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第2章 【異世界からの侵略者】
第2章17 【幼き思い出】
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「いやぁ、あんた本当に大丈夫かい?」
「ええ、お陰様で。普段あそこまで大きな事をしないので、その反動で倒れる......なんてことになったのだと思います」
「そうかい。ところであんた名前は?」
「ミル・イグドラシルと言います」
「ほう、それで、その隣にいる巨漢の方は......」
「旦那のシグルドです」
「へえ、そうなのかい。あんたらのおかげで橋が壊れずに済んだ。ありがとう」
私は作業員のおっさんとミルとの間で交わされる会話をボーッと聞いていた。
どう考えてもあの規模の作業を錬金術だけで出来るわけないと思っていたが、今の話を聞いた感じ、魔法も多少なりと関係していることがわかった。
それはそうと、本当に何者だ?この女。
「あんた、いわゆる『神聖術師』ってやつだろ?」
脇から出てきた男が問いかける。
ミル「いえ、ただの『専業主婦』です」
ミルは笑顔を作り言う。
分からない。男が言ったように『神聖術士』なら理解出来たのだが、ただの主婦がそんなことできるわけが無い。
もう、考えるのやめよ。
私は考えるのを放棄した。その時、脇の方からラクシュミーとアルテミスがミルの方に向かっていくのがチラッと見えた。
ラクシュミー「師匠と呼ばせてください!」
ラクシュミーが大声で言った。
アルテミス「ちょ、ちょっとラクシュミー何言ってんの!?」
アルテミスがラクシュミーに耳打ちしてるのが見える。
いきなり何を言い出すんだ。そりゃ、錬金術の腕はかなり凄いというのが分かるが......
ラクシュミー「アルテミス。いつまでもヒカリ先生の所で学んでたらダメだと思うの。だから、次は錬金術を学ぼうと」
「分かった。ラクシュミーがそこまで言うならって言うわけないでしょ!?」
若干グサッと心に何かが突き刺さった気がする。
ヒカリ「あのー、君達。私は弟子を取らない主義だし......そもそも君達誰?」
ラクシュミー「私、ラクシュミー・エーテルって言うの!」
ラクシュミーがそう言うと、辺りがざわめき始める。
ミル「エーテル家の子か......親御さんはここに居るのかい?」
「あのー、私は親ではありませんが、この子達の先生をやっております」
割り込むならここしかないと思った私はさっと前に出る。
ミル「先生......ですか。あなたが錬金術を教えればいいと思うのですが」
ラクシュミー「先生錬金術使えないもん!」
ラクシュミーは辺りのざわめきなど気にせず言う。ほんの数ヶ月でかなり強くなったものだ。何事にも物怖じしないその態度。うん、100点……と言いたいところですが、私の心に突き刺さるものがあるので-50点。
ミル「はぁ……、1ヶ月間だけ預からせてもらっても良いですか?」
ミルがそう問いかけてくる。ーーえ?これどう答えるべきなの?ラクシュミーはキラキラとした目でこちらを見ている......
「えっと......その1ヶ月で......何をするんですか?」
ミル「この子達に錬金術を教えるに相応しいか見定めます」
「あ、そうですか」
なんか、そこまで言われたらもう断りづらい......。というか、トントン拍子で話が進みすぎじゃありませんか!?
「あ、じゃあよろしくお願いします」
【速報】私、早くも生徒を失う瞬間であった......
どうしてこうなった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「テミ......なんで私達こんなことになっちゃったんだろうね......」
アルテミス「さあ?そもそも私、1度でも錬金術習いたいなんて言ったっけ......?」
私達は今、真夏の無人島に放り出されている。真夏と言ってもここは北国なのだから大して暑くない。
「ここで1ヶ月間サバイバルしろって……なんで某フルメタルアルケミスト的な展開になるのよー!いや、私がそんな展開にさせたのが悪いんだろうけどー!」
私は空に向かって大声で叫ぶ。
「ラク、それアウト!それ以上はやめて!」
帰ってくるのは何かを恐れるテミの叫び声……
「はぁ」
私は再び寝転がり、溜息をつく。
「島で生活してるうちは魔法も錬金術も一切禁止。使えるのはこのナイフ1本だけ。後、島で採れる物......」
アルテミス「弓が無いんじゃ、狩りもやりにくいしね......」
「はぁ......」
「はぁ......」
私とアルテミスは、現実を改めて理解し、同時に溜息をつく。
アルテミス「これ、1ヶ月......いや、1週間生き延びれるかな?」
アルテミスが呟く。
「人間って水さえあれば、飯無しでも2ヶ月は耐えれるらしいよ」
アルテミス「へえ......じゃあ、1ヶ月なんて楽......」
「ただし、病気になる可能性を除いて、更に活動も抑えた状態であること。まあ、2ヶ月耐えたとしてもその時にはもう衰弱死寸前だから、実際は1ヶ月も生きれないんだけど......」
アルテミス「えぇ......」
アルテミスはガッカリしたように肩を落とす。寝転がってるから落とす肩もないが。
「とりあえず、明日ね。明日、トラップ仕掛けて釣竿作って、木の実とか集めて......」
アルテミス「やることだらけ......だね」
「そうね......」
そして、私達は夜空に光る星々を眺めながら眠りについた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
翌日
《ギュルルルル》
「んあ......」
折角気持ちよく眠っていたというのに、私は自分の腹の音で目が覚めた。昨日の夜は何も食べていない。腹が減って当たり前か……
私は食糧を求めて森へと向かった。
「お、良いのはっけーん!」
5分程歩いてカランの実っている木を見つけた。
「ゲッ......2個しかない」
どこをどう見てもカランは2個しかなっていない。これでは、しばらくの間これでどうにかする、なんてことは無理そうだ。
「まあ、そんなに欲張っちゃダメだよね。あるだけ感謝しないと......」
私は独り言を呟いた後、カランを2個もぎ取って来た道を辿ろうとする。
「……」
私は立ち止まり、辺りを見渡す。考えたくはないがーー、
「帰り道、どっちだっけ?」
道に迷ってしまった。恐らく、カランの木の周りをグルグルと回っていたせいだろう。方向が分からなくなってしまった。
「えっと......こういう時は落ち着いて、日のある方向を見......」
今日は今朝から曇りで日が見えない。泣きっ面に蜂とはこのことを言うのだろう。とりあえず、この状況をどうにかしなければ......
ここは島だから周りは砂浜で覆われている。ならば、適当に帰っても砂浜からグルッと1周すれば帰れるだろう。いや、それでは時間が掛かりすぎるし、もし、アルテミスが来ていた場合、二人共完全にはぐれた状態となる。では、どこか高いところに登って辺りを見渡してみるか?ここには丁度背の高いカランの木がある。
いや、そもそも私には木登りなどできない。
アルテミスが来るのを祈ってみるか?もし、アルテミスが変な考えを働かせて他の作業を始めたらどうするんだ!?早くても夜までは確実に待つことになる。
「あ"ぁ"もうどうすればいいのよ!」
私は森に向かって叫んだ。
「ラク?どうしたの?」
それに応えるように、後ろから声がした。ーーアルテミスだった......
「良かったぁー。私、危うくこのまま帰れないんじゃないかと思ったぁ!」
私は勢いに任せ、アルテミスに抱きつく。
アルテミス「ちょ、ちょっとラク。どうしたの?」
アルテミスが困惑している。
無人島では迷子になる危険性がある。だから、どんな時でも2人で一緒に行動しよう。私は心の中でそう思った。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
アルテミス「ちょっとの距離で道に迷うなんてバカだねえ」
アルテミスが本当にバカにしたように笑った。
「......うるさい」
私はそう言い、更にそれ以上に何か言おうとしたが、口を閉じた。今、何を言っても負ける気がしたからだ。
アルテミス「まあ、でもラクがカランを見つけてくれたおかげでなんとかお腹を満たすことが出来たね」
「なら、もっと感謝しろ。崇め奉れ」
私はカランをかじりながら言う。
アルテミス「そこまでしないって」
「笑っていられるのも今のうちだ。あの木にはこの2つしかなってなかったし、食料問題を先にどうにかしないと……」
アルテミス「とりあえず......釣り?」
「そんなことしてたら日が暮れる」
そう言うと、私は帰り際に拾った木の枝にナイフをそこらへんの草花の茎を使って巻き付ける。
「はい、じゃあテミよろしくね」
私が即席で作ったばかりの槍......というよりもりを差し出す。
アルテミス「なんで私が......」
「私、こういうの苦手だから。そういうところはテミの得意分野でしょ?」
アルテミス「じゃあ、ラクは私が漁をしてる間何するつもりなの?」
「雨避けを作る。一雨来そうだから。それにここら辺の地域は今、雨が多い時期だし」
そう言って、私はすたすたと忌々しき森へと向かった。
アルテミス「迷子にならないでねー!」
テミが私の背中に向かってそう叫んだ。
「うるさいぞ!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ただいまってゲッ」
帰ってきた私を迎えたのは見事な完成具合の雨避け......というよりも一種の家のような感じのものだった。
ラクシュミー「ふっふーん。どう?」
ラクシュミーがドヤ顔をして出迎える。ラクシュミーがここまでの頑張りに対し、自分は......
ラクシュミー「小魚4匹......しかも全部ちっさい......」
これには反論できない。事実、自分はあまり頑張ってないように見えるのだから。
「たまたま魚が少なかっただけよ」
それでも何かを言い返さずにはいられない。
ラクシュミー「ふーん......まあ、いいや。ご飯にしよ!」
ラクシュミーが疑うような目付きで見てくるが、見えない振りをしておこう。それにしても、焚き火用の薪まで沢山揃えて......どこで何をしていたのだ?
「ラク……一応聞いとくんだけど、錬金術も魔法も一切使ってないよね?」
ラクシュミー「当たり前じゃん。使うなって言われてるんだからさー」
ラクシュミーはそう言うが、どうしても信じられない。そんな都合良く材料とかが大量にある場所でもあるなら話は別だが......そう思いつつも、仕方ないので採ってきた魚の調理を始める。といっても焼くだけなのだが......
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ーーその夜での出来事だった。
私は木の葉っぱでできた寝床で眠りについていた。ラクシュミーのおかげで昨日よりは遥かに寝やすいが、何故か中々眠れない。それに、なんだろうこの感じ。外で何かが蠢いている気がする。
私は思い切って外に出てみることにした。
「何なのかしらって......え?」
外に出た私の目の前にいたのは紛れもなく魔獣であった。しかも、そこそこ大きい。
「い、いやぁぁぁぁ!」
私は思わず大声で叫んでしまった。
ラクシュミー「ふぁ~ぁ……うるっさいわね。一体何があったらそんなに叫ぶ必要性が......」
「ら、ラク目を覚まして!魔獣!」
ラクシュミー「は?魔獣はこの島にはいないって師匠(仮)が言ってたじゃ......」
そこでラクシュミーも目の前の魔獣を見て言葉を失った。
ラクシュミー「て、テミ!ナイフ!」
ラクシュミーが酷く慌てた様子で言う。私も人のことは言えないのだが......
ラクシュミー「フィア!」
「ちょっとラク!この島にいる間は魔法禁止って」
ラクシュミー「そんなこと言って死んだらどうするのよ!」
それもそうだ。死んでしまっては元も子もない。ただし、ラクシュミーの魔法がしっかりと魔獣に効いてからの話である。
ラクシュミー「全っ然効いてない......」
魔獣にはかすり傷すら付かない。
「グォォォオ!」
魔獣が横一文字に切り裂き攻撃をしてくる。
「あ、ラク!」
私は間一髪の所でラクシュミーの体を引っ張り、そのまま草むらに隠れる。
「グゥゥゥ」
魔獣はしきりに辺りを見渡した後、去っていった。
ラクシュミー「なんだよ!この島魔獣いないんじゃなかったの!?しかも、ただの魔獣ならまだしもなんか、ヤバそうなのがいるんだけど!」
魔獣が視界から消えたのを見て、ラクシュミーが愚痴をありったけの声量で叫ぶ。
「いや、あれいる中で1ヶ月って...食料問題よりもヤバい問題が出来たんだけどどうしたらいい?」
私も同じように愚痴をこぼす。
ラクシュミー「はぁ......本当にどうなっちゃうんだろう......」
ラクシュミーがその場に座り込み、ため息をつく。
「とりあえず、あれをどうにかしないとね」
アルテミスもその場に座り込んで、同じようにため息をついた。
ラクシュミー「1ヶ月......本気入れてやらないと死んじゃう......」
「それもそうだけど、師匠からの質問の答えも作っておかないと......」
ラクシュミー「そうだった......『最も失いたくないものは何か』か......全くもって意味が分からない......」
「普通の質問じゃないからね...」
「はぁ......」
「はぁ......」
先の長い1ヶ月を思い、2人して同時にため息をついた。
「ええ、お陰様で。普段あそこまで大きな事をしないので、その反動で倒れる......なんてことになったのだと思います」
「そうかい。ところであんた名前は?」
「ミル・イグドラシルと言います」
「ほう、それで、その隣にいる巨漢の方は......」
「旦那のシグルドです」
「へえ、そうなのかい。あんたらのおかげで橋が壊れずに済んだ。ありがとう」
私は作業員のおっさんとミルとの間で交わされる会話をボーッと聞いていた。
どう考えてもあの規模の作業を錬金術だけで出来るわけないと思っていたが、今の話を聞いた感じ、魔法も多少なりと関係していることがわかった。
それはそうと、本当に何者だ?この女。
「あんた、いわゆる『神聖術師』ってやつだろ?」
脇から出てきた男が問いかける。
ミル「いえ、ただの『専業主婦』です」
ミルは笑顔を作り言う。
分からない。男が言ったように『神聖術士』なら理解出来たのだが、ただの主婦がそんなことできるわけが無い。
もう、考えるのやめよ。
私は考えるのを放棄した。その時、脇の方からラクシュミーとアルテミスがミルの方に向かっていくのがチラッと見えた。
ラクシュミー「師匠と呼ばせてください!」
ラクシュミーが大声で言った。
アルテミス「ちょ、ちょっとラクシュミー何言ってんの!?」
アルテミスがラクシュミーに耳打ちしてるのが見える。
いきなり何を言い出すんだ。そりゃ、錬金術の腕はかなり凄いというのが分かるが......
ラクシュミー「アルテミス。いつまでもヒカリ先生の所で学んでたらダメだと思うの。だから、次は錬金術を学ぼうと」
「分かった。ラクシュミーがそこまで言うならって言うわけないでしょ!?」
若干グサッと心に何かが突き刺さった気がする。
ヒカリ「あのー、君達。私は弟子を取らない主義だし......そもそも君達誰?」
ラクシュミー「私、ラクシュミー・エーテルって言うの!」
ラクシュミーがそう言うと、辺りがざわめき始める。
ミル「エーテル家の子か......親御さんはここに居るのかい?」
「あのー、私は親ではありませんが、この子達の先生をやっております」
割り込むならここしかないと思った私はさっと前に出る。
ミル「先生......ですか。あなたが錬金術を教えればいいと思うのですが」
ラクシュミー「先生錬金術使えないもん!」
ラクシュミーは辺りのざわめきなど気にせず言う。ほんの数ヶ月でかなり強くなったものだ。何事にも物怖じしないその態度。うん、100点……と言いたいところですが、私の心に突き刺さるものがあるので-50点。
ミル「はぁ……、1ヶ月間だけ預からせてもらっても良いですか?」
ミルがそう問いかけてくる。ーーえ?これどう答えるべきなの?ラクシュミーはキラキラとした目でこちらを見ている......
「えっと......その1ヶ月で......何をするんですか?」
ミル「この子達に錬金術を教えるに相応しいか見定めます」
「あ、そうですか」
なんか、そこまで言われたらもう断りづらい......。というか、トントン拍子で話が進みすぎじゃありませんか!?
「あ、じゃあよろしくお願いします」
【速報】私、早くも生徒を失う瞬間であった......
どうしてこうなった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「テミ......なんで私達こんなことになっちゃったんだろうね......」
アルテミス「さあ?そもそも私、1度でも錬金術習いたいなんて言ったっけ......?」
私達は今、真夏の無人島に放り出されている。真夏と言ってもここは北国なのだから大して暑くない。
「ここで1ヶ月間サバイバルしろって……なんで某フルメタルアルケミスト的な展開になるのよー!いや、私がそんな展開にさせたのが悪いんだろうけどー!」
私は空に向かって大声で叫ぶ。
「ラク、それアウト!それ以上はやめて!」
帰ってくるのは何かを恐れるテミの叫び声……
「はぁ」
私は再び寝転がり、溜息をつく。
「島で生活してるうちは魔法も錬金術も一切禁止。使えるのはこのナイフ1本だけ。後、島で採れる物......」
アルテミス「弓が無いんじゃ、狩りもやりにくいしね......」
「はぁ......」
「はぁ......」
私とアルテミスは、現実を改めて理解し、同時に溜息をつく。
アルテミス「これ、1ヶ月......いや、1週間生き延びれるかな?」
アルテミスが呟く。
「人間って水さえあれば、飯無しでも2ヶ月は耐えれるらしいよ」
アルテミス「へえ......じゃあ、1ヶ月なんて楽......」
「ただし、病気になる可能性を除いて、更に活動も抑えた状態であること。まあ、2ヶ月耐えたとしてもその時にはもう衰弱死寸前だから、実際は1ヶ月も生きれないんだけど......」
アルテミス「えぇ......」
アルテミスはガッカリしたように肩を落とす。寝転がってるから落とす肩もないが。
「とりあえず、明日ね。明日、トラップ仕掛けて釣竿作って、木の実とか集めて......」
アルテミス「やることだらけ......だね」
「そうね......」
そして、私達は夜空に光る星々を眺めながら眠りについた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
翌日
《ギュルルルル》
「んあ......」
折角気持ちよく眠っていたというのに、私は自分の腹の音で目が覚めた。昨日の夜は何も食べていない。腹が減って当たり前か……
私は食糧を求めて森へと向かった。
「お、良いのはっけーん!」
5分程歩いてカランの実っている木を見つけた。
「ゲッ......2個しかない」
どこをどう見てもカランは2個しかなっていない。これでは、しばらくの間これでどうにかする、なんてことは無理そうだ。
「まあ、そんなに欲張っちゃダメだよね。あるだけ感謝しないと......」
私は独り言を呟いた後、カランを2個もぎ取って来た道を辿ろうとする。
「……」
私は立ち止まり、辺りを見渡す。考えたくはないがーー、
「帰り道、どっちだっけ?」
道に迷ってしまった。恐らく、カランの木の周りをグルグルと回っていたせいだろう。方向が分からなくなってしまった。
「えっと......こういう時は落ち着いて、日のある方向を見......」
今日は今朝から曇りで日が見えない。泣きっ面に蜂とはこのことを言うのだろう。とりあえず、この状況をどうにかしなければ......
ここは島だから周りは砂浜で覆われている。ならば、適当に帰っても砂浜からグルッと1周すれば帰れるだろう。いや、それでは時間が掛かりすぎるし、もし、アルテミスが来ていた場合、二人共完全にはぐれた状態となる。では、どこか高いところに登って辺りを見渡してみるか?ここには丁度背の高いカランの木がある。
いや、そもそも私には木登りなどできない。
アルテミスが来るのを祈ってみるか?もし、アルテミスが変な考えを働かせて他の作業を始めたらどうするんだ!?早くても夜までは確実に待つことになる。
「あ"ぁ"もうどうすればいいのよ!」
私は森に向かって叫んだ。
「ラク?どうしたの?」
それに応えるように、後ろから声がした。ーーアルテミスだった......
「良かったぁー。私、危うくこのまま帰れないんじゃないかと思ったぁ!」
私は勢いに任せ、アルテミスに抱きつく。
アルテミス「ちょ、ちょっとラク。どうしたの?」
アルテミスが困惑している。
無人島では迷子になる危険性がある。だから、どんな時でも2人で一緒に行動しよう。私は心の中でそう思った。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
アルテミス「ちょっとの距離で道に迷うなんてバカだねえ」
アルテミスが本当にバカにしたように笑った。
「......うるさい」
私はそう言い、更にそれ以上に何か言おうとしたが、口を閉じた。今、何を言っても負ける気がしたからだ。
アルテミス「まあ、でもラクがカランを見つけてくれたおかげでなんとかお腹を満たすことが出来たね」
「なら、もっと感謝しろ。崇め奉れ」
私はカランをかじりながら言う。
アルテミス「そこまでしないって」
「笑っていられるのも今のうちだ。あの木にはこの2つしかなってなかったし、食料問題を先にどうにかしないと……」
アルテミス「とりあえず......釣り?」
「そんなことしてたら日が暮れる」
そう言うと、私は帰り際に拾った木の枝にナイフをそこらへんの草花の茎を使って巻き付ける。
「はい、じゃあテミよろしくね」
私が即席で作ったばかりの槍......というよりもりを差し出す。
アルテミス「なんで私が......」
「私、こういうの苦手だから。そういうところはテミの得意分野でしょ?」
アルテミス「じゃあ、ラクは私が漁をしてる間何するつもりなの?」
「雨避けを作る。一雨来そうだから。それにここら辺の地域は今、雨が多い時期だし」
そう言って、私はすたすたと忌々しき森へと向かった。
アルテミス「迷子にならないでねー!」
テミが私の背中に向かってそう叫んだ。
「うるさいぞ!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ただいまってゲッ」
帰ってきた私を迎えたのは見事な完成具合の雨避け......というよりも一種の家のような感じのものだった。
ラクシュミー「ふっふーん。どう?」
ラクシュミーがドヤ顔をして出迎える。ラクシュミーがここまでの頑張りに対し、自分は......
ラクシュミー「小魚4匹......しかも全部ちっさい......」
これには反論できない。事実、自分はあまり頑張ってないように見えるのだから。
「たまたま魚が少なかっただけよ」
それでも何かを言い返さずにはいられない。
ラクシュミー「ふーん......まあ、いいや。ご飯にしよ!」
ラクシュミーが疑うような目付きで見てくるが、見えない振りをしておこう。それにしても、焚き火用の薪まで沢山揃えて......どこで何をしていたのだ?
「ラク……一応聞いとくんだけど、錬金術も魔法も一切使ってないよね?」
ラクシュミー「当たり前じゃん。使うなって言われてるんだからさー」
ラクシュミーはそう言うが、どうしても信じられない。そんな都合良く材料とかが大量にある場所でもあるなら話は別だが......そう思いつつも、仕方ないので採ってきた魚の調理を始める。といっても焼くだけなのだが......
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ーーその夜での出来事だった。
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私は思い切って外に出てみることにした。
「何なのかしらって......え?」
外に出た私の目の前にいたのは紛れもなく魔獣であった。しかも、そこそこ大きい。
「い、いやぁぁぁぁ!」
私は思わず大声で叫んでしまった。
ラクシュミー「ふぁ~ぁ……うるっさいわね。一体何があったらそんなに叫ぶ必要性が......」
「ら、ラク目を覚まして!魔獣!」
ラクシュミー「は?魔獣はこの島にはいないって師匠(仮)が言ってたじゃ......」
そこでラクシュミーも目の前の魔獣を見て言葉を失った。
ラクシュミー「て、テミ!ナイフ!」
ラクシュミーが酷く慌てた様子で言う。私も人のことは言えないのだが......
ラクシュミー「フィア!」
「ちょっとラク!この島にいる間は魔法禁止って」
ラクシュミー「そんなこと言って死んだらどうするのよ!」
それもそうだ。死んでしまっては元も子もない。ただし、ラクシュミーの魔法がしっかりと魔獣に効いてからの話である。
ラクシュミー「全っ然効いてない......」
魔獣にはかすり傷すら付かない。
「グォォォオ!」
魔獣が横一文字に切り裂き攻撃をしてくる。
「あ、ラク!」
私は間一髪の所でラクシュミーの体を引っ張り、そのまま草むらに隠れる。
「グゥゥゥ」
魔獣はしきりに辺りを見渡した後、去っていった。
ラクシュミー「なんだよ!この島魔獣いないんじゃなかったの!?しかも、ただの魔獣ならまだしもなんか、ヤバそうなのがいるんだけど!」
魔獣が視界から消えたのを見て、ラクシュミーが愚痴をありったけの声量で叫ぶ。
「いや、あれいる中で1ヶ月って...食料問題よりもヤバい問題が出来たんだけどどうしたらいい?」
私も同じように愚痴をこぼす。
ラクシュミー「はぁ......本当にどうなっちゃうんだろう......」
ラクシュミーがその場に座り込み、ため息をつく。
「とりあえず、あれをどうにかしないとね」
アルテミスもその場に座り込んで、同じようにため息をついた。
ラクシュミー「1ヶ月......本気入れてやらないと死んじゃう......」
「それもそうだけど、師匠からの質問の答えも作っておかないと......」
ラクシュミー「そうだった......『最も失いたくないものは何か』か......全くもって意味が分からない......」
「普通の質問じゃないからね...」
「はぁ......」
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彼はエコール学園での生活を通じ、身分も立場も異なる様々な人間と深く関わっていく。
そこで出会う一人ひとりの想いと現実が、やがて国の未来を大きく左右していくことになるとは、この時のロイはまだ知らない。
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