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第4話
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「大丈夫かな......」
家に連れてきたは良いものの、シリウスはずっと寝たきりで起きなかった。
心配になって、村のお医者様に診てもらったけれど、問題はない、とのことだった。
むしろ、私の心配をされてしまった。
「この青年は、どこから?」
「分かりません。」
「素性の知れない者を村に入れるのは......」
「でも、放っておけなかったので......ごめんなさい。」
「いや、アリスが謝ることではない。」
そう言って、お医者様はシリウスを見た。
「訳ありなのは確かだな......」
「記憶喪失が、ということですか?」
お医者様は頷いた。
「頭部にケガがないところを見ると、
薬でも飲まされたんじゃないかと思うんだが。」
「薬......?」
「記憶を失わせる薬なんぞ、毒でしかない。
そんな毒を手に入れるのは、一般市民じゃ困難だろう。」
「うーん......」
私は寝ているシリウスを見た。
時々、苦悶の表情を浮かべている。
「まぁ、ゆっくり養生させてあげなさい。」
そう言って、お医者様は家を出ていった。
誰かが飛び込んでこないように、扉の鍵を閉める。
「ふう......」
私はシリウスの横に椅子を持ってきて座った。
濡らしたタオルで、額の汗を拭う。
「ん......」
シリウスがゆっくりと目を開けた。
「ここは......?」
「私の家よ。」
「君は? えっと......アリス?」
名前を覚えていてくれたことにホッとする。
「そう。他に覚えていることはある?」
「分からない......」
「そっか。ま、ゆっくりしてって。」
私はそう言うと、立ち上がった。
「何か食べない? お腹減ったでしょう?」
「ありがとう。」
シリウスは半身を起こして、家の中を見回した。
なんの変哲もない部屋だ。
しかし、シリウスは目を細めて嬉しそうにしている。
「いい家だね。あったかい感じがする。」
「そう? ありがとう。」
私は手早く料理を作った。
しばらく食べてないだろうから、スープがいいだろう。
煮込んでいる間、私は、大丈夫そうなら湯浴みをするように言った。
シリウスは起き上がると、借りるね、と浴室へと歩いて行く。
シリウスが浴室に行った後、私は脱衣所に行った。
着ている服を洗おうと思って。
フード付きのマントの下は、まるで貴族が着るような正装だった。
白い礼服に、金色の刺繍が施されている。
(まるで、王子様だわ......)
私は父親が着ていた洋服を置いて、浴室に声をかける。
「父ので申し訳ないのだけれど、着替えを置いておくね。」
「あぁ、ありがとう。」
シリウスの声を聞いて、私はキッチンへと戻った。
(なんだか、現代に戻った時みたいだわ.......)
彼氏と一緒に住んでいた時のことを思い出す。
遠い昔の話だ。
もう私は現代には戻れないだろう。
そう思うと悲しくなるけれど、今はこの生活も嫌いじゃない。
「ありがとう。」
シリウスが出てきた。
淡い紅色の髪を後ろでひとつに束ねている。
ぱっちり二重の切長な目、陶器のような白い肌。
よく見ると、めちゃくちゃイケメンだった。
まぁ、寝ている時も綺麗な顔だな......と思ったけれど。
「スープ、出来たから。」
テーブルに置くと、シリウスは椅子に座った。
いただきます、と言って、スプーンに口をつける。
この時代にはない味だ。
気に入ってもらえるだろうか。
「おいしい!」
そう言って、子どものように微笑んだ。
そんな笑顔を見て、私はキュンとなる。
(キュン?!)
自分の中に湧いた感情に驚いてしまう。
この時代にときめくことがあるなんて。
「まだあるから、たくさん食べて。」
家に連れてきたは良いものの、シリウスはずっと寝たきりで起きなかった。
心配になって、村のお医者様に診てもらったけれど、問題はない、とのことだった。
むしろ、私の心配をされてしまった。
「この青年は、どこから?」
「分かりません。」
「素性の知れない者を村に入れるのは......」
「でも、放っておけなかったので......ごめんなさい。」
「いや、アリスが謝ることではない。」
そう言って、お医者様はシリウスを見た。
「訳ありなのは確かだな......」
「記憶喪失が、ということですか?」
お医者様は頷いた。
「頭部にケガがないところを見ると、
薬でも飲まされたんじゃないかと思うんだが。」
「薬......?」
「記憶を失わせる薬なんぞ、毒でしかない。
そんな毒を手に入れるのは、一般市民じゃ困難だろう。」
「うーん......」
私は寝ているシリウスを見た。
時々、苦悶の表情を浮かべている。
「まぁ、ゆっくり養生させてあげなさい。」
そう言って、お医者様は家を出ていった。
誰かが飛び込んでこないように、扉の鍵を閉める。
「ふう......」
私はシリウスの横に椅子を持ってきて座った。
濡らしたタオルで、額の汗を拭う。
「ん......」
シリウスがゆっくりと目を開けた。
「ここは......?」
「私の家よ。」
「君は? えっと......アリス?」
名前を覚えていてくれたことにホッとする。
「そう。他に覚えていることはある?」
「分からない......」
「そっか。ま、ゆっくりしてって。」
私はそう言うと、立ち上がった。
「何か食べない? お腹減ったでしょう?」
「ありがとう。」
シリウスは半身を起こして、家の中を見回した。
なんの変哲もない部屋だ。
しかし、シリウスは目を細めて嬉しそうにしている。
「いい家だね。あったかい感じがする。」
「そう? ありがとう。」
私は手早く料理を作った。
しばらく食べてないだろうから、スープがいいだろう。
煮込んでいる間、私は、大丈夫そうなら湯浴みをするように言った。
シリウスは起き上がると、借りるね、と浴室へと歩いて行く。
シリウスが浴室に行った後、私は脱衣所に行った。
着ている服を洗おうと思って。
フード付きのマントの下は、まるで貴族が着るような正装だった。
白い礼服に、金色の刺繍が施されている。
(まるで、王子様だわ......)
私は父親が着ていた洋服を置いて、浴室に声をかける。
「父ので申し訳ないのだけれど、着替えを置いておくね。」
「あぁ、ありがとう。」
シリウスの声を聞いて、私はキッチンへと戻った。
(なんだか、現代に戻った時みたいだわ.......)
彼氏と一緒に住んでいた時のことを思い出す。
遠い昔の話だ。
もう私は現代には戻れないだろう。
そう思うと悲しくなるけれど、今はこの生活も嫌いじゃない。
「ありがとう。」
シリウスが出てきた。
淡い紅色の髪を後ろでひとつに束ねている。
ぱっちり二重の切長な目、陶器のような白い肌。
よく見ると、めちゃくちゃイケメンだった。
まぁ、寝ている時も綺麗な顔だな......と思ったけれど。
「スープ、出来たから。」
テーブルに置くと、シリウスは椅子に座った。
いただきます、と言って、スプーンに口をつける。
この時代にはない味だ。
気に入ってもらえるだろうか。
「おいしい!」
そう言って、子どものように微笑んだ。
そんな笑顔を見て、私はキュンとなる。
(キュン?!)
自分の中に湧いた感情に驚いてしまう。
この時代にときめくことがあるなんて。
「まだあるから、たくさん食べて。」
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