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第2章 【異世界からの侵略者】
第2章2 【ヒカリという名の少女】
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ーー翌日。
「「「 はぁ!?ガイルが逃げた!? 」」」
私達は王国騎士団から来た突然の依頼で、またしても昨日の詰所にやって来ていた。
ヴァル「え、ちょ、待っーーはぁ!?」
ヒカリ「皆さんちょっと落ち着いてください。驚きなのは私にも分かりますけど」
ヴェルド「これが落ち着いてられるか!昨日捕まえたばっかの奴が、今日にはもう逃げてんだぞ!?どんだけガバガバな警備なんだ!」
本当にそれ。なんで捕まえてすぐの人に逃げられるのかなぁ。相手は魔導士だというのに油断しすぎじゃない?この詰所の兵士さん達。
「本当に情けない話だ。それで、奴はまだこの街にいる。全く舐めた真似をしてくれるもんだ」
ヒカリ「舐めた真似をしてるのはどっちですか……」
ヴァル「とにかく、捕まえ直せってことだろ?めんどくせぇ」
「ああ、我々では奴を捕まえるのは厳しい。よろしく頼む」
ーーと、いうわけで私達は街の捜索に出た。どうせ昨日と同じように派手にやってるんでしょ、と考えていたが、どうやら違うらしい。奴が大人しすぎる。
これでは、このまま逃げられるまで秒読みかな。魔法さえ使ってくれれば、マナの気を追って捕まえられるのだけれど、奴もそれは承知しているのか、魔法を使って逃げてはいない。
ヴァル「めんどくせぇ、どこ探せばいいんだよ!」
怒りを顕にするようにヴァルが空に向けて炎の息吹を放つ。
「ちょっとやめてよ!ガイルにバレちゃうじゃない!」
ヴェルド「そもそも、あいつ盗賊だってんだろ?俺らの場所くらい把握してるんじゃねぇのか?」
「ーーそれはあるかも」
そう考えると、しらみ潰しに探していくのはやっぱり効率悪いか……。でも、私達には奴の居場所を特定する方法なんてないし、ああどうしよ。
ヴァル「なあ、ヒカリ。ダメ元で頼むけどなんかない?」
ほんとうにダメ元な所にでヴァルが頼んだ。
ヒカリ「一応あるにはありますけど」
ヴァル「じゃあそれやって。制限かけないから」
ヒカリ「分かりました」
ヒカリがローブの内側からちょっと特殊な形をしてるけど、拳銃型の銃を取り出した。そして、それを何もないはずの壁に向けて、引き金を引いた。
《バシュンっ!》
「うっ……!」
嘘でしょ……。何も無かったはずのところから、ガイルが腹を押さえて現れた。弾丸が当たった場所から血が溢れ出ている。
ヒカリ「皆さんバカですよね。敵が背後を取ってるかもしれないって可能性くらい考えてくださいよ」
笑顔で言いながらヒカリはガイルの元へとジリジリ詰め寄っていく。
ヒカリ「泥棒さん泥棒さん。世の中面倒なことを起こしちゃいけないんですよ。でないと、こんな風に痛い目に遭いますからね」
弾丸を更に数発放ち、ガイルが完全に戦意を失うよう、体の周りギリギリに弾丸が当たる。
ガイル「わ、分かった!分かったからもうやめてくれ!」
血が溢れ出ているにも関わらず、無理矢理にも土下座をするガイル。ここまで来ると、最早ヒカリの方が悪役なんじゃないかと思えてきた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「いやー、助かった助かった……んだが、この有様はなんだ?」
兵士の人が、腹を押さえて蹲るガイルを見て困惑している。
ヒカリ「言って聞かないなら、痛みを伴う苦痛を与えるまで、です」
「お、おう……まあ、何にせよこれで世間を騒がせた大泥棒も幕切れだ。本当に助かったよ」
そう言うと、前回くらいに重さのある皮袋を置いて、兵士の人はガイルを連れて行った。
ーー大丈夫かな?ガイル。
敵だけど思わず心配をしちゃう。だって、あんなのを目の前で見た後だもん。嫌でも気持ちはそっちに向かっちゃう。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ーーそれから5日後。
「また魔獣討伐か。正直もう嫌なんだけど……」
ヴェルド「分かる」
俺が依頼書を見上げ、ボソッと独り言のようにそう呟くと、ヴェルドが、隣から顔を出してきた。
ミラ「ゴメンね~。うちのギルドで魔獣討伐に向いてるの、ヴァルくらいしかいないから」
「ライオスとかグリードの野郎はどうしてんだよ」
ミラ「あんな飲んだくれと月に1回しか顔を出さない人達より、毎日のように暇してるヴァル達に頼むのがいいかなぁって」
別に暇してねぇんだけどな。暇だけど。
ミラ「ちょっと遠出になるけど、多分日帰りで出来る内容だから、そこまで苦労しないとは思うわ」
「そう言って、前回の時は結構苦労したけどな」
ヴェルド「それな」
相槌マシーンは黙ってろよ。なんか、お前の顔みたらムカついてくんだけど。
俺は静かに拳を握り、そしてすぐに解く。今ここで喧嘩をぶっかけても、フウロがいるし、なんならヒカリとかいう新しい脅威もある。ギルドにいるうちは大人しくしてるのが正解なんだ。それほど、ヒカリが怖い。最悪殺されるかもしれねぇからな。
ーーでも、なんかヒカリと会うのは初めてじゃない気がするんだよな。なんでかは知らねぇけど。記憶を探る限り、あんな青っぽい緑髪の女の子なんて出会ったことないし。
「んまぁ、少し買いもの行った方がいいか。服もちょっとボロついてきたし、いい機会かもしれねぇな」
ヴェルド「あ、俺この後予定あるからパスな」
「まだ何も言ってねぇし誘うつもりもねぇよ、このナルシストが」
ヴェルド「誰がナルシストじゃ!」
「うるせぇ、ナルシだからナルシって言ってだよ、あぁ?」
ヴェルド「何だと……おい、待て。一旦落ち着こうぜ」
「ーーああ、そうだな」
危ない危ない。油に火着けるところだったぜ。僅かなフウロの視線が無けりゃ、爆発してたな。
ヴェルド「なんか肩身狭くなっちまったな。まあいいや、んじゃぁな。魔獣討伐には付き合ってやるよ」
「おう、精々シアラのストーカーに気を付けて帰るんだな」
そう言った直後、ギルドの扉を開けたヴェルドが、シアラとバッタリ出くわし、そのまま鬼ごっこが始まったのを俺は黙って見ていた。
「ーーさて、1人で行くのも寂しいし、誰か誘うか」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヒカリ「で、何で私なんですか?」
「暇してたから。以上」
ヒカリ「そうですか」
ヴェルドとは違って、文句は言わねぇんだな。
俺は暇をしていたヒカリを誘った。なんか文句言われるかも、とは思っていたが、意外にも素直に応じてくれた。
ヒカリ「ーーあの、もしかしたらなんですけど、私の事怖がってます?」
「いや、別にそんなことはねぇけど」
ヒカリ「そうですか。なら、もう1つ。覚えてる?」
「何を?」
ヒカリ「……いや、やっぱりなんでもないです」
「……?」
意味深な発言をしたヒカリ。その顔には、なぜか悲しみを表すかのように涙が滲んでいて、何か言っちゃいけないことでも言ったかな?と俺は思う。でも、心当たりはないし、俺にはどうしようもない。
不思議な奴だ。それくらいにしか思えなかった。
とりあえず俺は、服とグローブと、あとは晩飯を買い終え、ヒカリの買い物にも付き合ってると、いつの間にか夕暮れ時になっていた。
途中、街灯にぶつかるというアクシデントが起きたが、そこまで痛みは無く、まあ無事に家にまで帰った。
……なんか、記憶が少し飛んでる気がする。気のせいか。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヒカリが加入してから1週間が経った。
その間、私はヒカリが住むところもないと言うので、自分の部屋を相部屋にしたり、仕事に付き合ったりして、何かと忙しい日々が続いていた。
ヒカリ「何から何まですみませんセリカさん」
仕事帰りでぐったりしていた私にヒカリが話しかけてくる。
「いいっていいって。そんなことよりもさん付けで呼ばないでよ」
ヒカリ「いや、しかし、セリカさんは恩人なのですからそんな、親しくすることは出来ません」
ヒカリがキッパリと断った。
「はぁ、まあいいわ。それよりさぁヒカリ」
ヒカリ「はいなんでしょう?」
「明日行く依頼の件についてなんだけどさ」
ヴァルが誘いかけてくれた依頼。2回目なんだけど、魔獣討伐かぁ……ってテンションがやや下がり気味になる。
ヒカリ「あぁ、あの魔獣討伐に関するやつですね。でしたら......」
そう言ってヒカリはローブの中をゴソゴソと漁る。
(そんな格好して暑くないのかな?)
ふと、私はそんなどうでもいいことを思った。
ヒカリ「あ、ありました」
そう言ってヒカリは地図を差し出してきた。
「はぁー色々と書き込んでるわね」
地図には依頼場所までの道順や、使う乗り物、はてはタイムキーパーかと思うくらいに時間の指定もビッシリとしている。
ヒカリ「ヴァルさんから魔獣には良い思い出が無いと聞いたので、万全の体制で挑めれるようにと考えました」
「へぇー」
私は改めて地図に目を向ける。
よく見ると、魔獣の頻出ポイントやいざという時のための逃げ道、更にはヴァルのために馬車とか乗り物を極力使わなくていいルートなど、本当に細かいところまで書き込んでいる。
「よくここまで考えれたね」
それくらいしか言うことが出来ない。ヒカリの仕事完璧すぎるでしょ。こんなのでよく仕事が見つからないとか言えたわね。絶対にそこら中から引っ張りだこになると思うのに。
ヒカリ「これが仕事ですから」
ヒカリは得意げに言う。
「ここまで考えれる軍師ってヒカリくらいじゃないの?」
ヒカリ「上には上がいますよセリカさん」
「そうなの?もう、これで完璧だと思うんだけど......」
ヒカリ「一見完璧に見えますが、イレギュラーな時の対応とか、後は皆さんの力を把握仕切れてなくて上手く作戦を整えることが出来ていません」
うん、何言ってんのか全然分かんない。
「ふーん、でも、イレギュラーな時なんて早々起きないし、力なんてそんな難しく考えなくていいんじゃない?」
私にはどうやっても作戦を考える基準とかがよく分からないのでそう言う。
ヒカリ「確かにイレギュラーな時ってのはそこまで考えなくていいかもしれませんが、皆さんの力を把握するというのは作戦を練る上で非常に重要になります」
やはり、イマイチピンと来ない。
ヒカリ「例えば力を過信し過ぎるあまり、仲間を危険な目に遭わせてしまうということや、逆にその人のことを弱く見て頼らせるべき場面でその力を発揮させることができずに失敗するとか、色々と難しいんですよ」
私の疑問を感じてかヒカリが言った。
しかし、私にはーー
「分かんない......」
ヒカリ「まあ、普通の人は理解しなくていいです」
最終的にヒカリが説明を諦めた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ーー翌日。
ヴァル「いやぁ、快適快適」
馬車から降りたヴァルが伸びをして、普段ならしてるはずの乗り物酔いを一切顔に表していない。
ヒカリ「エフィが酔い止めの魔法を使える人で良かったですね」
まさか、エフィがそんな魔法を使えるとは思いもしなかった。これなら、乗り物はもう大丈夫かな?
エフィ「ヴァルさんが、乗り物酔いが酷いって聞いたから習得したんです。普通はこんな魔法覚えませんよ」
おっと、どうやら特注だったらしい。まあ、普通は覚える意味もないし当たり前か。
ヒカリ「これだったら、目的地まで直行でも良かったですかね?」
ヒカリが今更ながらのことを言う。
ヴェルド「目的地にまで行けれたらどうだっていいたろ」
後から降りてきたヴェルドが言う。
「それもそうね」
ヴァル「で、こっから目的地までどれくらいあるんだ?」
十分に伸びをしきったヴァルが問いかける。
ヒカリ「うーん、大体1時間弱といったところですかね?」
「えぇー!?」
エフィ「えぇー!?」
私とエフィは同時に驚きの声を上げる。
ヴェルド「なんだ、たったの1時間か」
ヴェルドが割とあっさした口調で言う。
「いや、ヴェルド1時間だよ、い、ち、じ、か、ん」
私はあっさりとしているヴェルドを見て訴えるように言う。
ヒカリ「別に大したことないですよね。それとも歩くのは嫌ですか?」
ヒカリが問いかけてくる。
ヒカリ「ヴァルの事を考えてこのルートにしたんですから、文句があるなら次からちゃんと手の内明かしといてくださいよ」
「いや、そういう問題じゃないでしょ」
私はヒカリに対しても嘘であることを願って言う。
ヴァル「よっしゃぁ、行くぞ!」
ヴァルがそう言って先頭を歩き出す。ヴェルドも隣に立って一緒に行く。
「あんたら、道逆。こっち」
そう言ってヒカリはヴァル達が歩いている方と逆の方向を指さす。
マジで行くの?
私とエフィは互いの顔を見て、苦笑いをした。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴァル「おりゃ!」
ヴェルド「とう!」
ヴァルとヴェルドが慣れた手つきで目の前の魔獣を薙ぎ倒す。魔獣騒ぎを解決したとは言え、普通の魔獣はたくさん生息している。だから、こうして度々魔獣討伐の依頼がやって来るらしいのだが、私としては正直もううんざりなのだ。だって、過去に1回めちゃくちゃデカい魔獣に連れ去られたからね。しかも直近で。
エフィ「怖かったよね?大丈夫。もう大丈夫だから」
エフィが魔獣に対して説得をして魔獣化を解いている。是非ともヴァル達にもこれを見習って欲しいものだ。ーー脳筋だから無理か。
ヴァル「ふぅ片付いたー」
ヴァルとヴェルドが戻ってきた。
ヴァル「この地図すげえな。魔獣が出てくるポイントが完璧すぎるぜ」
ヴァルが手に持っていた地図を見ながら言う。
ヒカリ「でしょ?事前に調べこんできたんだから」
ヒカリがドヤ顔と共にそう言う。
ヴェルド「この地図を見る限り、後は奥にいる奴らだけだな」
「じゃあ、ここらでお昼ご飯にでもする?」
私はバスケットを持ち言う。これは、出かけにミラさんが持たせてくれたものだ。
ヴァル「よっしゃぁ!昼飯だァ!」
ヴァルが叫ぶ。
ヴェルド「うるせえよ」
エフィ「はい、ご飯ですよー」
エフィは仲間にした動物達に持参したペットフードを与えている。
(マジでこの人達はこれを見習ってくれないかなぁ? )
私はしみじみとそう思った。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴァル「あぁー美味かった美味かった」
ヴァルがお腹いっぱいというふうに自分の腹を叩きながら言う。
ヴァル「これ、セリカが作ったのか?」
「いや、ミラさんよ。出かけに渡してくれたの」
ヴァル「そうなのか、どうりで美味いわけだ」
「今度、私が作って持ってきてあげようか?」
ヴァル「おう、期待してるぜ」
ヴァルは満足そうな顔で言った。
ヒカリ「さて、そろそろ出発しますか」
ヒカリが立ち上がりながら言った。
ヴェルド「そうだな」
ヴェルドも同じように立ち上がる。
「忘れ物は無い......て言おうとしたけど持ち物自体あまり無かったね」
私はゴザを丸めながら持ち物の確認をする。持ってきてるものは少ないけど、こんな森に何か落としたら、探しに来るのが大変そうだ。
ヴァル「おーい、エフィ行くぞー」
ヴァルが遠くで動物と戯れているエフィに向かって言う。
エフィ「あ、はーい。しゃあ、また今度ね」
エフィがこっちに向かってくる。
ヒカリ「じゃあ、行きますか」
ヒカリが歩き出した。それに釣られて私達もヒカリの後を追った。
「「「 はぁ!?ガイルが逃げた!? 」」」
私達は王国騎士団から来た突然の依頼で、またしても昨日の詰所にやって来ていた。
ヴァル「え、ちょ、待っーーはぁ!?」
ヒカリ「皆さんちょっと落ち着いてください。驚きなのは私にも分かりますけど」
ヴェルド「これが落ち着いてられるか!昨日捕まえたばっかの奴が、今日にはもう逃げてんだぞ!?どんだけガバガバな警備なんだ!」
本当にそれ。なんで捕まえてすぐの人に逃げられるのかなぁ。相手は魔導士だというのに油断しすぎじゃない?この詰所の兵士さん達。
「本当に情けない話だ。それで、奴はまだこの街にいる。全く舐めた真似をしてくれるもんだ」
ヒカリ「舐めた真似をしてるのはどっちですか……」
ヴァル「とにかく、捕まえ直せってことだろ?めんどくせぇ」
「ああ、我々では奴を捕まえるのは厳しい。よろしく頼む」
ーーと、いうわけで私達は街の捜索に出た。どうせ昨日と同じように派手にやってるんでしょ、と考えていたが、どうやら違うらしい。奴が大人しすぎる。
これでは、このまま逃げられるまで秒読みかな。魔法さえ使ってくれれば、マナの気を追って捕まえられるのだけれど、奴もそれは承知しているのか、魔法を使って逃げてはいない。
ヴァル「めんどくせぇ、どこ探せばいいんだよ!」
怒りを顕にするようにヴァルが空に向けて炎の息吹を放つ。
「ちょっとやめてよ!ガイルにバレちゃうじゃない!」
ヴェルド「そもそも、あいつ盗賊だってんだろ?俺らの場所くらい把握してるんじゃねぇのか?」
「ーーそれはあるかも」
そう考えると、しらみ潰しに探していくのはやっぱり効率悪いか……。でも、私達には奴の居場所を特定する方法なんてないし、ああどうしよ。
ヴァル「なあ、ヒカリ。ダメ元で頼むけどなんかない?」
ほんとうにダメ元な所にでヴァルが頼んだ。
ヒカリ「一応あるにはありますけど」
ヴァル「じゃあそれやって。制限かけないから」
ヒカリ「分かりました」
ヒカリがローブの内側からちょっと特殊な形をしてるけど、拳銃型の銃を取り出した。そして、それを何もないはずの壁に向けて、引き金を引いた。
《バシュンっ!》
「うっ……!」
嘘でしょ……。何も無かったはずのところから、ガイルが腹を押さえて現れた。弾丸が当たった場所から血が溢れ出ている。
ヒカリ「皆さんバカですよね。敵が背後を取ってるかもしれないって可能性くらい考えてくださいよ」
笑顔で言いながらヒカリはガイルの元へとジリジリ詰め寄っていく。
ヒカリ「泥棒さん泥棒さん。世の中面倒なことを起こしちゃいけないんですよ。でないと、こんな風に痛い目に遭いますからね」
弾丸を更に数発放ち、ガイルが完全に戦意を失うよう、体の周りギリギリに弾丸が当たる。
ガイル「わ、分かった!分かったからもうやめてくれ!」
血が溢れ出ているにも関わらず、無理矢理にも土下座をするガイル。ここまで来ると、最早ヒカリの方が悪役なんじゃないかと思えてきた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「いやー、助かった助かった……んだが、この有様はなんだ?」
兵士の人が、腹を押さえて蹲るガイルを見て困惑している。
ヒカリ「言って聞かないなら、痛みを伴う苦痛を与えるまで、です」
「お、おう……まあ、何にせよこれで世間を騒がせた大泥棒も幕切れだ。本当に助かったよ」
そう言うと、前回くらいに重さのある皮袋を置いて、兵士の人はガイルを連れて行った。
ーー大丈夫かな?ガイル。
敵だけど思わず心配をしちゃう。だって、あんなのを目の前で見た後だもん。嫌でも気持ちはそっちに向かっちゃう。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ーーそれから5日後。
「また魔獣討伐か。正直もう嫌なんだけど……」
ヴェルド「分かる」
俺が依頼書を見上げ、ボソッと独り言のようにそう呟くと、ヴェルドが、隣から顔を出してきた。
ミラ「ゴメンね~。うちのギルドで魔獣討伐に向いてるの、ヴァルくらいしかいないから」
「ライオスとかグリードの野郎はどうしてんだよ」
ミラ「あんな飲んだくれと月に1回しか顔を出さない人達より、毎日のように暇してるヴァル達に頼むのがいいかなぁって」
別に暇してねぇんだけどな。暇だけど。
ミラ「ちょっと遠出になるけど、多分日帰りで出来る内容だから、そこまで苦労しないとは思うわ」
「そう言って、前回の時は結構苦労したけどな」
ヴェルド「それな」
相槌マシーンは黙ってろよ。なんか、お前の顔みたらムカついてくんだけど。
俺は静かに拳を握り、そしてすぐに解く。今ここで喧嘩をぶっかけても、フウロがいるし、なんならヒカリとかいう新しい脅威もある。ギルドにいるうちは大人しくしてるのが正解なんだ。それほど、ヒカリが怖い。最悪殺されるかもしれねぇからな。
ーーでも、なんかヒカリと会うのは初めてじゃない気がするんだよな。なんでかは知らねぇけど。記憶を探る限り、あんな青っぽい緑髪の女の子なんて出会ったことないし。
「んまぁ、少し買いもの行った方がいいか。服もちょっとボロついてきたし、いい機会かもしれねぇな」
ヴェルド「あ、俺この後予定あるからパスな」
「まだ何も言ってねぇし誘うつもりもねぇよ、このナルシストが」
ヴェルド「誰がナルシストじゃ!」
「うるせぇ、ナルシだからナルシって言ってだよ、あぁ?」
ヴェルド「何だと……おい、待て。一旦落ち着こうぜ」
「ーーああ、そうだな」
危ない危ない。油に火着けるところだったぜ。僅かなフウロの視線が無けりゃ、爆発してたな。
ヴェルド「なんか肩身狭くなっちまったな。まあいいや、んじゃぁな。魔獣討伐には付き合ってやるよ」
「おう、精々シアラのストーカーに気を付けて帰るんだな」
そう言った直後、ギルドの扉を開けたヴェルドが、シアラとバッタリ出くわし、そのまま鬼ごっこが始まったのを俺は黙って見ていた。
「ーーさて、1人で行くのも寂しいし、誰か誘うか」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヒカリ「で、何で私なんですか?」
「暇してたから。以上」
ヒカリ「そうですか」
ヴェルドとは違って、文句は言わねぇんだな。
俺は暇をしていたヒカリを誘った。なんか文句言われるかも、とは思っていたが、意外にも素直に応じてくれた。
ヒカリ「ーーあの、もしかしたらなんですけど、私の事怖がってます?」
「いや、別にそんなことはねぇけど」
ヒカリ「そうですか。なら、もう1つ。覚えてる?」
「何を?」
ヒカリ「……いや、やっぱりなんでもないです」
「……?」
意味深な発言をしたヒカリ。その顔には、なぜか悲しみを表すかのように涙が滲んでいて、何か言っちゃいけないことでも言ったかな?と俺は思う。でも、心当たりはないし、俺にはどうしようもない。
不思議な奴だ。それくらいにしか思えなかった。
とりあえず俺は、服とグローブと、あとは晩飯を買い終え、ヒカリの買い物にも付き合ってると、いつの間にか夕暮れ時になっていた。
途中、街灯にぶつかるというアクシデントが起きたが、そこまで痛みは無く、まあ無事に家にまで帰った。
……なんか、記憶が少し飛んでる気がする。気のせいか。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヒカリが加入してから1週間が経った。
その間、私はヒカリが住むところもないと言うので、自分の部屋を相部屋にしたり、仕事に付き合ったりして、何かと忙しい日々が続いていた。
ヒカリ「何から何まですみませんセリカさん」
仕事帰りでぐったりしていた私にヒカリが話しかけてくる。
「いいっていいって。そんなことよりもさん付けで呼ばないでよ」
ヒカリ「いや、しかし、セリカさんは恩人なのですからそんな、親しくすることは出来ません」
ヒカリがキッパリと断った。
「はぁ、まあいいわ。それよりさぁヒカリ」
ヒカリ「はいなんでしょう?」
「明日行く依頼の件についてなんだけどさ」
ヴァルが誘いかけてくれた依頼。2回目なんだけど、魔獣討伐かぁ……ってテンションがやや下がり気味になる。
ヒカリ「あぁ、あの魔獣討伐に関するやつですね。でしたら......」
そう言ってヒカリはローブの中をゴソゴソと漁る。
(そんな格好して暑くないのかな?)
ふと、私はそんなどうでもいいことを思った。
ヒカリ「あ、ありました」
そう言ってヒカリは地図を差し出してきた。
「はぁー色々と書き込んでるわね」
地図には依頼場所までの道順や、使う乗り物、はてはタイムキーパーかと思うくらいに時間の指定もビッシリとしている。
ヒカリ「ヴァルさんから魔獣には良い思い出が無いと聞いたので、万全の体制で挑めれるようにと考えました」
「へぇー」
私は改めて地図に目を向ける。
よく見ると、魔獣の頻出ポイントやいざという時のための逃げ道、更にはヴァルのために馬車とか乗り物を極力使わなくていいルートなど、本当に細かいところまで書き込んでいる。
「よくここまで考えれたね」
それくらいしか言うことが出来ない。ヒカリの仕事完璧すぎるでしょ。こんなのでよく仕事が見つからないとか言えたわね。絶対にそこら中から引っ張りだこになると思うのに。
ヒカリ「これが仕事ですから」
ヒカリは得意げに言う。
「ここまで考えれる軍師ってヒカリくらいじゃないの?」
ヒカリ「上には上がいますよセリカさん」
「そうなの?もう、これで完璧だと思うんだけど......」
ヒカリ「一見完璧に見えますが、イレギュラーな時の対応とか、後は皆さんの力を把握仕切れてなくて上手く作戦を整えることが出来ていません」
うん、何言ってんのか全然分かんない。
「ふーん、でも、イレギュラーな時なんて早々起きないし、力なんてそんな難しく考えなくていいんじゃない?」
私にはどうやっても作戦を考える基準とかがよく分からないのでそう言う。
ヒカリ「確かにイレギュラーな時ってのはそこまで考えなくていいかもしれませんが、皆さんの力を把握するというのは作戦を練る上で非常に重要になります」
やはり、イマイチピンと来ない。
ヒカリ「例えば力を過信し過ぎるあまり、仲間を危険な目に遭わせてしまうということや、逆にその人のことを弱く見て頼らせるべき場面でその力を発揮させることができずに失敗するとか、色々と難しいんですよ」
私の疑問を感じてかヒカリが言った。
しかし、私にはーー
「分かんない......」
ヒカリ「まあ、普通の人は理解しなくていいです」
最終的にヒカリが説明を諦めた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ーー翌日。
ヴァル「いやぁ、快適快適」
馬車から降りたヴァルが伸びをして、普段ならしてるはずの乗り物酔いを一切顔に表していない。
ヒカリ「エフィが酔い止めの魔法を使える人で良かったですね」
まさか、エフィがそんな魔法を使えるとは思いもしなかった。これなら、乗り物はもう大丈夫かな?
エフィ「ヴァルさんが、乗り物酔いが酷いって聞いたから習得したんです。普通はこんな魔法覚えませんよ」
おっと、どうやら特注だったらしい。まあ、普通は覚える意味もないし当たり前か。
ヒカリ「これだったら、目的地まで直行でも良かったですかね?」
ヒカリが今更ながらのことを言う。
ヴェルド「目的地にまで行けれたらどうだっていいたろ」
後から降りてきたヴェルドが言う。
「それもそうね」
ヴァル「で、こっから目的地までどれくらいあるんだ?」
十分に伸びをしきったヴァルが問いかける。
ヒカリ「うーん、大体1時間弱といったところですかね?」
「えぇー!?」
エフィ「えぇー!?」
私とエフィは同時に驚きの声を上げる。
ヴェルド「なんだ、たったの1時間か」
ヴェルドが割とあっさした口調で言う。
「いや、ヴェルド1時間だよ、い、ち、じ、か、ん」
私はあっさりとしているヴェルドを見て訴えるように言う。
ヒカリ「別に大したことないですよね。それとも歩くのは嫌ですか?」
ヒカリが問いかけてくる。
ヒカリ「ヴァルの事を考えてこのルートにしたんですから、文句があるなら次からちゃんと手の内明かしといてくださいよ」
「いや、そういう問題じゃないでしょ」
私はヒカリに対しても嘘であることを願って言う。
ヴァル「よっしゃぁ、行くぞ!」
ヴァルがそう言って先頭を歩き出す。ヴェルドも隣に立って一緒に行く。
「あんたら、道逆。こっち」
そう言ってヒカリはヴァル達が歩いている方と逆の方向を指さす。
マジで行くの?
私とエフィは互いの顔を見て、苦笑いをした。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴァル「おりゃ!」
ヴェルド「とう!」
ヴァルとヴェルドが慣れた手つきで目の前の魔獣を薙ぎ倒す。魔獣騒ぎを解決したとは言え、普通の魔獣はたくさん生息している。だから、こうして度々魔獣討伐の依頼がやって来るらしいのだが、私としては正直もううんざりなのだ。だって、過去に1回めちゃくちゃデカい魔獣に連れ去られたからね。しかも直近で。
エフィ「怖かったよね?大丈夫。もう大丈夫だから」
エフィが魔獣に対して説得をして魔獣化を解いている。是非ともヴァル達にもこれを見習って欲しいものだ。ーー脳筋だから無理か。
ヴァル「ふぅ片付いたー」
ヴァルとヴェルドが戻ってきた。
ヴァル「この地図すげえな。魔獣が出てくるポイントが完璧すぎるぜ」
ヴァルが手に持っていた地図を見ながら言う。
ヒカリ「でしょ?事前に調べこんできたんだから」
ヒカリがドヤ顔と共にそう言う。
ヴェルド「この地図を見る限り、後は奥にいる奴らだけだな」
「じゃあ、ここらでお昼ご飯にでもする?」
私はバスケットを持ち言う。これは、出かけにミラさんが持たせてくれたものだ。
ヴァル「よっしゃぁ!昼飯だァ!」
ヴァルが叫ぶ。
ヴェルド「うるせえよ」
エフィ「はい、ご飯ですよー」
エフィは仲間にした動物達に持参したペットフードを与えている。
(マジでこの人達はこれを見習ってくれないかなぁ? )
私はしみじみとそう思った。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴァル「あぁー美味かった美味かった」
ヴァルがお腹いっぱいというふうに自分の腹を叩きながら言う。
ヴァル「これ、セリカが作ったのか?」
「いや、ミラさんよ。出かけに渡してくれたの」
ヴァル「そうなのか、どうりで美味いわけだ」
「今度、私が作って持ってきてあげようか?」
ヴァル「おう、期待してるぜ」
ヴァルは満足そうな顔で言った。
ヒカリ「さて、そろそろ出発しますか」
ヒカリが立ち上がりながら言った。
ヴェルド「そうだな」
ヴェルドも同じように立ち上がる。
「忘れ物は無い......て言おうとしたけど持ち物自体あまり無かったね」
私はゴザを丸めながら持ち物の確認をする。持ってきてるものは少ないけど、こんな森に何か落としたら、探しに来るのが大変そうだ。
ヴァル「おーい、エフィ行くぞー」
ヴァルが遠くで動物と戯れているエフィに向かって言う。
エフィ「あ、はーい。しゃあ、また今度ね」
エフィがこっちに向かってくる。
ヒカリ「じゃあ、行きますか」
ヒカリが歩き出した。それに釣られて私達もヒカリの後を追った。
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