グランストリアMaledictio

ミナセ ヒカリ

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第2章 【異世界からの侵略者】

第2章6 【演技】

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「で、クロムさん。今更呼び出しをして何のつもり?もう私はここの人間ではないのだけれど」

 私は苛立ちを隠そうとせず、目の前に座っている男『クロム』に疑問をなげかける。青髪単発のイケメン面で、肩口から見える、王子らしからぬ鍛え抜かれた筋肉とイーリアス王家の紋章。控えめに言って腹が立つほどの美貌だ。

 ーー時は昨日、王都の図書館で調べ物をしていた時まで遡る。

エフィ「あの、ヒカリさん。そろそろ閉館時間ですよ?」

 エフィが本の山に囲まれて黙々と調べ物をする私に話してくる。

「もうそんな時間?」

 腕時計の針を確かめ、その指針が4時55分を示していることを確認した。もうすっかり閉館の時間。ここからエフィを連れてシグルアにまで戻ることを考えると、多少無茶をして夜中になりそうだ。

「今日はこんな所か......」

 まあ、元々無いものを調べていただけだ。踏ん切りなら簡単に付けられる。

エフィ「後、ヒカリさんにってさっき騎士の方がお手紙を渡してくれたんですが......」

 エフィが几帳面に封に閉じた手紙を差し出してくる。

「手紙?それも騎士の人が?」

エフィ「はい。なんでも読めば分かるって」

「読めば分かるか......」

 なんとなぁく、嫌な予感がする。多分、間違ってない。

「あいつらか......」

 そう独り言を呟き、私は手紙をぐしゃぐしゃに丸めて近くにあったゴミ箱に捨てる。

エフィ「あの......なんて書いてあったんですか?」

 態度に出してしまったからか、エフィが恐る恐る尋ねてくる。

「私、明日ギルドに行けそうにないから」

エフィ「え?それってどういう......」

「じゃあね、エフィ」

 そう言い、私は1人勝手に図書館を出た後、なぜか道に迷ってしまい、結局エフィと共に帰ることになってしまった。

 そして、何だかんだで今に至る。昨晩セリカが何か話してた気がするけど、何だったっけ?まあいいやーー

クロム「急に呼び出したりしてすまなかった」

 クロムが頭を下げ謝罪の言葉を述べる。

 王子ともあろう人が、ただの一般人相手にすぐに頭を下げるなんてね。

「あら、随分と素直になったじゃない。『王子様』」

 私は嫌味をたっぷりに込めてそう言う。

クロム「その呼び方は少しむずがゆいかな。まあいい。それよりも今日呼び出した件についてなのだが......」

 クロムは私の嫌味など、はなから聞いていないというふうに話を続ける。

クロム「実は最近やたら山賊が多くてな......」

「山賊なんてこの国じゃ日常茶飯事でしょ?ちょっと増えたくらいで知恵を借りようとしないで。はい、話終わり」

 こんな程度の話なら無視しておけば良かったと軽く後悔し、私は立ち上がる。

クロム「待て、違うんだ」

「何がどう違うのよ」

 ため息をつき、再びソファに腰掛ける。

クロム「実はその山賊ってのが『邪龍教』の連中なんだ」

「邪龍教......ねぇ、そんなのどこの世界にでもいる怪しい宗教団体でしょ。そんな奴らが暴れだしたところで邪龍とか邪神なんて復活しないわよ」

 くだらない、と頬杖をつき、小馬鹿にする感じで私はそう言った。

クロム「それだったら、俺もわざわざお前の知恵を借りようとなんて思わない。ただ......」

 クロムが言うべきかどうか悩んでいる。

「?」

 珍しいわね。いつも言うべき事は包み隠さず全部言うってのに。心の中でも覗いてやろうかしら?

クロム「ただ......最近のあいつら、やたら魔獣とかと一緒に攻めてきてるんだ」

「そりゃ......ちょっと待って。魔獣って普通人に懐いて一緒に行動とかできるわけが......」

 唯一、例外としてエフィのような存在があるが、あれは魔獣化した獣達をその束縛から解放し、使役することで可能にしている技。魔獣そのものを操る魔法は存在しない。ーー私が知らないだけかもしれないけど。

クロム「そうなんだ。だが、あいつらは魔獣を群れごと見事なまでに操って来てるんだ。だから......それで......」

「それで私の力が借りたいってわけね?」

クロム「そうだ。力を貸してくれるか?」

「今すぐにとはいかないわね。なんせ私にも色々とあるんだから」

クロム「そうか......」

 クロムが落胆したように肩を落とす。

 ーーまあ、借りはあるし、少しくらいなら手伝ってあげるか。手伝えたらの話だけど。

「ーーただ、調べてはおいてあげるから」

クロム「本当か!?」

「ええ、何か分かったら連絡するから」

クロム「ありがとう」

 ーーありがとう、ね……。

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「じゃあ、次からはちゃんと内容を添えて手紙をよこしなさい」

クロム「書いたら書いたで来ないだろ」

「まあ、内容によるけどさ」

クロム「だから、あえて、緊急招集って書いたんだ」

「じゃあ、次からはそういう単語があったら行かないようにするから」

クロム「へいへい、次はもっと回りくどい書き方にするさ。気をつけて帰れよ。帰り道がグランアークとの国境とは言え、山賊が出ないとは限らないからな」

「心配しなくても山賊になんか襲われたりしないわよ。誰だと思ってるの? ーーメイさんによろしく言っといて」

クロム「分かった」

「じゃあ、次があるかどうか知らないけどそれまで、元気でね」

クロム「あぁ、またな」

 クロムが小さく手を振る。

 ーーこの手が見れなくなるのも、今日で最後になるのかな。

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ヴァル「は?ヒカリ居ねえの!?」

 妙に汚れた服装のヴァルが大声でそう言う。一応爆破現場に居たっぽいし、それだから汚れてるのかな?

「うん。なんか今日はイーリアスに用があるからって。多分今日一日は帰ってこないと思うよ」

ヴァル「マジかよ......あいつに相談したいことが山ほどあるっていうのに...」

 ヴァルが諦めにも似たような表情で言う。

「あの、何かあったの?」

ヴァル「あーえーっとだなー。今朝の爆発について色々と聞きたかったんだけどなー」

 ヴァルの答え方が何かおかしいような気がした。

「ふーん。今朝の爆発ねぇ」

 私は特に見通せてるわけではないけど、敢えてお見通しだぞというふうに試すような口調で言う。

ヴァル「な、なんだよ......」

「いや、別にぃ。ただ、他にも何か隠してることがあるんじゃないかと思って」

ヴァル「っ......正直話すべきじゃねえと思うんだけど......」

 折れるのが早かったが、ヴァルにしてはいつもの威勢がない。

「別にちょっとやそっとの事じゃ驚かないから」

 私はヴァルに話を続けるように促す。

ヴァル「今朝の爆発の犯人自体は違うんだが......さっき、昨日のあいつと戦ったんだ」

「昨日のって......あの通り魔!?」

 私は驚愕の表情を浮かべて言う。

 昨日のあの不気味な雰囲気を醸し出した男……。月明かりがある程度の暗闇だったから姿形はハッキリと見えなかったけど、それでもあの刀の恐怖が今も身に染みている。

ヴァル「そうだ。多分そいつと今朝の爆発を起こしたやつは仲間だ」

「仲間ってことは、やっぱりヴァル今朝の犯人と会ってるんじゃない」

ヴァル「そこまでお見通しだったってわけかよ......」

 ヴァルは脱力したように天井を見上げた。今の話的に、お見通しとか関係ないと思うけど、そこを突っつくのは見当違いなので無視しておく。

「それで、まだ続きがあるんじゃないの?」

ヴァル「ーーそいつはな『キルディス』って名乗ってた。ついでに今朝のやつは『ライガ』だ。そして、奴は......グランメモリを使ってた」

「グランメモリ?」

 あの小さな箱……。嫌な記憶がまたしても掘り返される。

ヴァル「多分、あいつらが前の事件の時に更に裏で糸を引いてたんだろうな。なんせあいつは『これは私の仲間から貰ったものだ』って言ってた。つまりは、あいつらの仲間にグランメモリを作ってる、もしくはグランメモリについて何か知ってる奴がいるってことだろうな」

 ヴァルはそこまでを早口で言い終えた。

「ということは、ディランみたいな力が使える奴が沢山いるってことだよね?って考えると」

ーー正直、勝ち目は無い。

ヴァル「あ、そうだ。1つ言い忘れてたことがあった」

 ヴァルが思い出したかのように言う。

ヴァル「あいつら、自分のことを『異世界から来た』って言ってた」

「異世界?」

 これまた突拍子もないことを……。

ヴァル「あぁ、そうだ。ーーセリカ!そこから逃げろ!」

「え!?」

 戸惑う私に対して、ヴァルは昨晩と同じように私の体を突き飛ばした。緊急事態とはいえ、もっと優しく出来ないのかな?

「おや、外してしまいましたね。否、正しくは逃げられたと言った方が正しいでしょうか?」

 いつの間にか目の前に肩幅の広い、黒服の男が立っていた。丸坊主に刺々とした形のピアスと、どっかのヤクザかとでもツッコミたくなる容姿。それともう1つ、ギルドの扉は閉まったままだというのに、一体どこから。

ヴァル「お前も異世界から来たっていう奴か」

 ヴァルが睨みを利かせ、拳に炎をまとわりつかせた戦闘態勢で問う。

「あなたのことはもうキルディスから聞いていますよ。何せ我々に2度も刃向かっているのですから」

 そう言うと男はヴァルに急接近し、そのままの足でヴァルを蹴り飛ばした。咄嗟のことに、ヴァルは受身を取ることができずに、そのままギルドの壁を突き破って外に出た。

「嘘......」

 たった一撃で、しかも、魔法とかの気配がしなかったのにこれ程までの力。

「ディランを倒したとは聞きましたが、それは嘘だったのですか。まあ、我々もあんな弱者に貴重なグランメモリを渡したのは失敗だと思っていましたが……それでも本当に君はディランに勝ったのかな?」

 その男はゆっくりとした足取りでヴァルに近づいていく。

「所詮その程度の力だったという訳ですか......」

 そう言うと男は再びヴァルを蹴り飛ばそうと足を振り上げた。ヴァルは先程の一撃でぐったりとしている。あのヴァルが、だ。

 私は急いで鍵を取り出すけど、こんな時に限って鞄の奥底に行ってしまい、上手く取り出せない。そうこうしているとーー

フウロ「危ない!ヴァル!」

 男が足を振り落とす寸前フウロが攻撃を止めに入った。

「おや、邪魔が入りましたか」

フウロ「貴様、何者だ?」

 フウロは剣を構えながら問いかける。

「私は『ゴード』あなた達が言う異世界人ですよ」

フウロ「ということは、お前も奴らの仲間か......」

ゴード「えぇ、その通りですよ。それにしても今この場にいるのはたったの3人ですか......」

フウロ「それがどうした」

ゴード「いえ、ここに3人しか居ないということは、他の方々は今頃私の仲間と対峙しているようですね」

「まさか、ヴェルド達のところに......」

 私は危険だと知りつつも、ギルドの外に出てゴードに問いかけた。

ゴード「この街は今のところ我々の占領下にあります。戦う意思がある奴らは全員死にますよ。逃げようとすればそれ以上の深追いはしませんが......」

フウロ「占領下だと......そんなこと出来るわけがーー」

ゴード「私達はこの世界に500人の軍勢で来ています。こんな小さな街を占領するには十分な数です。最も最初に来ていたのは3名ほどですが......」

「キルディス......昨日の通り魔......」

 あの男の不気味な笑みが脳裏を過る。きっと、あいつもこいつらの仲間だったのだろう。

ゴード「おや、もう既にお知り合いでしたか昨晩とそうです。キルディスと他2名『シヴァ』と『ラクシュミー』が最初に来てもう既にあなた達の実力は把握済みです。つまり、あなた達はもう既に負けたも同然。抵抗しなければ命を奪うまではしませんよ?」

 ゴードはフウロに剣を仕舞えと言うように手を前に差し出す。

「そんなの誰が信じるかよ!」

「えぇ、敵の言葉を信じては行けませんよフウロさん」

 突然氷と水の合わせ技がゴードを襲った。しかし、ゴードはそれを意図も簡単に避ける。

「ヴェルド!シアラ!」

 フウロの背後からあのバカップル(ヴェルドは否定、シアラは肯定)が現れる。

「無事だったの?」

ヴェルド「なんとか、というか、なんかライガとか名乗る変人も連れてきちまったけどな」

 そう言うとヴェルドは後ろの方を指さす。

ライガ「どこまで逃げようとするのですか!大人しく私の言う通りにしなさい!」

 恐らくライガであろう男が、顔を紅潮させてヴェルドの方へと突進してきた。

ヴェルド「お前の攻撃パターンはもう読めたよ!シアラ」

シアラ「はい、ヴェルド様」

 ヴェルドの合図にシアラが水のスクリュー魔法をライガに浴びさせる。

ヴァル「アイスグラウンド!」

 そして、その水を伝ってライガの体を氷漬けにしていく。

ライガ「くっそー!」

 ライガが必死にもがくが、包み込んだ氷は決してライガを離そうとしない。

ゴード「全く何をやっているのですか」

 そう言い、ゴードがライガの体にまとわりついた氷に向かってチョップする。氷は容易く粉々に崩れ落ちた。

ライガ「悪ぃゴード」

ゴード「こいつらは、どうやら抵抗する気しかないようです。殺してしまった方が早いでしょう。あと、口調がいつも通りになっていますよ、直せと言いましたのに」

ライガ「うるせぇ!あんな口調虫唾が走んだよ!」

 そう言うと2人はポケットからグランメモリを取り出した。

《タイガー》
《ハカイ》

 2人はあの小さな箱ことグランメモリを体に突き挿す。

 ライガの体が虎のような姿に変わり、ゴードは巨人の姿へと変化していった。

ゴード「ふん!」
ライガ「おりゃァ!」

 ライガとゴードがそれぞれ突進攻撃をしてくる。

ヴェルド「うわっ……!」
シアラ「いっ......」

 ヴェルドとシアラは回避したがゴードが腕を振り回したことによって攻撃が当たってしまった。

「たった......一撃で......」

 相変わらず物凄い威力……、当たれば終わりだなんて、勝てる気がしない。

フウロ「輝水剣!」

 ただフウロだけは、相手の力に臆することなくゴードに向かって攻撃をする。

ゴード「効くわけないと言ったでしょう?」

 そう言い、ゴードは再びフウロに向かって腕を振り落としてきた。

ーー危ない!

 私は精霊を召喚しようと鍵にマナを送ったが、手に持っていたのがただの万年筆だったことに今更気づいた。

 肝心な時に変な失敗しちゃった……。情けないってそんなこと考えてる場合じゃない!急いでちゃんとしたやつを取り出さないと……!

ヴァル「炎龍の鉄砕!」

 ゴードの拳がフウロに振り落とされる直前、ヴァルがゴードの頭に一撃を加えた。

「ヴァル!」

ヴァル「お前らにこの世界を好きにはさせねえよ!」

 ヴァルがゴードの頭の上で、ゴード達に向かって睨みを利かせていた。

ライガ「クソ、ガキ共が......」

 ライガがヴァルに向かって突進をする。そして、ヴァルはそれを軽々と避ける。

ヴァル「今朝の様にはいかねえよ!」

 ヴァルは通り過ぎていったライガに素早く飛びつき、強い一撃を御見舞した。

ゴード「中々やるようですね......」

 ゴードが頭を押さえながら体制を整える。

「全く......こんな奴ら相手にどれだけ時間がかかっているのよ」

 突然後ろの方から声が聞こえた。

「ヒカリん......」

フウロ「無事だったのか?」

 フウロが問いかける。

ヒカリ「こんな奴らさっさと倒しちゃいなさい」

 そう言うとヒカリはコートから銃を取り出しゴードたちの方へ銃口を向ける。

ヴァル「よっしゃぁ!ここからは俺たちのターンだ!」

 ヴァルがゴードに向かって突進攻撃をしようとする。

ヒカリ「そうなると......良いわね」

 ヒカリがサッと銃口の向きを変え、ヴァルの方に向けて引き金を引いた。それを、ヴァルは咄嗟の勘で左に避ける。

ヴァル「......どういうつもりだ?」

 私達が一斉にヒカリの方を見ると、ヒカリはしっかりとした敵意を持って私達を睨んでいたーー
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