、バレちゃうもんね?

「それが、治験者がなかなか集まらない最初のハードルで、データが最重要機密扱いな理由だ」
「怒られる覚悟はできています!」

そう説明する城崎さんと、その横でビシッと背筋を正す僕を、香坂が目元を赤くしながらジトッと見る。

「ってか、ひょっとして連中がチョーカーを外せなかったのって、そういう機能のせいか?」
「そうだねぇ、僕と香坂にしか外せない設定にしてある」

香坂の質問に僕は答えた。香坂に疑われないようにチョーカーの留め具を弄るのって、結構苦労したんだよ?

「なぁる……ヤツらがチョーカー外すのにモタついていたので、時間が稼げたのもあるんだよな。じゃなきゃ、気ぃ失っている間にヤられてたわ」

香坂が「ほぅ」っと息を吐いてからそう話すのに、僕はチョーカーがそういう防犯面でも役に立ったとわかって安堵した。

「だから、それで助かったみたいだし、今はなんも言わねぇ」

結果、香坂はそう言って不満を飲み込んでくれた。けれど「今は」ってことは、後でやっぱり言われるんだろうな。これから精一杯ご機嫌取りに励もう、僕にできるのはそれしかない。
 こうして話のキリが付いたところで、城崎さんがお暇を告げてきた。

「あんまり病人と話し込むのも良くないだろうしな。そうだ、ここの病院代だがな。俺の後輩のツレで治験協力者だって聞いた義兄さんが、入院費を持ってやるってさ。だからちゃんと全部検査を受けるように」

最後にそう言ってから、城崎さんは白衣の人を探しに行った。一緒に帰らないと足がないんだってさ。
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