星空の下で君を待つ

星乃ゆづき

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第5話

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 シリウスは日に日に、少しずつ記憶を取り戻しているようだった。
 ただ、思い出すたびに複雑そうな表情を浮かべる。
 聞いてもいいのか分からないまま、数日が経った。

「ねぇ、シリウス。」

 食事時に、私は何気なく声をかける。

「記憶は戻りそう?」

「そうだな......どうしても、大事な部分が欠けている気がする。」

「そう。」

 私は食事の手を止めて、シリウスの顔を見た。

「話すことで、思い出すかもしれないわ。」

「アリス......君を怖がらせてしまうかもしれない。」

「大丈夫よ。」

 そう言って、私は笑った。

「今日まで、私が何かで怖がったことがあった?
 あなたが何者かも分からないのに、一緒にいるのよ?
 何を聞いたって、大丈夫だわ。」

「そうか......そうだな。」

 シリウスは、何かに納得するように頷いている。

「あれは毒だったんだ。」

「?」

「記憶がなくなる毒だ。僕はそれを飲まされた。」

「誰に?」

「分からない。場所は分かってる。」

「どこなの?」

「王宮のパーティー会場だ。」

「王宮!?」

「どこの国かは分からないけれど......確かに、そこで渡されたものを飲んで--」

「気付いたら、ここだったわけね。」

「うん。」

 確かに、着ていた服装を見ても、王族か貴族かもしれないと思っていた。

(何かに巻き込まれているの?)

 記憶がないのは不安だろうに、私の力を持ってしても、シリウスの思いは汲み取れなかった。

(不安や苦しみを抱いているわけではないのかな......)

 私はシリウスから聞いた話を元に、各国のことを調べ始めた。
 少しでも、彼の力になりたかったから。
 そして、私は知ることになる。
 彼の口から。

 ある日、畑仕事から戻った私に、シリウスは暗鬱な表情を浮かべながら言ってきた。

「僕は帰らなきゃいけない。」

「帰るって、どこへ?」

「アリスには関係ない場所だよ。」

 そう言い放つシリウスは、なんだか悲しそうに見えた。

「関係なくない!」

 私は強く言う。
 だって、今まで寝食を共にしてきたじゃない。
 それなのに、急にそんなことを言うなんて。

「私は、あなたを支えてきたつもり。
 今までだって、これからだって、そう。」

「そうか......ありがとう。」

 泣きそうな顔でシリウスは微笑んだ。
 そんなシリウスに私は口を開く。

「思い出したのね、全部。」

「あぁ。」

「シリウス、あなたはパレルトーン帝国の方なのでしょう?」

「僕は、第二王子のシリウス・パレルトーンだ」

「でも、王子様が何故、毒を?」

「分からない。だからこそ、国に戻ろうと思う。」

「そんな! 危険だわ!」

「いつまでも、アリスのお世話になっていても仕方ないしね。」

「私のことは、気にしなくても--」

 そう言って、私はハッとなった。
 王子ということは、婚約者がいるかもしれない。

(私の気持ちは、シリウスにとって邪魔なのかも......)

「アリスが危険な目に遭うかもしれないのが、嫌なんだ。」

 そういうことか、
 じゃあ、私は自分の気持ちに素直になってもいいだろう。

「大丈夫よ。これでも、剣道2段なんだから。」

「ケンドウ?」

「あぁ、えっと......剣の腕は立つってこと。
 毒を飲ますような人がいる場所に行くなら、護衛が必要でしょう?」

「アリス、着いてくるっていうのか?」

「心配だもの。」

 たった数日間だったけれど、人の温かみを知ってしまった。
 幾度も繰り返した人生では、私はひとりぼっちだった。
 やっと変わった人生で、悔いを残したくない。

「......分かった。ありがとう!」

 シリウスは私の手を取った。

「一緒にパレルトーンに行こう。」
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